カミオカンデ

カミオカンデ（KAMIOKANDE）は、陽子ようし崩壊ほうかいならびにニュートリノを観測かんそくするために、岐阜ぎふ県けん神岡かみおか鉱山こうざん地下ちか1000mに存在そんざいした観測かんそく装置そうち。KAMIOKANDEという名称めいしょうはKamioka Nucleon Decay Experiment（神岡かみおか核かく子こ崩壊ほうかい実験じっけん）に由来ゆらいし、2015年ねんノーベル物理ぶつり学がく賞しょう受賞じゅしょう者しゃの梶田かじた隆章たかあきによれば「東大とうだい(理り)が光ひかり電子でんし増ぞう倍ばい管かんとエレクトロニクスを担当たんとう、高こうエネルギー物理ぶつり学がく研究所けんきゅうじょ（現げん・高エネルギこうえねるぎー加速器研究機構かそくきけんきゅうきこう）タンクと純じゅん水みず装置そうちを担当たんとう、東京大学とうきょうだいがく宇宙うちゅう線せん研究所けんきゅうじょが空洞くうどう掘削くっさくを担当たんとう」など、分担ぶんたんして建設けんせつされた、。 1996年ねんにスーパーカミオカンデが稼動かどうしたことによりその役目やくめを終おえた。跡地あとちにはカムランドが建設けんせつされ、2002年ねん1月がつ23日にちより稼動かどうを始はじめている。

カミオカンデ模型もけい

概要がいよう

カミオカンデは、大だい統一とういつ理論りろんの予言よげんする陽子ようし崩壊ほうかいを実証じっしょうするため1983年ねんに完成かんせいした。

カミオカンデは3000トンの超ちょう純じゅん水みずを蓄たくわえたタンクと、その壁面へきめんに設置せっちした1000本ほんの光ひかり電子でんし増ぞう倍ばい管かんからなる。ここで使用しようされた光ひかり電子でんし増ぞう倍ばい管かんは研究けんきゅうグループと浜松はままつホトニクスが新規しんきに共同きょうどう開発かいはつした口径こうけい20インチのものである（一般いっぱんに広ひろく使つかわれるのは口径こうけい2インチ型がた）。ガラスバルブには耐たい水性すいせいが高たかいHARIOの耐たい熱ねつガラス「ハリオ32」が使用しようされた。

カミオカンデが地下ちかに設もうけられたのは、陽子ようし崩壊ほうかい時じに放出ほうしゅつされるニュートリノ以外いがいの粒子りゅうしの影響えいきょうを避さけるためである。ニュートリノはものを貫通かんつうする能力のうりょくが高たかく、他たの物質ぶっしつと反応はんのうすることなく簡単かんたんに地球ちきゅうを抜ぬけていってしまう。しかし、まれに他たの物質ぶっしつと衝突しょうとつすることがある。カミオカンデは、このまれに起おこる衝突しょうとつを検出けんしゅつすることで間接かんせつ的てきに陽子ようし崩壊ほうかいを実証じっしょうすることを目的もくてきとした。

カミオカンデはニュートリノの衝突しょうとつを検出けんしゅつするため、超ちょう純じゅん水みずをつかう。カミオカンデの内部ないぶには超ちょう純じゅん水すいがためられており、ニュートリノが水みずの中なかの電子でんしに衝突しょうとつしたあとに、高速こうそくで移動いどうする電子でんしより放出ほうしゅつされるチェレンコフ光こうは青白あおじろく発光はっこうし、壁面へきめんに備そなえ付つけられた光ひかり電子でんし増ぞう倍ばい管かんで検出けんしゅつする。チェレンコフ光こうを検出けんしゅつした光ひかり電子でんし増ぞう倍ばい管かんがわかると、計算けいさんによりどの方角ほうがくからきたニュートリノによる反応はんのうかがわかる仕組しくみになっている。

1987年ねん2月がつ23日にち、カミオカンデはこの仕組しくみによって、大だいマゼラン星雲せいうんでおきた超新星ちょうしんせい爆発ばくはつ (SN 1987A) で生しょうじたニュートリノを偶発ぐうはつ的てきに世界せかいで初はじめて検出けんしゅつした。この功績こうせきにより、2002年ねん小柴こしば昌俊まさとしは、ノーベル物理ぶつり学がく賞しょうを受賞じゅしょうした。

その後ごも、太陽たいようニュートリノやニュートリノ振動しんどうの検出けんしゅつ、レプトンフレーバーの保存ほぞんの破やぶれの研究けんきゅうに活用かつようされた。

当初とうしょの目的もくてき

前述ぜんじゅつしたとおりカミオカンデ建設けんせつの当初とうしょの目的もくてきは、大だい統一とういつ理論りろんの候補こうほの多おおくが予想よそうする陽子ようし崩壊ほうかいを観測かんそくすることであった。中なかでも最もっともシンプルで有力ゆうりょくであったSU(5)理論りろんが正ただしければ、少すくなくとも年としに数すう回かいの陽子ようし崩壊ほうかい検出けんしゅつが可能かのうなように、さらには外国がいこくでも同様どうようの実験じっけんが行おこなわれていたが、複数ふくすう予想よそうされる崩壊ほうかい形式けいしきの分岐ぶんき比ひも測定そくてい可能かのうなように設計せっけいされた。

予想よそうされる崩壊ほうかいの中なかで主おもなものは、陽電子ようでんしとパイ中間子ちゅうかんし（πぱい⁰）への崩壊ほうかいで、πぱい⁰はすぐに2つの光子こうしに崩壊ほうかいし、光子こうしはさらに電子でんし等ひとしを散乱さんらんしたりする。これらの陽電子ようでんしや電子でんし等とうの発はっするチェレンコフ光こうを観測かんそくすることにより、陽子ようし崩壊ほうかいを検出けんしゅつしようとしたのである。

SU(5)理論りろんでは陽子ようしの寿命じゅみょうは10³⁰から10³²年としと予測よそくされていたが、陽子ようし崩壊ほうかいは観測かんそくされず、陽子ようしの寿命じゅみょうは10³⁴年とし以上いじょうであることが分わかった。これによりSU(5)理論りろんは否定ひていされ、大だい統一とういつ理論りろんに修正しゅうせいを迫せまることになった。

修正しゅうせい理論りろんでも寿命じゅみょうは長ながくなるものの陽子ようし崩壊ほうかいが予想よそうされているが、実験じっけんを受うけ継ついだスーパーカミオカンデにおいて2018年ねん現在げんざいでも陽子ようし崩壊ほうかいは観測かんそくされておらず、陽子ようしの寿命じゅみょうは少すくなくとも1.6×10³⁴年とし以上いじょうであるとみられている。

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