カール・フォン・リンネのラップランド探検たんけん

カール・フォン・リンネが1732年ねんに行いったスウェーデン最さい北部ほくぶラップランド探検たんけんは、リンネの科学かがくに関かんする経歴けいれきで重要じゅうような位置いちを占しめるものである。

ラップランドのサーミ人じんの伝統でんとう的てきな衣装いしょうをまとい、後のちに自身じしんの紋章もんしょうに組くみ込こまれたリンネソウを持もつリンネ。

ヨーロッパのスカンディナビア地域ちいきを描えがいたヨハン・ホーマンによる1715年ねん頃ごろの地図ちず（1730年ねんに印刷いんさつ）、ラップランドは上部じょうぶ中ちゅうほどの淡あわい黄色おうしょくの部分ぶぶんである。

リンネのラップランド探検たんけんの経由けいゆ地ち

リンネはウプサラを出発しゅっぱつし、6か月げつをかけてボスニア湾わん沿岸えんがん部ぶを時計とけい回まわりに旅たびし、その旅程りょていでウメオ、ルレオ、トルニオから主おもな内陸ないりくへの探検たんけんを行おこなった。その観察かんさつは命名めいめい法ほうや分類ぶんるい学がくに関かんするリンネの考かんがえが初はじめて実用じつよう的てきな方法ほうほうで用もちいられた著書ちょしょ『ラップランド植物しょくぶつ誌し』（1737年ねん）の基礎きそになった。リンネは探検たんけん日誌にっしを記しるしており、これはリンネの没後ぼつごに英訳えいやくされて、1811年ねんに『ラップランド地方ちほうへの旅たび』として初はじめて出版しゅっぱんされた。

背景はいけい

1732年ねん4月がつ、リンネは旅行りょこうに対たいしてウプサラのスウェーデン王立おうりつ科学かがく協会きょうかいから奨励しょうれい金きんを授与じゅよされた。ウプサラ大学だいがくでリンネの指導しどう教授きょうじゅの一人ひとりであったオロフ・ルドベックは、1695年ねんにラップランド地方ちほうへの探検たんけんを行おこなったが、探検たんけんの詳細しょうさいな結果けっかは、7年ねん後ごの火災かさいで失うしなわれた。リンネの希望きぼうは、新あたらしい植物しょくぶつや動物どうぶつ、あるいは価値かちある鉱物こうぶつを発見はっけんすることにあった。スカンディナヴィアの広範囲こうはんいのツンドラで、トナカイを放牧ほうぼくして生活せいかつする漂泊ひょうはくの民みんである先住せんじゅうのサーミ人じんの習慣しゅうかんにも好奇心こうきしんを持もっていた。

ウプサラからウメオに

リンネは5月にウプサラから探検たんけんを開始かいしし、日記にっきや植物しょくぶつ学がくの写本しゃほんと鳥類ちょうるい学がくの原稿げんこう、 植物しょくぶつ標本ひょうほん台紙だいしの束たばを運はこびながら徒歩とほと馬うまで旅たびした。イェヴレ（後のちにリンネソウ（Campanula serpyllifolia）として知しられる彼かれのお気きに入いりの花はなの群生ぐんせいを発見はっけんした場所ばしょの近ちかく）を経由けいゆしてウメオに着つくのに11日にちかかった。時ときに花はなや岩いわを調しらべる為ために馬うまから降ふり、特とくに蘚類や地衣ちい類るいに（後者こうしゃはラップランドでは一般いっぱん的てきな動物どうぶつトナカイの主要しゅような食料しょくりょう）関心かんしんを持もった。

最初さいしょの内陸ないりくへの探検たんけん

ウメオからリンネは道中どうちゅうの水鳥みずとりを調しらべながらそれまで旅行りょこうしたよりも更さらに内陸ないりくの町まちリクセレに向むかった。5日にち後ごにリクセレに到着とうちゃくし、牧師ぼくし補ほ夫妻ふさいのもとに滞在たいざいした。5月末まつにソルセレを目指めざしリクセレを発たったが、非常ひじょうに困難こんなんな条件じょうけんの為ためにリクミラン（「幸運こううんな湿地しっち」）と呼よばれる場所ばしょで引ひき返かえさなければならなかった。リクセレで数日すうじつを過すごしサーミ人じんの習慣しゅうかん（例れい：タフルゲーム）を更さらに学まなんだ後のち、6月がつ上旬じょうじゅんにウメオに戻もどった。

ウメオからルレオに、そして2回かい目めの内陸ないりくへの探検たんけん

ウメオに戻もどった後のち、ボスニア湾わん沿岸えんがん沿ぞいに更さらに北上ほくじょうし、シェレフテオと旧ふるピーテオを経へて、道中どうちゅうの旧きゅうルレオでサーミ人じんの女性じょせいの帽子ぼうしを手てに入いれた。ルレオからルレ川がわに沿そって再度さいど内陸ないりく部ぶへ向むかい、北極ほっきょく線せんに位置いちするヨックモック、クヴィキョク（当時とうじは鉱山こうざん町まち）を通とおってスカンディナヴィア山脈さんみゃくに入はいり、ノルウェーとの国境こっきょうを越こえてショルフォルに至いたり、レルシュタット近郊きんこうへ旅たびした。その後ご、ルレオに向むかって来きた道みちを約やく300km戻もどる旅たびをした。

ルレオからトルニオに、そして3回かい目めの内陸ないりくへの探検たんけんとウプサラへの帰還きかん

リンネはさらに沿岸えんがん沿ぞいに旅たびを続つづけ、トルニオ（スウェーデン語ごでトルネオ）に至いたった。トルニオは、トルネ川がわ沿そいにヴィタンギに至いたる3回かい目めの内陸ないりく探検たんけんの起点きてんとなった。一時いちじトルニオ地区ちくで時ときを過すごし、チョリスでは試ためし金きんについて指導しどうを受うけた。9月中旬ちゅうじゅんに旅たびに戻もどり、ケミを通とおってフィンランドの海岸かいがん線せんをトゥルク（スウェーデン語ごでオーボ）まで旅たびした。海路かいろオーランド諸島しょとうを経へて、グリスレハムに到着とうちゃくし、陸路りくろでウプサラに帰還きかんした。

結果けっか

多おおくの植物しょくぶつや鳥とり、岩いわを収集しゅうしゅうし観察かんさつしながら10月がつ10日とおかに6か月げつに及およぶ2,000kmを超こえる探検たんけんから戻もどった。ラップランドは生物せいぶつ多様たよう性せいが限定げんてい的てきな地域ちいきであったが、リンネは未知みちの植物しょくぶつ100種類しゅるいを描えがいた。発見はっけんの詳細しょうさいは、著書ちょしょ『ラップランド植物しょくぶつ誌し』の基礎きそとなった。

リンネの旅たびの報告ほうこく書しょ Iter Lapponicum は、ジェームズ・エドワード・スミスにより英語えいごに翻訳ほんやくされ、『ラップランド地方ちほうへの旅たび』(Lachesis Lapponica: A Tour in Lapland) として1811年ねんに出版しゅっぱんされた。

リンネによるイラスト

アンドロメダーとリンネが名付なづけたヒメシャクナゲ

舟ふねを運はこぶサーミ人じん

出典しゅってん

参考さんこう文献ぶんけん

• Anderson, Margaret J. (1997). Carl Linnaeus: father of classification. アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく: Enslow Publishers. ISBN 978-0-89490-786-9 
• Blunt, Wilfrid (2001). Linnaeus: the compleat naturalist. ロンドン: Frances Lincoln. ISBN 0-7112-1841-2. https://books.google.com/books?id=N54GuRxlgrMC 
• Blunt, Wilfrid (2004). Linnaeus: the compleat naturalist. ロンドン: Frances Lincoln. ISBN 0-7112-2362-9. https://books.google.com/books?id=FRH_EMhQYhYC 
• Broberg, Gunnar (2006). Carl Linnaeus. ストックホルム: Swedish Institute. ISBN 91-520-0912-2 
• Linnaeus, Carl (1811). Lachesis Lapponica: A Tour in Lapland. ジェームズ・エドワード・スミス訳わけ. ロンドン: White and Cochrane. https://archive.org/details/lachesislapponic36059gut 
• Stöver, Dietrich Johann Heinrich (1794). Joseph Trapp. ed. The life of Sir Charles Linnæus. ロンドン: Library of Congress. ISBN 0-19-850122-6. https://books.google.com/books?id=ogwXAAAAYAAJ 

外部がいぶリンク

• 『ラップランド地方ちほうへの旅たび』（Lachesis Lapponica）
  • 第だい1巻かん、第だい2巻かん：ロンドン・リンネ協会きょうかいのジェームズ・エドワード・スミスより贈呈ぞうていされ、インターネットアーカイブに保存ほぞんされている。
  • 第だい1巻かん、第だい2巻かん：プロジェクト・グーテンベルクにより電子でんし書籍しょせき化かされ、インターネットアーカイブに保存ほぞんされている。