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ベトナムの人名 - Wikipedia

ベトナムの人名じんめい

キンぞく姓名せいめい

ほん項目こうもくではベトナム人名じんめいとく主要しゅよう民族みんぞくであるキンぞく姓名せいめいについて記述きじゅつする。なおほんこうでは現代げんだいはカタカナ表記ひょうきを、近代きんだい以前いぜん漢字かんじ表記ひょうき基本きほんとする。

ベトナムじん(キンぞく)の名前なまえせいあいだしょうするにより構成こうせいされる
上位じょうい10せい人口じんこうの85%をめる。

  阮(Nguyễn、グエン) 38.41%
  ちん(Trần、チャン) 11%
  はじむ(Lê、レ) 9.5%
  范(Phạm、ファム) 7.1%
  (Huỳnh/Hoàng、フイン/ホアン) 5.1%
  はん(Phan、ファン) 4.5%
  たけ/禹(Vũ/Võ、ヴー/ヴォー) 3.9%
  鄧(Đặng、ダン) 2.1%
  裴(Bùi、ブイ) 2%
  もり(Đỗ、ドー) 1.4%

構造こうぞう

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ベトナム漢字かんじ文化ぶんかけんぞくしており、人名じんめい主要しゅよう民族みんぞくであるキンぞく中心ちゅうしんに、かん民族みんぞく人名じんめい類似るいじする。婚姻こんいんさい夫婦ふうふ別姓べっせいとなり、基本きほんてきちちせいぐことがおおいが、ははせいもいる。

典型てんけいてき人名じんめいは、阮文めぐみNguyễn Văn Huệ、グエン・ヴァン・フエ)のように、かんせいいち音節おんせつHọ(户、せい)と、いち音節おんせつTên đệm(𠸛笘、あいだ直訳ちょくやくすると「[注釈ちゅうしゃく 1])、いち音節おんせつtên chính(𠸛ただししょうする)からなる構造こうぞうである。

名付なづけに使つかわれるかたりかならずしも漢字かんじ由来ゆらいのものにかぎらず、庶民しょみんあいだとく地方ちほう女性じょせいでは固有こゆうによる名付なづけもかなり存在そんざいしている。なお、現代げんだいベトナム表記ひょうきクオック・グー)では、単語たんご区切くぎりでなく音節おんせつ区切くぎりでかちし、固有名詞こゆうめいしぜん音節おんせつあたま大文字おおもじになる。

せいHọ

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せい一般いっぱんてきいち音節おんせつかんせいであり、(Nguyễn、グエン)、ひね(Trần、チャン)、はじむ(、レ)だけで全体ぜんたいのほぼ60%、(Phạm、ファム)、(Huỳnh/Hoàng、フイン/ホアン)、はん(Phan、ファン)もふくめると75%にたっする[1]

せい複数ふくすう音節おんせつのものも存在そんざいする。音節おんせつせいれいとしては阮朝大臣だいじんみことしつせつTôn Thất Thuyếtトン・タット・トゥエット)の「トン・タット」がある。ながいものでは、歌手かしゅクイン・ジャオ本名ほんみょうは「グエン・フック・コン・タン・トン・ヌー・ドアン・チャン」(Nguyễn Phước Công Tằng Tôn Nữ Đoan Trang)であり、せいは「グエン・フック・コン・タン・トン・ヌー」(Nguyễn Phước Công Tằng Tôn Nữ、阮福こう曾尊おんな)である。これは阮朝の帝室ていしつにつながるせいである。

また、子供こども両親りょうしんせい両方りょうほう名乗なのることもある。レ・ホン・フォンとグエン・チ・ミンカイとのむすめであり、ベトナム共産党きょうさんとうのホーチミン委員いいんとしてつとめたレ・グエン・ホン・ミンのようなれいがある。

あいだTên đệm

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あいだ」は男性だんせいで「ヴァン」(Vănぶん)や「バー」(はく)、女性じょせいで「チ(ティ)」(Thị)や「ジェウ」(Diệuみょう)などバリエーションはそうおおくはない。過去かこにおいては女性じょせいの「あいだ」はその100%が「チ(ティ)」であった。「あいだ」は「しょうする」とは一体化いったいかしておらず、また中国ちゅうごくやからぎょう朝鮮ちょうせん行列ぎょうれつのような世代せだい区別くべつ使つかわれることもない。

阮文めぐみを阮恵(Nguyễn Huệ、グエン・フエ)と通称つうしょうするように、男性だんせいにおいて「あいだ」は省略しょうりゃくされることがある。また、レ・ズアンLê Duẩnはじむたけのこ)のように「あいだ」をそもそもたないれいもある。

由緒ゆいしょある家系かけいでは「あいだ」がささえ区別くべつ使つかわれることがある。この場合ばあいささえせいあいだ弁別べんべつされ、世代せだいえて継承けいしょうされるため、ときとして両者りょうしゃがあわせて音節おんせつせい中国ちゅうごくでいう「ふくせい中国語ちゅうごくごばん」)であるかのようにあつかわれることもある。たとえばはじむあさ後期こうき皇帝こうていでははじむくにはじむ潭のように「はじむ維」が、阮朝皇帝こうていでは、こう南国なんごくおうのころより阮福淍、阮福阮福のように「阮福」ががれた。

しょうするTên chính

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しょうする」は通常つうじょういち音節おんせつであり、漢字かんじ文化ぶんかけんおなじく、男性だんせいであれば「ナム」(Namおとこ)、「タン」(Thắngかち)、「フン」(Hùngゆう)、「チェット」(Triếtあきら)など、女性じょせいであれば「ハイン」(Hạnhこう)、「ホア」(Hoaはなはな)、「トー」(Thơ)、「マイ」(Maiうめ)などのジェンダーにてきしたものがもちいられることがおおいが、「ビン」(Bìnhたいら)、「ミン」(Minhあきら)などの男女だんじょどちらでももちいられるものもおおい。

音節おんせつれいとしてはグエン・チ・ミンカイNguyễn Thị Minh Khai阮氏あきらひらく)のようなものがある。音節おんせつめい女性じょせいおおく、その場合ばあい通称つうしょうにおいて「あいだ」が省略しょうりゃくされがちである。女性じょせい音節おんせつめいとしては、「ミン・グォク」(Minh Ngọcあかりだま)、「トゥイェット・マイ」(Tuyết Maiゆきうめ)など詩的してきなものがおおい。

呼称こしょう

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相手あいて地位ちいたか人間にんげんであっても、呼称こしょう使つかうのはせいではなく「しょうする」である。たとえば「ゴ・ディン・ジエム大統領だいとうりょう」(Ngô Đình Diệm廷琰)は、せいが「ゴ」、あいだが「ディン」、しょうするが「ジエム」であるため、「ゴ大統領だいとうりょうTổng thống Ngô)」ではなく「ジエム大統領だいとうりょうTổng thống Diệm)」と呼称こしょうする。また、このれいからわかるとおり、「大統領だいとうりょうtổng thống(總統そうとう総統そうとう)」「先生せんせいthầy, cô)」「医師いしbác sĩ)」のような敬称けいしょうせいにではなくしょうするけられる[2]

せい呼称こしょう使つかうのはきわめて例外れいがいてきたか敬意けいいあらわすときにかぎられる。これはホー・チ・ミンHồ Chí Minh胡志明ほうちみん)を「ホーおじさん(Bác Hồはくえびす)」と、またトン・ドゥック・タンTôn Đức Thắngまごとくかち)を「トンおじさん(Bác Tônはくまご)」とぶような場合ばあいである。ヴォー・グエン・ザップ将軍しょうぐんVõ Nguyên Giápたけもとかぶと)であっても、生前せいぜん敬称けいしょうは「ザップ将軍しょうぐんTướng Giápはたかぶと)」や「ザップにいさん(Anh Giáp)」であった。国家こっか英雄えいゆうとうかんしては同様どうように、ヴォー・チ・サウを「ヴォー・チ・サウねえさん(Chị Võ Thị Sáu)」とぶようなれいられる(普通ふつうに Mr. Ms. であればベトナムでは本来ほんらい Anhや Chịではなく、Ông, Bàをもちいる)。

実際じっさい身近みぢかひとさいは、同年代どうねんだい友人ゆうじん同士どうしであれば、個人こじん特徴とくちょうをつけて「のっぽのナム」「鼻歌はなうたのクイン」などのあだTên Hiệu)で[3]。また同名どうめい男女だんじょ、たとえば女性じょせいのグエン・チ・ビンと男性だんせいのグエン・ヴァン・ビンが一緒いっしょにいるでは、あいだふくめて女性じょせいを「チ・ビン」、男性だんせいを「ヴァン・ビン」などとけることがある。

年齢ねんれいがある程度ていどことなる相手あいて直接ちょくせつ場合ばあいは、あに程度ていど年上としうえである男性だんせいのビンさんなら Anhをつけて「アイン・ビン」、あね程度ていど年上としうえ女性じょせいのビンさんであれば chịをつけて「チ・ビン」。自分じぶん両親りょうしんよりわかいくらいの年上としうえ女性じょせいならをつけて「コー・ビン」、男性だんせいであればchúをつけて「チュー・ビン」。おとうといもうと程度ていど年下とししたであれば性別せいべつわずemをつけて「エム・ビン」等々とうとう年齢ねんれい立場たちば関係かんけいせいによって事細ことこまかに変化へんかし、また同時どうじ自分じぶんあらわ一人称いちにんしょう変化へんかする。

なお、日常にちじょう生活せいかつでは「しょうする」しか意識いしきせず、せいはほとんど使用しようする機会きかいがないため、親友しんゆう同士どうしであってもたがいのせいらないというれいおお[3]。ただしFacebookひとしSNS普及ふきゅうにより、多少たしょう状況じょうきょうわりつつある。

少数しょうすう民族みんぞく

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ベトナムにはモン・クメールマレー・ポリネシアなどの漢字かんじ文化ぶんか民族みんぞくおお存在そんざいし、それぞれ民族みんぞく固有こゆう語彙ごい命名めいめいほうによるつ。中華ちゅうかけいであるホアぞくはほぼかんめいであり、「あいだ」をたないことがおおい。キンぞく言語げんごてきちかムオンぞくはキンぞく同様どうようであるが、せいのバリエーションや同姓どうせいめる割合わりあいことなる。

フランス、アメリカ、ドイツなどの在外ざいがいベトナムじんでは、せいTrần(チャン、ひね)を「トラン」と誤読ごどくされたり、Nguyễn(グエン、阮)を「ニューエン」「エンギュイエン」と発音はつおんしやすくえられ、またそのままその発音はつおんれて正式せいしきせいにすることがある。日本語にほんご文献ぶんけんにおいても(正式せいしきせいとなっていなくとも)、「トラン」「ニューエン」「エンギュイエン」とかれることがある。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 訳注やくちゅう:ベトナムでは中国ちゅうごく同様どうよう寝台しんだいうえくものとしてちがや藺草いぐさなどをんだものをもちいていた。これが「とま」であり、おも小屋こやなどの上部じょうぶけるものを日本語にほんごの「とま」とは意味いみ若干じゃっかんことなる。なお現代げんだいベトナムでは、đệmはマットレス意味いみする

出典しゅってん

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  1. ^ Lê Trung Hoa (2005). Họ và tên người Việt Nam. Hà Nội, Việt Nam: NXB Khoa học Xã hội (Social Sciences Publishing House) 
  2. ^ ベトナム表現ひょうげんとことんトレーニング. 白水しろみずしゃ. p. 51. ISBN 978-4-560-08628-5 
  3. ^ a b 田原たはら洋樹ひろき (2005). ベトナムのしくみ. 白水しろみずしゃ. p. 31 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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