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マスタリング - Wikipedia

マスタリング (mastering) は、

  1. さまざまな素材そざい内容ないよう記録きろく媒体ばいたいCDDVDBlu-ray Disc、LPレコード磁気じきテープなど)に収録しゅうろくし、量産りょうさんようプレスをするさい原盤げんばん(マスター)を作成さくせいする作業さぎょうす。音楽おんがくかぎらずコンピュータゲームパソコンようソフト、データを収録しゅうろくしたCD-ROMDVD-ROMBD-ROMDVD-VideoDVD-Audioなどメディアをわず原盤げんばん作成さくせいすることを意味いみする。原盤げんばん製作せいさく作業さぎょう
  2. 録音ろくおんによる音楽おんがく作品さくひん制作せいさくで、ミキシングしてつくられた2トラック音源おんげん(トラックダウン音源おんげん、または2ミックス音源おんげん)を、イコライザーコンプレッサー、そのオーディオ・エフェクト機器ききもちいて加工かこうし、CDやDVDやBD、インターネットうえ投稿とうこうサイトといった最終さいしゅうてきなメディアにすために、音量おんりょう音質おんしつ音圧おんあつ調整ちょうせいすること。最近さいきん映像えいぞう作品さくひん画質がしつ調整ちょうせいにももちいられる。

原盤げんばん制作せいさく

編集へんしゅう

原盤げんばん制作せいさくにおいても、広義こうぎのマスタリングと狭義きょうぎのマスタリングのふたつの用法ようほう存在そんざいする。原盤げんばん制作せいさく作業さぎょうにおける狭義きょうぎのマスタリングとは、量産りょうさんプレスのために、プリマスタリング(後述こうじゅつ)によって作成さくせいされた内容ないよう原盤げんばん(スタンパ)を作成さくせいする工程こうていす。原盤げんばん制作せいさく作業さぎょうにおける広義こうぎのマスタリングには、プリマスタリングとスタンパ作成さくせい両方りょうほう工程こうていふくまれる。

原盤げんばん制作せいさく作業さぎょうにおいて一般いっぱんてきにマスタリングとえばプリマスタリングのこと、もしくは広義こうぎのマスタリングをすことがおお[ちゅう 1]

プリマスタリング

編集へんしゅう

通常つうじょう収録しゅうろく内容ないよう収録しゅうろく順序じゅんじょ決定けってい内容ないよう編集へんしゅうなどの工程こうていがマスタリングのまえ必要ひつようとなる。これらをプリマスタリング (pre-mastering) としょうする。

音楽おんがくメディアのプリマスタリング
音楽おんがくCD、DVD-Audioなどの音楽おんがくメディアの場合ばあいはミキシング(ミックスダウン)してつくられたマスターテープから、きょくじゅん決定けっていや、フェードイン・フェードアウトなどのクロスフェード作業さぎょう最終さいしゅうてききょくのレベルや音質おんしつ音圧おんあつ調整ちょうせいきょくあいだ編集へんしゅうとう[ちゅう 2]て、CDカッティングようマスターテープ(現在げんざいはプリマスターCD-RDisc Description Protocolファイル)をつくる作業さぎょうし、通常つうじょう、マスタリングスタジオでおこなわれる。音楽おんがくメディアにおけるプリマスタリングは、楽曲がっきょくアルバム全体ぜんたい最終さいしゅうてき印象いんしょうめる重要じゅうよう作業さぎょうである。
音楽おんがくメディア以外いがいのプリマスタリング
そののCD-ROM、DVD-ROMなどの媒体ばいたい場合ばあいは、内容ないよう編集へんしゅうし、マスターを製作せいさくするための原盤げんばん原盤げんばん製作せいさくする作業さぎょうをプリマスタリングとぶ。プリマスタリングされた内容ないようはCD-Rなどに記録きろくされる。

リマスタリング

編集へんしゅう

1950 - 80年代ねんだいなどのアーティストの音楽おんがく作品さくひんは1980年代ねんだいまつ以降いこうふる映像えいぞう作品さくひんは2010年代ねんだい以降いこうに、リマスターリマスタリングなどとしょうしてさい発表はっぴょうさい発売はつばいされている。
音楽おんがく作品さくひんはほとんどがアナログ音源おんげんだが、きゅうデジタル音源おんげんふくまれる。これらはあらためてプリマスタリングとマスタリングした作品さくひんである。[ちゅう 3]このさい、(おもにアナログ音源おんげんの)リマスターをデジタル機器ききおこなうことをデジタルリマスターもしくはデジタルリマスタリングとぶ。アナログばん再発さいはつでは、あえてアナログリマスターされることもある。
ふる音源おんげん映像えいぞう最新さいしん音響おんきょう技術ぎじゅつ画像がぞう編集へんしゅう技術ぎじゅつもちいてマスタリングしなおすことで、より音質おんしつ画質がしつ期待きたいできる(アナログマスターテープの経年けいねん劣化れっか、デジタルするさい音質おんしつ画質がしつ変化へんか、またレコーディングやミキシング自体じたいふるいなどのため、すべてがくなるわけではない)。

音質おんしつ音圧おんあつ調整ちょうせい

編集へんしゅう

録音ろくおんによる音楽おんがく制作せいさくにおいては、最終さいしゅうてきにCDなどのかたち量産りょうさんされないものもおおい(放送ほうそうきょくのジングルやCM音楽おんがくなど)。だが、こうした音楽おんがく制作せいさくにおいてもミックスダウンの2トラックマスターの音圧おんあつ音質おんしつ調整ちょうせいする作業さぎょう必要ひつようである。このような作業さぎょうもマスタリングとばれる。

元々もともと音質おんしつ音圧おんあつ調整ちょうせいという意味いみでのマスタリングは、たんぜん収録しゅうろくきょく質感しつかん音量おんりょう違和感いわかんなくととのえるといった意味いみだけでなく、マスターテープの音声おんせいデータをアナログ・レコードばんこすさいしょうじる音質おんしつおおきな変化へんか是正ぜせいするための工程こうていという目的もくてきおおきな部分ぶぶんになっていた。そのため、デジタル音源おんげんはマスターテープの音質おんしつ忠実ちゅうじつ再現さいげん出来できるとして80年代ねんだい後半こうはん - 90年代ねんだい前半ぜんはんのCD時代じだい初期しょきには、せいぜいレベルをわせる程度ていど積極せっきょくてき処理しょりおこなわれていなかった。しかし、90年代ねんだいなかばをむかえるころには単純たんじゅんにデジタルしただけではCDメディアの特性とくせいにマッチしておらず、アナログ・レコード時代じだいのように最終さいしゅうてきなメディアにてきした音質おんしつ調整ちょうせいするべきだという認識にんしきひろまり、現在げんざいいたっている[1]

しかしながら現在げんざいではレコーディング・ミキシングもフルデジタルしていることもあり、楽曲がっきょく単位たんいであればミキシングの段階だんかいでCDに最適さいてきしたようなマスタリングにじゅんずる処理しょり簡単かんたんおこなうことが可能かのうになっている。よって“アナログのマスターテープをデジタルするさいにCD音源おんげんよう質感しつかん最適さいてきする”という意味いみでのマスタリングは、製作せいさくしゃ意図いとであえてアナログマスターでのレコーディングをおこなったり、デジタルレコーダーでのマルチ録音ろくおんでアナログレコーダーでのミックスダウンをした場合ばあいのぞけば、アナログ・レコード時代じだい作品さくひんのCDや、マスターがアナログテープであった時代じだいのCD作品さくひんをリマスター再発さいはつする場合ばあいなどにかぎられている。そのため、現在げんざいでは「マスタリングといえど積極せっきょくてきおとづくりをおこなう」、「出来できかぎりミキシングおと尊重そんちょうし、マスタリングでは最低限さいていげん処理しょり以外いがいおこなわない」、「トラックダウン・データがCD規格きかく(16Bit/44.1KHz)をおおきく上回うわまわ品質ひんしつ(24Bit/96KHzなど)なので、CD規格きかく品質ひんしつにコンバートしたさい変質へんしつ考慮こうりょして積極せっきょくてき処理しょりおこなう」またはそれらの折衷せっちゅう方針ほうしんなど、マスタリング・エンジニアやミュージシャンの意向いこうによりマスタリングにたいする姿勢しせい処理しょり方針ほうしん千差万別せんさばんべつとなってきている。

具体ぐたいてき音質おんしつ音圧おんあつ調整ちょうせい作業さぎょうれい

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具体ぐたいてき音質おんしつ音圧おんあつ調整ちょうせい作業さぎょう手順てじゅん非常ひじょう複雑ふくざつであり、またそれをおこなうエンジニアによって使用しよう機材きざい手順てじゅん千変万化せんぺんばんかするが、ここではマスタリングエンジニアの葛巻くずまき善郎よしろうによる作業さぎょうれいしめ[2][ちゅう 4]

  1. 2種類しゅるいのコンプレッサーをとおして音源おんげんをコンピュータにむ。うち1はコンプレッションをおこなわず、たん回路かいろとおして音質おんしつ変化へんかさせるためのみにもちいられる。
  2. 音楽おんがく編集へんしゅうソフトを起動きどう、VSTプラグイン・ソフトをして3つの帯域たいいきにパラメトリック・イコライザーをかける。
  3. ノイズ除去じょきょようプラグイン・ソフトをしてデジタルノイズを一定いってい割合わりあい除去じょきょ
  4. ふたたび、べつのプラグイン・ソフトをしてコンプレッサーをかける。
  5. 2とはべつ音楽おんがく編集へんしゅうソフトを起動きどうし、同時どうじに2系統けいとうのイコライザーを使用しようして音質おんしつ調整ちょうせい

音圧おんあつ優先ゆうせんのマスタリングの問題もんだい

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詳細しょうさいおよびアナログ時代じだい音圧おんあつ調整ちょうせいについては 英語えいごばん Loudness war 参照さんしょう

マスタリングの根幹こんかんひとつは音圧おんあつ調整ちょうせいであるが、フルデジタルされた1990年代ねんだいなか以降いこう一聴いっちょうしただけでみみのこる(すなわれる)ようにするために音圧おんあつ限界げんかいまでげるマスタリングが流行りゅうこうしている[3][ちゅう 5]。こうしたマスタリングでは聴覚ちょうかくじょう音圧おんあつかせぐためにダイナミックレンジ犠牲ぎせいとするため、とくなま楽器がっきおお使つか音楽おんがくでは、つぶれた不自然ふしぜんおとになる、演奏えんそうしゃ意図いとうすめられてしまう、などの弊害へいがい指摘してきされている。

前出ぜんしゅつ葛巻くずまきは、欧米おうべいではこういった音圧おんあつ競争きょうそう徐々じょじょうすまってきているが、日本にっぽん国内こくないでは相変あいかわらず音圧おんあつ至上しじょう主義しゅぎのマスタリングが支配しはいてきであるとコメントしている。

3Mテープ使用しようのマスターテープについて

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大瀧おおたき詠一えいいちは、1989ねんにアルバム『A LONG VACATIONはつ公式こうしきリマスターばん発売はつばいされたさいつぎのようにかたっている。

まだ世間せけんてきにはリマスタリングなんて言葉ことばかったころですが、じつ我々われわれにしてみればこの時点じてんで4かいのマスタリングだったんです。で、このときはアナログ・マスターからPCM-1630U-Maticとしました。そのさい、「アナログ・マスターが危険きけん状態じょうたいにある」というはなしかされたんです。1980ねんから83ねんまでの3Mのテープは全体ぜんたいてき不具合ふぐあいがあるという通達つうたつたのですよ。磁性じせいたいがボロボロちておとなくなると。普通ふつうアナログは経年けいねん変化へんか最後さいごはダメになるのだけど、この時期じきのテープはそれよりはやくダメになるという。それで「もう1かいなにとかおねがい!」ってU-Maticにれたのがアナログをまわした最後さいごでした。[4]

いちれいげると、松任谷まつとうや由実ゆみのこの時期じきたるマスターテープもおな状態じょうたいにあり、1999ねんにリマスタリングしたさい東芝とうしばEMI時代じだいピンク色ぴんくいろおびさい発売はつばいされた作品さくひん)には、特殊とくしゅなオーブン(恒温こうおんそう)で磁性じせいたい一時いちじてき定着ていちゃくさせ作業さぎょうおこなった、という記述きじゅつ当時とうじ音楽おんがく雑誌ざっしにあり、『最終さいしゅうリマスター』とわれている。ちなみに3Mはその時期じき会社かいしゃない自社じしゃせいのテープを使つかったアルバムに『最優秀さいゆうしゅう録音ろくおんアルバムしょう』というものをおく風習ふうしゅうがあり、1982ねん受賞じゅしょうアルバムに、『PEARL PIERCE松任谷まつとうや由実ゆみ』1983ねん受賞じゅしょうアルバムに、『ユートピア松田まつだ聖子せいこ(こちらはデジタル・マスター)』があり、これらがオリジナルのマスターからデジタルされているのかはなぞである。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 市販しはんのCD/DVD/BDライティングソフトでマスタリングと表記ひょうきされている場合ばあいも、こちらをす。CD/DVD/BDライティングソフトをマスタリングソフトとぶこともある。
  2. ^ すでにトラックダウンされたギターベースなど楽器がっきごとのバランスは、マスタリング作業さぎょう調整ちょうせいできない。これらはミキシングにおける作業さぎょうである。
  3. ^ マルチトラックのマスターから楽器がっき音声おんせい素材そざいごとに定位ていい音量おんりょうバランスなど、編集へんしゅうをやりなお作業さぎょうすべリミックスであるが、 オリジナル・バージョンにちかいバランスで編集へんしゅうなおしたものもリマスタリングとぶ。もっとも、ミキシングはマスタリングのまえおこな作業さぎょうなので、リミックス音源おんげんすなわち、リマスタリング音源おんげんであるともえる。だが、ただたんに「リマスタリング」と記載きさいされているもののおおくは補正ほせい(イコライジング、ノイズ除去じょきょなど)のみで、編集へんしゅうおこなわれていない。編集へんしゅうそのものからのやりなおすリマスタリング(厳密げんみつにはリミックス)は、ふる時代じだい編集へんしゅうをそのまま使用しようしたリマスタリングと比較ひかくすると、より現代げんだいてき音像おんぞう期待きたいできる。
  4. ^ もちろん、この作業さぎょう工程こうていとはまったことなる手順てじゅんむエンジニアもおおくおり、この工程こうてい標準ひょうじゅんというわけではないことに留意りゅうい必要ひつようである。
  5. ^ コンプレッサー (音響おんきょう機器きき) 参照さんしょう

出典しゅってん

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  1. ^ 日本にほんコロムビア LPファクトリーコラム
  2. ^ 永野ながの光浩みつひろ『マスタリング』音楽之友社おんがくのともしゃ、2004ねん、75-79ページ
  3. ^ マスタリングとミックスダウン
  4. ^ 『サウンド&レコーディング・マガジン』 2011ねん4がつごう http://www.rittor-music.co.jp/magazine/sr/10121004.html

関連かんれん項目こうもく

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