ロマ語 ご (ロマご、ロマニー語 ご 、ジプシー語 ご )はインド・ヨーロッパ語族 ごぞく インド語 ご 派 は の言語 げんご で、インドから北 きた アフリカ、ヨーロッパへ移住 いじゅう した少数 しょうすう 民族 みんぞく ロマ (ジプシー)が使用 しよう する。
ロマは国家 こっか をもたないため標準 ひょうじゅん 語 ご はない。方言 ほうげん が非常 ひじょう に多様 たよう で、20群 ぐん 60種類 しゅるい 以上 いじょう に分類 ぶんるい される。もともと固有 こゆう の文字 もじ はなく、現在 げんざい ではラテン文字 もじ で筆記 ひっき されることが多 おお い。
サンスクリット語 ご が起源 きげん であるといわれ、現在 げんざい 北 きた インドで使 つか われているグジャラート語 ご 、ヒンディー語 ご 、カシミール語 ご などの諸 しょ 言語 げんご とも、語彙 ごい ・文法 ぶんぽう などの点 てん で関連 かんれん 性 せい があることが指摘 してき されている。
また、何 なん 百 ひゃく 年 ねん という年月 としつき をかけて広大 こうだい な地域 ちいき を移動 いどう したことにより、彼 かれ らの通過 つうか 地 ち および滞在 たいざい 地 ち の諸 しょ 言語 げんご との相互 そうご 的 てき 影響 えいきょう がみられる。ロマがインドからヨーロッパへ移動 いどう する間 あいだ に関与 かんよ した言語 げんご にはペルシア語 ご 、アルメニア語 ご 、アラビア語 ご 、トルコ語 ご が、ヨーロッパ侵入 しんにゅう 後 ご に影響 えいきょう を与 あた えた言語 げんご にはギリシア語 ご 、ロシア語 ご 、ルーマニア語 ご 、ハンガリー語 ご 、更 さら にドイツ語 ご 、フランス語 ふらんすご 、英語 えいご がある[ 2] 。
近年 きんねん ではロマの流浪 るろう 範囲 はんい が狭 せま くなり、一 ひと つの国 くに から外 そと に出 で ることが稀 まれ になったため、ますます接触 せっしょく 言語 げんご の影響 えいきょう 力 りょく が増 ま してきている。このことはロマ語 ご の方言 ほうげん 化 か と話者 わしゃ の減少 げんしょう を加速 かそく させ、言語 げんご の消滅 しょうめつ も危惧 きぐ されている[ 2] 。
極 ごく 初期 しょき のロマ語 ご の実態 じったい に関 かん する確 たし かな歴史 れきし 的 てき な文献 ぶんけん はない。また、ロマの先祖 せんぞ や、インド亜 あ 大陸 たいりく からの移住 いじゅう の動機 どうき についてのどんな歴史 れきし 的 てき な証拠 しょうこ もない。ただ、インド・アーリア語 ご における性 せい 区分 くぶん は、7~10世紀 せいき ごろにかけて3つ(男性 だんせい 形 がた ・女性 じょせい 形 がた ・中性 ちゅうせい 形 がた )から2つ(男性 だんせい 形 がた ・女性 じょせい 形 がた )へと変化 へんか していることから、ロマ語 ご はこのころにサンスクリット などの影響 えいきょう を受 う けたと考 かんが えられ、ロマの祖先 そせん がインド亜 あ 大陸 たいりく から出 で たのは10世紀 せいき ごろと推測 すいそく される。 南 みなみ アジアからの出発 しゅっぱつ の後 のち 、狭 せま い範囲 はんい のクルド語 ご とアルメニア語 ご 、比較的 ひかくてき 長期 ちょうき に滞在 たいざい していたトルコのアナトリア 地方 ちほう の言語 げんご や、ギリシャ語 ご の影響 えいきょう が認 みと められている。
13世紀 せいき の前半 ぜんはん に始 はじ まるモンゴル人 じん の欧州 おうしゅう 侵入 しんにゅう は西方 せいほう 移住 いじゅう の引 ひ き金 がね となった。ロマ人 じん はその後 ご 、欧州 おうしゅう の広 ひろ い範囲 はんい に離散 りさん し、点在 てんざい しているロマのグループは地方 ちほう の共同 きょうどう 体 たい の分化 ぶんか が発生 はっせい し、それは多 おお くの異 こと なった方言 ほうげん に分 わ かれた現代 げんだい のロマ語 ご に大 おお いに影響 えいきょう した。
今日 きょう 、ロマ語 ご は42の欧州 おうしゅう 諸国 しょこく で小 しょう 集団 しゅうだん によって話 はな されている。イギリスのマンチェスター大学 だいがく は、多 おお くが消滅 しょうめつ の危機 きき 下 か にあるロマ語 ご 方言 ほうげん の転写 てんしゃ プロジェクトに取 と り組 く んでいる。
広範囲 こうはんい を流浪 るろう していた頃 ころ から、ロマは占 うらな い・行商 ぎょうしょう などを生業 せいぎょう とする上 じょう で、様々 さまざま な国 くに の言葉 ことば を話 はな せる必要 ひつよう があり、ロマ語 ご だけで生活 せいかつ する者 もの は稀有 けう だった。しかし、昨今 さっこん では定住 ていじゅう するロマが増 ふ えたことに加 くわ え、テレビ・ラジオの普及 ふきゅう のため、ロマ語 ご 話者 わしゃ の減少 げんしょう ・高齢 こうれい 化 か と、ロマ語 ご と接触 せっしょく 言語 げんご との混合 こんごう が進 すす んでいる。
その一 いち 例 れい として、イギリスのジプシーに話 はな されているアングロ・ロマニー語 ご (英語 えいご 版 ばん ) があげられる。これは英語 えいご の影響 えいきょう が著 いちじる しく、以下 いか のように話 はな される。
You're jessing to the buriker to fetch moro. (You are going to the shop to fetch bread.)
Mandi can year the bavel in the ruckers. (I can hear the wind in the trees.)
アングロ・ロマニー語 ご では名詞 めいし 、代名詞 だいめいし の性 せい や格 かく が消失 しょうしつ し、複数 ふくすう ・所有 しょゆう を表 あらわ す英語 えいご の-sが用 もち いられており、もはや語彙 ごい 程度 ていど でしかロマ語 ご の原型 げんけい を留 と めていない。
現在 げんざい 、ロマ語 ご の標準 ひょうじゅん 化 か に向 む けてルーマニア 、セルビア 、アメリカおよびスウェーデンのグループが動 うご いている。
セルビア ではロマ語 ご の標準 ひょうじゅん 形 がた が用 もち いられている。同国 どうこく のヴォイヴォディナ自治 じち 州 しゅう ではロマ語 ご が州 しゅう 公認 こうにん の少数 しょうすう 言語 げんご のひとつとされており、ロマ語 ご を用 もち いるラジオ局 きょく や報道 ほうどう 機関 きかん が存在 そんざい している。
確認 かくにん されている限 かぎ り最 もっと も多 おお くのロマ人口 じんこう を抱 かか えているルーマニア においては、国内 こくない で話 はな されている全 あきら 方言 ほうげん を包括 ほうかつ 的 てき に扱 あつか うための統一 とういつ 化 か された教育 きょういく システムとして後述 こうじゅつ のゲオルゲ・サラウ (英語 えいご 版 ばん ) による標準 ひょうじゅん ロマ語 ご が採用 さいよう され、高等 こうとう 教育 きょういく のみならず初等 しょとう 教育 きょういく の場 ば においてもロマ語 ご 教育 きょういく やロマ語 ご を用 もち いた各 かく 教科 きょうか の教育 きょういく が行 おこな われている。
また、スペインやイギリス などにおいては、既 すで にロマ語 ご を話 はな さなくなっていたロマ集団 しゅうだん がロマ語 ご 復活 ふっかつ を行 おこな おうとする中 なか で標準 ひょうじゅん 化 か 運動 うんどう が進 すす められている。これらの場合 ばあい においては特定 とくてい の方言 ほうげん の復活 ふっかつ という形 かたち ではなく様々 さまざま な方言 ほうげん を基 もと にした標準 ひょうじゅん 語 ご の構築 こうちく が指向 しこう されている。スペインの政治 せいじ 家 か フアン・デ・ディオス・ラミレス・エレディア (英語 えいご 版 ばん ) はスペイン系 けい ロマの伝統 でんとう と他 た 地域 ちいき のロマ達 たち との間 あいだ の相互 そうご コミュニケーションの双方 そうほう を念頭 ねんとう に置 お き、標準 ひょうじゅん ロマニ語 ご に現在 げんざい 話 はな されているカロー語 ご (英語 えいご 版 ばん ) の単語 たんご を組 く み込 こ んだロマノ・カローの普及 ふきゅう を推進 すいしん している[ 7] 。
このように様々 さまざま な「国際 こくさい 的 てき な」標準 ひょうじゅん 化 か 運動 うんどう が行 おこな われているものの、現状 げんじょう としては標準 ひょうじゅん 語 ご の使用 しよう よりむしろそれぞれの方言 ほうげん 固有 こゆう の表記 ひょうき 方法 ほうほう や語彙 ごい を用 もち いた文章 ぶんしょう 化 か の方 ほう が一般 いっぱん 的 てき に行 おこな われている。
国際 こくさい 的 てき な標準 ひょうじゅん 語 ご が制定 せいてい されれば他国 たこく で執筆 しっぴつ されたロマ語 ご の文章 ぶんしょう の読解 どっかい も容易 ようい になるものの、ロマの各 かく コミュニティ間 あいだ の足並 あしな みのバラつき、そしてロマにとって中央 ちゅうおう 政権 せいけん と呼 よ べる存在 そんざい がない事 こと などによって実現 じつげん には至 いた っていない。ただし、言語 げんご 的 てき な多元 たげん 性 せい という点 てん については欧州 おうしゅう 評議 ひょうぎ 会 かい ロマ代表 だいひょう である欧州 おうしゅう ロマ・トラヴェラーズ・フォーラムがホームページ上 じょう で方針 ほうしん のひとつとして記載 きさい している他 ほか 、故 こ ミレナ・ヒュプシュマンノヴァー (英語 えいご 版 ばん ) やディーター・W・ハルヴァクス 、ヤーロン・マトラス (英語 えいご 版 ばん ) といった主要 しゅよう なロマ語 ご 専 せん 門 もん の言語 げんご 学者 がくしゃ からも支持 しじ されている。オンラインロマ語 ご 辞典 じてん のRomLexでは一貫 いっかん 性 せい のある統一 とういつ された表記 ひょうき 法 ほう が用 もち いられつつも各 かく 方言 ほうげん 特有 とくゆう の表現 ひょうげん を取 と り入 い れるという形 かたち で多元 たげん 性 せい を認 みと めている。
ゲオルゲ・サラウによる主 あるじ として東 ひがし ヨーロッパ のロマ語 ご 方言 ほうげん に基 もと づいた標準 ひょうじゅん ロマ語 ご は、アナトリア半島 はんとう において形成 けいせい された頃 ころ の古 ふる いロマ語 ご をモデルとして語彙 ごい や文法 ぶんぽう 要素 ようそ を選択 せんたく した、純化 じゅんか されたやや規範 きはん 的 てき なもの となっている。
発音 はつおん は各 かく 方言 ほうげん の基層 きそう 言語 げんご 由来 ゆらい のものに最 もっと も近 ちか い[訳語 やくご 疑問 ぎもん 点 てん ] 。各 かく 方言 ほうげん で様々 さまざま な方言 ほうげん 変種 へんしゅ のあるような場合 ばあい は、最 もっと も古形 こけい に近 ちか い変種 へんしゅ が採用 さいよう されている。例 れい として、byav(異形 いぎょう として abyav、abyau など)、akana(異形 いぎょう として akanak など)、shunav(異形 いぎょう として ashunav、ashunau など)といったものが挙 あ げられる。
また、既 すで に用 もち いられている語彙 ごい をもとにした新語 しんご の創出 そうしゅつ にも取 と り組 く まれている。このような新語 しんご の例 れい としては xuryavno (飛行機 ひこうき )、vortorin (計算尺 けいさんじゃく )、palpaledikhipnasko (遡及 そきゅう 的 てき に)、pashnavi (形容詞 けいようし )が挙 あ げられる。ルーマニア語 ご 由来 ゆらい の vremea (天気 てんき 、時間 じかん )、primariya (市庁舎 しちょうしゃ )、frishka (クリーム)、sfinto (聖 せい なる)などといった借用 しゃくよう 語 ご についても絶 た えず改定 かいてい が行 おこな われている。完全 かんぜん な造語 ぞうご はヒンディー語 ご から bijli (電気 でんき 、電球 でんきゅう )、misal (例 れい )、chitro (絵画 かいが 、デザイン)、lekhipen (筆記 ひっき )などが、また英語 えいご から printisarel 、prezidento などが創出 そうしゅつ されている。
歴史 れきし 的 てき にはロマ語 ご は文字 もじ を持 も たない言語 げんご である[ 8] 。近年 きんねん に書 か かれた学問 がくもん 的 てき ・大衆 たいしゅう 的 てき ロマ語 ご 文学 ぶんがく の圧倒的 あっとうてき 大 だい 多数 たすう は、ラテン語 らてんご を基 もと にした文字 もじ を用 もち いている[ 9] 。
ロマ語 ご のアルファベットを統一 とういつ しようという試 こころ みは過去 かこ にあったが、ある一 ひと つの方言 ほうげん を選択 せんたく する方法 ほうほう にしろ、複数 ふくすう の方言 ほうげん を融合 ゆうごう させる方法 ほうほう にしろ、ロマ語 ご の標準 ひょうじゅん 語 ご を定 さだ めることはできなかったため、アルファベットの統一 とういつ も叶 かな わなかった。
現在 げんざい では、それぞれの方言 ほうげん に固有 こゆう の表記 ひょうき 方法 ほうほう を認 みと めるのが主流 しゅりゅう の考 かんが え方 かた となっている[ 10] 。ネイティヴ話者 わしゃ が個々 ここ で筆記 ひっき する際 さい には、ルーマニア ではルーマニア語 ご 、ハンガリー ではハンガリー語 ご といった具合 ぐあい に、周辺 しゅうへん の主要 しゅよう 言語 げんご の記述 きじゅつ 方法 ほうほう を基礎 きそ とするのが最 もっと も一般 いっぱん 的 てき である。その場合 ばあい 、それぞれの国 くに の文字 もじ にロマ語 ご の発音 はつおん を反映 はんえい する特殊 とくしゅ なアルファベットを追加 ついか し、ロマ語 ご の発音 はつおん に近 ちか く表記 ひょうき される。
表記 ひょうき 差 さ の一 いち 例 れい を示 しめ すと、「ロマ語 ご 」という意味 いみ のフレーズである [romaɲi tʃʰib] は、各 かく 方言 ほうげん で以下 いか のように書 か かれる。
románi szib
románi čib
romani tschib
románi tschiwi
romani tšiw
romeni tšiv
romanitschub
rromani čhib
romani chib
rhomani chib
romaji šjib
一方 いっぽう で、ネイティヴ話者 わしゃ のネット上 じょう やE いー メールのやり取 と りでは、英語 えいご やチェコ語 ご 由来 ゆらい の正書法 せいしょほう が用 もち いられる傾向 けいこう も、現在 げんざい 確認 かくにん されている[ 9] 。
言語 げんご 学者 がくしゃ の間 あいだ では、パン・ヴラックス法 ほう (Pan-Vlax system)という表記 ひょうき 方法 ほうほう が支持 しじ されている [ 11] 。これはイアン・ハンコック によって提唱 ていしょう されたもので、以下 いか のように表記 ひょうき する。
Pan-Vlax systemにおけるロマ語 ご の文字 もじ
書記 しょき 素 もと
音素 おんそ
語 かたり 例 れい
表記 ひょうき 例 れい
語義 ごぎ (英語 えいご )
和訳 わやく
A a
/a/
akana
now
現在 げんざい
B b
/b/
barvalo
rich
裕福 ゆうふく な
C c
/ts/
cìrdel
he pulls
彼 かれ が引 ひ く
Č č
/tʃ/
čačo
true
真実 しんじつ
Čh čh
/tʃʰ/
čhavo
boy
男 おとこ の子 こ
D d
/d/
dorjav
river
川 かわ
Dž dž
/dʒ/
džukel
dog
犬 いぬ
E e
/e/
ertimos
forgiveness
許 ゆる すこと
F f
/f/
foros
town
町 まち
G g
/ɡ/
gadže
non-Rom
ロマではない人 ひと
H h
/h/
harmasari
stallion
種馬 たねうま
I i
/i/
ičarel
he crushes
彼 かれ が踏 ふ みつぶす
J j
/j/
jag
fire
火 ひ
K k
/k/
kaj
where
どこで
Kh kh
/kʰ/
khamesko
sunny
太陽 たいよう
L l
/l/
lašo
good
良 よ い
M m
/m/
manuš
man
人 ひと
N n
/n/
nav
name
名前 なまえ
O o
/o/
oxto
eight
8
P p
/p/
pekel
he bakes
彼 かれ が焼 や く
Ph ph
/pʰ/
phabaj
apple
リンゴ
R r
/r/
rakli
girl
女 おんな の子 こ
S s
/s/
sunakaj
gold
金 きむ
Š š
/ʃ/
šukar
sweet/good/nice
甘 あま い、良 よ い
T t
/t/
taxtaj
cup
カップ
Th th
/tʰ/
them
land
陸 りく
U u
/u/
uš
lip
唇 くちびる
V v
/ʋ/
voro
cousin
いとこ
X x
/x/
xarano
wise
賢 かしこ い
Z z
/z/
zèleno
green
緑 みどり
Ž ž
/ʒ/
žoja
Thursday
木曜日 もくようび
これとは別 べつ に、1990年 ねん の第 だい 4回 かい 世界 せかい ロマ会議 かいぎ (英語 えいご 版 ばん ) にて制定 せいてい された世界 せかい 共通 きょうつう ロマ語 ご アルファベットも存在 そんざい する。こちらはフランスの言語 げんご 学者 がくしゃ マルセル・クーティアード (フランス語 ふらんすご 版 ばん ) によって考案 こうあん されたもので、基本 きほん は上記 じょうき のパン・ヴラックス法 ほう に近 ちか いものの、子音 しいん 字 じ に添 そ えるダイアクリティカルマーク としてハーチェク ではなくアキュート・アクセント を採用 さいよう している点 てん 、格 かく 変化 へんか を形態 けいたい 音韻 おんいん 論 ろん 的 てき に表記 ひょうき するための専用 せんよう の文字 もじ を整備 せいび している点 てん 、および各 かく 方言 ほうげん における口蓋 こうがい 化 か の度合 どあ いの違 ちが いによって生 しょう じる発音 はつおん の差 さ をある程度 ていど 織 お り込 こ んだものとなっている点 てん が特徴 とくちょう となっている。
この世界 せかい 共通 きょうつう ロマ語 ご アルファベットは一 いち 定数 ていすう の刊行 かんこう 物 ぶつ において使用 しよう がなされているものの、未 いま だ広 ひろ く受 う け入 い れられているとは言 い えない状況 じょうきょう にある。要因 よういん の一 ひと つとして、ヨーロッパのどの言語 げんご のキーボード配列 はいれつ でも標準 ひょうじゅん 的 てき には配置 はいち されていないような文字 もじ が多数 たすう 含 ふく まれておりコンピューターでの入力 にゅうりょく が容易 ようい ではないからではないか、という指摘 してき も存在 そんざい する[ 13] 。
ロマ語 ご の音声 おんせい システムはヨーロッパの言語 げんご の間 あいだ ではそれほど珍 めずら しくない。 最 もっと も特徴 とくちょう 的 てき なのは有声音 ゆうせいおん ・無声音 むせいおん ・有 ゆう 気 き 閉鎖 へいさ 音 おん の3つの対比 たいひ がみられる点 てん で、 p t k č や b d g dž、ph th kh čh が挙 あ げられる[ 14] 。また、ř 発音 はつおん を持 も つ方言 ほうげん では、口蓋垂 こうがいすい 音 おん [ʀ] や歯 は 長 ちょう 茎 くき ふるえ音 おん [r:] 、そり舌 した 音 おん [ɽ] または [ɻ] で発音 はつおん される[ 14] 。
以下 いか の表 ひょう はロマ語 ご の主 おも な音 おと を示 しめ す。音素 おんそ や挿入 そうにゅう 語句 ごく はそれぞれの方言 ほうげん によって異 こと なる。
東 ひがし ヨーロッパ、東南 とうなん ヨーロッパのロマ語 ご 方言 ほうげん は一般 いっぱん に口蓋 こうがい 音 おん 化 か した子音 しいん を持 も つ[ 14] 。 中 ちゅう 舌 した 母音 ぼいん ə やɨ を持 も つ方言 ほうげん もある[ 14] 。長 ちょう 母音 ぼいん はしばしば西 にし ヨーロッパのロマ語 ご 方言 ほうげん に見 み られる[ 14] 。接触 せっしょく 言語 げんご からの借用 しゃくよう 語 ご には、よく母語 ぼご にない他 ほか の音素 おんそ も含 ふく まれている[ 14] 。
ロマ語 ご の中 なか でも保守 ほしゅ 的 てき な方言 ほうげん は、一部 いちぶ の接辞 せつじ で例外 れいがい もみられるが、語末 ごまつ の強 つよ 勢 ぜい を保 たも っている(例 たと えば、名詞 めいし の対格 たいかく を伴 ともな った呼 よび 格 かく の語尾 ごび や格 かく 語尾 ごび や、遠 とお い時制 じせい は例外 れいがい となる)[ 14] 。 中央 ちゅうおう ヨーロッパ及 およ び西 にし ヨーロッパの方言 ほうげん には、強 つよ 勢 ぜい が語 かたり のより前方 ぜんぽう に移 うつ ったものが多 おお い[ 14] 。
語末 ごまつ においては、有 ゆう 声 ごえ 子音 しいん は無声 むせい 化 か し、気 き 音 おん は無 む 気 き 音 おん 化 か する。 しかし以下 いか の表 ひょう のように、表記 ひょうき 上 じょう は有声音 ゆうせいおん ・気 き 音 おん がそのまま保 たも たれる。
表記 ひょうき
発音 はつおん
意味 いみ
gad
[gat]
シャツ(単数 たんすう )
gada
[gada]
シャツ(複数 ふくすう )
ačh !
[at͡ʃ]
止 と まれ!(呼 よび 格 かく )
ačhel
[at͡ʃʰel]
(三人称 さんにんしょう 単数 たんすう に対 たい して)止 と まれ!
ロマ語 ご は他 た の近代 きんだい インド語 ご と比較 ひかく して、古風 こふう な音韻 おんいん 特徴 とくちょう がみられる。例 たと えば、サンスクリット語 ご の mṛta 「死 し んだ」は、ヒンディー語 ご で mua というが、ロマ語 ご では mulo となり、語 かたり 中 ちゅう の r を保持 ほじ している。また、サンスクリット語 ご の tri- 「3」はヒンディー語 ご で tin というのに対 たい して、ロマ語 ご は trin であり、語頭 ごとう の tr- が保 たも たれている。ほとんどのインド語 ご 群 ぐん では s/ś/ș の区別 くべつ がなくなり一 ひと つに統合 とうごう されているが、アルメニア方言 ほうげん を除 のぞ いたロマ語 ご では s/š の2種 しゅ が残 のこ っている。
男性 だんせい 名詞 めいし ・女性 じょせい 名詞 めいし 、単数 たんすう と複数 ふくすう の区別 くべつ がある。また、語順 ごじゅん はVOS。
有 ゆう 生物 せいぶつ と無生物 むせいぶつ で対格 たいかく の変化 へんか が異 こと なる[ 17] [信頼 しんらい 性 せい 要 よう 検証 けんしょう ] 。例 たと えば、rakló 「少年 しょうねん 」の対格 たいかく は raklés と変化 へんか するが、manřó 「パン」の対格 たいかく は主格 しゅかく と変 か わらない。
rakló「少年 しょうねん 」の格 かく 変化 へんか
格 かく
単数 たんすう
複数 ふくすう
主格 しゅかく
rakl-o
rakl-e
対格 たいかく
rakl-es
rakl-en
与格 よかく
rakl-es-ke
rakl-en-ge
奪 だつ 格 かく
rakl-es-tar
rakl-en-dar
位 い 格 かく
rakl-es-te
rakl-en-de
具 ぐ 格 かく
rakl-es(s)a
rakl-en-ca
属 ぞく 格 かく
rakl-es-ko(ro)
rakl-en-go(ro)
呼 よび 格 かく
rakl-éja!
rakl-ále(n)!
単数 たんすう の格 かく 語尾 ごび と複数 ふくすう の格 かく 語尾 ごび が同 おな じであることは、形態 けいたい 法 ほう の膠着 こうちゃく 性 せい を示 しめ しており、ハンガリー語 ご やベンガル語 ご 、パンジャブ語 ご にも同様 どうよう にみられる。
語形 ごけい 変化 へんか のパラダイムで特徴 とくちょう 的 てき なのは、原形 げんけい となる語形 ごけい 変化 へんか が主格 しゅかく と対格 たいかく の二 ふた つからなり、それ以外 いがい の斜 はす 格 かく は対格 たいかく 形 がた をベースにしてさらにその上 うえ に語尾 ごび を付加 ふか した形 かたち になることである[ 19] [信頼 しんらい 性 せい 要 よう 検証 けんしょう ] 。無生物 むせいぶつ の場合 ばあい は主格 しゅかく と対格 たいかく が同形 どうけい になるが、対格 たいかく 以外 いがい の斜 はす 格 かく では生物 せいぶつ の対格 たいかく で使 つか われている形態素 けいたいそ 、例 たと えばこの例 れい で付加 ふか されている -es が急 きゅう に現 あらわ れる。パラダイムが二 に 重 じゅう 構造 こうぞう をしていることになる。単数 たんすう 形 がた では次 つぎ のようになる。
男性 だんせい 名詞 めいし の格 かく 変化 へんか [ 20]
生物 せいぶつ 「人間 にんげん 」
無生物 むせいぶつ 「家 いえ 」
主格 しゅかく
rom
kher
対格 たいかく
rom-es
kher
呼 よび 格 かく
rom-a
-
与格 よかく
rom-es-ke
kher-es-ke
奪 だつ 格 かく
rom-es-tar
kher-es-tar
具 ぐ 格 かく
rom-es-ar
kher-es-ar
処 しょ 格 かく
rom-es-te
kher-es-te
属 ぞく 格 かく
rom-es-koro
kher-es-koro
女性 じょせい 名詞 めいし の格 かく 変化 へんか [ 21] [信頼 しんらい 性 せい 要 よう 検証 けんしょう ]
生物 せいぶつ 「妹 いもうと または姉 あね 」
無生物 むせいぶつ 「ワイン」
主格 しゅかく
phen
mol
対格 たいかく
phen-ja
mol
呼 よび 格 かく
phen-e
-
与格 よかく
phen-ja-ke
mol-ja-ke
奪 だつ 格 かく
phen-ja-tar
mol-ja-tar
具 ぐ 格 かく
phen-ja-ar
mol-ja-ar
処 しょ 格 かく
phen-ja-te
mol-ja-te
属 ぞく 格 かく
phen-ja-koro
mol-ja-koro
呼 よび 格 かく を格 かく 変化 へんか パラダイムとして保持 ほじ している点 てん も注目 ちゅうもく に値 あたい する。
不定 ふてい 法 ほう の消失 しょうしつ があげられる。I want to eat. のような表現 ひょうげん は I want that I eat. のように表現 ひょうげん される。これはバルカン語法 ごほう と呼 よ ばれる。バルカン語法 ごほう は現代 げんだい ギリシア語 ご が起源 きげん とされ、アルバニア語 ご 、ブルガリア語 ご 、ルーマニア語 ご にも普及 ふきゅう している。
ヨーロッパの各 かく 言語 げんご にみられる普遍 ふへん 的 てき な内容 ないよう のものが多 おお く含 ふく まれるが、なかにはロマの流浪 るろう 生活 せいかつ ・気質 きしつ が表 おもて われた独特 どくとく なことわざもある。以下 いか に例 れい を挙 あ げる。
Barval'ipé lovénca, čoror'ipé g'il'énca. 「豊 ゆた かな者 もの はお金 かね で暮 く らし、貧 まず しい者 もの は歌 うた で暮 く らす。」
E b'ída god'í b'iyanéla. 「不幸 ふこう は知性 ちせい を呼 よ び覚 さ ます。」
I tarni romni har i rosa. I puri romni har i džamba. 「若 わか い女 おんな はバラのようだ。年老 としお いた女 おんな はヒキガエルのようだ。」
Pen či glan o gadžende, te pene o čačepen rakre romanes. 「白人 はくじん の前 まえ では何 なに も言 い わず、真実 しんじつ をいうときはロマ語 ご で言 い いなさい。」
Paši mōl pennēna čačepen. 「ワインを飲 の むと人 ひと は真実 しんじつ を語 かた る。 」
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^ “88.生物 せいぶつ と無生物 むせいぶつ のあいだ ”. アルザスのこちら側 がわ . 2022年 ねん 9月 がつ 10日 とおか 閲覧 えつらん 。