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交響曲第94番 (ハイドン) - Wikipedia
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交響こうきょう曲きょく第だい94番ばん (ハイドン)

ハイドン作曲さっきょくの交響曲こうきょうきょく

交響こうきょう曲きょく第だい94番ばん ト長調とちょうちょう Hob. I:94 は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが作曲さっきょくした交響曲こうきょうきょく。イギリス訪問ほうもん時じのロンドンで作曲さっきょくされた、いわゆる『ロンドン交響曲こうきょうきょく』のうちの1曲きょくであり、『驚愕きょうがく』（または『びっくり』、英えい: The Surprise, 独どく: Mit dem Paukenschlag）の愛称あいしょうで知しられている。

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HAYDN Symphony No.94, 'Surprise' - Case Scaglione指揮しきデトロイト交響こうきょう楽団がくだんによる演奏えんそう。デトロイト交響こうきょう楽団がくだん公式こうしきWebサイト（DSO Replay Browse Video Categories）より。
Haydn’s Surprise Symphony[注ちゅう 1] - エリアス・グランディ指揮しきカタール・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だんによる演奏えんそう。カタール・フィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だん公式こうしきYouTube。
F. J. ハイドン：交響こうきょう曲きょく 第だい94番ばん ト長調とちょうちょう「驚愕きょうがく」 - デリック・イノウエ指揮しきによる演奏えんそう《エリザベト音楽大学えりざべとおんがくだいがく第だい74回かい定期ていき演奏えんそう会かい（2014年ねん10月がつ12日にち）より》。エリザベト音楽大学えりざべとおんがくだいがく公式こうしきYouTube。
第だい1楽章がくしょう アダージョ・カンタービレ – ヴィヴァーチェ・アッサイ
第だい2楽章がくしょう アンダンテ
第だい3楽章がくしょう メヌエット：アレグロ・モルト - トリオ
第だい4楽章がくしょう フィナーレ：アレグロ・モルト
指揮しき：セルゲイ・クーセヴィツキー
演奏えんそう：ボストン交響こうきょう楽団がくだん
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概要がいよう 編集へんしゅう

ハイドンが長年ながねん楽長がくちょうとして仕つかえてきたエステルハージ侯こうの死去しきょに伴ともなって、同どう侯ほう家かを去さることになってから2度どにわたって経験けいけんしたロンドン旅行りょこうの1回かい目めの滞在たいざい期間きかん中ちゅうにあたる1791年ねんに作曲さっきょくされている[1][2]。前記ぜんき「2度どにわたるロンドン滞在たいざい」で書かき上あげた『ロンドン交響曲こうきょうきょく』（ザロモン・セット）のうちの1曲きょくに数かぞえられると共ともに、ハイドンが遺のこした全ぜん作品さくひんの中なかでも最もっとも有名ゆうめいな作品さくひんの一ひとつにも数かぞえられる[3][4][5][6]。

ロンドン滞在たいざい1回かい目めの期間きかん中ちゅうにあたる1792年ねん3月23日にちに初演しょえんされている[1][4]。

作曲さっきょくの経緯けいい 編集へんしゅう

ハンガリー系けい貴族きぞくのニコラウス・エステルハージ侯爵こうしゃくに長ながらく仕つかえ、同どう候こう家かお抱かかえの楽団がくだんの楽長がくちょうとして食卓しょくたく向むけの音楽おんがくを作つくるなど創作そうさく活動かつどうを行おこなってきたハイドンであったが、1790年ねんにニコラウス・エステルハージ侯爵こうしゃくが死去しきょすることで転機てんきを迎むかえることとなった。その後ごを継ついだアントン・エステルハージ侯爵こうしゃくは父親ちちおやの音楽おんがく愛好あいこうを受うけ継つがずにお抱かかえの楽団がくだんを解散かいさんしてしまい、この結果けっかとして肩書かたがきだけの楽長がくちょうと化かしたハイドンは同どう侯ほう家かを去さり、自由じゆうな立場たちばの音楽家おんがくかとしてウィーンに赴おもむいた[1][4][7]。

そのウィーンでは、ハイドンの噂うわさを聞ききつけて赴おもむいてきたボン出身しゅっしんのヴァイオリニストで興行こうぎょう主ぬしとしても知しられるヨハン・ペーター・ザーロモンと出会であった。ハイドンはそこでザーロモンから、ロンドンに渡わたってザーロモン自身じしんが主催しゅさいする演奏えんそう会かいのため作曲さっきょくして欲ほしい、との依頼いらいを受うけた。破格はかくの待遇たいぐう内容ないようも併あわせて提示ていじされたハイドンはザロモンからの依頼いらいを引ひき受うけ、1791年ねんから92年ねんにかけて、および1794年ねんから1795年ねんにかけての2度どにわたってロンドンに渡航とこう・滞在たいざいし、のちに「ロンドン交響曲こうきょうきょく」（ザロモン・セット）と総称そうしょうされることになる計けい12曲きょくの交響曲こうきょうきょくを書かき上あげることとなった。当とう楽曲がっきょくもこれら全ぜん12曲きょくの交響こうきょう曲きょくに包含ほうがんされるものの一ひとつとして、ロンドン旅行りょこう1回かい目めの滞在たいざい期間きかん初年しょねんにあたる1791年ねんに作曲さっきょくされ、翌よく1792年ねん3月がつにロンドンに於おいて初演しょえんされるに至いたる[4][2][7]。

愛称あいしょうの由来ゆらい 編集へんしゅう

当とう楽曲がっきょくに付与ふよされている『驚愕きょうがく』という愛称あいしょうは、第だい2楽章がくしょう冒頭ぼうとうの主題しゅだいが最さい弱音よわねにて2度ど繰くり返かえし演奏えんそうされた後のちの16小節しょうせつ目めに於おいてティンパニを伴ともなったトゥッティで不意打ふいうちを食くらわせるが如ごとくに強つよく演奏えんそうするところから名付なづけられたもので、作曲さっきょく者しゃ自身じしんが命名めいめいしたのではなく、初演しょえんから間あいだもなくして初演しょえん地ちのロンドンで発行はっこうされた新聞しんぶん紙上しじょうに掲載けいさいされた演奏えんそう評ひょうに由来ゆらいする[3]。

こうした作曲さっきょくの仕方しかたを採とった背景はいけいとして、ハイドン自身じしんが1度目どめのロンドン滞在たいざい中ちゅうに目まの当あたりにした聴衆ちょうしゅうのマナーの悪わるさがあったとされている。当時とうじ、聴衆ちょうしゅうの中なかに居眠いねむりをする者ものが少すくなからず存在そんざいしていた。このことに癪しゃくに障さわる思おもいを抱だいていたハイドンは、持もち前まえのユーモアさなどを活いかし、当とう楽曲がっきょくの作曲さっきょくを通つうじて聴衆ちょうしゅうをたたき起おこそうと行動こうどうを起おこしたのである。そして実際じっさいの演奏えんそうの場ばで、前記ぜんき第だい2楽章がくしょうの強つよ奏そう箇所かしょのところでハイドンはティンパニ奏者そうしゃに対たいし力一杯ちからいっぱい叩たたくよう指示しじ、果はたして狙ねらい通どおりに聴衆ちょうしゅうがビックリして飛とび上あがったという[8][9]。

もっとも、このことに関かんしては、音楽おんがくジャーナリストの飯尾いいお洋一よういちが、主題しゅだいを最さい弱音よわねで一いち通とおり演奏えんそうした後のちに唐突とうとつな強つよ奏そうをすることで驚おどろかせるという趣向しゅこう自体じたいは使つかい古ふるされたジョークであり、むしろ最さい弱音よわねで演奏えんそうされる主題しゅだいこそが、茶目ちゃめっ気けがそのまま音おとになって表現ひょうげんされているかのようで可笑おかしい、という考かんがえ方かたを示しめしている[9]。

なお、愛称あいしょうの『驚愕きょうがく』自体じたいに関かんして、英語えいご表記ひょうきでは「The Surprise」と表あらわされる一方いっぽう、ドイツ語ご表記ひょうきでは「Mit dem Paukenschlag」と表あらわされる。直訳ちょくやくすると「ティンパニの打だ奏そうを伴ともなった」という意味いみになる[4]。

楽器がっき編成へんせい 編集へんしゅう

編成へんせい表ひょう
木管もっかん 金管きんかん 打だ 弦つる
フルート 2 ホルン 2 ティンパニ ● 第だい1ヴァイオリン ●
オーボエ 2 トランペット 2 他た 第だい2ヴァイオリン ●
クラリネット 他た ヴィオラ ●
ファゴット 2 チェロ ●
他た コントラバス ●

曲きょくの構成こうせい 編集へんしゅう

全ぜん4楽章がくしょう、演奏えんそう時間じかんは約やく23分ふん[1]。

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第だい1楽章がくしょう Adagio - Vivace assai
  Sudeten Filharmonie - ダリウシュ・ミクルスキ指揮しき。指揮しき者しゃ自身じしんの公式こうしきYouTube。
  カペラ・イストロポリターナ - バリー・ワーズワース指揮しき。ナクソス公式こうしきYouTube。
ト長調とちょうちょう、4分ぶんの3拍子ひょうし - 8分ぶんの6拍子ひょうし、ソナタ形式けいしき。
（譜ふ例れい1）
 
（譜ふ例れい2）
 
4分ぶんの3拍子ひょうしによるアダージョ・カンタービレの序奏じょそう部ぶ（譜ふ例れい1）と、8分ぶんの6拍子ひょうしによるヴィヴァーチェ・アッサイの主部しゅぶ（譜ふ例れい2）からなる。第だい2主題しゅだいは旋律せんりつ的てき性格せいかくが薄うすいもので、シンコペーションによるリズムに走はし句風くふうのパッセージが乗のる形かたちをとる。コデッタ主題しゅだいは対位法たいいほう的てき楽想がくそうによるもの。
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第だい2楽章がくしょう Andante
  Sudeten Filharmonie - ダリウシュ・ミクルスキ指揮しき。指揮しき者しゃ自身じしんの公式こうしきYouTube。
  カペラ・イストロポリターナ - バリー・ワーズワース指揮しき。ナクソス公式こうしきYouTube。
ハ長調ちょうちょう、4分ぶんの2拍子ひょうし、変奏曲へんそうきょく形式けいしき。
 
主題しゅだいと4つの変奏へんそうからなる。有名ゆうめいな主要しゅよう主題しゅだいが   で反復はんぷくされると、突如とつじょ   による全ぜん合奏がっそうで「驚愕きょうがく音おん」が鳴ならされる。第だい2変奏へんそうはハ短調たんちょうで、後半こうはんは   で劇的げきてきに進行しんこうする。第だい3変奏へんそうはオーボエやフルートの木管もっかんがメインになる。第だい4変奏へんそうではクライマックスが築きずかれ、コーダではオーボエとファゴットが主題しゅだいを奏かなでて静しずかに曲きょくが終おわる。
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第だい3楽章がくしょう
Menuetto. Allegro molto
  Sudeten Filharmonie - ダリウシュ・ミクルスキ指揮しき。指揮しき者しゃ自身じしんの公式こうしきYouTube。
  カペラ・イストロポリターナ - バリー・ワーズワース指揮しき。ナクソス公式こうしきYouTube。
ト長調とちょうちょう、4分ぶんの3拍子ひょうし、三さん部ぶ形式けいしき。
 
 
ハイドンのメヌエットとしては最もっとも速はやいテンポ表記ひょうきが与あたえられている。
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第だい4楽章がくしょう
Finale. Allegro di molto
  Sudeten Filharmonie - ダリウシュ・ミクルスキ指揮しき。指揮しき者しゃ自身じしんの公式こうしきYouTube。
  カペラ・イストロポリターナ - バリー・ワーズワース指揮しき。ナクソス公式こうしきYouTube。
ト長調とちょうちょう、4分ぶんの2拍子ひょうし、ロンドソナタ形式けいしき。
 
第だい2主題しゅだいは軽かろやかなリズムに乗のって奏そうされ、コデッタはやはり   フレーズである。展開てんかい部ぶは第だい1主題しゅだいで始はじまり、転調てんちょうを繰くり返かえして劇的げきてきに進行しんこうする。再ふたたび第だい1主題しゅだいが現あらわれると再現さいげん部ぶ。ト短調とたんちょうに転てんじた後のち、第だい2主題しゅだいの再現さいげんも型かたどおりに続つづき、第だい1主題しゅだいの動機どうきに基もとづく短みじかいコーダへなだれ込こんでゆく。

脚注きゃくちゅう 編集へんしゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく 編集へんしゅう

  1. ^ 当該とうがい演奏えんそう音源おんげん自体じたいは、2015年ねん5月がつ16日にちにKatara Opera Houseに於おいて開催かいさいされたカタール・フィル演奏えんそう会かいに於おける演奏えんそうの模様もようが全すべて収おさめられたものとなっている《総そう収録しゅうろく時間じかん「1時じ間あいだ17分ふん45秒びょう」》。当とう楽曲がっきょくは再生さいせい開始かいしから11分ふん32秒びょうあたりから演奏えんそう曲きょく表示ひょうじから始はじまり、続つづいて演奏えんそう風景ふうけいが映うつし出だされる。なお、当とう楽曲がっきょく演奏えんそうの前まえにはウェーバー作曲さっきょく『「魔ま弾だんの射手しゃしゅ」序曲じょきょく』が、当とう楽曲がっきょく演奏えんそうの後のちにはドヴォルザーク作曲さっきょく『交響こうきょう曲きょく第だい8番ばんト長調とちょうちょう』が、それぞれ演奏えんそうされている。

出典しゅってん 編集へんしゅう

  1. ^ a b c d 飯尾いいお洋一よういち（音楽おんがくジャーナリスト） (2015年ねん4月がつ). “Program notes（楽曲がっきょく紹介しょうかい）…「4月がつ4日にち（土ど）」・「4月がつ5日にち（日ひ）」” (PDF). 月刊げっかんオーケストラ・2015年ねん4月がつ号ごう. 読売よみうり日本にっぽん交響こうきょう楽団がくだん. 2018年ねん12月9日にち閲覧えつらん。 “→『月刊げっかんオーケストラ』ポータル（読響よみきょうWebサイト内ない）”
  2. ^ a b 白石しらいし美雪みゆき (2017年ねん7月がつ15日にち). “■ハイドン／交響こうきょう曲きょく第だい94番ばんト長調とちょうちょうHob.I：94「驚愕きょうがく」” (PDF). 定期ていき演奏えんそう会かい・音楽おんがく堂どうシリーズ第だい12回かい. 神奈川かながわフィルハーモニー管弦楽かんげんがく団だん. 2018年ねん12月9日にち閲覧えつらん。 “→「定期ていき演奏えんそう会かい・音楽おんがく堂どうシリーズ第だい12回かい」公演こうえん案内あんない”
  3. ^ a b “驚愕きょうがく交響こうきょう曲きょく（きょうがくこうきょうきょく）”. コトバンク. 朝日新聞社あさひしんぶんしゃ. 2018年ねん12月9日にち閲覧えつらん。
  4. ^ a b c d e 奥田おくだ佳けい道どう（音楽おんがく評論ひょうろん家か） (2014年ねん11月28日にち). “PROGRAM NOTE（曲目きょくもく解説かいせつ）” (PDF). 室内しつないオーケストラシリーズ19. 兵庫ひょうご芸術げいじゅつ文化ぶんかセンター管弦楽かんげんがく団だん. 2018年ねん12月9日にち閲覧えつらん。
  5. ^ “ハイドン：交響こうきょう曲きょく第だい94番ばん≪驚愕きょうがく≫、100番ばん≪軍隊ぐんたい≫、101番ばん≪時計とけい≫”. サー・コリン・デイヴィス（アーティスト個別こべつページ）. ユニバーサル・ミュージックジャパン（UNIVERSAL MUSIC JAPAN） (2005年ねん6月がつ22日にち). 2018年ねん12月9日にち閲覧えつらん。
  6. ^ “ハイドン：交響こうきょう曲きょく第だい94番ばん「驚愕きょうがく」・第だい101番ばん「時計とけい」”. CDJournal. 音楽おんがく出版しゅっぱん社しゃ (2007年ねん12月5日にち). 2018年ねん12月9日にち閲覧えつらん。
  7. ^ a b “ららら♪クラシック〜2014年ねん9月がつ13日にち（土ど）の放送ほうそう”. ららら♪クラシック. NHK (2014年ねん9月がつ13日にち). 2018年ねん12月9日にち閲覧えつらん。
  8. ^ “強つよ運うん&いたずら好すき? “交響こうきょう曲きょくの父ちち”ハイドン誕生たんじょう（1732〜1809）”. おんがく日ひめくり. ヤマハ. 2018年ねん12月9日にち閲覧えつらん。 ※ 現在げんざいはウェブアーカイブサイト「archive.is」内ないに残存ざんそん
  9. ^ a b 飯尾いいお洋一よういち（音楽おんがくジャーナリスト）. “【クラシック大全たいぜん】交響こうきょう曲きょくの10傑すぐる〜ハイドン”. CLASSICA JAPAN. 東北新社とうほくしんしゃ. 2018年ねん12月9日にち閲覧えつらん。

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