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フルート - Wikipedia

フルート

木管もっかん楽器がっきのひとつ

フルートは、木管もっかん楽器がっき一種いっしゅで、リード使つかわないエアリード簧)しき横笛よこぶえである[1][2]

フルート
かく言語げんごでの名称めいしょう
えい flute
どく Flöte, Querflöte
ふつ flûte, flûte traversière
flauto, flauto traverso
なか 长笛(簡体字かんたいじちょうふえ繁体字はんたいじ
フルート
分類ぶんるい
  • 木管もっかん楽器がっき - 簧開管楽器かんがっき - フルートぞく
  • 楽器がっき - 型付かたつき吹奏すいそう楽器がっき
    - すきみぞがたフルート - ひらきかん単式たんしきよこきフルート
音域おんいき

コンサート・フルートの音域おんいき
関連かんれん楽器がっき
演奏えんそうしゃ
関連かんれん項目こうもく

概要がいよう 編集へんしゅう

 
演奏えんそうかた
奏者そうしゃはロック・バンド、ジェスロ・タルイアン・アンダーソン

今日きょう一般いっぱんにフルートというと、銀色ぎんいろまたは金色きんいろ金属きんぞくせいつつ複雑ふくざつなキー装置そうちそなえた横笛よこぶえ、つまりコンサート・フルートをすが、ふるくはひろふえ一般いっぱんしていた。ルネサンス音楽おんがくからバロック音楽おんがく時代じだいにあっては、たんにフルートというと、現在げんざい一般いっぱんリコーダーばれるたてふえし、現在げんざいのフルートの直接ちょくせつ前身ぜんしん楽器がっきである横笛よこぶえは、「トラヴェルソ(横向よこむきの)」という修飾しゅうしょくけて「フラウト・トラヴェルソ」とばれていた[3]。17世紀せいき後半こうはんのフランス宮廷きゅうていで、ジャック=マルタン・オトテールとその一族いちぞく改良かいりょうした横笛よこぶえフルートがたか人気にんきはくし、そのドイツやイタリアにもひろまったため、表現ひょうげんりょくおとたてふえ次第しだいすたれてしまい、フルートといえば横笛よこぶえすようになったのである。かつてはもっぱらつくられていたにもかかわらず、現在げんざい金属きんぞくせい主流しゅりゅうとなっているが、フルートはくちびる振動しんどうもちいないエアリードしき楽器がっきなので、金属きんぞくでできていても木管もっかん楽器がっき分類ぶんるいされる[1]

現代げんだいのフルート(モダン・フルート)は、バス・フルートなどの同属どうぞく楽器がっき区別くべつする場合ばあい、グランド・フルートまたはコンサート・フルートともばれ、通常つうじょうCかんである。19世紀せいきなかばに、ドイツひとフルート奏者そうしゃ楽器がっき製作せいさくしゃでもあったテオバルト・ベームにより音響おんきょうがく理論りろんもとづいて大幅おおはば改良かいりょうされ[4]正確せいかく半音はんおんかいおおきな音量おんりょう精密せいみつ貴金属ききんぞくかんたい優美ゆうび外観がいかんつにいたった。このドイツまれのフルートは、最初さいしょフランスでその優秀ゆうしゅうせいみとめられ[5]、ついには旧式きゅうしきのフルートを世界せかいから駆逐くちくしてしまった。今日きょうたんにフルートとった場合ばあいは、例外れいがいなく「ベームしきフルート」のことである。

フルートはキーを右側みぎがわにしてかまえ、しもあご左手ひだりてひとさしゆび右手みぎて親指おやゆびささえる(さんてん支持しじ)。りょうかたむすせん平行へいこうつのではなく、右手みぎて左手ひだりてより下方かほう前方ぜんぽうばす。奏者そうしゃ正面しょうめんではなくややひだりき、みぎくびをかしげてくちびる歌口うたぐちてる。

発音はつおんにリードをもちいないため、ほかの管楽器かんがっきよりもタンギングの柔軟じゅうなんせいたかい。運動うんどう性能せいのう管楽器かんがっきなかではもっとたかく、かなり急速きゅうそくらくそうすることも可能かのうである。音量おんりょうちいさいほうであるが、こう音域おんいき倍音ばいおんすくなく明瞭めいりょうんだおとなので、オーケストラなかにあってもうずもれることなくこえてくる。フルートの音色ねいろとりごえ想起そうきさせることから、楽曲がっきょくちゅうとり模倣もほうとしてももちいられる。有名ゆうめいでわかりやすいれいとして、サン=サーンス組曲くみきょく動物どうぶつ謝肉祭しゃにくさい』の「おおきなとりかご」、プロコフィエフ交響こうきょうてき物語ものがたりピーターとおおかみ』などがげられる。

おもクラシック音楽おんがく分野ぶんやもちいられるが、ジャズロックなど、音楽おんがくジャンル使用しようされることもある。しかし、ジャズせんもんのフルート奏者そうしゃすくなく、サクソフォーンなどのプレイヤーがえるか、クラシックとジャズの両方りょうほう活動かつどうするというケースがおおい。

 
ベームしきフルート(インラインリングキィHあしかんき、Eメカニズムき)

歴史れきし 編集へんしゅう

古代こだい〜ルネサンス時代じだい 編集へんしゅう

 
東大寺とうだいじ八角はっかく灯籠どうろう
横笛よこぶえ菩薩ぼさつぞうえる。めんには尺八しゃくはちしょうどう鈸子そうする菩薩ぼさつぞうがある。(8世紀せいき

フルートを広義こうぎにとらえて、「リードもちいず、かんなどの空洞くうどうかっていきけて発音はつおんする楽器がっき」とするならば、もっとふるいものとしては、およそ4まんねんまえネアンデルタールじんのものと推定すいていされるアナグマるいあしほねつくられた「ふえ」がスロヴェニア洞窟どうくつ発見はっけんされている。また、ほぼおなころ現生げんなま人類じんるいによってつくられたと推定すいていされる、ハゲワシほねでできた5つのゆびあなのあるふえが、ドイツの洞窟どうくつ発見はっけんされている。それほどふるいものでなくともすうせんねんまえほねつくられたふえ各地かくちから出土しゅつどしており、博物館はくぶつかんなどにおさめられている。しかし、世界せかい各地かくちもちいられていた原始げんしてきふえは、ギリシャ神話しんわ牧神ぼくしんパンいたとされるパンフルートのようなあしなどでつくられたたてふえか、オカリナのような形状けいじょういしふえ(いわぶえ)やふえがほとんどであった。

それでは、現在げんざい我々われわれ使用しようしているフルートにつながる横向よこむきにかまえる方式ほうしきふえが、いつどこで最初さいしょもちいられたのかというと、これもたしかなことはわかっていないが、一説いっせつには紀元前きげんぜん9世紀せいきあるいはそれ以前いぜん中央ちゅうおうアジア発祥はっしょうしたといわれており、これがシルクロード中国ちゅうごくインドつたわり、さらに日本にっぽんヨーロッパにもつたえられていったとかんがえられている[5]奈良ならせいくらいん宝物ほうもつなか蛇紋じゃもんがんせい横笛よこぶえがあり[6]東大寺とうだいじ大仏殿だいぶつでん正面しょうめん国宝こくほう八角はっかく灯籠とうろうには横笛よこぶえ音声おんせい菩薩ぼさつ(おんじょうぼさつ)のぞうがある[7]ことなどから、奈良なら時代じだいまでに日本にっぽんにもつたわっていたことはあきらかである。

西洋せいようでは、現在げんざいリコーダーとばれているたてふえふるくからられており、当初とうしょはこちらが「フルート」とばれていた。12-13世紀せいきごろに東洋とうようから6あな横笛よこぶえはいり、たてふえ技術ぎじゅつ応用おうようしてつくられたものがおもににドイツ地方ちほう使つかわれ、「ドイツのふえ」とばれていた(ドイツでのは「スイスのふえ」)[8]13世紀せいきになるとフランスに、「フラウスト・トラヴェルセーヌ(フランス語ふらんすご: flauste traversaine;「横向よこむきのフルート」の)」といった名称めいしょう散見さんけんされるようになる[9]。ルネサンスはいっても、ヨーロッパでは横笛よこぶえはあまり一般いっぱんてき楽器がっきではなく、軍楽隊ぐんがくたい旅芸人たびげいにんなどが演奏えんそうするだけのものであった。16世紀せいきはいころから、市民しみんあいだおこなわれるコンソートばれる合奏がっそうなかで、横笛よこぶえ次第しだい使つかわれ、教科きょうか音楽おんがくでももちいられるようになった。ひだりオーストリアのローラウじょうハラッハ伯爵はくしゃくいえ所蔵しょぞうの『よろこびをあたえん』とだいする絵画かいが[5][10]横笛よこぶえリュート歌唱かしょうによるブロークン・コンソート様子ようすえがかれている。この横笛よこぶえテナーであるが、マルティン・アグリコラの「Musica instrumentalis deudsch」(1529)[11]にあるように、ほかにもソプラノアルトバスといった種類しゅるいがあり(ただし16世紀せいきなかばにはアルトはテナーに吸収きゅうしゅうされている)、これらをえながら演奏えんそうおこない、ホール・コンソートおこなわれていた。現在げんざいでは、このような横笛よこぶえを「ルネサンス・フルート」とんでおり[5]古楽こがくとしていま復元ふくげん楽器がっき製作せいさくされている。

 
ルネサンス・フルート(テナー、復元ふくげん楽器がっき

少数しょうすうイタリアヴェローナなどにのこっているオリジナルのものは、木製もくせいかんで、内面ないめん単純たんじゅん円筒えんとうかたちではなく、複雑ふくざつなみがたになっており、外面がいめん歌口うたぐちがわがややふと円錐えんすいかたちである。基本きほんてき一体いったい成型せいけいされて分割ぶんかつできないものがおおいが、大型おおがたのバス・フルートなどには2分割ぶんかつ構造こうぞうのものもある。テナーの横笛よこぶえ最低さいていおんはD4で、D-dur(長調ちょうちょう)の音階おんかいせるようにつくられており、いわゆるDかんである。トーンホールが6つひらいているだけのシンプルな構造こうぞうなので、キーをかなら右側みぎがわにしてかまえるモダン・フルートとはことなり、左側ひだりがわかまえることもできる。軽快けいかいによくるが、音域おんいきによって音量おんりょう音色ねいろがかなり変化へんかする[5]。アグリコラの著作ちょさくしるされたうんゆびほうでは半音はんおんゆびあな半開はんかいせるとしるされているが、通常つうじょう演奏えんそう半音はんおんすのはかなりむずかしい(内部ないぶ円筒えんとうがた復元ふくげん楽器がっきではなく、オリジナルのもの内径ないけい形状けいじょうによっては半音はんおん比較的ひかくてきしやすいものもある[12])。

バロック時代じだい 編集へんしゅう

17世紀せいき初頭しょとうからはじまったバロック時代じだい、ルネサンス・フルートはピッチ調節ちょうせつができないじょう半音はんおんすのが苦手にがてで、低音ていおん高音こうおん音色ねいろちがいがおおきいといった欠点けってんがあったため、この時代じだい隆盛りゅうせいはじめた宮廷きゅうてい音楽おんがくではもちいられなかった。17世紀せいき横笛よこぶえにとって雌伏しふく時代じだいであり、あらたな工夫くふうくわえられた横笛よこぶえあらためて人気にんきはくするのは、ジャック・オトテールとその一族いちぞくフランスでフルートを改良かいりょうしてひろめた1680年代ねんだい以降いこうのことである[5]

この時代じだいも、たんに「フルート」といえばたてふえ(リコーダー)のことであり、現在げんざいのフルートの原型げんけいとなった横笛よこぶえはイタリアで「フラウト・トラヴェルソフランス語ふらんすごで「フリュートトラヴェルシエール flute traversiere」、ドイツで「クヴェアフレーテ Querflote」すべて(横向よこむきのフルート」の)とばれていた[5][10]省略しょうりゃくしてたんに「トラヴェルソ」ともばれ、現代げんだいでは「バロック・フルート」とぶこともある。ソプラノからバスまでを使つかけたルネサンス・フルートとことなり、バロック・フルートのおおくは、テナーのDかんであり、つぎのようなてんがルネサンス・フルートとことなっている[5][13]

 
バロック・フルート(4分割ぶんかつがた復元ふくげん楽器がっき
上方かみがたはピッチのことなるかん
  • かんたいが3分割ぶんかつ、のちに4分割ぶんかつされており、結合けつごうししたりかん交換こうかんすることによって、ピッチの調節ちょうせつ可能かのうになった。
  • トーンホールは7つにえ、上流じょうりゅうがわの6つはルネサンス・フルートと同様どうようゆび直接ちょくせつふさぐ。最下さいかりゅうの1つはゆびとどかないので、右手みぎて小指こゆびすとあなひらくシーソーがたのキーがいており[ちゅう 1]、この形態けいたいから「1キー・フルート(1かぎしきフルート)」ともばれている[14]。このキーのおかげで、ルネサンス・フルートにはもっとしにくかった半音はんおんD#(E♭)が容易よういせるようになった[ちゅう 2]
  • かん内面ないめんはルネサンス・フルートのような円筒えんとうがたではなく、頭部とうぶかんからあしかんかって次第しだいほそくなる円錐えんすいがたになっている。これによって、ルネサンス・フルートのあかるく開放かいほう定期ていきなものから、ややこもったくらかんじに音色ねいろ変化へんかしたものの、低音ていおんから高音こうおんまで音色ねいろ統一とういつかん向上こうじょうした。アムステルダム木管もっかん楽器がっきせい作家さっかリチャード・ハッカ(1645ねん - 1705ねん)のつくった3分割ぶんかつフルートが、現存げんそんする最古さいこのバロック・フルートであるとされるが、この仕組しくみがいつころだれによって最初さいしょかんがされたのかはさだかではない[5]

こうした改良かいりょうによってたか表現ひょうげんりょくけた横笛よこぶえは、オトテールとその一族いちぞくつかえるルイ14せい王宮おうきゅう人気にんきて、次第しだいたてふえってわる存在そんざいとなっていった。フランス音楽おんがくれに積極せっきょくてきだったドイツの宮廷きゅうていではフランスのフルート奏者そうしゃこのんで雇用こようするようになり、そこからドイツじんのフルート奏者そうしゃそだっていった。その代表だいひょうれいザクセンせんみかどこう宮廷きゅうていつかえたフランスじんフルート奏者そうしゃピエール=ガブリエル・ビュファルダンと、ビュファルダンのすすめでフルートと奏者そうしゃとなったヨハン・ヨアヒム・クヴァンツである[5]

当時とうじのフルートは最低さいていおんはD4、さい高音こうおんはE6までというものが一般いっぱんてきであるが、B6までのうんゆびられており[14]、A6あたりまではしやすい楽器がっきもある。Dかんであるが、楽譜がくふじつおとされ、移調いちょう楽器がっきではない。多様たよう音色ねいろち、繊細せんさいゆたかな表現ひょうげん可能かのうであることから、バロック・フルートは今日きょうなお復元ふくげん楽器がっき多数たすう製作せいさくされている。

 
けん

しかし、キーがもうけられた半音はんおんしやすくなったものの、それ以外いがい半音はんおん相変あいかわらずクロスフィンガリングによって弱々よわよわしく不安定ふあんていおとなので、長調ちょうちょうについてかんがえると、けんでD-dur(ニ長調ちょうちょう)ととなうG-dur(ト長調とちょうちょう)とA-dur(イ長調いちょうちょう)は比較的ひかくてきおおきな音量おんりょう演奏えんそうできるが、ニ長調ちょうちょうからとお調ちょうきょくをバロック・フルートで演奏えんそうするのは容易よういなことではない[5]

古典こてん〜ロマン初期しょき 編集へんしゅう

18世紀せいきなかばから19世紀せいき前半ぜんはんにあたる古典こてん時代じだいになると、よりおおくの調しらべ対応たいおうできるよう、不安定ふあんてい半音はんおん改善かいぜんするためにあらたなトーンホールをもうけて、これを開閉かいへいするキーメカニズムをくわえたり、こう音域おんいきしやすいよう管内かんないみちほそくするといった改変かいへんおこなわれた。キーメカニズムをもちいて、Dかんのままではあるが最低さいていおんがC4までせるフルートもつくられるようになった[5]。これらの楽器がっきもフラウト・トラヴェルソにふくまれるが、バロック時代じだいの「バロック・フルート」と区別くべつして、「クラシカル・フルート」「ロマンチック・フルート」とぶこともある。この時代じだいになると、表現ひょうげんりょくおとたてふえ(リコーダー)はすたれてしまい、フルートといえば横笛よこぶえすようになった。

 
クラシカル・フルート (6キー、最低さいていおん D4)

キーが追加ついかされるにしたがって、クロスフィンガリングをもちいずにせる半音はんおんえていき、おとあかるさやかろやかさをしたが、対称たいしょうせいくずれたため、左側ひだりがわかまえることはできなくなった。かんたい相変あいかわらず円錐えんすいがた木製もくせいのものがおおく、さい高音こうおんはA6あたりであるが、なかにはC7付近ふきんまでるものもある。最低さいていおんがD4の6キー・フルート(みぎ)や、最低さいていおんがC4の8キー・フルートなどにはすべての半音はんおんすキーがそなわっているが、Esよりしたのキーをのぞいてすべて「常時じょうじ閉」であり、「必要ひつようなときだけける」方式ほうしきであった。

クロスフィンガリングが不要ふようになったのはおおきな進歩しんぽちがいないが、これらは当時とうじ楽器がっき製作せいさくしゃたちが、それぞれのかんがえにもとづいて改良かいりょうしていったため、操作そうさほう統一とういつされていないじょううんゆび複雑ふくざつとなって運動うんどう性能せいのういとはがたく、かならずしも十分じゅうぶん効果こうかられたわけではない。このようなキーのフルート(かぎしきフルート)はおも産業さんぎょう革命かくめいイギリス開発かいはつされたのであるが、イギリス以外いがいくにではバランスのわる不細工ぶさいく楽器がっきとみなす傾向けいこうつよく、1795ねん創設そうせつされたパリ音楽おんがくいんでは、初代しょだいフルート教授きょうじゅとなったフランソワ・ドゥヴィエンヌ1759ねん - 1803ねん)がくなるまで、1かぎしきフルート以外いがい使用しようみとめられなかった[5]

こうしたフルートらん開発かいはつ時代じだい終止符しゅうしふったのがテオバルト・ベームである。

ベームしきフルートの登場とうじょう 編集へんしゅう

1820ねんごろから活躍かつやくしていたイギリスじんフルート奏者そうしゃ C. ニコルソン(Charles Nicholson 1795ねん - 1837ねん)は、そのおおきさと卓越たくえつした技術ぎじゅつによって通常つうじょうよりもおおきなトーンホールの楽器がっき演奏えんそうしていた。ドイツじんフルート奏者そうしゃ製作せいさくしゃでもあったテオバルト・ベームは、1831ねんロンドンでニコルソンの演奏えんそういてその音量おんりょうおおきさに衝撃しょうげきけ、自身じしん楽器がっき本格ほんかくてき改良かいりょう着手ちゃくしゅした[4][5]

1832ねん発表はっぴょうされたモデルは以下いかのようなものである。

  • 半音はんおんすトーンホールもふくめてみちおおきくし、おおきなおとすことを可能かのうにした。
  • うんゆび変更へんこうされることになるのをいとわず、リングキーと精緻せいちなリンク機構きこう採用さいようして、1ほんゆび複数ふくすうのトーンホールを同時どうじ操作そうさできるようにし、そのうえかんたい構造こうぞうをCかんつくえた。このいわゆるベームしきメカニズムによって運動うんどう性能せいのう向上こうじょうするとともに、長大ちょうだいなレバーのないすっきりした外観がいかんとなった。(ただし、リングキー自体じたい1808ねんにフレデリック・ノランが開発かいはつしたものであり、キーメカニズムのポストの構造こうぞう1806ねんのクロード・ローランの発明はつめい応用おうようしたものである[5][10]。)
  • あたらしいキーメカニズムの開発かいはつたり、Esキーとトリルキーをのぞすべてのキーを「常時じょうじひらく」とし、「必要ひつようなときだけじる」方式ほうしき採用さいようした。これにより、演奏えんそうひらいているトーンホールがえて通気つうき改善かいぜんされ、音色ねいろ均質きんしつになるとともに、さらに音量おんりょう効果こうかられた[ちゅう 3]
 
円錐えんすいベームしきフルート(Gisクローズしき

このモデルはいわゆるGisオープンしきであったが、通気つうきそこなうことなくうんゆび容易よういになるGisクローズしき改変かいへんされたタイプがフランスでもちいられるようになった。かんたいはまだ木製もくせい円錐えんすいがたのままであったことから、今日きょうでは「円錐えんすい(コニカル)ベームしきフルート」などとばれている。

ベームはそのも、50さいぎてから大学だいがく音響おんきょうがくまなぶなど研究けんきゅうつづけ、1847ねんつぎのようなモデルを発表はっぴょうした。

  • 円錐えんすいがただったどうかん円筒えんとうがたにし、音響おんきょうがくもとづいてトーンホールの位置いちなおした。同時どうじに、こう音域おんいきのピッチ改善かいぜんのため、円筒えんとうがただった頭部とうぶかんほぼ円錐えんすいがたにした。これにより、円筒えんとうかんだったルネサンス・フルートのあかるい音色ねいろもどすことができた。
  • かんたい木製もくせいから金属きんぞくぎんせい変更へんこうした。これにより、トーンホールをさらにおおきくすることができ、れないようあぶら塗布とふする必要ひつようもなくなった。
  • 1832ねんのモデルで採用さいようしたリングキーは廃止はいしして、トーンホールをすべてキーで開閉かいへいする方式ほうしき(いわゆるカバードキー)とした。これにより、女性じょせいなどゆびほそ奏者そうしゃでもだいみちのトーンホールを容易よういかつ確実かくじつにふさぐことができるようになり、運動うんどう性能せいのうがさらに向上こうじょうした。

このモデルもGisオープンしきではあったが、現在げんざいのフルートとほとんどわらず、きわめて完成かんせいたかいものであった。これ以降いこう今日きょうまでにくわえられたおおきな改変かいへんは、イタリアのジュリオ・ブリチャルディ(Giulio Briccialdi 1818ねん - 1881ねん)により、フラット(♭)けい調ちょう演奏えんそうするのに便利べんりな、いわゆるブリチャルディ・キーがくわえられたことと、よりうんゆび容易よういなGisクローズしき主流しゅりゅうとなったこと程度ていどである。

 
今日きょう一般いっぱんてきなベームしきフルート

今日きょうもっと一般いっぱんてきな Cあしかんきベームしきフルートにはトーンホールが16あり、キーはかぞかたによるが、ゆび直接ちょくせつれるものだけをかぞえると15である。これらが右手みぎて親指おやゆびのぞく9ほんゆび操作そうさできるようになっている。後述こうじゅつのように、キーメカニズムの関係かんけいでベームしきフルートにもりにくいおとはあるが、ほとんどのおと音程おんてい確実かくじつる。

ベームしきフルートは、最初さいしょにフランスでその優秀ゆうしゅうせいみとめられ、いでイギリスでも使つかわれるようになったが、発祥はっしょうであるドイツでは20世紀せいきはいるまでれられなかった。旧来きゅうらいのフルートとはうんゆびことなることにくわえて、このころのドイツ音楽おんがくかいおおきな影響えいきょうりょくっていたワーグナーがベームしきフルートの音色ねいろきらったことも、ドイツでの普及ふきゅうさまたげたおおきな要因よういんといわれている[5][10]

ロマン中期ちゅうき以降いこう 編集へんしゅう

ベームが1847ねん発表はっぴょうしたフルートは、現在げんざいのカバードキーがたのフルートとほとんどわらないものの、Gisオープンしきであって、外観がいかん少々しょうしょうこつ印象いんしょうである。しかし、フランスの楽器がっき製作せいさくしゃであるヴァンサン・イポリト・ゴッドフロワやルイ・ロットらのによって、前記ぜんき円錐えんすいベームしきフルートとはことなるあたらしい構造こうぞうリングキー採用さいようした、いわゆるフレンチスタイルのフルートがされるとともに、よりうんゆび容易よういなGisクローズしき変更へんこうされ、意匠いしょうめん細部さいぶにわたって改良かいりょうほどこされた。こうしてモダン・フルートは、今日きょうるような洗練せんれんされた優美ゆうび姿すがたとなったのである。

1860ねんにパリ音楽おんがくいん教授きょうじゅとなったルイ・ドリュによって学院がくいん公式こうしき楽器がっき認定にんてい[5]されると、アンリー・アルテ(アルテスとも)、ポール・タファネルフィリップ・ゴーベールマルセル・モイーズらフルート教授きょうじゅによってその奏法そうほう発展はってん確立かくりつがなされ、ドビュッシーフォーレをはじめとする作曲さっきょくたちがおおくの楽曲がっきょくいた。それまでは装飾そうしょくてき限定げんていてき使つかわれていたビブラート積極せっきょくてきれた演奏えんそう様式ようしき確立かくりつしてフランスらくばれ、フランスは一躍いちやくフルート先進せんしんこくとなったのである。アルテのあらわした教則きょうそくほんは、いまなおもっと有名ゆうめいなモダン・フルートの入門にゅうもんしょである。

 
メイヤーしきフルート(10キー、円錐えんすいかん

一方いっぽう、ドイツやオーストリアでは、金属きんぞくせいフルートのだいみちトーンホールから倍音ばいおんゆたかにふく音色ねいろこのましくおもわないながらも、ベームしきメカニズムの長所ちょうしょみとめざるをず、20世紀せいきはいころにはかんたい木製もくせいだがメカニズムはベームしきという折衷せっちゅうがた楽器がっきもちいられるようになるとともに、金属きんぞくせいのフルートも徐々じょじょにではあるが使つかわれるようになった。しかし、ドイツの H.F.メイヤーによって開発かいはつされた、トーンホールのみちおおきくして音量おんりょうすなどの改良かいりょうくわえられたかぎしき円錐えんすいかん旧式きゅうしきうんゆびのメイヤーしきフルートも、おおくのメーカーによって模倣もほうされ、フランスをのぞくヨーロッパやアメリカでは、1930年代ねんだいまで使つかわれていた[5]

きん現代げんだい 編集へんしゅう

ベームしきフルートも、改良かいりょう余地よちがないほど完璧かんぺきなものではないので、そのもフルートの改良かいりょうはさまざまなかたちこころみられ、なかには商品しょうひんいたったものもあるが[10]、ベームの基本きほん設計せっけい凌駕りょうがするほどのものは今日きょういたるもあらわれていない。ベームしきフルートはその地位ちい確固かっこたるものとし、フレンチスタイルの登場とうじょう以降いこう構造こうぞうめん特段とくだん変化へんかはないが、奏法そうほうめんおおきな発展はってんられる。

だい世界せかい大戦たいせんまえからられる特殊とくしゅ奏法そうほうとしては、じたによるフラッターツンゲハーモニクス奏法そうほうがある。戦後せんごレコード普及ふきゅう放送ほうそう技術ぎじゅつ発展はってんとともに、ランパルがソリストとして活躍かつやくし、フルートの魅力みりょく世界中せかいじゅうしめすこととなった。またモイーズが、教育きょういくしゃとしてカリスマてきといえるほどの影響えいきょうりょくながあいだたもつづけたこともあって、世界中せかいじゅうでフランスふう演奏えんそうスタイルがおおきくひろまっており、ビブラートをつねにかけるのが一般いっぱんてきであるが、クラシック音楽おんがくにおいてはいまなおビブラートを乱用らんようしない演奏えんそうスタイルもこのまれる。前述ぜんじゅつとおり、ドビュッシーはフルートにおけるレパートリー拡張かくちょう第一人者だいいちにんしゃであるが、なかでも独奏どくそうきょくシランクス』はフルート独奏どくそうのためのきょくとして歴史れきしじょう重要じゅうよう位置いちめている。エドガー・ヴァレーズは『密度みつど21.5』において、キー・パーカッションばれるアタックのおと変化へんかもとめた特殊とくしゅ奏法そうほう開発かいはつし、またちょう高音こうおんいき執拗しつようもとめて、演奏えんそうにおける音域おんいき拡張かくちょう成功せいこうした。

現代げんだい音楽おんがくでは、まずフルート奏者そうしゃのブルーノ・バルトロッチがじゅうおと奏法そうほう体系たいけいした教本きょうほん出版しゅっぱんし、またピエール=イヴ・アルトーやロベルト・ファブリッツィアーニなどそのおおくのフルート奏者そうしゃ、またサルヴァトーレ・シャリーノらの作曲さっきょくによっていきおんふく奏法そうほう、ホイッスルトーン、タングラム、リップ・ピッツィカートなどあたらしい奏法そうほう次々つぎつぎ開発かいはつされた。ルチアーノ・ベリオの『セクエンツァI』などのすぐれたきょく現在げんざいも「古典こてん」としておおくの奏者そうしゃによってコンサートや教育きょういく現場げんばげられ、聴衆ちょうしゅうにもしたしまれている。

発音はつおん原理げんり音域おんいき 編集へんしゅう

フルートの発音はつおん原理げんりかんしては、おおきくけてふたつのせつ存在そんざいする[2][15][16]ひとせつは、くちびるから空気くうきたば(エアビーム)を楽器がっきこうえん(エッジ)にてることでカルマンうず発生はっせいし、これがエッジトーン(強風きょうふうのときに電線でんせんるのとおな現象げんしょう)をしょうじて振動しんどうげんになるというもの。ふたせつは、エアビームのみによってかん内圧ないあつ上昇じょうしょうし、これによってエアビームがかえされると空気くうきけて内圧ないあつ低下ていかし、ふたたびエアビームがまれるという反復はんぷく現象げんしょう発生はっせいして、これが振動しんどうげんになるとするものである。いずれにせよ、発生はっせいした振動しんどうたいし、かん内部ないぶにある空気くうきはしらばしら)が共振きょうしん共鳴きょうめい)しておとる。トーンホールを開閉かいへいすると、ばしら有効ゆうこうちょうわるので共振きょうしん周波数しゅうはすう変化へんかし、おとだかえることができる。

コンサート・フルートの基本きほんてき音域おんいきはC4(中央ちゅうおうハ)から3オクターヴじょうのC7までであるが、Hあしかんもちいれば最低さいていおんがB3となる。最低さいていおんからC#5までは基音きおんであるが、D5以上いじょうおと倍音ばいおんもちいて発生はっせいさせる。チューニングする(楽器がっきとピッチをわせる)さいには、オーケストラではA5を、吹奏楽すいそうがくではB♭5をもちいる。音域おんいき便宜上べんぎじょう下記かきのようにけることがおおいが、これは絶対ぜったいてきなものではなく、たとえばC6をちゅう音域おんいきとするかこう音域おんいきとするかはとき場合ばあいによるし、まれにはちゅう音域おんいき高音こうおんいきをまとめて(なかこう音域おんいきぶべきところを省略しょうりゃくして)こう音域おんいきぶこともある。

  • 最低さいていおんからB4までの音域おんいきは、てい音域おんいきあるいはだい1オクターヴなどとばれる。音量おんりょうちいさく、とく最低さいていおんちかいいくつかのおと明瞭めいりょう発音はつおんむずかしいが、幅広はばひろやわらかい音色ねいろ特徴とくちょうとする。
  • C5からB5までの音域おんいきは、ちゅう音域おんいきあるいはだい2オクターヴなどとばれる。C#5のおとはトーンホールがちいさいためひびきがあまりくなく、E5からF#5はおとれやすいなどむずかしいところもあるが、表情ひょうじょうゆたかな音色ねいろち、音量おんりょう制御せいぎょ比較的ひかくてき容易よういである。
  • C6からC7の音域おんいきは、こう音域おんいきあるいはだい3オクターヴなどとばれる。後述こうじゅつのようにキーメカニズムの関係かんけいでE6やF#6などのおとしにくいうえ、ほとんどのおとはピッチがこうであり、もちいる倍音ばいおんモードがおとによってわるため音色ねいろそろえるのがむずかしく、うんゆび不規則ふきそくおぼえにくいが、あかるくかがやかしい音色ねいろで、音量おんりょう比較的ひかくてきおおきい。
  • C7よりうえ音域おんいきは、だい4オクターヴなどとばれ、F7までのうんゆび比較的ひかくてきひろられているが、たかおとほど発音はつおんむずかしい。この音域おんいき開発かいはつされたのは20世紀せいきはいってからであり、現代げんだい音楽おんがく使用しようされることがあるが、楽器がっきによって発音はつおん難易なんいやピッチのばらつきがおおきく、うんゆびほう一定いっていしていない。

標準ひょうじゅんてきうんゆびもちいた場合ばあい倍音ばいおんモードの概略がいりゃく下記かきとおりである。たとえばC7はC4のだい8倍音ばいおんであるが、いき圧力あつりょくだい8倍音ばいおんすことはむずかしいので、左手ひだりてはCとGis、右手みぎてはF以下いかのトーンホールをけてやる(Esはじたほう[17])ことにより、C5のだい4ばいおとかつG#4のだい5ばいおとかつF4のだい6倍音ばいおんとして発生はっせいさせている。だい3倍音ばいおんだい5倍音ばいおんだい6ばいおんによっておとは、多少たしょうなりと平均へいきんりつからのずれしょうずることなどもあって、こう音域おんいき音程おんていはあまりくない。

C4 - C#5:基音きおん(Hあしかん場合ばあいはB3もふくむ)
D5 - C#6:だい2倍音ばいおん
D6      :だい2倍音ばいおんだい3倍音ばいおん
D#6 - B6:だい3倍音ばいおんだい4倍音ばいおんだい5ばいおんおとによりことなる)
C7      :だい4倍音ばいおんだい5倍音ばいおんだい6倍音ばいおん

モダン・フルートは、すべての木管もっかん楽器がっきなかもっと論理ろんりてき設計せっけいされている[15]が、さまざまな制約せいやくから妥協だきょうせざるをない部分ぶぶんもあるので、とくこう音域おんいきには上記じょうきのように問題もんだいおおい。これらを完全かんぜん解消かいしょうすることは、設計せっけいじょうどのような工夫くふうを以ってしても不可能ふかのうであり、最後さいごアンブシュア微妙びみょう調節ちょうせつ特殊とくしゅうんゆび使用しようなど、奏者そうしゃ技術ぎじゅつゆだねられている[18]

構造こうぞう 編集へんしゅう

一般いっぱんてきなコンサート・フルートは、かんたい頭部とうぶかんどうかんあしかんの3分割ぶんかつ構造こうぞうになっており、保存ほぞん携帯けいたい分解ぶんかいし、演奏えんそう組立くみたてる。頭部とうぶかんどうかん挿入そうにゅうするふかさを変化へんかさせることにより全体ぜんたいおとだかわるため、楽器がっきとピッチをわせる(チューニングする)ことができる。おなじベームしきフルートでもフランスを起源きげんとする流派りゅうはと、ドイツ・オーストリアの伝統でんとうとでキー配列はいれつ、キー構造こうぞうちがいがあり、フランスりゅうではキー配置はいちが「インライン」、キーは「リングキー」、あしかんは「Hあしかん」、ドイツ・オーストリアりゅうではキー配置はいちが「オフセット」、キーは「カヴァードキー」、あしかんは「Cあしかん」とかれている。日本にっぽんではプロの演奏えんそう音大おんだいせい前者ぜんしゃのフランスりゅうを、アマチュア奏者そうしゃ後者こうしゃもちいる傾向けいこうにある[19]

頭部とうぶかん 編集へんしゅう

歌口うたぐち部分ぶぶん内径ないけい17mm、どうかん接続せつぞくする部分ぶぶん内径ないけい19mmのりゃく円錐えんすいがたである。歌口うたぐちちかほうはしがヘッドスクリューでふさがれている。管内かんない歌口うたぐちちか位置いち反響はんきょうばん反射はんしゃばん)があり、ヘッドスクリューと連結れんけつされている。反響はんきょうばん位置いち歌口うたぐち中央ちゅうおうから17mmが適切てきせつであり、ここからずれているとピッチに支障ししょうがある。

歌口うたぐち楕円だえんがたないし小判こばんがたかくまる矩形くけい)であるが、メーカーによってことなり、断面だんめん微妙びみょう形状けいじょう成形せいけいされている。この部分ぶぶんはフルートの音色ねいろ音量おんりょう発音はつおんせいなどにおおきく影響えいきょうする[2]ので、形状けいじょうことなる複数ふくすう頭部とうぶかん製作せいさくしているメーカーもあり、頭部とうぶかんだけをせんもんつくるメーカーもある。

どうかん 編集へんしゅう

内径ないけい19mmの円筒えんとうがたで、頭部とうぶかんちか位置いち比較的ひかくてきちいさなトーンホールが3つと、よりおおきなトーンホールが10かんたい上面うわつらおよび側面そくめんにある。トーンホールがゆびさえられないほどおおきく、またそのかずゆびよりもおおいため、一部いちぶたがいに連結れんけつされたキーシステムによってトーンホールを開閉かいへいする。キーの裏側うらがわには後述こうじゅつのタンポ(パッド)がまれており、トーンホールをじたさい気密きみつせい確保かくほしている。

インラインとオフセット 編集へんしゅう

ベームしきのフルートのキーの配列はいれつ大別たいべつして「インライン」と「オフセット」の種類しゅるいがある。

  • インラインは、どうかんじょう側面そくめんのキーがすべ一直線いっちょくせんならんでいるタイプである。
  • オフセットは、左手ひだりて薬指くすりゆびキーが外側そとがわ左腕さわんちかほう)にすこしずれていて、薬指くすりゆびとどやすいよう配慮はいりょしたタイプであり、ベームが製作せいさくした楽器がっきはすべてオフセットであった。

両者りょうしゃなかあいだとなるハーフオフセットの楽器がっきもある。オフセットのほうがキーをさえやすいが、インラインはポスト(メカニズムの先端せんたん部分ぶぶん[20])がひろぶん多少たしょう開放かいほうてき音色ねいろになる。おおきなちがいではないので、楽器がっき購入こうにゅうさいにどのタイプをえらぶかは奏者そうしゃこのみやおおきさにより、初心者しょしんしゃけか上級じょうきゅうしゃけかといった区別くべつはなく、構造こうぞうじょうおおきな優劣ゆうれつはない。

カバードキーとリングキー 編集へんしゅう

  • カバードキー[ちゅう 4]は、キーにけられたタンポでトーンホール全体ぜんたいをふさぐ方式ほうしきのフルートである。
  • リングキー[ちゅう 5]のフルートは、ゆびかれる5つのキー(左手ひだりて中指なかゆび薬指くすりゆび右手みぎて人差指ひとさしゆび中指なかゆび薬指くすりゆび)の中心ちゅうしんあながあいており、ゆびでそのあなをふさいで演奏えんそうする。さえていないトーンホールは開放かいほうされているため、カバードキーより音色ねいろかるあかるい。技術ぎじゅつてきには、あなをふさぐ程度ていど変化へんかさせることによって、ポルタメント微分びぶんおんなどの技法ぎほうらく演奏えんそうできるようになるほか、ピッチ調節ちょうせつなどのためのゆびもカバードキーよりおお利用りようでき、じゅうおとのための特殊とくしゅうんゆびはばおおきくひろがるが、あな正確せいかくにふさがなければならないため運動うんどう性能せいのう若干じゃっかんおとり、初心者しょしんしゃや、ちいさい、あるいはゆびほそ奏者そうしゃには演奏えんそうむずかしいこともある。

タンポ(パッド) 編集へんしゅう

カバードキーでもっと一般いっぱんてき使つかわれているタンポは、フェルトにフィッシュスキン[ちゅう 6]いたものである。これは金属きんぞくのフルートをテオバルト・ベームが開発かいはつした時代じだいからわっていない。そのゴムシリコーンコルクひとしもちいているものもある。

フルートは、タンポとトーンホールのあいだに「かみ1ほん隙間すきまがあってもおとらない」とわれており、調整ちょうせいにはたか技術ぎじゅつ必要ひつようである。 調整ちょうせいするさいには、調整ちょうせいばれる、うすいドーナツじょう形状けいじょうかみをタンポの裏側うらがわれる。

CあしかんとHあしかん 編集へんしゅう

あしかんどうかんおな内径ないけい円筒えんとうがたで、3つまたは4つのトーンホールをつ。

  • トーンホールが3つのものはCあしかんで、最低さいていおんはC4である。
  • トーンホールが4つのものがHあしかんで、最低さいていおんはB3である。英語えいごしきにB(ビー)あしかん(B foot joint)とぶこともあるが、日本にっぽんではドイツおんめいにより H(ハー)あしかん(H-Fuß)とぶのが一般いっぱんてきである。マーラーショスタコーヴィチほかの交響曲こうきょうきょく演奏えんそうするにはHあしかん必須ひっすである。また、最低さいていおんひくくなるぶん倍音ばいおん安定あんていしてしやすいメリットもある。ただしHあしかんながぶん重量じゅうりょうがあり、通気つうき多少たしょうなりと阻害そがいされて音色ねいろがわずかながらくらめになるとされている。これをおぎなうため、通気つうきいリングキーを併用へいようする楽器がっきおおい。

GisオープンしきとGisクローズしき 編集へんしゅう

Gisトーンホールを1つだけつものがGisオープンしき、Gisトーンホールを2つつものがGisクローズしきで、ベームが製作せいさくした楽器がっきはGisオープンしきであったが、今日きょうではGisクローズしき主流しゅりゅうである。

  • Gisオープンしきでは、左手ひだりて薬指くすりゆびすとAトーンホールがじ、左手ひだりて小指こゆびすとGisトーンホールがじる。つまり、AトーンホールのキーとGisトーンホールのキーは独立どくりつしている。
  • Gisクローズしきでは、2つのGisトーンホールのうち一方いっぽう常時じょうじひらけ他方たほう常時じょうじ閉となっており、常時じょうじひらきのGisトーンホールのキーとAトーンホールのキーは連結れんけつされている。左手ひだりて薬指くすりゆびすとAトーンホールと常時じょうじひらきのGisトーンホールが連動れんどうしてじ、左手ひだりて小指こゆびすと常時じょうじ閉のGisトーンホールがひら[ちゅう 7]
    実際じっさいにG#のおとすのは常時じょうじ閉のGisトーンホールであり、常時じょうじひらきのGisトーンホールはおとすときの通気つうき役目やくめたしている。

Gisオープンしき場合ばあい、Gisトーンホールが1つですみ、後述こうじゅつのEメカニズムをもうける必要ひつよういのでコストめん有利ゆうりであるうえ小指こゆびすとG、はなすとG#がる(音程おんていがる)ので、うんゆびとしても自然しぜんである。つまり、一見いっけんGisオープンしきほうが、いわゆる「にかなった」構造こうぞうのようにおもえる。ところが実際じっさい演奏えんそうすると、Gisオープンしきではほとんどのおと左手ひだりて小指こゆび薬指くすりゆびおなじにうごかさねばならず、Gisクローズしきより小指こゆびいそがしくなってうんゆびむずかしい。このてんがGisクローズしきひろ世界せかい普及ふきゅうしたおおきな理由りゆうである。

Eメカニズム 編集へんしゅう

今日きょう主流しゅりゅうとなっているGisクローズしきのフルートでは、だい3オクターヴのホおん(E6)がしにくく、ピッチがたか場合ばあいおおい。E6はE4のだい4倍音ばいおんであると同時どうじにA4のだい3倍音ばいおんなので、右手みぎてはEからしたのトーンホールをけ、左手ひだりてはAトーンホールだけけてやればよいのだが、Gisクローズしきフルートではキーメカニズムの関係かんけいじょう、Aトーンホールをけると、常時じょうじひらきのGisトーンホールもいっしょにひらいてしまうからである。これを解消かいしょうするために考案こうあんされたのがEメカニズム (Split E mechanism) で、Eメカと略称りゃくしょうされることもおおい。キーシステムを追加ついかすることにより、E6のうんゆび常時じょうじひらきのGisトーンホールがじるようになっており、これによってE6のしやすさとピッチは改善かいぜんされるが、一部いちぶのトリルうんゆびなどが使つかえなくなるため、標準ひょうじゅん装備そうびとするメーカーがある一方いっぽう、オプションあつかいとしているメーカーもある。

Fisメカニズム 編集へんしゅう

Gisオープン/クローズいずれのフルートでも、だい3オクターヴの嬰ヘおと(F#6)がしにくい。F#6はF#4のだい4倍音ばいおんで、かつB4のだい3倍音ばいおんであるから、右手みぎてはFisからしたのトーンホールをけ、左手ひだりてはHトーンホールのみけたいわけだが、キーメカニズムの都合つごうじょう、Hトーンホールをけるには、Aisトーンホールもけざるをえないからである。これを解消かいしょうするために考案こうあんされたのがFisメカニズムであるが、構造こうぞう複雑ふくざつさや耐久たいきゅうせいひくとう理由りゆうから商品しょうひんしているメーカーはすくないので、練習れんしゅうによって克服こくふくするしかないのが実状じつじょうである。

Cisトリルキー 編集へんしゅう

B-C#のトリルでは、左手ひだりて親指おやゆび人差ひとさゆび同時どうじうごかさねばならない。これを容易よういにするために考案こうあんされたのがCisトリルキーで、Aisレバーの上流じょうりゅう設置せっちされ、右手みぎて人差ひとさゆびだけでB-C#のトリルが可能かのうになる。

Cisトリルキーをもちいると、B-C#のトリルだけでなく、だい3オクターヴのG-A (G6-A6) のトリルも容易よういになり、じゃくそうにおけるG#6の発音はつおん容易よういになる。また、通常つうじょうのCisトーンホールは極端きょくたんちいさいため、発音はつおん困難こんなん、ピッチの不安定ふあんてい音色ねいろ問題もんだいともなうが、Cisトリルキーをもちいると、これらの欠点けってんおぎなうこともできる。

しかし、楽器がっきおもくなる、外観がいかんそこなう、費用ひよう高価こうかであるなどのデメリットもあるため、Cisトリルキーを標準ひょうじゅん装備そうびするメーカーはほとんどない。

G-Aトリルキー 編集へんしゅう

だい3オクターヴのG-A (G6-A6) のトリルを容易よういにするためのキーである。かつてドイツにおいてよく使つかわれたメカニズムであるが、現在げんざいではおな機能きのうをCisトリルキーで実現じつげんできるじょう前述ぜんじゅつのように用途ようとひろいためCisトリルキーにってわられつつある。

ソルダードトーンホールとドローントーンホール 編集へんしゅう

金属きんぞくせい楽器がっきでは、トーンホールがかんたいからがってキー(タンポ)と密着みっちゃくしているが、このがり部分ぶぶんをどのようにして製作せいさくするかによる分類ぶんるいで、今日きょう市販しはんされているフルートは、ほとんどドローントーンホールである。

  • ソルダードトーンホールは、かんたいとなるパイプにべつ部品ぶひんをはんだけすることによりトーンホールを作成さくせいする。
  • ドローントーンホールは、パイプそのものを加工かこうしてトーンホールを形成けいせいする。

20世紀せいきにアメリカのW.m Haynesしゃ開発かいはつした。

材質ざいしつ 編集へんしゅう

フルートは管楽器かんがっきくらべ、使用しようする材質ざいしつのバリエーションが幅広はばひろい。当然とうぜん高価こうか貴金属ききんぞくせい稀少きしょう素材そざいになるほど値段ねだんたかくなる。

ベームをはじめとした楽器がっき製作せいさくしゃとメーカー、演奏えんそうしゃ主観しゅかんでも材質ざいしつによって音色ねいろことなるとしているが[21][22]音質おんしつかんするかぎり、かんたい材質ざいしつによって人間にんげんれるほどの差異さいしょうずることはなく、ル紙るがみつくってもおとわらないとされている[15][23]。なお、以下いかべるのはかんたいやキーなどの材質ざいしつであり、キーメカニズムのしんきんねじばねなどには下記かきことなる素材そざい使用しようされる。フェルトコルクなども部分ぶぶんてき使つかわれている。

洋銀ようぎんようしろ
フルートの材質ざいしつとしてもっとおおもちいられているのは洋銀ようぎんである。ふるいものでは「マイユショール(フランス語ふらんすご: maillechort)」と表記ひょうきされていることもある。洋銀ようぎんせいといっても、実際じっさい部品ぶひんによりようしろ白銅はくどう使つかけられており、劣化れっか抑制よくせい外観がいかん向上こうじょう目的もくてきとして、ぎんメッキほどこされているものがおおい。比較的ひかくてき安価あんか加工かこうしやすくそうしたさいはんおういが、ひとあせ摩耗まもうによる劣化れっかはやいため、一般いっぱんてきにはなんじゅうねん愛用あいようするには不向ふむきであるとされている。
しかし、フルートかい巨匠きょしょうモイーズ終生しゅうせい愛用あいようしていたフルートは洋銀ようぎんせいであった。素材そざい品質ひんしつく、十分じゅうぶん手入ていれがなされれば、洋銀ようぎんせいでもなん問題もんだいなく長期間ちょうきかん使用しようえられる。
ただし、ようしろ白銅はくどう合金ごうきん成分せいぶんとしてニッケルふくむため、ぎんメッキされていてもまれ金属きんぞくアレルギーこすことや、メッキがき、緑青ろくしょう表面ひょうめんにみられる場合ばあいもある。とくにアレルギー体質たいしつひとは、くちびるじかれるリッププレートや頭部とうぶかんだけでも銀製ぎんせい楽器がっき選択せんたくするなどの配慮はいりょのぞましい。
ぎん
ベームしきフルートの材質ざいしつとして、テオバルト・ベーム自身じしんもっとてきしていると結論けつろんづけたのがぎんである。「うすかるぎんかんが、内部ないぶ空気くうきばしらとも振動しんどうする能力のうりょくすぐれており、かんよりらくかがやかしくおおきなおとる」と著書ちょしょ[4]なかべているが、科学かがくてき根拠こんきょしめされているわけではない。
ぎんはいわゆる貴金属ききんぞくなかではもっとかるく、加工かこう容易よういで、経年けいねんによる劣化れっかすくなく、木材もくざいちがってれることもない。イオウなどと反応はんのうしやすい金属きんぞくなので、長年ながねん使用しようすると表面ひょうめん黒色こくしょく皮膜ひまくしょうずるが、性能せいのうへの悪影響あくえいきょうはなく、かる研磨けんまするだけで除去じょきょできる。
きむ
フルートには、5きん(5K;5カラット)から24きんまで幅広はばひろ純度じゅんどかねもちいられている。きむ以外いがい成分せいぶん含有がんゆうりつによっていろ比重ひじゅう変化へんかし、吹奏すいそうかんわるが、そうじて反応はんのうく、倍音ばいおんおおいといった利点りてんがあるとされ、「きむ(のフルート)はとおたちせいい」「遠鳴とおなりする」などと表現ひょうげんされることもある。
しかし、上記じょうきとおかんたい材質ざいしつによっておとわることはない[15]のであって、利点りてんとしては、安定あんていした金属きんぞくなので長年ながねん使用しようしてもうつくしい外観がいかんそこなうことがないということにきる。純金じゅんきんちかいものほど高価こうかになるうえに、おもくなるので演奏えんそうには体力たいりょく必要ひつようになる。銀製ぎんせいのフルートにメッキとして使用しようされることもおおい。
白金しろがね(プラチナ)
白金はっきん密度みつどたかいため非常ひじょうおもく、これでつくられたフルートははげしいみにもえられるとされ、きむならんで「フォルテがわ余裕よゆうおおきい」などといわれることがある。
しかし、これにもなん科学かがくてき根拠こんきょなど存在そんざいせず、人間にんげんいきやフルートの音圧おんあつ程度ていどなら、密度みつどひくかるアルミニウム合金ごうきん十分じゅうぶんえられる。白金はっきん頭部とうぶかん本体ほんたいパイプにのみもちいられ、キーとうこまかいパーツの成形せいけい技術ぎじゅつてきむずかしい。きわめて高価こうかうえ、24金製きんせい以上いじょうおもいので、演奏えんそうには強靭きょうじん体力たいりょく要求ようきゅうされる。銀製ぎんせいフルートに白金はっきんメッキをほどこしたモデルもある。
ベームしきのキーメカニズムをち、かんたいのみ木製もくせいのフルートは現在げんざいつくられており、かんたいにはグラナディラ黒檀こくたんなどがもちいられている。音量おんりょう音程おんてい運動うんどうせいなどは普通ふつうそう金属きんぞくせいモダン・フルートとわらないが、倍音ばいおんすくなく、トラヴェルソを想起そうきさせるやわらかい音質おんしつ特徴とくちょうといわれる。
しかし、タンギングをふくむトラヴェルソ特有とくゆう演奏えんそうテクニックが再現さいげんできるわけでもなく、あくまでも「木製もくせいのモダン・フルート」にぎない。良質りょうしつ木材もくざいでもれる可能かのうせい完全かんぜんには排除はいじょできないので、メンテナンスには木製もくせいトラヴェルソと同様どうよう注意ちゅういようする。
その
入門にゅうもんよう」などとしょうしてられている安価あんかなフルートには、黄銅こうどう真鍮しんちゅうつくられているものもある。ニッケルメッキやぎんメッキがほどこされていて、外観がいかん銀色ぎんいろであるが、ニッケルや黄銅こうどう金属きんぞくアレルギーのリスクがたかいので、注意ちゅうい必要ひつようである。
かねぎん合板ごうはん(クラッドざい)や、ステンレスタングステンチタン、アルミニウム合金ごうきんとう、さまざまな材質ざいしつによるフルートが試作しさく商品しょうひんされているが、いずれも特段とくだんのメリットはなく、一般いっぱん普及ふきゅうするにはいたっていない。
プラスチックせい軽量けいりょう安価あんかなため入門にゅうもんようとしてつくられている。また金属きんぞくちがって多少たしょう衝撃しょうげきくわわってもかんたいへこむことがなく、みずれてもびない、金属きんぞくアレルギーのリスクがいといった利点りてんがある。上記じょうきとおかんたい材質ざいしつによっておとわることはないが[15]歴史れきしあさいため加工かこう精度せいど耐久たいきゅうせいとも未知数みちすうである。

特殊とくしゅ奏法そうほう現代げんだい奏法そうほう 編集へんしゅう

フルートは近代きんだい音楽おんがく現代げんだい音楽おんがくにおいてとく特殊とくしゅ奏法そうほう数多かずおお開発かいはつされた楽器がっきであるが、これらは作曲さっきょくしゃ奏者そうしゃによりさまざまな呼称こしょう技法ぎほうほうがあって、いま発展はってん途上とじょうにある。楽器がっき奏者そうしゃにより、あるいはそのときの調子ちょうしによって、ねらったとおりの効果こうかられないこともある。

エオリアン・トーン(えい:aeolian tone)
ブレス・トーンともいう。発音はつおん同時どうじいき歌口うたぐちあいだかられる噪音をはっする奏法そうほう通常つうじょう奏法そうほうからライザーにあてる空気くうきはしら極端きょくたんにぼかすことによりしょうじる。楽音がくおん存在そんざいするが空気くうきながれるおとめる割合わりあいのほうがおおきい。この割合わりあい作曲さっきょくしゃによってこまかくパーセント記号きごう指示しじされているものもある。
キー・パーカッション(えい:key percussion)
キー・クリック、キー・クラップとも。キーをつよめにたたくことにより、打楽器だがっきてき効果こうかねらった奏法そうほうエドガー・ヴァレーズの『密度みつど21.5』ではじめてもちいられたが、このきょく登場とうじょうする奏法そうほうは、厳密げんみつにはスタッカートの通常つうじょう奏法そうほうとキー・パーカッションとの併用へいようである。
口笛くちぶええい:whistle)
歌口うたぐちない口笛くちぶえくことによって通常つうじょう口笛くちぶえよりもフルートのかん共鳴きょうめいさせたおとつくす。そのさい発生はっせいするおとうんゆび自然しぜん倍音ばいおんれつじょうおとである。口笛くちぶえきながらフルートの通常つうじょうおんらすことは不可能ふかのうであるが、口笛くちぶえおと+エオリアン・トーンであれば可能かのうである。
ジェット・ホイッスル(えい:jet whistle)
歌口うたぐちくちびる完全かんぜんおおい、いきはげしくすことにより発生はっせいしたいきおん使用しようする奏法そうほうくちびる、フルートの角度かくど瞬時しゅんじ変化へんかさせることでいきおんないふくまれる楽音がくおん自然しぜん倍音ばいおんれつしたが上昇じょうしょう下降かこうさせることができる。発生はっせいするおとうんゆびによっても変化へんかする。
じゅうおと奏法そうほうえい:multiphonic)
特殊とくしゅうんゆびによりふたつ以上いじょうおと同時どうじ奏法そうほううんゆびにより、調しらべ性的せいてき和音わおんちかいものから、れたような荒々あらあらしいおとすことができる。R・ディックのフライング・エチュードではこのじゅうおと奏法そうほう全体ぜんたいにわたり使用しようされている。小泉こいずみひろし、P・E・アルトー、A・ニコレの著書ちょしょなどにじゅうおとうんゆびしめされている。
循環じゅんかん呼吸こきゅうえい:circular breathing)
口腔こうくうない空気くうきして演奏えんそうしながら、はなからいきうことによって、息継いきつぎによる中断ちゅうだんなしに発音はつおんつづける奏法そうほう。フルートは管楽器かんがっきくらべて空気くうき消費しょうひおお楽器がっきであり、循環じゅんかん呼吸こきゅうをマスターすることにより音楽おんがくてきしつをよりたかめることができるとされる。A・ニコレ、P・ガロワ、R・ディック、W・オッフェルマンズとう著書ちょしょに「循環じゅんかん呼吸こきゅう」について解説かいせつされている。
スラップ・タンギング(ピッツィカート)(えい:slap tonging、:pizzicato)
リップ・ピッツィカート、クアジ・ピッツィカートとも。弦楽器げんがっきピッツィカート音響おんきょうはっする奏法そうほう通常つうじょうのタンギングの圧力あつりょくたかめる方法ほうほうほか、いくつかの方法ほうほうがある。グランド・フルートではC4(HあしかんつきでB3) - D#5までは通常つうじょううんゆびで、さらにオクターヴキーをける、その操作そうさをすることによりD#6まで発音はつおん可能かのう
ダブルタンギング(えい:double tonguing)
ふるくからある特殊とくしゅ奏法そうほう。タンギングにおいてTとKの子音しいんもちい、はやしたとっきの必要ひつようとされるパッセージをTKTKTKとそうする。すべての管楽器かんがっき可能かのうなテクニックであるが、難易なんいはフルートがもっともひくく、ロマン技巧ぎこうてき変奏曲へんそうきょく近代きんだい作品さくひん演奏えんそうするのに必要ひつよう不可欠ふかけつである。
トリプルタンギング(えい:triple tonguing)は、ダブルタンギングから派生はせいしたもので、3つ単位たんい音符おんぷをTKTTKTなどのように区分くわけする。
ダブルトリル(えい:double trill)
通常つうじょうは2おとあいだするトリルを2ほんゆびおこなうことにより往復おうふく速度そくどばいになったもの。左手ひだりて楽器がっき保持ほじする必要ひつようがあるため右手みぎておこなわれることがおおい。うんゆびによりアグレッシブな効果こうかから不思議ふしぎ音響おんきょうまですことができる。リングキーかカバードキーかで可能かのうなダブルトリルの種類しゅるいことなる。フルート音楽おんがくにおいてのダブルトリルの使用しようれいサルヴァトーレ・シャリーノの『感謝かんしゃうた Canzona di ringraziamento 』に多用たようされ、後述こうじゅつのタングラムのこうげる『魔法まほうはどのようにされるか Come vengono prodotti gli incantessimi? 』と連続れんぞくして演奏えんそうされる。『感謝かんしゃうた』ではふたつのトリルキーを交互こうご連打れんだすることにより不思議ふしぎ音響おんきょう空間くうかんしている。
タングラム(えい:tongue ram)
くちびる全体ぜんたい歌口うたぐちおおい、したをライザーてることにより、打撃だげきおんす。空気くうきいながらおこなこと可能かのう。これによりフルートは閉管構造こうぞうとして共鳴きょうめいするため、うんゆびよりもちょう7ひくおとる。グランド・フルートではうんゆびじょうでC4(HあしかんつきでB3) - D#5まで可能かのう実音みおではC#3 (C3) - F4までのおとる。サルヴァトーレ・シャリーノは『魔法まほうはどのようにされるか Come vengono prodotti gli incantessimi? 』でこの奏法そうほう積極せっきょくてきもちいており、太鼓たいこ連打れんだおんのような音響おんきょうしている。
ドッペルトレモロ(どく:Doppeltremolo)
通常つうじょうのトレモロにいき圧力あつりょく加減かげんしてオクターヴの上下じょうげくわえたもの。作品さくひんないではポルタメントや発声はっせい奏法そうほう併用へいようされている。
ハーモニクスえい:harmonics、倍音ばいおん奏法そうほう
フラジオレット(えい:flageolet)とも。てい音域おんいきうんゆびのままたか倍音ばいおん奏法そうほうだい2ばいおん(1オクターブじょう)、だい3ばいおん(1オクターブと完全かんぜん5じょう)、だい4ばいおん(2オクターブじょう)、だい5ばいおん(2オクターブとちょう3じょう)、だい6ばいおん(2オクターブと完全かんぜん5じょう)などがせる。まれにだい7ばいおん(2オクターブとたん7じょう平均へいきんりつより6ふんおんつまりやく33セント)も指定していされる。きょくによって力強ちからづよおとしたり、弦楽器げんがっきやハープのハーモニクスのようなうつろな音響おんきょう効果こうか要求ようきゅうしたりとさまざまである。フランツ・ドップラーハンガリー田園でんえん幻想曲げんそうきょくだい1楽章がくしょうわりにもちいているほか、ハーモニクスの和音わおんストラヴィンスキーはる祭典さいてんにも登場とうじょうする。倍音ばいおん成分せいぶん度合どあいを変化へんかさせることでじゅうおとすことも可能かのう
バズィングえい:buzzing)
トランペット・アンブシュール(trumpet embouchure;えいふつ混合こんごう)とも。歌口うたぐちたいくちびるじた状態じょうたい金管楽器きんかんがっきのバズィングとおなじやりかたくちびる振動しんどうさせおとらす奏法そうほうしたりょうくちびるはさむことで金管楽器きんかんがっきでいうペダルトーン効果こうかせる。いき圧力あつりょくゆびえることで色々いろいろ音域おんいきせるが、フルートのマウスピースやかんはバズィングにはいていないためスケールは安定あんていしにくい。非常ひじょうたか圧力あつりょく必要ひつようなためくちびる負担ふたんおおきいので、長時間ちょうじかんのバズィング奏法そうほう注意ちゅうい必要ひつようである。
発声はっせい奏法そうほうえい:playing with voice)
通常つうじょう演奏えんそう同時どうじこえすことによりおんがハウリングをともな発生はっせいする奏法そうほう。フルートのいち音程おんてい通常つうじょうおん同時どうじそうした場合ばあいに、こうこえていこえでは発生はっせいするおんちがいがしょうじるため男女だんじょでこの奏法そうほう内容ないようおおきくことなる。フルートとちが音程おんてい同時どうじうたうことにより和音わおんが、リズムをずらすことにより二重奏にじゅうそう可能かのうである。
グロウル(えい:growl)は発声はっせい奏法そうほうひとつで、フルートの旋律せんりつおなうごきでうた奏法そうほう。ややグロテスクな音質おんしつになり、サックスギターにもけない音圧おんあつ音量おんりょう変化へんかできるためジャズアドリブなどでこのんで使つかわれる。
ビートボクシング・フルート(えい:beatboxing flute)
フルートウィズボイスパーカッションとも。フルートの特殊とくしゅ奏法そうほうとは厳密げんみつにはことなるが、2007ねんごろYouTubeうえで、アメリカのフルーティスト、G・パティロによるヒューマンビートボックスボイスパーカッション)をしながらフルートを演奏えんそうする動画どうが話題わだいとなった。フルートをかまバスドラムスネアドラムハイハットのようなおと同時どうじメロディアドリブ演奏えんそうするというものである。
ビスビリャンド・トリル(:bisbiliando trillo)
カラートリルとも。うんゆびからはなれたしたのほうのキーを開閉かいへいすることにより、同音どうおんじょう微妙びみょうことなる音色ねいろによるトリルが可能かのううんゆびによってはゆび微分びぶんおん下方かほうになることもある。武満たけみつとおる1980年代ねんだい以降いこう作品さくひん多用たようしたのはビスビリャンドによんぶんいちおとふくむホロートーントリルであり、とくに『うみ(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ)』において効果こうかてきくことができる。トリスタン・ミュライユはトリルではなく非常ひじょうにゆっくりとしたなが音符おんぷ交替こうたいによる音色ねいろ変化へんかこのんでもちいる。
フラッターツンゲどく:Flatterzunge、じた
フラッター、フラッター・タンギング(えい:flutter tonguing)とも。じたやうがいをするようにのどふるわせることにより、トレモロてき効果こうか奏法そうほうしただとすさめに、のどではマイルドになる。オーケストラではリヒャルト・シュトラウスもちいたのが最初さいしょとされている。ショスタコーヴィチ交響こうきょうきょくだい8ばんだい4楽章がくしょう冒頭ぼうとうイベールのフルート協奏曲きょうそうきょくだい3楽章がくしょうカデンツァなどに使用しようれいられる。遺伝いでんてき理由りゆうによってしたでのフラッタータンギングを苦手にがてとする奏者そうしゃもいることに注意ちゅうい必要ひつようである。その場合ばあいのど代替だいたいされる。
マウスピースをくちびるおおいながらフラッターをすることにより管内かんないひびおとつくすという奏法そうほう存在そんざいする。うんゆびよりもちょう7おとり、タングラムに効果こうかじた持続じぞくする。
ホイッスル・トーン(えい:whistle tone)
ウィスパー・トーンとも。いきおく具合ぐあい調節ちょうせつすることにより、こう音域おんいきにおいて倍音ばいおんおんれつもとづく非常ひじょううつろなおと奏法そうほう。フルートの特殊とくしゅ奏法そうほうなかでもとりわけ音量おんりょうちいさいものに分類ぶんるいされ、おおきなホールの後部こうぶ座席ざせきまで十分じゅうぶんとどくほどの音量おんりょうはない。
歌口うたぐちくちびる完全かんぜんふさ口内こうない内径ないけい変化へんかさせることによりホイッスルトーンとおとそうすることもできる。
ホロートーン(えい:hollow tone)
バンブートーン(えい:bamboo tone)とも。特殊とくしゅうんゆびによって通常つうじょう奏法そうほうではせないくぐもったおと奏法そうほう。ホロートーンは武満たけみつとおるのフルートソロにかならずといっていほど登場とうじょうする。木管もっかん民俗みんぞく楽器がっきせるため、あえてスケールや音程おんてい音質おんしつ不安定ふあんていになるうんゆびとする。うんゆびひょうはオランダの奏者そうしゃW・オッフェルマンズのものがある。
むらいきえい:breath noise、尺八しゃくはち奏法そうほう
上記じょうきのエオリアン・トーンをよりはげしくし、アクセントをくわえた奏法そうほうきょくによっては日本にっぽん尺八しゃくはち想起そうきさせる。尺八しゃくはち奏法そうほうというとこのむらいき同時どうじはげしいビブラートもわせる。

上記じょうき特殊とくしゅ奏法そうほうわせ、あらたな音響おんきょうつくすこともできる(れい:フラッター+発声はっせい奏法そうほうじゅうおと奏法そうほう+スラップ・タンギング)。

教則きょうそくほん 編集へんしゅう

歴史れきしうえはつのフルート教則きょうそくほんべるのは1707ねん出版しゅっぱんされたジャック・オトテールの『フルート、リコーダー、オーボエの原理げんり ([PrincipesPrincipes de la flute traversiere, de la Flute a Bec, et du Haut-bois,)[24]」である。このほんだい部分ぶぶん横笛よこぶえのフルート (flute traversiere) のための記述きじゅつめられており、ヨーロッパでたか人気にんきて、海賊版かいぞくばん多数たすう発行はっこうされた。1752ねん出版しゅっぱんされたヨハン・ヨアヒム・クヴァンツの『フルート奏法そうほう試論しろん (Versuch einer Anweisung die Flöte traversiere zu spielen)[25]どう時代じだいのフルート以外いがい楽器がっきにのかんする総括そうかつてき著作ちょさくとしても評価ひょうかたかい。オトテール・クヴァンツ両者りょうしゃともにすぐれたフルート奏者そうしゃ作曲さっきょくでありながらフルート制作せいさくにも熟達じゅくたつしていたというてん共通きょうつうしている[26]


モダン・フルートの教則きょうそくほん数多かずおお出版しゅっぱんされているが、もっと有名ゆうめいなのはパリ音楽おんがくいんのフルート教授きょうじゅだったHenry Altès(アンリー・アルテ/アンリー・アルテス)によるものである。

  • 『ALTÈS FLUTE METHOD フルート教則きょうそくほんだい1かんだい3かん)』 田井だいまこと編著へんちょJapan Flute Club
  • 『アルテス・フルート奏法そうほう だいいちかん植村うえむら泰一やすいちやく解説かいせつ、シンフォニア ISBN 978-4-88395-580-0
  • 『アルテス・フルート奏法そうほう だいかん植村うえむら泰一やすいちやく解説かいせつ、シンフォニア ISBN 978-4-88395-499-5
  • 『H. アルテス フルート教本きょうほん I』  堀井ほりいめぐみ監修かんしゅう、トリム出版しゅっぱん ISBN 4-925199-10-2
  • 『H. アルテス フルート教本きょうほん II-1』 堀井ほりいめぐみ監修かんしゅう、トリム出版しゅっぱん ISBN 4-925199-11-0
  • 『H. アルテス フルート教本きょうほん II-2』 堀井ほりいめぐみ監修かんしゅう、トリム出版しゅっぱん ISBN 4-925199-12-9
  • 『アルテス フルート教本きょうほん初級しょきゅう>』 山下やました兼司けんじ 編著へんちょ、ドレミ楽譜がくふ出版しゅっぱんしゃ ISBN 978-4285106503

同属どうぞく楽器がっき 編集へんしゅう

フルートぞくにはつぎひょうのようなものがある。これらのうち、コンサート・フルートとフラウト・トラヴェルソはじつ音楽おんがくであるが、その派生はせい楽器がっきは、慣例かんれいてきじょう音域おんいきおよびうんゆびがコンサート・フルートとおおむね合致がっちするよう移調いちょう楽器がっきとしてあつかい、おん記号きごうもちいてされる。

和名わみょう おんたいする
実音みお
備考びこう
ピッコロ 1オクターヴじょう あしかんいているため、最低さいていおん古来こらいのフルートと同様どうようにニおん(D5)である。まれにDesかんもある。
Gかん トレブルフルート[27] 完全かんぜん5じょう
Fかん ソプラノフルート[28] 完全かんぜん4じょう 古楽こがくフラウト・トラヴェルソやリコーダー、和楽わらく篠笛しのぶえおとで、特殊とくしゅ効果こうかねら場合ばあい使用しようされる。
Esかん ソプラノフルート[29]
(3かんフルート)
たん3じょう
フラウト・トラヴェルソ どう あしかんいているため、最低さいていおん古来こらいのフルートどおりD4である。
フルート
(コンサート・フルート)
(グランド・フルート)
どう Hあしかん使用しようすると、最低さいていおんがC4からB3へと拡張かくちょうされる。
フルート・ダモーレ ちょう2たん3 ごくまれちょう3のAsかんもある。
アルトフルート 完全かんぜん4 頭部とうぶかんがUがたになったきょくかんもある。近代きんだい以降いこう管弦楽かんげんがくきょくや、ジャズで使つかわれる機会きかい比較的ひかくてきおおい。フルートオーケストラでは、しばしばたい旋律せんりつち、管弦楽かんげんがくヴィオラのような役目やくめたす。
バスフルート 1オクターヴ 頭部とうぶかんがUじょうげられている。戦後せんご現代げんだい音楽おんがくでは比較的ひかくてきよく使つかわれた。独奏どくそうきょく室内楽しつないがくきょくおおい。
コントラアルトフルート[30][31] 1オクターヴ
+完全かんぜん4
Fかん バスフルート[32] 1オクターヴ
+完全かんぜん5
コントラバスフルート[32] 2オクターヴ 数字すうじの「4」のようなかたちをしており、キーはたて部分ぶぶんに、リッププレートはよこ部分ぶぶんいており、おおきさはひと身長しんちょうほどもある。別名べつめいオクトバスフルート。
Gかん サブコントラバスフルート[33] 2オクターヴ
+完全かんぜん4
Fかん サブコントラバスフルート[34] 2オクターヴ
+完全かんぜん5
Cかん サブコントラバスフルート
(ダブルコントラバスフルート)
3オクターヴ 古田ふるたフルート工房こうぼうにより1993ねん作成さくせいされた[35]。ほかにホーヘンホイスしゃ製品せいひん(PVC使用しよう)がある[36]
ハイパーバスフルート 4オクターヴ フランチェスコ・ロメイによって2001ねん作成さくせいされた。管長かんちょう12.3m、最低さいていおん16.35 Hzへるつである。6つのおととその倍音ばいおんのみがせる[37]。そのホーヘンホイスも作成さくせいしている[38]

おもなメーカー 編集へんしゅう

日本にっぽん
アメリカ
  • アームストロング / Armstrong
  • アートレイ/Artraytray
  • アルメーダ / Almeida
  • アリスタ / Arista
  • ウイリアムス / Williams
  • エマーソン / Emerson
  • エマニュエル / Emanuel
  • オルフェウス / Orpheus Musical Instruments
  • ゲマインハート / Gemeinhardt
  • ゴードン / Gordon (頭部とうぶかんのみ)
  • シェリダン / D.Sheridan (ドイツ、現在げんざいはアメリカ)
  • ジョン・ラン / JOHN LUNN FLUTES
  • ストロビンガー / Straubinger Flutes (キー・パッドのメーカーとしても有名ゆうめい
  • A.セルマー / A.Selmer
  • ソナーレ / Sonare (アメリカ・台湾たいわん
  • トム・グリーン / Tom green
  • トム・レイシー / Tom Lacy
  • ナガハラ / NAGAHARA Flutes
  • パウエル / VERNE Q.POWELL FLUTES
  • バーカート / Burkart-Phelan Inc.
  • ブランネン・ブラザース / Brannen Brothers - Flutemakers Inc.
  • ヘインズ / THE HAYNES FLUTE / Wm.S.HAYNES Co.
  • ランデール / Jonathon A.Landell / Landell Flute
  • ロパティン / Lopatin
イギリス
  • ステファン・ウェッセル / Stephen Wessel
  • ロバート・ビギオ / Robert bigio
オーストリア
  • トマジ / W.Tomasi
オランダ
  • エヴァ・キングマ / Eva Kingma
  • エロイ / Eloy
フィンランド
  • マティット / Matit
フランス
  • パルメノン / Parmenon
  • ビュッフェ・クランポン / Buffet&Crampon
  • フォリジ / S.FAULISI
  • ローゼン/Roosen
ドイツ
  • カワイ・メーニッヒ
  • A.R.ハンミッヒ / August Richard Hammig
  • H.ハンミッヒ / Helmuth Hammig
  • J.ハンミッヒ / Johannes Hammig
  • Ph.ハンミッヒ / Philipp Hammig
  • シェリダン / D.Sheridan (現在げんざいはアメリカ)
  • フォークト / Horst Voigt
  • ブラウン / Braun
  • マンケ / Mancke (頭部とうぶかんのみ)
  • メナート / F.Mehnert
  • ラファン / J.R.Lafin (頭部とうぶかんのみ)
  • ロバーツ / Roberts
台湾たいわん
  • アルパイン / Alpine
  • オリエント / ORIENT
  • グロリア / Gloria
  • ゴウ・ブラザース / Guo Brothers
  • A.D.ジェフリー
  • ジュピター / Jupiter Flute
  • スプレンダー
  • ソング/ Song(頭部とうぶかんのみ)/song
  • ソナーレ / Sonare (アメリカ・台湾たいわん
  • ディメディチ / Dimedici
  • マックストーン / Maxtone (台湾たいわん
  • マルカート / The Marcato Flute
中国ちゅうごく
  • ケルントナー / Kaerntner
  • サバレイ / SAVALEY
  • スタッフォード・ウィンド / Stafford Wind
  • セレクション / Selection
  • J.マイケル / J.Michael
歴史れきしてきメーカー(ベームしきのメーカーを記載きさい
  • イギリス
    • トーマス・プラウゼ / Thomas Prowse
    • ルーダル・カルテ/ Rudall Carte
  • フランス
    • クエノン(ケノン) / Couesnon.S.A
    • クランポン / Crampon
    • ゴッドフロワ / Godfroy
    • ベルショー / Bercioux
    • ボンヴィル(ボンヌヴィル) / Bonneville
    • リーヴ / Rive
    • ルイ・ロット(ルイ・ロー) / Louis Lot
    • ルブレ/ Leblet
  • ドイツ
    • リッタースハウゼン / Rittershausen

補遺ほい 編集へんしゅう

アルト・フルート使用しようきょく
バス・フルート使用しようきょく
フルート・ダモーレ使用しようきょく
アイリッシュ・フルート
アイルランド民族みんぞく音楽おんがく(いわゆるケルト音楽おんがく)でもちいられるフルート。といっても民族みんぞく楽器がっきといえるほど歴史れきしあるものではなく、ベームしきフルートが普及ふきゅうする以前いぜんもちいられていたフルートののこりである。木製もくせいでDかん、6あなでキーなしかシンプルなキーのものがおおく、あまりおおくの半音はんおんかなでるのは困難こんなんであるが、クラシカル・フルートのようなキーのものもつくられている。
キングマシステム
微分びぶんおんもちいた音楽おんがく演奏えんそうすることにとくした特殊とくしゅなシステム。オランダの楽器がっき製作せいさくしゃであるE・キングマによって開発かいはつされ、キーのうえさら小型こがたのキーをとりつけた「キー・オン・キーシステム」の採用さいようと、リングキーのリング部分ぶぶん内径ないけい見直みなおすことにより、通常つうじょうのフルートと演奏えんそう方法ほうほうをまったくえることなく正確せいかく微分びぶん音程おんてい容易ようい演奏えんそうすることを可能かのうとしている。
ビービーフルート
正式せいしき名称めいしょうは「Bee-modeフルート」。フルートのかんたいけた横穴よこあなうす特殊とくしゅフィルムをって共振きょうしんさせ独特どくとくおと楽器がっき中国ちゅうごく民族みんぞく楽器がっき横笛よこぶえ構造こうぞうにインスピレーションをたもので、通常つうじょうのフルートの音質おんしつよりも倍音ばいおんおおふくんだ特異とくい音色ねいろになる。
MIDIフルート
キーシステムにMIDI機構きこうけた楽器がっき発音はつおん原理げんり通常つうじょうのフルートとおなじでありとく電子でんしてき発音はつおん機構きこうによるものではないが、MIDIの出力しゅつりょく機構きこうそなえており、奏者そうしゃ演奏えんそう情報じょうほうをリアルタイムにべつのMIDI機器ききやコンピュータにつたえることができる。同一どういつゆび使づかいで複数ふくすうのオクターヴの可能かのうせいのあるおと演奏えんそうじょう強弱きょうじゃく(ヴェロシティ)の検知けんちのためのセンサーもそなわっている。
せきルート
太平たいへいじゃくはち工房こうぼう開発かいはつしたしゃくはちがた頭部とうぶかん通常つうじょうのフルートの胴体どうたいえる。尺八しゃくはち特有とくゆうのむらいきなどの奏法そうほうをフルートのうんゆびほう使つか演奏えんそうできる。昭和しょうわ初期しょき考案こうあんされたオークラウロ同様どうよう発想はっそうもとづくものである。

脚注きゃくちゅう 編集へんしゅう

注釈ちゅうしゃく 編集へんしゅう

  1. ^ バロック・フルートも左側ひだりがわかまえることができ、その場合ばあい左手ひだりて小指こゆびでキーを操作そうさする。
  2. ^ 常時じょうじ閉のこのキーは、形状けいじょうすこわったものの現代げんだいのフルートにも「Esキー」としてのこっており、楽器がっき安定あんていささえるじょうでも役立やくだっている。
  3. ^ たとえばA4のおとすとき、クラシカル・フルートにもうけられたGisトーンホールのキーはじているが、ベームしきメカニズムのフルートではひらいている。
  4. ^ クローズドキーとも。ベームが1847ねん発表はっぴょうしたモデルがこのタイプだったので、ジャーマンモデル、ジャーマンスタイルともいう。
  5. ^ オープンキー、オープンホールシステムとも。ベームのフルートをもとにフランスで開発かいはつされたので、フレンチモデル、フレンチスタイルともいう。
  6. ^ ふるくはさかなぶくろからつくられていたのでこのようにばれるが、今日きょうではぶた内臓ないぞうなどからつくられている。
  7. ^ したがって、2つのGisトーンホールを両方りょうほうじた状態じょうたいで、Aトーンホールだけをけることはできない。これが後述こうじゅつのEメカニズムの必要ひつようせいにつながっている。
  8. ^ WEBサイトは2022ねん10がつまつ現在げんざい、イワオフルートのまま更新こうしんされていない。
  9. ^ 当時とうじ日本にっぽんに1ほんしかかったというのが本当ほんとうなら、バス・フルートの可能かのうせいたかい。

出典しゅってん 編集へんしゅう

  1. ^ a b 下中しもなか直也なおやへん) 『音楽おんがくだい事典じてんぜん6かん平凡社へいぼんしゃ、1981ねん
  2. ^ a b c 安藤あんどうゆかりてん新版しんぱん 楽器がっき音響おんきょうがく音楽之友社おんがくのともしゃ、1996ねんISBN 4-276-12311-9
  3. ^ YAMAHA楽器がっき解体かいたい全書ぜんしょ
  4. ^ a b c Theobald Boehm, The Flute and Flute-Playing, Dover Publications, ISBN 978-0-486-21259-3
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 前田まえだりり 『フルートの肖像しょうぞう(その歴史れきしてき変遷へんせん)』 東京書籍とうきょうしょせき、2006ねんISBN 4-487-80138-9
  6. ^ 宮内庁くないちょう. “正倉院宝物しょうそういんほうもついし横笛よこぶえ(ちょうせきのおうてき)”. 2019ねん4がつ12にち閲覧えつらん
  7. ^ 青木あおき和夫かずお日本にっぽん歴史れきし(3) 奈良なら中公ちゅうこう文庫ぶんこ、2004ねんISBN 4-12-204401-4初版しょはん:1973ねん
  8. ^ 図解ずかい 世界せかい楽器がっきだい事典じてんだいろくはん】』p174
  9. ^ クルト・ザックス(ちょ)、柿木かきのき吾郎ごろうわけ) 『楽器がっき歴史れきしした]』 全音楽譜出版社ぜんおんがくふしゅっぱんしゃ、1966ねん
  10. ^ a b c d e 奥田おくだ恵二けいじ 『フルートの歴史れきし音楽之友社おんがくのともしゃ、1978ねん
  11. ^ https://imslp.org/wiki/Musica_instrumentalis_deudsch_(Agricola%2C_Martin)
  12. ^ 楽器がっき博士はかせ佐伯さえき茂樹しげきがガイドするオーケストラ楽器がっき仕組しくみとルーツ』p3-5
  13. ^ https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/flute/structure/
  14. ^ a b Janice Dockendorff Boland, Method for the One-Keyed Flute, University of California Press, ISBN 978-0-520-21447-7
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  16. ^ H.F.オルソン(ちょ)、平岡ひらおか正徳まさのりわけ) 『音楽おんがく工学こうがくまことぶんどう新光しんこうしゃ、1969ねん
  17. ^ アンリー・アルテス(へん)、植村うえむら泰一やすいちわけ解説かいせつ) 『アルテス・フルート奏法そうほう だいいちかん』 シンフォニア、1978ねんISBN 978-4-88395-580-0、126ぺーじ
  18. ^ トレヴァー・ワイ(ちょ)、笹井ささいじゅんわけ) 『トレヴァー・ワイ フルート教本きょうほん1 だい1かんおん音楽之友社おんがくのともしゃ、2011ねんISBN 978-4-276-60614-2、22ぺーじ
  19. ^ 木管もっかん楽器がっき演奏えんそうしん理論りろん』p20-22
  20. ^ https://www.tkwo.jp/qa/flute/fl217.html
  21. ^ フルートのえらかた:材質ざいしつからえらぶ - 楽器がっき解体かいたい全書ぜんしょ - ヤマハによる解説かいせつ
  22. ^ 材質ざいしつによる音色ねいろひび - 村松むらまつフルート製作所せいさくしょによる解説かいせつ
  23. ^ John W. Coltman 「Effect of Material on Flute Tone Quality」 1970ねん7がつ27にち:1970ねん物理ぶつり学者がくしゃのジョン・W・コルトマン (John W. Coltman) がおこなった実験じっけんぎんどうつくったキーのいフルートを用意よういし、被験者ひけんしゃからえないようにしておとだけをかせたところ、プロ演奏えんそう学生がくせい演奏えんそうされている楽器がっき材質ざいしつ識別しきべつすること出来できなかった。
  24. ^ File:Principes de la flute traversiere 1728.jpg - IMSLP/ペトルッチ楽譜がくふライブラリー: パブリックドメインの無料むりょう楽譜がくふ”. imslp.org. 2021ねん10がつ27にち閲覧えつらん
  25. ^ Versuch einer Anweisung die Flöte traversiere zu spielen (Quantz, Johann Joachim) - IMSLP/ペトルッチ楽譜がくふライブラリー: パブリックドメインの無料むりょう楽譜がくふ”. imslp.org. 2021ねん10がつ27にち閲覧えつらん
  26. ^ 石井いしい, あきらバロック・フルートにおけるみぎ小指こゆびうんゆび : オトテールとクヴァンツによる教則きょうそくほん中心ちゅうしん」『慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく日吉ひよし紀要きよう. 人文じんぶん科学かがくだい17ごう、2002ねん、133–156ぺーじ 
  27. ^ Bret Newton (2015-09-14), G Treble Flute, Bandestration, https://bandestration.com/2015/09/14/g-treble-flute/ 
  28. ^ Soprano Flute古田ふるたフルート工房こうぼうhttps://www.kotatoandfukushima.com/soprano-flute 
  29. ^ Bret Newton (2015-09-14), E-flat Soprano Flute, Bandestration, https://bandestration.com/tag/soprano-flute/ 
  30. ^ Contr’alto Flute, Eva Kingsma, http://www.kingmaflutes.com/mySite/contralto.html 
  31. ^ contr’alto, Hogenhuis flutes, http://www.hogenhuis-flutes.com/contralto 
  32. ^ a b Bass Flute in F / Contra Bass Flute in C古田ふるたフルート工房こうぼうhttps://www.kotatoandfukushima.com/bass-flute-in-f-contra-bass-flute-in-c 
  33. ^ Subcontrabass flute, Eva Kingma, http://www.kingmaflutes.com/mySite/subcontra.html 
  34. ^ Subcontrabass flute in F古田ふるたフルート工房こうぼうhttps://www.kotatoandfukushima.com/subcontrabass-flute-in-f 
  35. ^ 古田ふるたフルート工房こうぼう 沿革えんかくhttps://www.kotatoandfukushima.com/about-us 
  36. ^ Subcontrabass flute, Hogenhuis flutes, http://www.hogenhuis-flutes.com/subcontrabassflute 
  37. ^ Susan J. Maclagan (2001). A Dictionary for the Modern Flutist. The Scarecrow Press. p. 92. ISBN 0810867281 
  38. ^ Peter Sheridan, The Deepest Flute Voice: The Hyperbass Flute, Low Flutes, http://www.lowflutes.com/news/the_deepest_voiceexplorations_into_the_hyperbass/ 
  39. ^ クロサワ楽器がっきてん管楽器かんがっきブランドサイト 製品せいひんカタログ | Import Wind.com PRODUCT CATALOG”. www.importwind.com. 2022ねん10がつ29にち閲覧えつらん
  40. ^ マテキフルート廃業はいぎょうのおらせ”. - Flutist - Sawako (2020ねん1がつ12にち). 2020ねん11月19にち閲覧えつらん
  41. ^ マテキフルートのあゆみ 2”. - Flutist - Sawako (2020ねん2がつ2にち). 2020ねん11月19にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん 編集へんしゅう

外部がいぶリンク 編集へんしゅう