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修辞技法 - Wikipedia

修辞しゅうじ技法ぎほうしゅうじぎほうとは、文章ぶんしょうやスピーチなどにゆたかな表現ひょうげんあたえるための一連いちれん表現ひょうげん技法ぎほうのこと。英語えいごの「figure of speech」やフランス語ふらんすごの「figure de style」などから翻訳ほんやくされた現代げんだいてき表現ひょうげんで、かつての日本語にほんごではぶんいろどりぶんさい、またたんいろどりあやなどといっていた。

概説がいせつ

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修辞しゅうじ技法ぎほうギリシアローマ時代じだいから学問がくもんてき対象たいしょうとしてあつかわれており、修辞しゅうじがく(レトリック、Rhetoric)という学問がくもんてき存在そんざい領域りょういきとなっている。

西洋せいよう古典こてん修辞しゅうじ学者がくしゃらによって Scheme(配列はいれつえること)と Trope(転義てんぎ比喩ひゆ)に大別たいべつされた。

分類ぶんるい

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西洋せいよう古典こてん修辞しゅうじ学者がくしゃたちは修辞しゅうじ技法ぎほうおおきくつぎの2つに分類ぶんるいした。

  • Scheme - 言葉ことばのパターン(配列はいれつ)を通常つうじょうのパターン、あるいは予想よそうされるパターンからそらせる修辞しゅうじ技法ぎほう
  • 比喩ひゆTrope転義てんぎほうとも) - 一般いっぱんてき意味いみえたり修飾しゅうしょくしたりする修辞しゅうじ技法ぎほう

しかしルネサンスになると、修辞しゅうじ学者がくしゃたちはぜん修辞しゅうじ技法ぎほう分類ぶんるい情熱じょうねつかたむけ、作家さっかたちは修辞しゅうじ技法ぎほう種類しゅるい下位かい分類ぶんるい種類しゅるいひろ拡張かくちょうした。ヘンリー・ピーチャム英語えいごばんThe Garden of Eloquence(1577ねん)には184の修辞しゅうじ技法ぎほう列挙れっきょされている。そのなかで、ピーチャムは分類ぶんるいについて以下いかのようにいている。「単純たんじゅんにするために、このほんではぶんいろどりを scheme と比喩ひゆ (trope) にけ、( Figures of Disorder がやったような)さらなる下位かい分類ぶんるいおこなわない。かくジャンル、技法ぎほうアルファベットじゅん列挙れっきょする。それぞれの項目こうもくではくわしい説明せつめいれいげるが、列挙れっきょするときみじか定義ていぎ便宜べんぎてきなものである。列挙れっきょしたもののいくつかは、おおくのてん類似るいじしたぶんいろどりおもわれるだろう。」

なお日本にっぽんにおける修辞しゅうじ名称めいしょうは、各国かっこく修辞しゅうじがくにおける文献ぶんけんにおいてえいどく仏語ふつごラテン語らてんごかく学者がくしゃなどが和訳わやくしたものであり、名称めいしょう表記ひょうきれがあることを留意りゅういすべきである。また、以下いかべる用例ようれいぶんは、一般いっぱん書籍しょせきからの引用いんようではなく、技法ぎほう文献ぶんけんから咀嚼そしゃくしたうえであくまでれいとして記述きじゅつしたものである(一般いっぱん書籍しょせきから引用いんようすると、註釈ちゅうしゃくおおくのぺーじくことになることと、文体ぶんたい歴史れきしてき仮名遣かなづかいなどの問題もんだい発生はっせいするため)。

比喩ひゆ譬喩ひゆ、ひゆ)とは、語句ごくぶん文章ぶんしょう出来事できごと作品さくひん全体ぜんたいなどの物事ものごとを、それと共通きょうつうこうのあるべつ物事ものごとえて表現ひょうげんする手法しゅほうである。たいし、たとえられる物事ものごときと実感じっかんさせる効果こうかつ。比喩ひゆもちいた修辞しゅうじほう比喩ひゆほうといい、佐藤さとう信夫しのぶちょの『レトリック事典じてん』では直喩ちょくゆ隠喩いんゆ換喩かんゆつつみたとえしている。

直喩ちょくゆほう

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直喩ちょくゆ(ちょくゆ、あかりたとえめいゆ、シミリー)とは「(まるで・あたかも)~(のようだ・ごとし・みたいだ)」のように、比喩ひゆであることを読者どくしゃたい明示めいじしている比喩ひゆである。直喩ちょくゆもちいた修辞しゅうじほう直喩ちょくゆほうという。祇園ぎおん精舎しょうじゃかねこえ諸行無常しょぎょうむじょうひびきあり…』でられる『平家ひらか物語ものがたり』のじょだんは、この直喩ちょくゆ典型てんけいれいである[独自どくじ研究けんきゅう?]日本にっぽんでは現代げんだいでも頻繁ひんぱんもちいられてはいるが、きん現代げんだい西洋せいようではあまり洗練せんれんされた技法ぎほうとはみなされておらず(ある意味いみ野暮やぼ技法ぎほうだとなされており)、文筆ぶんぴつ作家さっか詩人しじん知識ちしきじんなどの文章ぶんしょうでは、直喩ちょくゆよりも隠喩いんゆ次項じこう参照さんしょう)のほうが頻繁ひんぱんもちいられる[よう検証けんしょう]

用例ようれい
  • あかぼうはだまるで綿めんあめのようにふわふわだ。
  • とりみたいにはねえたら自由じゆうそらべるのに。
  • 息子むすこ二宮にのみや金次郎きんじろうのごとく勉学べんがくはげんだ。
  • あいつのいない夏休なつやすみなんて真夏まなつのスキーじょうみたいなものだ

隠喩いんゆほう 

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隠喩いんゆ(いんゆ、暗喩あんゆ、メタファー)にけられるものは、比喩ひゆであることが明示めいじされていない比喩ひゆである。隠喩いんゆもちいた修辞しゅうじほう隠喩いんゆほうという。

用例ようれい
  • よるとばりしずかにまくろす。
  • このおもわすれまいと、しん宝石ほうせきばこ仕舞しまんだ。
  • 満天まんてんほしにんあいだそそぐ。

などで、いずれも「まるで」「ごとし」「ようだ」などといった比喩ひゆ明示めいじするためのかたりもちいられていない。直喩ちょくゆくらべて、より洗練せんれんされた比喩ひゆだとされる。

「すし状態じょうたい」「団子だんごレース」「マシンガントーク」などのように定型ていけいとなった表現ひょうげんられる。

換喩かんゆほう

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換喩かんゆ(かんゆ、メトニミー)とは表現ひょうげんする事柄ことがらをそれと関係かんけいふか付属ふぞくぶつなどで代用だいようして表現ひょうげんする比喩ひゆである。換喩かんゆもちいた修辞しゅうじほう換喩かんゆほうという。また「永田町ながたちょう」とって国会こっかいを、「あおいもん」とって徳川とくがわすのも換喩かんゆ一種いっしゅとされ、『象徴しょうちょうたとえ』とやくされている。

用例ようれい
  • 「バッハ」が大好だいすきだ。
    バッハ」がバッハの作品さくひんしている。
  • 「そのワインをけてくれ」
    実際じっさいけるのはワインではなく、ワインがはいっているボトルのせんである。
象徴しょうちょうたとえ用例ようれい
  • ボルドーあかブルゴーニュしろ
    ここでの「あか」と「しろ」はワインの種類しゅるいしている。
  • ペンけんよりつよし。
    ここでのペンは弁舌べんぜつ学問がくもんし、けん武力ぶりょく暴力ぼうりょく戦争せんそうなどをしている。

ひさげたとえほう

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ひさげたとえ(ていゆ、シネクドキ《Synecdoche》)とは上位じょうい概念がいねん下位かい概念がいねんあらわしたり、ぎゃく下位かい概念がいねん上位じょうい概念がいねんえたりする比喩ひゆをいう。換喩かんゆとのちがいは、包含ほうがんする関係かんけいにあるかかである。ひさげたとえもちいた修辞しゅうじほうひさげたとえほうという。

用例ようれい
  • まったく、なさけないおとこだ。
    ある人物じんぶつ相手あいてにこうげたときなさけないのはその相手あいて下位かい概念がいねん)だけであって、おとこ全般ぜんぱん上位じょうい概念がいねん)をしているわけではない。
  • 豚肉ぶたにくわるくないけど、どちらかといえばとりほうきだな。
    まずとりという上位じょうい概念がいねんにわとりという下位かい概念がいねんしている。さらに、にわとりという上位じょうい概念がいねんからさらに下位かい概念がいねん鶏肉とりにく、あるいは鶏肉とりにく料理りょうりしている。このようにひっさげたとえ上位じょうい下位かい概念がいねん階層かいそうすることもある。
  • かみもすっかり値上ねあがりしたので、本当ほんとうこまる。
    会話かいわ状況じょうきょうによって、このかみがトイレットペーパーをしてるのか、それともなんらかの用箋ようせんしているのかわからないが、かみという上位じょうい概念がいねんで、下位かい概念がいねん想起そうきさせるものとなっている。

諷喩(ふうゆ、えい: Parable)とは、寓意ぐういアレゴリー)に使つかわれるようなたとえのみを提示ていじすることで,本当ほんとう意味いみ間接かんせつてき推察すいさつさせる比喩ひゆ[1][2]寓言ぐうげんほうぐうたとえほうともぶ。

用例ようれい
  • 燕雀えんじゃくえんじゃくやすいずくん鴻鵠こうこくこうこくこころざしらんや」
    しょう人物じんぶつ大人おとなぶつしんはわからない、ということをとりはなしのみをして推察すいさつさせている。燕雀えんじゃく小物こもの鴻鵠こうこく大物おおものという共通きょうつう認識にんしきうえ成立せいりつする諷喩。
  • さるからちる
    のぼりを得意とくいとするさるでもからちることのみをしめし、得意とくいひとでも失敗しっぱいすることがあるという意味いみ推察すいさつさせる諷喩。

比喩ひゆ表現ひょうげんふくあい

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これらの比喩ひゆふくごうすることもある。たとえば「みぎのエース」という表現ひょうげんは、エースでいち番手ばんて暗喩あんゆみぎ右手みぎてげる投手とうしゅあらわ換喩かんゆねている。さらに、「みぎのエース」という言葉ことばは、野球やきゅうのみでしか通用つうようしないので、野球やきゅうという上位じょうい概念がいねんなか下位かい概念がいねんあたいすることから、この表現ひょうげんそのものがひさげたとえとなっている。

擬態ぎたいほう

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擬態ぎたいほうぎたいほうは、表現ひょうげんする事象じしょうについて、様子ようす文字もじとしてあらわした擬態語ぎたいごや、擬音ぎおん擬声語ぎせいごもちいた修辞しゅうじほうである。「あねにこにこわらっていた」というぶんでの「にこにこ」が擬態語ぎたいごに、「いぬワンワンく」の「ワンワン」が擬声語ぎせいごにあたる。

擬態語ぎたいご擬音ぎおん擬声語ぎせいご

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擬態語ぎたいごぎたいごは「様子ようす」、擬音ぎおんぎおんごは「おと」、そして、擬声語ぎせいごぎせいごは「動物どうぶつごえ」などを言語げんごしたものである。写生しゃせいこえたとえ仏語ふつごオノマトペ (onomatopee)、しくは英語えいごオノマトペア (onomatopoeia) ともいう。擬音ぎおん擬声語ぎせいご)をもちいることにより、ものごとをきと表現ひょうげんする効果こうかや、また、ものごとにたい読者どくしゃ親近しんきんかんいだ効果こうかなど、さまざまな効果こうかまれる。とびらふうガタガタおとてるといった擬音ぎおん幼児ようじでは、いぬごえ擬声語ぎせいごであるワンワンのように、そのもののはっするこえあらわ擬声語ぎせいごがそのものの名称めいしょうとしてもちいられる場合ばあいもある。擬態語ぎたいごは「動作どうさ様態ようたい感覚かんかく心理しんり状況じょうきょう」などの様子ようす文字もじとしてあらわ方法ほうほうで、傷口きずぐちズキズキいたむ、心配しんぱいハラハラするなどがれいとしてげられる。また、そもそも言語げんごではないものを言語げんごしているため、言語げんごによってこれらのかたりことなることがある。

なお日本にっぽん国語こくご教育きょういくでは文法ぶんぽうとして擬音ぎおんはカタカナを、擬態ぎたい平仮名ひらがな使つかうようにおしえている[よう出典しゅってん]

擬人ぎじんほう

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比喩ひゆなかでもとくに、ひとでないものを人格じんかくし、ひとたとえる手法しゅほう擬人ぎじんほう(ぎじんほう、かつたとえ)という。その場合ばあいたいし、たとえられる「ひとでないもの」にたいするちかしさをいだかせる効果こうかまれる。擬人ぎじん擬人ぎじんかん参照さんしょうのこと。

  • うみかえるところなし」(山口やまぐち誓子せいこ
  • はわたしにかってった。
  • ふうわたしやさしくでた。

擬物まがいもの表現ひょうげん

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擬人ぎじんほうぎゃくに、ひと動作どうさ様子ようす物質ぶっしつたとえる手法しゅほうがあり、これを「擬物まがいもの表現ひょうげん」、「結晶けっしょうほう」、「実体じったい」(原義げんぎは Hypostatization《えい》)などとやくしている。以下いか例文れいぶんである。

  • 黙々もくもくはたらかれ姿すがたは、うなればロボットである。 
  • 彼女かのじょ笑顔えがおが、ぼくにとって元気げんきくすりだ。
  • かれつようんを、すこしはけてしいぐらいだ。

生物せいぶつ形象けいしょう無機物むきぶつ形象けいしょう擬人ぎじん表現ひょうげん擬物まがいもの表現ひょうげんぎゃく相関そうかん

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擬人ぎじんほう対照たいしょうてき概念がいねん動物どうぶつ形象けいしょう無機物むきぶつ形象けいしょうがある。おおくの文化ぶんかけん言語げんごけんにおいてられる用法ようほうであり、いわゆる擬人ぎじんイメージのぎゃく擬物まがいもの解釈かいしゃくすることができる。

ある人間にんげん以外いがい生物せいぶつ無機質むきしつ物体ぶったい自然しぜん現象げんしょうなどが、その特徴とくちょう生態せいたいなどから、ある特定とくてい擬人ぎじん表現ひょうげんがなされることがひろ周知しゅうちされている場合ばあいに、ぎゃく人間像にんげんぞうをその生物せいぶつ物体ぶったい自然しぜん現象げんしょうなどにたとえる用法ようほうである。

この表現ひょうげんれいとして、古来こらい各地かくちで「あのひとは~のようなひとだ」の「~」に様々さまざま生物せいぶつ形象けいしょう無機物むきぶつ形象けいしょうもちいられている。

  • アリのようなひと
    社会しゃかいせいのあるアリ、とくはたらきアリのイメージにたとえ、勤勉きんべん人物じんぶつあるいは黙々もくもくみずからのぞくする組織そしきくすひと
  • カメレオンのようなひと
    みずからの外敵がいてきからの攻撃こうげきをさけるため、周囲しゅうい環境かんきょうによってからだしょく自在じざいえるカメレオンのイメージにたとえ、自分じぶん周囲しゅうい状況じょうきょう察知さっちして主義しゅぎ主張しゅちょういをコロコロえるひと世渡よわた上手じょうず、お調子ちょうししゃ
  • 風見鶏かざみどりのようなひと
    「カメレオンのようなひと」と同義どうぎ
  • ハゲタカのようなひと
    健康けんこう相手あいてけっしておそわないが、ひとたびその相手あいておとろえたりんだりすると、よってたかってそのにくをむさぼるイメージにたとえ、ひとよわみにつけこんで自分じぶん利益りえきをむさぼるひと
  • かいのようなひと
    二枚貝にまいがいかたからじているイメージにたとえ、無駄むだくちひらかないひと、ないしは身持みもちがかた防御ぼうぎょてき傾向けいこうにあるひと
  • 太陽たいようのようなひと
    太陽系たいようけい恒星こうせいたとえ、その系統けいとう中心ちゅうしんとなるようなひと、あたたかいひと

倒置とうちほう

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文章ぶんしょう通常つうじょう主語しゅご目的もくてき述語じゅつごじゅん記述きじゅつされるが、この順序じゅんじょ倒置とうち逆転ぎゃくてん)させ、目的もくてき強調きょうちょうする手法しゅほうのこと。

  • わたしたから在処ありかめた。(通常つうじょう
  • わたしめた、たから在処ありかを。(倒置とうちほう
  • めた、たから在処ありかを、うまでもなくわたしが。(主語しゅご倒置とうちしたかたち

反復はんぷくほう

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おななんかえし、強調きょうちょうする。連続れんぞくして反復はんぷくする場合ばあいと、間隔かんかくいて反復はんぷくする場合ばあいがある。

  • たかたかく、あおんだそら
  • ははにたまひゆく ははまし ちちらひしははよ」(斎藤さいとう茂吉しげよし

どうかたり反復はんぷく

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おな言葉ことばもちいることで、語気ごきつよめる用法ようほう。トートロジー (Tautology) の訳語やくごの1つ。

例文れいぶん
  • それはそれ、これはこれだ。
  • まあ約束やくそく約束やくそくだ。したからにはまもらないとな。

首尾しゅびどうかたり反照はんしょうほう

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べつ場面ばめんまったおな表現ひょうげんもちいる手法しゅほう。たとえば冒頭ぼうとうに、「平和へいわあさだ」としるし、巻末かんまつに「平和へいわあさかえってきた」などと表現ひょうげんする。反復はんぷくほうひとつである。

用例ようれいとして童話どうわ『モチモチの』なども首尾しゅびどうかたり好例こうれいである。一人ひとり便所べんじょけない臆病おくびょう主人公しゅじんこうがクライマックスで疾風しっぷう怒濤どとう勇気ゆうきしぼっているのに、巻末かんまつではやはり一人ひとり便所べんじょにはけなかったとしるされ、はなしめられている。

体言たいげん

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体言たいげん名詞めいし名詞めいし)で文章ぶんしょうえること。名詞めいしともしょうする。いいきらずに、ぶん語尾ごびける終止しゅうしがたはぶき、体言たいげんめて、強調きょうちょうさせたり、余韻よいんのこすことをいう。

とく感動かんどう表現ひょうげんするために、たとえば「みずながれる」というぶん主語しゅご述語じゅつご順番じゅんばんぎゃくにして「ながれるみずよ」のように体言たいげんめるいいかたを、喚体という。

実際じっさい主張しゅちょう疑問ぎもんかたちいているが、つよ断定だんていあらわ用法ようほう。また、肯定こうていかたちあらわしているが、つよ皮肉ひにくあらわすこともある。種類しゅるいとして皮肉ひにくほう反語はんごてきさんやめ反語はんごてき期待きたい反語はんごてき緩和かんわ反語はんごてき否認ひにんなどがある。

反語はんご用例ようれい
  • むかしうつくしいまちだったとっても、だれがしんじるだろうか。(いや、だれしんじないだろう。)
  • あの社長しゃちょう経営けいえい方針ほうしんのせいで、どれだけの労働ろうどうりょく犠牲ぎせいになったことか。(おおくが犠牲ぎせいになったのだ。)

否定ひてい表現ひょうげんとなることがおおいが、肯定こうてい表現ひょうげんることもある。


反語はんごてきさん用例ようれい
  • おやおや、ずいぶん丁寧ていねいあつかいだこと。(とてもひどいあつかいだ。)
  • きみ達筆たっぴつじゃ上司じょうしせるのはちょっとね…。
  • 資金しきんりょく大物おおもの選手せんしゅあつめてるわけだし、そんなスター軍団ぐんだんけるはずないよね。

せかけは肯定こうていぶんであるが、中身なかみはまるっきり皮肉ひにくまじえた反語はんごとなっている。広義こうぎでは皮肉ひにくほうともいえるが、ちがいは長所ちょうしょべておきながらその長所ちょうしょ内面ないめん否定ひていしているてんである。


反語はんごてき期待きたい用例ようれい
  • きみ会社かいしゃめるかは自分じぶんめることだ。くん実績じっせきうえたか評価ひょうかしている。それに、きみ接客せっきゃくたのしみにしてるきゃくもいっぱいいるしな。

表向おもてむきは肯定こうていしているが、実際じっさいは「会社かいしゃめるな」とつよ相手あいてうったえているのがかる。


反語はんごてき緩和かんわ用例ようれい
  • った、だなんておもってないよ。このまえだいぶたせたりがあるしね。

皮肉ひにく自嘲じちょうふくまれていないが、能動のうどう受動じゅどう関係かんけい逆転ぎゃくてんしており、ここではたされた相手あいてえて、自分じぶんからつことにしたと反転はんてんして表現ひょうげんすることで、体裁ていさいわる相手あいて立場たちばなごやかにえている。無論むろん相手あいてにとってもたせることにたいしてしをつくったおぼえなどないはずであるが、結局けっきょくは「おたがさまだよ」とうったえているようになっている。


反語はんごてき否認ひにん用例ようれい
  • 以後いごかれ活躍かつやくは、えてここで必要ひつようもないだろう。

反語はんごてき期待きたいぎゃく表現ひょうげんじょうでは否定ひていだが、文章ぶんしょうじょうではただしいことをべる肯定こうていとなっている。


対象たいしょうぶつとの密接みっせつ関係かんけいあらわ手法しゅほう。「~よ」などのかたちになることもおおい。

パラレリズム

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全体ぜんたい一定いっていのパターンをあたえる目的もくてきで、2つ以上いじょうぶん部分ぶぶん類似るいじ形式けいしきあたえること。対句ついくほう平行へいこう構造こうぞう平行へいこうたい, 並行へいこうたいともわれる。ヘブライ聖書せいしょ漢詩かんしをはじめ、広範こうはん使つかわれる。

漢詩かんしやことわざで使つかわれる場合ばあいは「対句ついく」という言葉ことばがあてられる。2つ以上いじょう語呂ごろ対照たいしょうてきもちいる。もともとは漢文かんぶん駢文におけるテクニックのひとつで、日本語にほんごでは漢字かんじ漢文かんぶん伝来でんらいとともに使つかわれるようになり、現在げんざいにおいても、日本語にほんご表現ひょうげん方法ほうほうとして無意識むいしき使用しようされている。れいとして、

  • しかあれども、よにつたはることは、ひさかたのあめにしては、したてるひめにはじまり、あらがねのつちにしては、すさのをのみことよりぞおこりける。(古今ここん和歌集わかしゅう
  • 祇園ぎおん精舎しょうじゃかねこえ諸行無常しょぎょうむじょうひびきあり。沙羅双樹さらそうじゅはないろ盛者じょうしゃ必衰のをあらはす。」(平家ひらか物語ものがたり

などがある。

よん熟語じゅくごでのれい枚挙まいきょひまがない。ふたつの熟語じゅくごたいにするれいおおい。

押韻おういん

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詩歌しかなどでおなおんまった場所ばしょかえ使つかうこと(=いんむこと)。語句ごくあたまおとそろえることを頭韻とういんほう語句ごくわりや行末ゆくすえそろえることを脚韻きゃくいんという。

  • わらかにやなぎなぎあをめる北上ほくじょうたがみ
    岸辺きしべしべ
    けとごとくに(石川いしかわ啄木たくぼく

上記じょうきれい頭韻とういんである。

語句ごく挿入そうにゅう

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括弧かっこやリーダー、ダッシュなどを使つかって、かた説明せつめい補足ほそくしたり、弁明べんめいしたりする表現ひょうげん

説明せつめい補足ほそく用例ようれい
  • すくなくとも、かれほう生徒せいと会長かいちょう相応ふさわしいとおもう(といっても、どっこいどっこいだが)。
    括弧かっこ説明せつめい補足ほそくすることで、ようはどっちでもどうじ、双方そうほう相応ふさわしくないとおもっている第三者だいさんしゃ心理しんりれるようになる。
弁明べんめい用例ようれい
  • かれは(時期じき尚早しょうそうだとはおもいつつ)、社長しゃちょうしん事業じぎょうについて提案ていあんしてみた。
    括弧かっこれなくても文章ぶんしょう内容ないようかよっている。これを括弧かっこふくめることで、主語しゅご人物じんぶつ躊躇ちゅうちょ僭越せんえつじゃないかという懸念けねんがあったという弁明べんめい)がよりはっきりかしりされるようになる。

省略しょうりゃくほう

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文章ぶんしょう会話かいわ一部いちぶ省略しょうりゃくすること。西洋せいよう修辞しゅうじがくでは、省略しょうりゃくされた要素ようそ文脈ぶんみゃくなどから推断すいだんかつ復旧ふっきゅうすることができる。内容ないよう短縮たんしゅくする目的もくてき使つかわれることがおおい。くびき語法ごほうもその一種いっしゅである。

文学ぶんがく技法ぎほうとして、余韻よいんのこし、読者どくしゃつづきを連想れんそうさせる意図いとてき省略しょうりゃく (Purposeful omission) もある。もっぱら、省略しょうりゃくした部分ぶぶんにはダッシュやリーダーが使つかわれる。

用例ようれい
  • かれらしぶりはとても贅沢ぜいたくだ。高級こうきゅう外車がいしゃ腕時計うでどけい宝飾ほうしょくひん、そして瀟洒しょうしゃ邸宅ていたく…。
    相手あいて贅沢ぜいたくらしぶりのいちれい列挙れっきょしているが、えて全部ぜんぶげる必要ひつよういため、めぼしいものだけをげており、同時どうじにその相手あいてたいして、つよ感嘆かんたんうったえている。
  • あいつほどいいやつはいなかった。…なのに、なんであんな喧嘩けんかをしたのだろう。
    文脈ぶんみゃくうえでは、リーダを省略しょうりゃくしても意味いみつうじている。しかし、えてリーダをれることで、そのあいだ主語しゅご人物じんぶついている悔恨かいこん困惑こんわくねん読者どくしゃうったえかける仕組しくみになっている。
  • 戦争せんそうですっかりきたまち―。―あれからすうじゅうねん、あのころっているものすくなくなった―。
    ダッシュが頻繁ひんぱんもちいられるれい。ダッシュで被災ひさい都市とし経歴けいれき、さらにそこからいた作者さくしゃ感情かんじょうすべてを省略しょうりゃくしており、よりつよ感情かんじょう読者どくしゃうったえるようになっている。

また、漫画まんが小説しょうせつなどでは「…」など相手あいて会話かいわしにリーダーだけがもちいられることがある。これは言葉ことばでは表現ひょうげんしにくい感情かんじょう抽象ちゅうしょうてき表現ひょうげんしたものである。


くびき(くびき語法ごほう用例ようれい
  • みな優勝ゆうしょうたたえた。監督かんとくもコーチも観衆かんしゅうも、そしてやぶれたライバルさえも。
    くびきとは馬車ばしゃける金具かなぐであるが、原義げんぎである Zeugma を直訳ちょくやくしたものである。ようかえしとなる述語じゅつごひとつにくくったもので、倒置とうち表現ひょうげんとなることがおおい。ここをひとつにくくらなかった場合ばあい
  • 監督かんとく優勝ゆうしょうたたえた。コーチも優勝ゆうしょうたたえた。観衆かんしゅう優勝ゆうしょうたたえた。そしてやぶれたライバルさえも優勝ゆうしょうたたえた。
    と、かなりしつこい文章ぶんしょうになるが、このような技法ぎほうもある(→後述こうじゅつ:#たたみ句法くほう


なる叙法じょほう

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いたいことをとおまわしにって、べつ意味いみつよめる表現ひょうげん例文れいぶんつぎげる。

  • ぼく野球やきゅうきらいだとはわない。
    主語しゅご人物じんぶつ野球やきゅうきらいではないが、いい印象いんしょうっていない。そこには、なに本人ほんにんにとって納得なっとくできない部分ぶぶんがあり、相手あいてつようったえているのは、その納得なっとくできない部分ぶぶんである。
  • まあ、今日きょうのところはこのくらいにしといたる。
    漫才まんざい定番ていばんであるが、これはなる叙法じょほうひとつである。本人ほんにんにとっては、相手あいてのお手並てなみを拝見はいけんするどころか、かえちにっているわけであるが、えてこうこたえることで、不利ふりたたかいから逃亡とうぼうはかりつつも、自分じぶん体面たいめん意地いじでもまもろうとしているのである。

漸層法ぜんそうほう

編集へんしゅう

おな事柄ことがらたいして、徐々じょじょ表現ひょうげんつよめていく手法しゅほう。また、スケールを徐々じょじょちぢめていく表現ひょうげんはん漸層法ぜんそうほうぶことがある。

漸層法ぜんそうほう用例ようれい
  • 非常ひじょうつよれだった。部屋へやはすっかりらかってしまった。とびらひらかないので、まどをこじけてそとてみたらおもわずいきんだ。まわりのいえといういえ軒並のきなみ、しつぶされているのだ。しんかせ、よくると、遠方えんぽう濛々もうもうけむりめているではないか。
    この一連いちれん文章ぶんしょうは、あくまで、自身じしん体験たいけんしただい地震じしんについてのかたりである。はじめは自分じぶんいえのことだけとおもっていたところが、だんだんと被害ひがい実態じったい規模きぼおおきさをたりにしていくさま相手あいてうったえる仕組しくみになっている。
はん漸層法ぜんそうほう用例ようれい
  • 世界せかいのトップアスリートがつどうオリンピック。その選手せんしゅになるため鎬をけず全国ぜんこく猛者もさたち。そして、ここに無謀むぼうにもだい舞台ぶたい夢見ゆめみるちっぽけなおとこがいた。
    徐々じょじょ世界せかい日本にっぽん、そしていち地方ちほう次第しだいにスケールがちぢんでいるのがかる。この文章ぶんしょうではべつおとこにケチをけるつもりはなく、ぎゃくにサクセスストーリーとして読者どくしゃ期待きたいかんあお表現ひょうげんとなっている。これにちをけた場合ばあいややくだほう後述こうじゅつ)と区別くべつされることがある。しかしながら、はん漸層法ぜんそうほうややくだほう原義げんぎどうじ、Anticlimax《えい》である。

対照たいしょうほう

編集へんしゅう

おな立場たちば条件じょうけんにおいてまったぎゃく表現ひょうげん使つか手法しゅほう以下いか例文れいぶんである。

  • あいつはおんなにはあまいくせ、おれたちにはきつい。
  • きみ、この調子ちょうしでは、すぐにあの新入しんいりにされてしまうねえ。
    この例文れいぶんでは文章ぶんしょう省略しょうりゃくされているが、あきらかに有能ゆうのう新人しんじん対比たいひしているのが自明じめいであり、反語はんごにはこのような表現ひょうげんもある。

敷衍ふえん(ふえん)

編集へんしゅう

みじかはなせば会話かいわえてなが形容けいようし、意味いみ強調きょうちょうする手法しゅほう以下いか例文れいぶん

  • このやまは、かつておおくの登山とざんたちをこばんできたほどけわしい。
    いたいことは「このやま危険きけん」ということだけであるが、どれほど危険きけんなのかということを強調きょうちょうするため、「おおくの登山とざんたちをこばんできた」という表現ひょうげんくわえられている。

知名度ちめいどたか記事きじ事件じけんなどを借用しゃくようして、文章ぶんしょう面白おもしろおかしくしたり、物事ものごと揶揄やゆ風刺ふうししたりする表現ひょうげん以下いか例文れいぶんである(ネット掲示板けいじばん会話かいわより抜粋ばっすい

  • きのえサイダーものってなにかある?」
  • おつてんぷらそば」
  • へいつうだな」
  • ちょう「ここには、宮沢みやざわ賢治けんじがおる」

ここで注意ちゅういしなければいけないのは、宮沢みやざわ賢治けんじという人物じんぶつ把握はあくしていないと、なにがおかしいのかからないてんである。宮沢みやざわ賢治けんじは、きつけの蕎麦そばてんぷらそばと一緒いっしょにサイダーをたの習慣しゅうかんがあったとわれており、そのため「てんぷらそばとサイダー」のわせが宮沢みやざわ賢治けんじ連想れんそうさせるものとなっている。しかし、それは一般いっぱんてき習慣しゅうかんとはいえないものなので、おつたいし、へいひのと文章ぶんしょうじょうのおかしさをかんじているのである。よってパロディをもちいる場合ばあいは、ある程度ていど知名度ちめいどたか事物じぶつ人物じんぶつについての、一般いっぱん浸透しんとうした情報じょうほうえらぶのがこのましい。

畳語じょうごほうたたみ句法くほうたたみおんほう

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言葉ことばかさねることで、意味いみ強調きょうちょうする手法しゅほう

  • 一時いちじあいだった、まだない。それから30ふん、まだない。いつまでっても、かれはまだない。
    たたみ。「まだない」というならべ、さんざんちわびていることを強調きょうちょう
  • これこれ、これがしかったんだよ。
    畳語じょうご。これというかたりならべ、これにあたるしなしかったことを強調きょうちょう
  • ガラガラガラガラガラ…、無数むすう小石こいしつぶて断崖絶壁だんがいぜっぺきからすべちていく―。 
    たたみおん擬音ぎおんならべることで、その度合どあいを強調きょうちょう

疑惑ぎわくほう

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曖昧あいまいとした論述ろんじゅつ意図いとてきもちいる手法しゅほう。きっぱりとした回答かいとうきらうときのほか、結論けつろんたずとも、特定とくてい対象たいしょうつよ印象いんしょうけたいときにももちいられる。ためらいの文法ぶんぽうふくまれるとされ、佐藤さとう信夫しのぶ『レトリック事典じてん』ではしゅとして5つの用例ようれいがある[3]

的確てきかく客観きゃっかん表現ひょうげんによる疑惑ぎわくほう用例ようれい
  • 大人おとなぶにはまだあどけない、でも子供こどもぶにはたくましい、少年しょうねんはそんな風格ふうかくただよっていた。
    同様どうよう事柄ことがらふたならべることによって、作者さくしゃ本当ほんとう形容けいようしたいあいだ表現ひょうげん確立かくりつさせようとしている。したがって、このふたつのいずれがけても、文章ぶんしょう成立せいりつしない。
的確てきかく主観しゅかん表現ひょうげんによる疑惑ぎわくほう用例ようれい
  • 試験しけん結果けっかはやりたいし、りたくもない。
    これは主語しゅご人物じんぶつしんのジレンマであり、おそらく「りたくない」ということは自信じしんがないとうかがえる。しかし、実際じっさいどのくらい得点とくてんしたのかをりたいのも事実じじつである。
複数ふくすう評価ひょうかによる疑惑ぎわくほう用例ようれい
  • スポーツで大事だいじなのは攻撃こうげき防御ぼうぎょか、攻撃こうげき大事だいじともえるし、防御ぼうぎょ大事だいじともえる。
    疑惑ぎわくほうには比較ひかく表現ひょうげん優劣ゆうれつけたくない場合ばあいもちいることがおおい。おそらく、相手あいて白黒しろくろけた結論けつろんのぞんでいるはずだが、主語しゅご人物じんぶつこたえをはぐらかしているだけである。それが結果けっかてきひとそれぞれの様々さまざま評価ひょうかゆだねられるものであると結論けつろんづけている。
自己じこ否定ひていともなった疑惑ぎわくほう用例ようれい
  • 子供こどもころんでた田舎いなかなつかしく、ふとおもす。すごい田舎いなかで、交通こうつう不便ふべんで、ちかくにみせひとつもなく、実家じっかのボロ雨漏あまもりなんかもしょっちゅうだったが…。
    後半こうはんだけだと子供こどもころらしていた田舎いなかたいする愚痴ぐちだけしかとらえられないが、それをえて大人おとなになったいまおもとしてよみがえらせていることで、まけ側面そくめん相殺そうさいしてあまるほどのつよ感情かんじょう読者どくしゃうったえかけている。だが、具体ぐたいてき子供こどもころ田舎いなかなにかったのか、作者さくしゃなかでも感情かんじょう漠然ばくぜんとしているため、反語はんごのように自己じこ否定ひていめられた文面ぶんめんになっており、またとらえようによっては本当ほんとう田舎いなか生活せいかつかったのか自問自答じもんじとうする内容ないようともれる。
自意識じいしきつよ疑惑ぎわくほう用例ようれい
  • そいつは、すっとぼけたやつだけど、いつもちかくにいて、おれはたわらってくれるんだ。
    前述ぜんじゅつした、特定とくてい対象たいしょうつよ印象いんしょうづける方法ほうほう。これは主語しゅご人物じんぶつ相手あいてたいし、好意こういった人物じんぶつあんほのめかしているが、本人ほんにん自意識じいしき過剰かじょう気味ぎみ相手あいてたいして特定とくてい対象たいしょうつようったえているのがれる。

誇張こちょうほう

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いたいことを強調きょうちょうしておおげさに手法しゅほう

  • 天地てんちがひっくりかえってもそれはありえない。
  • んでもこの土地とち手放てばなさない。
  • みみあなかっぽじってよく

など。

列挙れっきょほうれつ叙法じょほう

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ある特定とくてい対象たいしょうたいして、関連かんれんせいのある単語たんご、あるいは文章ぶんしょうつづけにならべて強調きょうちょうする手法しゅほう

列挙れっきょほう用例ようれい
  • 地球ちきゅう温暖おんだん、オゾンそう破壊はかい森林しんりん伐採ばっさい酸性さんせい地球ちきゅう環境かんきょう問題もんだいかぞげればきりがない。
れつ叙法じょほう用例ようれい
  • このホテルが営業えいぎょうしていたころはこのあたりにぎわっていた。しかし、かつての繁栄はんえいかげもない。あたりに人気にんきまったく、薄暗うすぐらい。建物たてもののコンクリートはすっかりてている。外壁がいへきには無数むすうづるいている。だれかが侵入しんにゅうしたのか、無残むざんまどガラスもはたられている。

史的してき現在げんざい

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歴史れきしてき現在げんざい」とも。過去かこ出来事できごとを、あたかもたったいまおこなわれているかのようにあらわ手法しゅほう

撞着どうちゃく語法ごほう

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撞着どうちゃくほうともいう。おたが背反はいはんするふたつの真理しんりをつなげる用法ようほうひとつの語句ごくとなっているれいおおい。

用例ようれい
  • 慇懃無礼いんぎんぶれい
    慇懃いんぎんとはねんごろで礼節れいせつわきまえていること。無礼ぶれいとは礼儀れいぎらずのこと。慇懃無礼いんぎんぶれい表向おもてむきは敬意けいいはらっているようで、しんうらでは相手あいて見下みくだしている様子ようすをいう
  • 必要ひつようわる
    本来ほんらいあく必要ひつようとされないが、社会しゃかい、あるいは機構きこううごかしていくうえで、犠牲ぎせいにしなければならない、黙認もくにんせねばならない部分ぶぶん存在そんざいするということ
など。

ひたすらくだほう/ややくだほう

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いろいろと肯定こうていてき文面ぶんめん列挙れっきょしておいて、最後さいごちとなる言葉ことばれることで、全体ぜんたい否定ひていしたり、滑稽こっけい表現ひょうげんをしたりする方法ほうほう漸層法ぜんそうほう一種いっしゅなされる。ひたすらくだほう場合ばあいは、一旦いったんげておいてから一気いっきとす場合ばあいおおい。たいして、段階だんかいてきちを利用りようする手法しゅほうは「ややくだほう」とんでいる学者がくしゃもいるが、はん漸層法ぜんそうほう (Anticlimax) 《→前述ぜんじゅつ:#漸層法ぜんそうほう》の和訳わやくである場合ばあいひたすらくだほう(Bathos)である場合ばあいがあり、かなりまぎらわしくなっている。

ひたすらくだほう

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滑稽こっけい表現ひょうげん用例ようれい
  • 広東かんとん料理りょうりはありとあらゆるものが食材しょくざいになる。―あしえて食材しょくざいにならないのはひとつくえぐらいなものだ。
    ひと記述きじゅつされているのは便宜上べんぎじょうだが、ちとなっているのは食材しょくざいになろうはずもないつくえふくまれているてんである。
全体ぜんたい否定ひてい用例ようれい
  • この大作たいさく映画えいがすごい。独特どくとく世界せかいかん大物おおもの俳優はいゆう起用きよう、セットの豪華ごうかさ、話題わだいせい、どれをっても文句もんくはないだろう。ただ、ストーリーがひどく稚拙ちせつだが。
    この評論ひょうろんうったえたいのは無論むろん最後さいごちの部分ぶぶんであり、結局けっきょく瑣末さまつなものは評価ひょうかしても、根本こんぽん駄目だめなので作品さくひん自体じたいまった評価ひょうかされていないとかるだろう。

ややくだほう

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慣例かんれいせいのある任意にんい対象たいしょうたいして階層かいそうおこない、最後さいごちをってくる手法しゅほう。コントや漫画まんが頻繁ひんぱんもちいられるさんだんちもややくだほうである。

ややくだほう用例ようれい
  • 地震じしんかみなり火事かじ親父おやじ
    ふるくからわれる俚諺りげんであるが、1、2、3のち、4おおきくへだたられた対象たいしょうってくる手法しゅほうで、滑稽こっけい表現ひょうげんかもすことがおおい。ここでは、実際じっさい父親ちちおや厳格げんかく存在そんざいだったという象徴しょうちょうもあるが、自然しぜん驚異きょういとただの一個人いっこじん比較ひかくしているところにおおきな落差らくさられる。
    1. たからくじでさんおくえんたったらなにいたい?」
    2. 外車がいしゃ
    3. 宝石ほうせき
    4. たからくじさんひゃくまんまい
    このコントのように、以外いがい対象たいしょう階層かいそう発生はっせいせず(願望がんぼうとして外車がいしゃ宝石ほうせき同等どうとういため)、平行へいこうせんから急落きゅうらくする場合ばあいもあるが、これもややくだほう分類ぶんるいされる。

だませつ

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省略しょうりゃくほう区別くべつされる。言葉ことばはじめておきながら、激情げきじょう節度せつど抑制よくせいするため、あえて言葉ことばにごらせ、ぶん完結かんけつさせない手法しゅほう省略しょうりゃくされた部分ぶぶん暗黙あんもく了解りょうかいで、読者どくしゃかっていたり、また想像そうぞうふくらませたりするものもある。また、一番いちばん大事だいじ部分ぶぶんをわざとおくらせる場合ばあいぎゃくぶん途中とちゅう中断ちゅうだんする用例ようれいだませつした部分ぶぶんぶん補完ほかんする場合ばあいもあり、これを『待望たいぼうほう』『ぎゃく中断ちゅうだん』『暗示あんじ黙過もっか』などとやくしている。

だませつ用例ようれい
  • 自分じぶんぐんとしたあのコーチがゆるせない。…きっといまに…いま見返みかえしてやるからっていろよ!
    ここでは反骨はんこつ精神せいしんみなぎるそのつよ感情かんじょうすべ省略しょうりゃくされている。しかし、とすれば、そのなか渦巻うずまいているくやしい気持きもちがあんれるはずである。
未決みけつ/待望たいぼうほう用例ようれい
  • 毎晩まいばん終電しゅうでんちかくまで仕事しごとせまる。なけなしのやすみもいきなりされる。職場しょくば上司じょうし自分じぶんなにもできないくせ、他人たにんしかることだけはいちちょうまえだ。なんで、こんな会社かいしゃ自分じぶんがいる。できるものなら、いまからすべてをて、海外かいがいにでもきたい。
    一番いちばん大事だいじ言葉ことばは「きたい」、すなわち会社かいしゃめたいという部分ぶぶんである。しかし、それを冒頭ぼうとうかず、末尾まつびくことで、文章ぶんしょうとしては完結かんけつしておらず、あくまで主語しゅご人物じんぶつ願望がんぼう待望たいぼうとどまっていることがれる。
空間くうかん設定せってい/ぎゃく中断ちゅうだん用例ようれい
  • ぼくは、彼女かのじょあたためてきたおもいをげることにした。
     …彼女かのじょしずかにコクッとうなずいた。
    おそらく、告白こくはくかプロポーズの場面ばめんであり、ここでは登場とうじょう人物じんぶつ台詞せりふ一切いっさい省略しょうりゃくされているが、前者ぜんしゃことなり、結論けつろんだけがしっかりと表現ひょうげんされている。
暗示あんじ黙過もっか/暗示あんじてき看過かんかほう用例ようれい
  • 恩師おんしとのわかれがても、なみだせてはいけない。かれはいつまでも、自分じぶん成長せいちょう見守みまもってくれるよ。
    ここでは本当ほんとうに「なみだせてはいけない」のではなく、おおいにかなしんで当然とうぜんである、という意味いみである。このように言葉ことばでは否定ひていぶんでも、内容ないよう肯定こうていとなっている場合ばあいがある。
きょういわんやの修辞しゅうじがく用例ようれい
  • 彼女かのじょ手料理てりょうりたいらげるのはやっとのことだというのに、こればっかりは…。かれ一目散いちもくさんに、洗面せんめんしょかっていった。
    きょうんやとは「尚更なおさら」という意味いみで、どう事典じてん佐々木ささき健一けんいち補足ほそくもうけている。状況じょうきょうとしては、登場とうじょう人物じんぶつの「彼女かのじょ」は料理りょうり苦手にがてだとれ、それをべさせられる「かれ」はある程度ていどなにとかれているが、流石さすがに「これ」はべられなかったという結論けつろんである。こればっかりは…ののち省略しょうりゃくされているが、かれ料理りょうりからそむける行動こうどう記述きじゅつされているので、暗示あんじされた内容ないよう把握はあくできるだろう。

冗語じょうごほう

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ひとつの事柄ことがらたいして、必要ひつよう以上いじょうかたりもちいる技法ぎほう文法ぶんぽうてきにはあやまりだと指摘してきされることがあるが、あるねらいをって意図いとてきもちいることがおおい。

用例ようれい
  • いまこったことをこの自分じぶんでちゃんとたぞ。
    わざわざこのわずともそれは主語しゅご人物じんぶつだとかるはずであるが、冗語じょうごもちいることで、よりはっきりといま現実げんじつにこうしてたと主張しゅちょうされるようになる。
  • あのえないおとこ今度こんど結婚けっこんするといた。あのくらくて、不格好ぶかっこうおとこ結婚けっこんするだと?
    おとこ評価ひょうかは「えない」で一旦いったん表現ひょうげんされているので、表現ひょうげん冗語じょうごといえるが、より主語しゅご人物じんぶつうたぐふかい、しんじられないという驚嘆きょうたんしんりされる。
  • 「そんなことしても意味いみがない。無意味むいみだ。無駄むだだ。」
     コーチはそう一蹴いっしゅうした。
    意味いみがない、無意味むいみ無駄むだすべおな言葉ことばであり、過剰かじょう表現ひょうげんである。しかし、えてじゅう三重みえ表現ひょうげんをすることによって、その無意味むいみという表現ひょうげん強調きょうちょうすることができる。このような表現ひょうげん冗語じょうごほうなかで、原義げんぎ perissology《えい》にたいして『無効むこう冗語じょうご』とやくしており、『表現ひょうげん過剰かじょう』などと分類ぶんるいしている学者がくしゃもいる。

転用てんよう語法ごほう

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相手あいてつたえたいことを強調きょうちょうするために、通常つうじょう使つか文法ぶんぽう形式けいしきのかわりにべつかたち使つかいる手法しゅほう

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 諷喩 とは - コトバンク”. デジタル大辞泉だいじせん. 小学しょうがくかん. 2011ねん4がつ5にち閲覧えつらん
  2. ^ 野内やない 良三りょうぞう (2005) 『日本語にほんご修辞しゅうじ辞典じてん国書刊行会こくしょかんこうかい
  3. ^ 佐藤さとう信夫しのぶ『レトリック事典じてん

参照さんしょう文献ぶんけん

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  • 佐藤さとう信夫しのぶ佐々木ささき健一けんいち松尾まつおまさる『レトリック事典じてん大修館書店たいしゅうかんしょてん、2006ねんISBN 4-469-01278-5ISBN 978-4-469-01278-1 

現代げんだい海外かいがい

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  • Baldwin, Charles Sears (repr. 1959) Ancient Rhetoric and Poetic: Interpreted from Representative Works. Gloucester: Peter Smith.
  • Henry Caplan (tr.)(1954)Rhetorica ad Herennium. Loeb Classical Library. Harvard University Press.
  • Corbett, Edward P.J. (1971) Classical Rhetoric for the Modern Student. New York: Oxford University Press.
  • Kennedy, George (1696 (4th print)) Art of Persuasion in Greece. Princeton Univ Press, 1969.
  • Lanham, Richard A. (1991) A Handlist of Rhetorical Terms. Berkeley: University of California Press.
  • Mackin, John H. (1969) Classical Rhetoric for Modern Discourse. New York: Free Press.

現代げんだい日本にっぽん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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