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北欧神話 - Wikipedia

北欧ほくおう神話しんわ

ノースじんがかつて信仰しんこうしていた神話しんわ

北欧ほくおう神話しんわ(ほくおうしんわ、アイスランドNorræn goðafræðiノルウェーNorrøn mytologiスウェーデンNordisk mytologiデンマークNordisk mytologi)は、キリスト教化きょうかされるまえノルドじん(ノースじん信仰しんこうもとづく神話しんわスカンディナビア神話しんわともばれている。ゲルマン神話しんわ一種いっしゅで、ノルウェースウェーデンデンマークアイスランドおよびフェロー諸島しょとうつたわっていたものの総称そうしょう普通ふつうフィンランド神話しんわとはべつ系統けいとうのものとされる[ちゅう 1]

北欧ほくおう神話しんわかみ々は不死ふしではないため、最終さいしゅう戦争せんそうであるラグナロクまでいることのないよう、イズン黄金おうごん林檎りんごべなければならない。1890ねん、J・ペンローズさく

北欧ほくおう神話しんわはキリスト教化きょうか以前いぜんスカンディナヴィアひとゆうしていた土着どちゃく宗教しゅうきょう信仰しんこう伝説でんせつからっている。これにはアイスランド入植にゅうしょく定住ていじゅうした人々ひとびとのそれがふくまれており、北欧ほくおう神話しんわ文書ぶんしょされた典拠てんきょだい部分ぶぶんはそこで収集しゅうしゅうされたものである。北欧ほくおう以外いがいゲルマンじんは、はやくからキリスト教化きょうかされたため、民族みんぞく独自どくじ神話しんわ思想しそうしめ書物しょもつがほとんどのこっていない。そのため北欧ほくおう神話しんわは、ふるいゲルマン共通きょうつう異教いきょうがもっとも状態じょうたい保存ほぞんされており、ゲルマンじん古来こらい習俗しゅうぞく精神せいしん理解りかいするじょう貴重きちょう資料しりょうとなっている。このゲルマンの異教いきょうは、アングロ・サクソン神話しんわ密接みっせつ関連かんれんした内容ないようふくんでいる。なお、ゲルマン神話しんわ初期しょきのインド・ヨーロッパ神話しんわから発展はってんしたものである。

北欧ほくおう神話しんわきたゲルマン民族みんぞくによって共有きょうゆうされていた信仰しんこう物語ものがたり集約しゅうやくされたもので、神話しんわかたち口承こうしょうによりつたえられ、現存げんそんする神話しんわについての知識ちしきおもスノッリ・ストゥルルソンによりかれた『エッダ』や、キリスト教化きょうかちゅうまたはそのろされた、中世ちゅうせいにおける版本はんぽんもとづいている。北欧ほくおう神話しんわ基本きほんてきノルドアイスランド)でしるわされているが、『デンマークじん事績じせき』などラテン語らてんごかれたものもある。

北欧ほくおう神話しんわなかにはスカンディナヴィアの伝承でんしょう一部いちぶとなり、現在げんざいまでのこったものもある。その近年きんねん、ゲルマン・ネオペイガニズムとしてさい考案こうあん構築こうちくされている。ステージでの上演じょうえんげき映画えいが同様どうよう神話しんわ現在げんざい様々さまざま文学ぶんがく着想ちゃくそうとしてのこされている。

原典げんてん

編集へんしゅう
 
写本しゃほんいちれい(『AM 156 fol』)

北欧ほくおう神話しんわについて現存げんそんする記録きろくだい多数たすう13世紀せいきにまでさかのぼることができ、すくなくとも正式せいしきキリスト教きりすときょう社会しゃかいとなった世界せかいに、2世紀せいき以上いじょう口承こうしょうかたち保存ほぞんされていた。13世紀せいき学者がくしゃたちはこの口伝くちづたえにのこ神話しんわ記録きろくはじめ、とくキリスト教きりすときょう以前いぜんかみ々が実際じっさい歴史れきしじょう人物じんぶつにまで辿たどることができるとしんじていた学者がくしゃスノッリ・ストゥルルソンにより、『エッダ散文さんぶんのエッダ、しんエッダ)』や『ヘイムスクリングラ』がこされた。このほかにもサクソ・グラマティクスによる『デンマークじん事績じせき』があり、ここでは北欧ほくおうかみ々はよりいっそうエウヘメリズムかみ々は人間にんげん神格しんかくされたものであるという解釈かいしゃく)されている。

『エッダ』を13世紀せいき初期しょきいたスノッリ・ストゥルルソンという人物じんぶつは、卓越たくえつした詩人しじん指導しどうしゃでアイスランドの外交がいこうかんでもあった。この『エッダ』は本来ほんらい、その技法ぎほう学習がくしゅう熱望ねつぼうする詩人しじんけ、入門にゅうもんしょとしてつくられたとされる。この作品さくひんには伝統でんとうてきケニングだいしょうほう)や、まれた暗喩あんゆ表現ひょうげん散文さんぶんたい解説かいせつした内容ないようふくまれている。こうした散文さんぶんたいでのかたりが、北欧ほくおうかみ々についての様々さまざま物語ものがたり体系たいけいてきかつ首尾しゅび一貫いっかんしたものにしたのである。

のエッダ』は29ないし31へんの、年代ねんだい様式ようしきもさまざまなから構成こうせいされている。このうち最初さいしょ配列はいれつされている11のすなわち「神話しんわ」はゲルマンのかみ々をあつかったもので、のこりの「英雄えいゆう」は『ヴォルスンガ・サガ』のシグルズ中世ちゅうせいドイツ叙事詩じょじしニーベルンゲンのうた』の主人公しゅじんこうジーフリトにあたる)のような伝説でんせつてき英雄えいゆうについてかれたものである。『のエッダ』をつたえるさい重要じゅうよう写本しゃほんである「おう写本しゃほん」は『散文さんぶんのエッダ』よりおよそ50ねんうつされたとかんがえられているが、実際じっさいには『のエッダ』にふくまれるいくつものが『散文さんぶんのエッダ』に引用いんようされ資料しりょうとして利用りようされているため、よりふるいとかんがえられ『エッダ』の別名べつめいがある[1]。その物語ものがたりられる言語げんご形態けいたいからも、いくつかの成立せいりつは「おう写本しゃほん」の筆写ひっしゃされた時代じだいよりなん世紀せいきむかしさかのぼるようである。

こうした原典げんてんのほか、9世紀せいきから14世紀せいきにかけて北欧ほくおう編纂へんさんされたサガサットルスカルドなどにも北欧ほくおう信仰しんこう反映はんえいされており、これらからうかがることができる神話しんわ存在そんざいする。またそのスカンディナヴィアの伝承でんしょうなどにも残存ざんそんするいいつたえがあり、そのなか一部いちぶは、英語えいごかれた『フィンネスブルグ争乱そうらん断章だんしょう』に関連かんれんする物語ものがたりや、『デーオルのなげちゅう登場とうじょうする神話しんわてき物語ものがたりへの言及げんきゅうなど、時代じだいふるいゲルマン文学ぶんがくあらわれる伝説でんせつうらづけられている。数々かずかず部分ぶぶんてき文献ぶんけんやいいつたえがのこっているとき学者がくしゃたちは背後はいごにある意味合いみあいや表現ひょうげん推論すいろんすることができるのである。くわえてスカンディナヴィアには、かみ々にちなんでつけられた地名ちめい数多かずおお存在そんざいする。

 
ルーン文字もじ石碑せきひひとつ、レーク石碑せきひ

レーク石碑せきひ(Rök Runestone)やクヴィネビ・アミュレット(Kvinneby amulet)のように、表面ひょうめんきざまれているごく少数しょうすうルーン文字もじ碑文ひぶんにも、神話しんわへの言及げんきゅうがなされている。トール魚釣さかなつりのたびや『ヴォルスンガ・サガ』からの場面ばめんオーディンスレイプニルフェンリルまれるオーディンなど、北欧ほくおう神話しんわからの場面ばめんえがいたルーン文字もじ石碑せきひ絵画かいが石碑せきひもある。現存げんそんするフンネシュタット石碑せきひ(Hunnestad Monument)の1つには、おおかみまたがってバルドル葬式そうしきヒュロッキンえがかれている[2]

デンマークではいた口髭くちひげえ、くちめられているロキ[ちゅう 2]えがかれたいしがあるほか、複雑ふくざつんだえがかれたイギリスゴスフォース十字架じゅうじか石碑せきひもある。さらに隻眼せきがんのオーディンやハンマーをつトール、直立ちょくりつした男根だんこんフレイなどかみ々をえがいたしょう立像りつぞう存在そんざいする。

司教しきょうなどもゲルマンじん信仰しんこうかんする記述きじゅつのこしている。サクソ・グラマティクスは『デンマークじん事績じせき』のなかでスカンディナヴィアのかみ々についてれ、ブレーメンのアダムは『ハンブルク教会きょうかい』をあらわした。またこれら北欧ほくおうあらわされたもののほかに、1世紀せいきごろのローマ歴史れきしタキトゥスあらわした『ゲルマーニア』や、イブン・ファドラーンの『ヴォルガ・ブルガール旅行りょこう』などにも、ゲルマンじん信仰しんこうかんする記述きじゅつのこされていた。

宇宙うちゅうろん

編集へんしゅう
 
世界せかいじゅユグドラシル

北欧ほくおうゲルマンの世界せかいかんでは、このここのつの世界せかいからるといわれることがあるが、原典げんてん資料しりょうに「ここのつの世界せかいとはこれこれである」といった説明せつめいがあるわけではなく、その内訳うちわけ一定いっていしない。

  1. アースガルズ - アースかみぞく世界せかい。オーディンの居城きょじょうヴァルハラ位置いちするグラズヘイムも、この世界せかいふくまれる。ヴァルハラは偉大いだい戦士せんしたちのたましいである、エインヘリャルつど場所ばしょでもあった。こうした戦士せんしたちはオーディンにつかえる女性じょせい使つかい、ヴァルキュリャによってみちびかれる。エインヘリャルはラグナロクかみ々の援軍えんぐんとしてたたかう。ラグナロクとはかみ々と混沌こんとんによるおおいなるたたかいで、いのちあるすべての存在そんざいえるとされた、北欧ほくおう神話しんわにおける最終さいしゅう戦争せんそうである。
  2. ヴァナヘイム - ヴァンかみぞく世界せかい
  3. ミズガルズ - まぬかれない人間にんげん世界せかい大海たいかいにはヨルムンガンドんでいるとされる。
  4. ムスペルヘイム - さかほのお世界せかいスルト国境こっきょうまもっている。
  5. ニヴルヘイム - こおりおおわれた世界せかい。ロキがアングルボザとのあいだにもうけたはんきょじんむすめヘル支配しはいしている(したがってこう掲のヘルとどういちもされる)。
  6. アールヴヘイム - アールヴ(エルフ)の世界せかい
  7. スヴァルトアールヴァヘイム - くろアールヴ(スヴァルトアールヴ)の世界せかいくろアールヴはドヴェルグと同一どういつ存在そんざいかんがえられ、したがってこの世界せかいつぎのニザヴェッリルと同一どういつかもしれない。
  8. ニザヴェッリル - 卓越たくえつした鉱夫こうふうで鍛冶たんやであった、ドヴェルグ(ドワーフ)の世界せかいかれらはトールのハンマーやフレイの黄金おうごんせいのイノシシなど、かみ々のために魔法まほうちからによる道具どうぐをたびたびつくげた。
  9. ヨトゥンヘイム - しも巨人きょじんヨトゥンふく巨人きょじん世界せかい
  10. ヘルまたはニヴルヘル - 病気びょうき寿命じゅみょうんだものおくられる死者ししゃ世界せかいで、同名どうめい女神めがみヘルがおさめている。ミズガルズから北方ほっぽう地下ちかにあるとされる。

こうした世界せかい世界せかいじゅユグドラシルによりつながれており、アースガルズがその最上さいじょう位置いちする[ちゅう 3]。その最下さいかそう位置いちするニヴルヘイムでかじるのは、獰猛どうもうへび(またはりゅう)のニーズヘッグである。アースガルズにはヘイムダルによってまもられている魔法まほうにじはしビフレストがかかっている。このヘイムダルとは、なんせんマイルもはなれた場所ばしょえ、そのおとくことが可能かのうな、ずのばんをするかみである。

北欧ほくおう神話しんわ宇宙うちゅうかんは、つよ二元にげんてき要素ようそふくんでいる。たとえばひるよるは、ひるかみダグとそのうまスキンファクシよるかみノートとそのうまフリームファクシ神話しんわがくじょう相応そうおうするものである。このほか、太陽たいよう女神めがみソールおおかみスコルと、つきかみマーニおおかみハティげられ、世界せかい起源きげんとなるニヴルヘイムとムスペルヘイムがすべてにおいて相反あいはんしているてん関連かんれんしている。これらは、世界せかい創造そうぞう対立たいりつにおけるふか形而上学けいじじょうがくてき信仰しんこう反映はんえいしたものであったのかもしれない。

ちょう自然しぜんてき存在そんざい

編集へんしゅう

かみ々にはアースかみぞく・ヴァンかみぞく・ヨトゥンの3つの氏族しぞくがある。当初とうしょたがいにあらそっていたアースしんぞくとヴァンかみぞくは、最終さいしゅうてきにアースしんぞく勝利しょうりしたながきにわたる戦争せんそうのち和解わかい人質ひとじち交換こうかんことぞくあいだ結婚けっこん共同きょうどう統治とうちおこなっていたとわれており、両者りょうしゃ相互そうご関係かんけいしていた。一部いちぶかみ々は両方りょうほう氏族しぞくぞくしてもいた。この物語ものがたりは、太古たいこからんでいた土着どちゃく人々ひとびと信仰しんこうしていた自然しぜんかみ々が、侵略しんりゃくしてきたインド=ヨーロッパけい民族みんぞくかみ々にってわられた事実じじつ象徴しょうちょうしたものではないかと推測すいそくする研究けんきゅうしゃもいるが、これはたんなる憶測おくそくぎないとつよ指摘してきされている。権威けんいミルチャ・エリアーデJ・P・マロリーひとし)は、こうしたアースしんぞく・ヴァンかみぞく区分くぶんは、インド=ヨーロッパけい民族みんぞくによるかみ々の区分くぶん北欧ほくおうにおいて表現ひょうげんされたものだったとし、これらがギリシア神話しんわにおけるオリュンポスじゅうかみティーターン区分くぶんや、『マハーバーラタ』の一部いちぶ相当そうとうするものであると考察こうさつした。

 
トール幾度いくど巨人きょじんたちとたたか

アースかみぞくとヴァンかみぞくは、全体ぜんたいてきにヨトゥンと対立たいりつする。ヨトゥンはギリシア神話しんわでいうティーターンやギガース同様どうよう存在そんざいであり、一般いっぱんてきに「giants(巨人きょじん)」とやくされるが、「trolls(こちらもきょじん)」や「demons(悪魔あくま)」といったわけほうがよりてきしているのではないかという指摘してきもある。しかし、アースかみぞくはこのヨトゥンの子孫しそんであり、アースかみぞくとヴァンかみぞくなかにはヨトゥンとことぞくあいだ結婚けっこんをしたものもいる。たとえば、ロキは2人ふたりきょじんであり、そのロキとおんな巨人きょじんアングルボザのむすめであるヘルも血筋ちすじからいえばきょじんである。また最初さいしょかみオーディンヴィリ、ヴェー母親ははおやおんな巨人きょじんベストラである。

エッダにおいては一部いちぶ巨人きょじん言及げんきゅうされ、自然しぜんりょく表現ひょうげんであるようにもえる。きょじんには通常つうじょう、スルス(Thurs)と普通ふつう横暴おうぼう巨人きょじんの2つのタイプがあるが、ほかにもがん巨人きょじん巨人きょじんがいる。アールヴドヴェルグといった存在そんざいもおり、かれらの役割やくわり曖昧あいまいてんもあるががいしてかみ々のがわについていたとかんがえられている。

くわえて、ほかにも超自然ちょうしぜんてき存在そんざい数多かずおおくいる。巨大きょだいおおかみであるフェンリルや、ミズガルズを大蛇おろちヨルムンガンドというまぼろしじゅうがいる。このまぼろしじゅうたちは悪戯いたずらきのかみロキと、おんな巨人きょじんアングルボザのとしてえがかれている。にはオーディンのっている2のワタリガラス、フギンとムニン(それぞれ「思考しこう」と「記憶きおく」を意味いみする)がいる。オーディンはそのみずめばあらゆる知識ちしきはいるというミーミルのいずみで、自身じしん片目かためえにみずんだ。そのため、この2ひきのカラスたちはオーディンに、地上ちじょうなにこっているかをらせる。その、ロキので8ほんあしうまスレイプニルはオーディンの所有しょゆうする愛馬あいばで、ラタトスク世界せかいじゅユグドラシルえだはしまわリスである。

北欧ほくおう神話しんわは、おおくの多神教たしんきょうてき宗教しゅうきょうにもられるが、中東ちゅうとう伝承でんしょうにあるような「善悪ぜんあく」としての二元にげんせいをややいている。そのため、ロキは物語ものがたりちゅうにたびたび主人公しゅじんこう一人ひとりであるトールの宿敵しゅくてきとしてえがかれているにもかかわらず、最初さいしょかみ々のてきではない。巨人きょじんたちは粗雑そざつ乱暴らんぼう野蛮やばん存在そんざいとしてえがかれているが、まったくの根本こんぽんてきあくとしてえがかれてはいない。つまり、北欧ほくおう神話しんわなか存在そんざいする二元にげんせいとは厳密げんみつえば「かみ vs あく」ではなく、「秩序ちつじょ vs 混沌こんとん」なのである。かみ々は自然しぜんなか道理どうり構造こうぞうあらわ一方いっぽうで、巨人きょじんたちは混沌こんとん無秩序むちつじょ象徴しょうちょうしている。

 
大地だいちげるオーディン、ヴィリ、ヴェー。『巫女ふじょ予言よげん』におけるミズガルズ創造そうぞう

世界せかい起源きげん終局しゅうきょくは、『のエッダ』のうち冒頭ぼうとうかれたさい重要じゅうよういちへん巫女ふじょ予言よげん」に大枠おおわくえがかれている。これらのぶしにはぜん宗教しゅうきょうのうちでももっとも鮮明せんめい創造そうぞう記述きじゅつと、詳述しょうじゅつされている最終さいしゅうてき世界せかい滅亡めつぼう描写びょうしゃふくまれている。

北欧ほくおう神話しんわにおいては、生命せいめいはじまりはこおりで、ムスペルヘイムニヴルヘイムの2つの世界せかいしか存在そんざいしなかったという。ムスペルヘイムのあつ空気くうきがニヴルヘイムのつめたいこおりれたとき、巨人きょじんユミル雌牛めうしアウズンブラつくされた。ユミルのあし息子むすこみ、わきしたからおとこおんなが1にんずつあらわれた。こうしてユミルはかれらからまれたヨトゥンおよび巨人きょじんたちのおやとなる。

ねむっていたユミルはのちまし、アウズンブラのちちんだ。かれんでいるあいだうしのアウズンブラはしおいわめた。このあと1にちめに人間にんげんかみがそのいわからてきて、つづいて2にちめにあたまが、3にちめに人間にんげん全身ぜんしんいわからあらわれた。かれブーリといい、のない巨人きょじんまじわりボルむと、ボルはベストラめとってこの夫婦ふうふからオーディンヴィリヴェーの3にんかみまれた。

3にんかみ々は自分じぶんたちが十分じゅうぶん強大きょうだいちからっているとかんじ、ユミルを殺害さつがいする。ユミルの世界せかいあふれ、すべてのしも巨人きょじん溺死できしさせた。巨人きょじんベルゲルミルとそのつまだけが例外れいがいで、この2人ふたりからまたきょじんふたたすうやした。そのかみ々はんだユミルの屍体したい大地だいちつくり、かれ血液けつえきうみかわみずうみを、ほねからいわいしを、のうくもを、そして頭蓋骨ずがいこつ天空てんくうをそれぞれつくりだした。さらにムスペルヘイムの火花ひばなは、がりほしとなった。

 
アスクとエンブラの創造そうぞうえがかれたフェロー諸島しょとう切手きって

ある3にんかみ々はあるいていると、2つのみきつけ、人間にんげんかたち変形へんけいさせた。オーディンはこれらに生命せいめいを、ヴィリは精神せいしんを、そしてヴェーは視覚しかく能力のうりょくはな能力のうりょくあたえた[ちゅう 4]かみ々はこれらをアスクとエンブラづけ、かれらのために地上ちじょう中心ちゅうしん王国おうこくつくり、そこをかこむユミルのまつつくられた巨大きょだいへいで、巨人きょじんかみ々の場所ばしょからとおざけた。

 
世界せかいじゅユグドラシルのした運命うんめいいとつむノルン

巫女ふじょはユグドラシルや3はしらノルン運命うんめい女神めがみ[ちゅう 5])の説明せつめいすすむ。巫女ふじょはそのアースしんぞくとヴァンかみぞく戦争せんそうと、オーディンの息子むすこでロキ以外いがいまんにんあいされたというバルドル殺害さつがい[ちゅう 6]について特徴とくちょうべる。こののち巫女ふじょ未来みらいへの言及げんきゅう注意ちゅういける。

終局しゅうきょく終末しゅうまつろん信仰しんこう

編集へんしゅう
 
バルドルから世界せかい終末しゅうまつはじまる

ふる北欧ほくおうにおける未来みらい展望てんぼうは、つめたく荒涼こうりょうとしたものであった。おなじく北欧ほくおう神話しんわにおいても、世界せかい終末しゅうまつぞう不毛ふもうかつ悲観ひかんてきである。それは、北欧ほくおうかみ々がユグドラシルのほかえだものかされる可能かのうせいがあるということだけでなく、実際じっさいにはかれらは敗北はいぼくする運命うんめいにあり、このことをりながらつねきていたというてんにもあらわれている。

しんじられているところでは、最後さいごかみ々のてきがわぐんが、かみ々と人間にんげんたちの兵士へいしよりもかず上回うわまわり、また制覇せいはしてしまう。ロキとかれ巨大きょだい子孫しそんたちはその結束けっそくやぶ結果けっかとなり、ニヴルヘイムからやってくる死者ししゃきているものたちを襲撃しゅうげきする。見張みはりのかみであるヘイムダルが角笛つのぶえギャラルホルンくとともかみ々が召喚しょうかんされる。こうして秩序ちつじょかみぞく混沌こんとん巨人きょじんぞく最終さいしゅう戦争せんそうラグナロクがこり、かみ々はその宿命しゅくめいとしてこの戦争せんそう敗北はいぼくする。

これについてすでづいているかみ々は、たるけて戦死せんししゃたましいエインヘリャルあつめるが、巨人きょじんぞくがわけ、かみ々と世界せかい破滅はめつする。このように悲観ひかんてきなかでも2つの希望きぼうがあった。ラグナロクではかみ々や世界せかいほか巨人きょじんぞくもまたすべてほろびるが、廃墟はいきょからよりあたらしい世界せかい出現しゅつげんするのである。オーディンはフェンリルにまれ、けんうしなっていたフレイはスルトにやぶれ、トールとヨルムンガンド、テュールガルム、ロキとヘイムダルがそれぞれ相討あいうちになる。スルトによってほのおはなたれ、ぜん世界せかい海中かいちゅうへとしずむ。このようにかみ々はラグナロクで敗北はいぼくころされるが、ヴィーザルのようにごく一部いちぶかみのこり、またラグナロクしん世界せかいではバルドルとヘズのようによみがえものもいる。

ただし、ラグナロク展開てんかい解釈かいしゃく資料しりょうによってことなり、ことばんではあらたな世界せかいまれることなく世界せかい滅亡めつぼうするというものもある[3]

おう英雄えいゆう

編集へんしゅう
 
ラムスンド彫刻ちょうこくえがかれている『ヴォルスンガ・サガ』の一節いっせつ

この神話しんわ文学ぶんがくにはちょう自然しぜんてきものたちもさることながら、英雄えいゆうおうたちの伝説でんせつにも関連かんれんしている。物語ものがたり登場とうじょうする氏族しぞく王国おうこく設立せつりつした人物じんぶつたちは、実際じっさいこったある特定とくてい出来事できごとくに起源きげんなどの例証れいしょうとして、非常ひじょう重要じゅうようであるという。この英雄えいゆうあつかった文学ぶんがくのヨーロッパ文学ぶんがくられる、叙事詩じょじし同様どうよう機能きのうたし、民族みんぞく固有こゆうせいとも密接みっせつ関連かんれんしていたのではないかとかんがえられている。伝説でんせつじょう人物じんぶつはおそらく実在じつざいしたモデルがあったとされ、スカンディナヴィアの学者がくしゃたちはなんだいにもわたって、サガにおける神話しんわてき人物じんぶつから実際じっさい歴史れきし抽出ちゅうしゅつしようとこころみているのである。

ウェーランド・スミス(鍛冶たんやのヴィーラント)とヴォルンドルシグルズジークフリートスキールニルスヴィプダグ盲目もうもくかみヘズ英雄えいゆうホテルス、そしておそらくはベオウルフボズヴァル・ビャルキ(英語えいごばん)など、時折ときおりゲルマンのどの世界せかい叙事詩じょじし残存ざんそんしていたかにより、英雄えいゆう様々さまざま表現ひょうげん形式けいしきあらたに脚色きゃくしょくされる。ほかにも、著名ちょめい英雄えいゆうにはハグバルズ、スタルカズ、ラグナル・ロズブローク粗毛ほぼけズボンのラグナル)、シグルズ金環きんかんおう、イーヴァル広範こうはんおう(イーヴァル・ヴィーズファズミ)、ハラルドせんしたおう(ハーラル・ヒルデタンド)などがいる。戦士せんしえらばれた女性じょせいたて処女しょじょ著名ちょめいである。女性じょせい役割やくわりはヒロインとして、そして英雄えいゆうたび支障ししょうをきたすものとして表現ひょうげんされている。

北欧ほくおう崇拝すうはい

編集へんしゅう

信仰しんこう中心ちゅうしん

編集へんしゅう
 
ガムラ・ウプサラ。11世紀せいき後期こうき破壊はかいされるまで、スウェーデンにおける信仰しんこう中心ちゅうしんだった

ゲルマンの民族みんぞく現代げんだいのような神殿しんでんきずくようなことは、まったくなかったかもしくはきわめてまれなことであった。古代こだいのゲルマンおよびスカンディナヴィアの人々ひとびとによりおこなわれた礼拝れいはい慣例かんれいブロート(きょう)は、せいなるもりおこなわれたとされるケルトじんバルトじんのものと似通にかよっている。礼拝れいはいいえほかにも、いしげてつく簡素かんそ祭壇さいだんホルグでおこなわれた。しかし、カウパング(シーリングサルとも)やライヤ(レイレとも)、ガムラ・ウプサラのように、より中心ちゅうしんてき礼拝れいはいすくないながら存在そんざいしていたようにえる。ブレーメンのアダムは、ウプサラにはトール・オーディン・フレイの3はしらった木像もくぞう神像しんぞう)がかれる、神殿しんでんがあったと主張しゅちょうしている。なかには主神しゅしんトールが鎮座ちんざしていた。

聖職せいしょくのようなものは存在そんざいしていたとおもわれる一方いっぽうで、ケルト社会しゃかいにおける司祭しさいドルイドほど、職業しょくぎょうてき世襲せしゅうによるものではなかった。これは、女性じょせい預言よげんしゃおよ巫女ふじょたちが、シャーマニズムてき伝統でんとう維持いじしていたためである。ゲルマンの王権おうけんは、聖職せいしょくしゃ地位ちいから発展はってんしたのだともよくわれている。このおう聖職せいしょくてき役割やくわりは、王族おうぞくちょうであり生贄いけにえ儀式ぎしきおこなっていた、ゴジ全般ぜんぱんてき役割やくわり同列どうれつである。シャーマニズムてきかんがかたっていた巫女ふじょたちも存在そんざいしてはいたが、宗教しゅうきょうそのものはシャーマニズムの形態けいたいをとっていない。

人間にんげん生贄いけにえ

編集へんしゅう
 
ガムラ・ウプサラでのドーマルディおう生贄いけにえカール・ラーション冬至とうじ生贄いけにえ』、1915ねん

ゲルマンの人間にんげん生贄いけにえ唯一ゆいいつ目撃もくげきしゃ記述きじゅつは、奴隷どれい少女しょうじょ埋葬まいそうされる君主くんしゅともみずかいのちしたという、ルスじんふねそうについてかれたイブン・ファドラーン記録きろくなかのこっている。ほかにもとおまわしではあるが、タキトゥスサクソ・グラマティクス、そしてブレーメンのアダム記述きじゅつのこっている。

しかし、イブン・ファドラーンの記述きじゅつ実際じっさいには埋葬まいそう儀式ぎしきである。現在げんざい理解りかいされている北欧ほくおう神話しんわでは、奴隷どれい少女しょうじょには「生贄いけにえ」というかくされた目的もくてきがあったのではという理解りかいがなされた。北欧ほくおう神話しんわにおいて、死体したい焼却しょうきゃくようたきぎうえかれた男性だんせい遺体いたい女性じょせいくわわってともかれれば、来世らいせでその男性だんせいつまになれるであろうというかんがかたがあったともしんじられている。奴隷どれい少女しょうじょにとって、たとえ来世らいせであっても君主くんしゅつまになるということは、あきらかな地位ちい上昇じょうしょうであった。

ヘイムスクリングラでは、スウェーデンのおうアウン登場とうじょうする。かれ息子むすこエーギルころすことを家来けらいめられるまで、自分じぶん寿命じゅみょうばすために自分じぶんの9にん息子むすこ生贄いけにえささげたとわれる人物じんぶつである。ブレーメンのアダムによれば、スウェーデンおうはウプサラの神殿しんでんユール期間きかんちゅう、9ねんごと男性だんせい奴隷どれい生贄いけにえとしてささげていた。当時とうじスウェーデンじんたちは国王こくおうえらぶだけでなくおうくらいから退しりぞけさせる権利けんりをもっていたために、飢饉ききんとしのち会議かいぎひらいておうがこの飢饉ききん原因げんいんであると結論けつろんけ、ドーマルディおうり〉(トレーテルギャ)のオーラヴおう両者りょうしゃ生贄いけにえにされたとわれている。

知識ちしきるためユグドラシルのくびったという逸話いつわからか、オーディンは首吊くびつりによるむすびつけてかんがえられていた。こうしてオーディンさながら首吊くびつりでかみささげられたとおもわれる古代こだい犠牲ぎせいしゃ窒息ちっそくしたのち遺棄いきされたが、ユトランド半島はんとうボグでは酸性さんせいみず堆積たいせきぶつにより完全かんぜん状態じょうたい保存ほぞんされた。近代きんだいになってつかったこれらの遺体いたい人間にんげん生贄いけにえとされた事実じじつ考古学こうこがくてき裏付うらづけとなっており、このいちれいトーロンじんである。しかし、これらの絞首こうしゅおこなわれた理由りゆう明確めいかく説明せつめいした記録きろく存在そんざいしない。

キリストきょうとの相互そうご作用さよう

編集へんしゅう
 
829ねんハウギのビョルンおうによりスウェーデンにまねかれるキリスト教きりすときょう宣教師せんきょうしアンスガルの1830ねん描写びょうしゃ

北欧ほくおう神話しんわ解釈かいしゃくするじょう重要じゅうようなのは、キリスト教徒きりすときょうとにより「キリストきょう接触せっしょくしていない」時代じだいについてかれた記述きじゅつふくまれているというてんである。『散文さんぶんのエッダ』や『ヘイムスクリングラ』は、アイスランドがキリスト教化きょうかされてから200ねん以上いじょうたった13世紀せいきに、スノッリ・ストゥルルソンによってかれている。これにより、スノッリの作品さくひんおおくのエウヘメリズム思想しそうふくまれる結果けっかとなった。

事実じじつじょう、すべてのサガ文学ぶんがく比較的ひかくてきちいさくとお島々しまじまのアイスランドからたものであり、宗教しゅうきょうてき寛容かんよう風土ふうどではあったものの、スノッリの思想しそう基本きほんてきキリスト教きりすときょう観点かんてんによってみちびかれている。ヘイムスクリングラはこの論点ろんてん興味深きょうみぶか見識けんしきそなえる作品さくひんである。スノッリはオーディンを、魔法まほうちから、スウェーデンにむ、不死ふしではないアジア大陸たいりく指導しどうしゃとし、んではんかみとなる人物じんぶつとして登場とうじょうさせた。オーディンの神性しんせいよわめてえがいたスノッリはその、スウェーデンおうのアウンが自身じしん寿命じゅみょうばすために、オーディンと協定きょうていむすはなしつくる。のちにヘイムスクリングラにおいてスノッリは、作品さくひんちゅうオーラヴ2せいがスカンディナヴィアの人々ひとびと容赦ようしゃなくキリスト教きりすときょう改宗かいしゅうさせたように、どのようにしてキリストきょう改宗かいしゅうするかについて詳述しょうじゅつした。

偶像ぐうぞう崇拝すうはいきんするユダヤ・キリストきょうとはしばしば対立たいりつすることもあった。

 
キリスト教化きょうかされたノルウェーでおこなわれていた、おそろしい形式けいしき死刑しけい執行しっこうオーラブ・トリグヴァソンおう男性だんせい魔法使まほうつかい(セイズメン)をしばり、しおにスケリー(skerry、いわ小島こじま)へりにした

アイスランドでは内戦ないせんけるためぜん島民とうみんキリスト教きりすときょう改宗かいしゅうした。キリストきょうからての異教いきょう崇拝すうはい自宅じたくでの隠遁いんとん信仰しんこうしのんだが、すうねんにその信仰しんこううしなわれた(「アイスランドのキリスト教化きょうか」を参照さんしょう)。一方いっぽうスウェーデンは、11世紀せいき一連いちれん内戦ないせん勃発ぼっぱつし、ウプサラの神殿しんでん炎上えんじょう終結しゅうけつする。イギリスでは、キリスト教化きょうかがよりはや散発さんぱつてきおこなわれ、まれ軍隊ぐんたいもちいられた。弾圧だんあつによる改宗かいしゅうは、北欧ほくおうかみ々が崇拝すうはいされていた地域ちいき全体ぜんたいでばらばらにこっている。しかし、改宗かいしゅうきゅうこりはしなかった。キリストきょう聖職せいしょくしゃたちは、北欧ほくおうかみ々が悪魔あくまであると全力ぜんりょくげて大衆たいしゅうおしんだのだが、その成功せいこうかぎられたものとなり、ほとんどのスカンディナヴィアにおける国民こくみん精神せいしんなかでは、そうしたかみ々が悪魔あくまわることはけっしてなかった。

キリスト教化きょうかおこなわれた期間きかんは、れいとしてローヴェンとうベルゲン中心ちゅうしんえがかれている。スウェーデンのしま、ローヴェンとうにおけるはか考古学こうこがくてき研究けんきゅうでは、キリスト教化きょうかが150から200ねんかかったとされ、場所ばしょ王侯おうこう貴族きぞくんでいたところちかかった。同様どうよう騒々そうぞうしく貿易ぼうえきおこなわれたまちベルゲンでは、ブリッゲン碑文ひぶんなかに、13世紀せいきのものとおもわれるルーン文字もじ碑文ひぶんつかっている。そのなかにはトールにれられますように、オーディンにみとめられますようにひとしかれたものがあり、キリスト教化きょうかすすんでいる世界せかいで、ノルド魔術まじゅつガルドル(セイズ (Seið) とも)もえがかれている。記述きじゅつなかにはヴァルキュリャのスケグルかんするものもあった。

14世紀せいきから18世紀せいきにかけての記述きじゅつはほとんどないものの、オラウス・マグヌス(1555ねん)のような聖職せいしょくしゃは、ふるくからづく信仰しんこう絶滅ぜつめつさせることのむずかしさをいた。この物語ものがたりハグバルドとシグニュー恋愛れんあい物語ものがたりのように、快活かいかつえがかれた『スリュムのうた』にも関連かんれんしており、どちらも17世紀せいきと19世紀せいきわりごろに記録きろくされたとかんがえられている。19世紀せいきと20世紀せいきに、スウェーデンの民族みんぞく学者がくしゃたちは一般いっぱん人々ひとびとしんじ、北欧ほくおう神話しんわにおけるかみ々の残存ざんそんする伝承でんしょう記録きろくしたが、その当時とうじ伝承でんしょう結集けっしゅうされたスノッリによる記述きじゅつ体系たいけいからはかけはなれたものであったという。トールは数々かずかず伝説でんせつ登場とうじょうし、フレイヤはなん言及げんきゅうされたが、バルドルは地名ちめいかんする伝承でんしょうしかのこっていなかったそうである。

とくにスカンディナヴィアの伝承でんしょうにおけるちょう自然しぜんてき存在そんざいのように、認知にんちされてはいないが北欧ほくおう神話しんわべつ要素ようそのこされている。そのうえ北欧ほくおう運命うんめいかんがかた現代げんだいまで不変ふへんのものであった。クリスマスぶたころすスウェーデンのしきたり(クリスマス・ハム)など、ユール伝承でんしょう原理げんりおおくがしんつづけられた。これはもともとフレイへの生贄いけにえ一部いちぶであった。

現代げんだいへの影響えいきょう

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曜日ようび 起源きげん
月曜日げつようび Monday つき Moon's day
火曜日かようび Tuesday ティウの Tiw's day (北欧ほくおう神話しんわテュール(Tyr)に相当そうとう)
水曜日すいようび Wednesday ウォウドゥン Woden's day (北欧ほくおう神話しんわオーディン(Odin)に相当そうとう)
木曜日もくようび Thursday かみなり(かみ)の Thunder's day (北欧ほくおう神話しんわトール(Thor)と同一どういつ語源ごげん)
金曜日きんようび Friday フリッグまたはフレイヤ Frigg's / Freyja's day
土曜日どようび Saturday ローマ神話しんわサートゥルヌスより。アングロ・サクソンのかみ由来ゆらいではない
日曜日にちようび Sunday 太陽たいよう Sun's day (北欧ほくおう神話しんわソール(Sól)に相当そうとう)

ゲルマンのかみ々は現代げんだいにおいて、ゲルマンはなされているおおくの国々くにぐににおける生活せいかつ語彙ごい数々かずかず足跡あしあとのこしている。いちれいとして、曜日ようび名称めいしょうげられる。ラテン語らてんごにおける曜日ようび名称めいしょう(Sun, Moon, Mars, Mercury, Jupiter, Venus, Saturn)をもとにしてつくられた火曜日かようびから金曜日きんようびまでの名称めいしょうは、それぞれのローマ神話しんわかみ々に相等そうとうする北欧ほくおうかみ々にってわった。英語えいご土曜日どようび(Saturday)はサターン起源きげんとローマのかみ由来ゆらいするが、ドイツでは土曜日どようびのザムスターク(Samstag)は Sabbath からけられたもので、スカンディナヴィア地方ちほうでは「洗濯せんたく」とばれている。

ゲルマン・ネオペイガニズム

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最近さいきんではヨーロッパとアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの2つの地域ちいきにおいて、「ゲルマン・ネオペイガニズム」(ゲルマン復興ふっこう異教いきょう主義しゅぎ)としてふるきゲルマン宗教しゅうきょう復興ふっこうしようとするこころみがおこなわれている。これらはアサトル、オーディニズム、ヴォータニズム、フォーン・セド(Forn Sed)またはヒーゼンリィというもと存在そんざいしている。アイスランドでは、アサトルが1973ねん国家こっか公認こうにんによる宗教しゅうきょうとしてみとめられ、結婚けっこん子供こどもづけかた、その儀式ぎしきにおいてこの宗教しゅうきょう介入かいにゅう合法ごうほうされた。アサトルはかなりあたらしい宗教しゅうきょうではあるものの、北欧ほくおう諸国しょこく公認こうにんまたは合法ごうほう宗教しゅうきょうとして認知にんちされている。

現代げんだい大衆たいしゅう文化ぶんか

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北欧ほくおう神話しんわリヒャルト・ワーグナー作品さくひんニーベルングのゆびたまき』を構成こうせいする4つのオペラ題名だいめい使用しようされ、おなじく北欧ほくおう神話しんわをモチーフにしたほか作品さくひんへの基盤きばんとなった。

その製作せいさくされた、J・R・R・トールキンの『指輪ゆびわ物語ものがたり』も、キリスト教化きょうか以前いぜん北方ほっぽうヨーロッパにおける固有こゆう信仰しんこうに、非常ひじょう影響えいきょうけた作品さくひんえる。この作品さくひん人気にんきぶにつれ、そのファンタジー要素ようそ人々ひとびと感性かんせいのファンタジーのジャンルを、えずうごかしている。近代きんだいてきなファンタジー小説しょうせつにはエルフやドワーフ、こおりきょじんなど、北欧ほくおう怪物かいぶつたちがおお登場とうじょうする。のちの時代じだいになって北欧ほくおう神話しんわは、大衆たいしゅう文化ぶんか文学ぶんがく・フィクションにおいて、おおくの影響えいきょうのこしているのである。

日本語にほんごやく

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原典げんてんやく

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#原典げんてんふしのリンクさきかく記事きじ参照さんしょう

入手にゅうしゅしやすいのは以下いか

以下いかがある。

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ フィンランドじんはゲルマンとはまった系統けいとうちが民族みんぞくである。
  2. ^ スノリのエッダ「詩語しごほう」につたえられる、ドヴェルグの兄弟きょうだいブロックとエイトリとのけにけたときのロキの姿すがた
  3. ^ ただし「ギュルヴィたぶらかし」17しょうにおいては、さらにうえだいてんアンドラングだいさんてんヴィーズブラーインがあるとされる。
  4. ^ 「ギュルヴィたぶらかし」9しょう記述きじゅつによる。「巫女ふじょ予言よげん」18せつによればオーディン、ヘーニルローズルさんかみ
  5. ^ それぞれウルズ(ウルド)、ヴェルザンディ(ヴェルダンディ)、スクルドというで、各々おのおの過去かこ現在げんざい未来みらいつかさどる。
  6. ^ まだわかかったヤドリギ以外いがい、この存在そんざいするすべてのものは、バルドルをきずつけられないと約束やくそくされていた。しかし、ロキはこの唯一ゆいいつよわみを利用りようし、ヤドリギつくってオーディンの息子むすこでありバルドルの兄弟きょうだいでもある盲目もうもくヘズだまして、使つかわせバルドルをころすことに成功せいこうする。ヘルはぜん世界せかい人々ひとびとなげかなしむのであれば、かれよみがえらせようとった、という内容ないよう物語ものがたり
  7. ^ 底本ていほんG.ネッケル英語えいごばんH.クーン英語えいごばんへん『Edda』(Heidelberg 1962 だい3はん)およびA.ホルツマルクJ.ヘルガソンへん『Snorri Sturluson, Edda』(Stockholm 1950 だい2はん[6]奥付おくづけ編者へんしゃについて、だい1さつでは「V.G.ネッケル, H.クーン, A.ホルツマルク, J.ヘルガソン」表記ひょうきになっており、たとえば国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん書誌しょし情報じょうほう国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんサーチR100000002-I000001274352)もその表記ひょうきとなっているが、まさしくは「G.ネッケル, H.クーン, A.ホルツマルク, J.ヘルガソン」。近年きんねんすりでは修正しゅうせいされている(2021ねん3がつ25にちだい24さつ確認かくにん)。

出典しゅってん

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  1. ^ しかし時代じだい含意がんいする『エッダ』『しんエッダ』という名称めいしょう語弊ごへいがあるとして近年きんねんではけられる傾向けいこうにある。ピーター・オートン、伊藤いとうつきやく異教いきょう神話しんわ宗教しゅうきょう」151ぺーじ参照さんしょう
  2. ^ DR 284 Archived 2006ねん5がつ4にち, at the Wayback Machine.
  3. ^ 世界せかい神話しんわ百科ひゃっか ギリシア・ローマ/ケルト/北欧ほくおうはら書房しょぼう 492ぺーじ
  4. ^ 谷口たにぐち 1973, p.1. 「凡例はんれいいち.
  5. ^ 小澤おざわ 2021, p. 15.
  6. ^ 谷口たにぐち 1973, pp. 1, 8.
  7. ^ 小澤おざわ 2021, p. 19.

参考さんこう文献ぶんけん

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以下いかは、翻訳ほんやくもと英語えいごばんNorse mythology)における出典しゅってんである。

現代げんだい作品さくひん

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Modern retellings of ancient mythology are often inventive

てき作品さくひん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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