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医薬分業 - Wikipedia

医薬いやく分業ぶんぎょう

患者かんじゃ診察しんさつ薬剤やくざい処方しょほう医師いしまたは歯科しか医師いしおこない、医師いし歯科しか医師いし処方箋しょほうせんもとづいて、調剤ちょうざいくすりれき管理かんり服薬ふくやく指導しどう経営けいえいてき独立どくりつした存在そんざいである薬剤師やくざいしおこなうというかたちでそれぞれのせん

医薬いやく分業ぶんぎょう(いやくぶんぎょう)とは、患者かんじゃ診察しんさつ薬剤やくざい処方しょほう医師いしまたは歯科しか医師いしおこない、医師いし歯科しか医師いし処方箋しょほうせんもとづいて、調剤ちょうざいくすりれき管理かんり服薬ふくやく指導しどう経営けいえいてき独立どくりつした存在そんざいである薬剤師やくざいしおこなうというかたちでそれぞれの専門せんもんせい発揮はっきして医療いりょうしつ向上こうじょうはかろうとする制度せいど[1]歴史れきしじょう経緯けいいから医師いし経営けいえいする病院びょういん診療しんりょうしょ薬剤師やくざいし経営けいえいする薬局やっきょく独立どくりつした存在そんざいであるものを医薬いやく分業ぶんぎょうい、院内いんない処方しょほうなどは医薬いやく分業ぶんぎょうではないとされる[2]

歴史れきしじょう医薬いやく分業ぶんぎょう

編集へんしゅう

西洋せいようでは、国王こくおうなどの権力けんりょくしゃなどが、陰謀いんぼう加担かたんする医師いしによって毒殺どくさつされることをおそれていた。これをふせぐためにかみきよしマ帝国まていこくフリードリヒ2せいが、病気びょうき診察しんさつするあるいは死亡しぼう診断しんだんしょもの医師いし)と、くすりきびしく管理かんりするもの薬剤師やくざいし)をけたことに由来ゆらいする[3]明文化めいぶんかされたのは1240ねん制定せいていされた5ヵ条かじょう法律ほうりつであり、医師いし薬剤師やくざいし人的じんてき物理ぶつりてき分離ぶんり医師いし薬局やっきょく所有しょゆうすることの禁止きんしなどの条項じょうこうさだめられた。また薬剤師やくざいし専売せんばいてきくすり供給きょうきゅうつかさどることで東洋とうようからの生薬きぐすり供給きょうきゅうぜい増収ぞうしゅうへの効果こうかもあったとされる[4]

医師いし薬剤師やくざいし役割やくわり薬局やっきょく病院びょういん経営けいえいけることで、不適切ふてきせつやく排除はいじょ不正ふせい防止ぼうし過剰かじょう投薬とうやくひとし抑制よくせいじゅうチェックとう実施じっし薬物やくぶつ治療ちりょう社会しゃかい個人こじんにとってより有益ゆうえきになるようにしたのがこの医薬いやく分業ぶんぎょう仕組しくみである。

医薬いやく分業ぶんぎょう制度せいどにより、欧州おうしゅう薬剤師やくざいし医薬品いやくひん独占どくせんてき販売はんばいけん調剤ちょうざいけん国家こっかからみとめられることとえに、

  • いつでも、どこでも必要ひつようくすり安定あんていてき国民こくみん供給きょうきゅうする責任せきにん
  • くすり副作用ふくさよう相互そうご作用さよう過剰かじょう投与とうよなどの危険きけんから国民こくみん保護ほご
  • くすりについての完全かんぜん把握はあく
  • くすり厳格げんかく管理かんり
  • よりよいくすり研究けんきゅう開発かいはつ製造せいぞう
  • ニセやく排除はいじょ
  • 規格きかくしょ薬局方やっきょくほう)の作成さくせい開示かいじ
  • 価格かかく不当ふとう高騰こうとう抑制よくせい

などの役割やくわりたしてきた。

現代げんだい医薬いやく分業ぶんぎょう

編集へんしゅう

医薬いやく分業ぶんぎょう先進せんしん諸国しょこくでは現在げんざい一般いっぱんてき制度せいどとして浸透しんとうしており、医師いし薬剤師やくざいし業務ぎょうむ厳格げんかくけられている。

時代じだいとともに薬局やっきょく薬剤師やくざいしもとめられる仕事しごとうつわりつつある。

薬物やくぶつ療法りょうほうとおして人々ひとびと生活せいかつしつげることを使命しめいとし歴史れきしじょう役割やくわりだけでなく、

  • 地域ちいきなか保健ほけん担当たんとうしゃとして健康けんこう生活せいかつまもる。
  • 健康けんこうかんする相談そうだん適切てきせつ医薬品いやくひん提案ていあんによりセルフメディケーション寄与きよする。
  • 一般いっぱんよう医薬品いやくひん選択せんたく適切てきせつ支援しえんする。
  • 薬物やくぶつ療法りょうほうかんして薬剤師やくざいし立場たちば評価ひょうか監査かんさおこなう。
  • 薬物やくぶつ療法りょうほう適切てきせつおこなわれるよう情報じょうほう患者かんじゃつたえる。
  • 薬物やくぶつ療法りょうほう管理かんりおこなう。
  • 在宅ざいたく療養りょうようする患者かんじゃ薬学やくがくてきケアをになう。

などの役割やくわりっている。

各国かっこく医薬いやく分業ぶんぎょう

編集へんしゅう

ドイツの医薬いやく分業ぶんぎょう歴史れきしながく、医師いしには調剤ちょうざいけんはなく薬剤師やくざいしにのみ調剤ちょうざいけんがある。医師いし薬局やっきょく所有しょゆうできず、共同きょうどう経営けいえいしゃにもなれない。病院びょういん薬剤やくざい院内いんない処方しょほうのみに対応たいおう外来がいらい患者かんじゃ処方箋しょほうせんすべ院外いんがい発行はっこうされ、完全かんぜん医薬いやく分業ぶんぎょうになっている。また薬局やっきょくかんしては開設かいせつしゃ薬剤師やくざいしでなければならない。資本しほんによる開局かいきょくみとめない。支店してん開設かいせつは2004ねん解禁かいきんされたが、3支店してんまでに限定げんていされているなどの規制きせいがある[5]

アメリカでは医師いし自身じしん薬品やくひん直接ちょくせつ販売はんばいする行為こうい法律ほうりつきんじられている。患者かんじゃ院外いんがい薬局やっきょくくすりうが、医師いしあるいは医療いりょう機関きかん特定とくてい薬局やっきょく指定してい誘導ゆうどうすることもきんじられている。比較的ひかくてきおおきな医療いりょう施設しせつでは施設しせつないくすりることのできる場所ばしょがあることがある。アメリカでは、日本にっぽんちが処方箋しょほうせんくことによる医師いし収入しゅうにゅうまったくない[6]。1951ねんよりリフィル処方箋しょほうせん制度せいどがあり、慢性まんせい疾患しっかん医師いし診察しんさつしたあと一定いってい期間きかんないであれば薬局やっきょくにおいて薬剤師やくざいし患者かんじゃ状態じょうたいをチェックすることでくすりがでてくる仕組しくみがある[7]

日本にっぽんにおける導入どうにゅう

編集へんしゅう

東洋とうようではそのような制度せいどがなく、医者いしゃくすり処方しょほうだけではなく調剤ちょうざいをしていた。日本にっぽんにおいても、ドイツの医療いりょう制度せいど翻案ほんあん1874ねん明治めいじ7ねん)8がつせい」が公布こうふされた。近代きんだいてき西洋せいよう医療いりょう制度せいどはじめて導入どうにゅうし「医師いしたるしゃみずかくすりひさぐ(ひさぐ、るという意味いみ)ことをきんず」とされ、医師いし開業かいぎょう試験しけん薬舗やくほ開業かいぎょう試験しけん規定きていされた。薬舗やくほ開業かいぎょうするものは薬舗やくほぬしとされ、これが日本にっぽん薬剤師やくざいし原形げんけいとなった。

1872ねん日本にっぽんはじめて西洋せいようふう医薬いやく分業ぶんぎょうがた薬局やっきょくとして資生堂しせいどう福原ふくはら有信ありのぶによって銀座ぎんざ設立せつりつされた。1885ねんには日本にっぽんやく学会がっかい前身ぜんしんである東京とうきょうやく学会がっかいにおいてドイツに留学りゅうがくしていた長井ながい長義ながよしが「日本にっぽんでは医学いがく薬学やくがく密着みっちゃくしてはなれない。民間みんかんではくすり代価だいか診察しんさつりょうちがいを理解りかいできずくすり代価だいか診察しんさつへの謝礼しゃれいそのものの性質せいしつっていると誤解ごかいしている。ヨーロッパでは薬学やくがく一大いちだい専門せんもんがくである。そのため、くすり専門せんもんでない医師いしがそれを理解りかいできないのは当然とうぜんであり、国民こくみんもそのことをみとめている。薬学やくがくそのものの進歩しんぽのために努力どりょくすると同時どうじに、このようなこまった習慣しゅうかんただすのは我々われわれ薬学やくがくしゃ義務ぎむである」と演説えんぜつ薬剤師やくざいし養成ようせい医薬いやく分業ぶんぎょう重要じゅうようせいいた[8]1889ねん明治めいじ22ねん)には薬品やくひん営業えいぎょうなみ薬品やくひん取扱とりあつかい規則きそくくすりりつ)が公布こうふされ、「薬舗やくほ」は薬局やっきょく、「薬舗やくほぬし」は薬剤師やくざいし定義ていぎされた。しかしながらこの規制きせい特例とくれい医師いし調剤ちょうざいみとめたため形骸けいがいされた。

日本にっぽん太平洋戦争たいへいようせんそう敗北はいぼくすると連合れんごう国軍こくぐん最高さいこう司令しれいかんそう司令しれいは、医薬いやく分業ぶんぎょうした。日本にっぽん医師いしかいは、厚生省こうせいしょうきこんで抵抗ていこうする姿勢しせいしめしたが、公衆こうしゅう衛生えいせい福祉ふくし局長きょくちょうクロフォード・F・サムスは、1950ねん5がつ26にちけで、はやし譲治じょうじ厚生こうせい大臣だいじん質問しつもんじょうきつけ、さらに日本にっぽん医師いしかい質問しつもんじょう配布はいふするなど外堀そとぼりめにかかった[9]最終さいしゅうてきには、そう司令しれい指令しれいにより海外かいがいでは主流しゅりゅうである医薬いやく分業ぶんぎょう薬事やくじほう改正かいせいされ導入どうにゅうされた(1951ねんの「医師いしほう歯科しか医師いしほうおよ薬事やくじほう一部いちぶ改正かいせいする法律ほうりつ」(ぞくにいう「医薬いやく分業ぶんぎょうほう」)制定せいていおよ1956ねんどうほう改正かいせい)。政府せいふは、医師いし歯科しか医師いししし医師いしによる調剤ちょうざい禁止きんしして完全かんぜん医薬いやく分業ぶんぎょう移行いこうしようとしたが、従来じゅうらい既得きとくけん保持ほじするために、調剤ちょうざいについては、「医師いし歯科しか医師いししし医師いしが、特別とくべつ理由りゆうがあり、自己じこ処方箋しょほうせんによりみずからするときをのぞき」というただきが追加ついかされ(薬剤師やくざいしほう19じょうはしらしょ但書ただしがき)、昭和しょうわ50年代ねんだい後半こうはんまでは事実じじつじょう骨抜ほねぬきになっていた。

高度こうどした現代げんだい医療いりょうにおいて医師いしとう処方しょほうするもののみではくすりについての把握はあくがとてもむずかしく、薬剤師やくざいし専門せんもんせい必要ひつようであった。だが、「くすり原価げんかが10%で利益りえきが90%だ」という意味いみで「くすりきゅうそうばい」(くすりくそうばい)とも揶揄やゆされた時代じだい(ただし製薬せいやく企業きぎょうは15ねん以上いじょう時間じかん機会きかい費用ひよう多額たがく(200おくえん以上いじょう)の開発かいはつ費用ひよう投資とうししている)、医療いりょう機関きかんくすり利益りえきる、いわゆる「くすり医療いりょう」が蔓延まんえんしたことも、医薬いやく分業ぶんぎょう伸展しんてんしなかった理由りゆうひとつにあげられる。厚生省こうせいしょうげん厚生こうせい労働省ろうどうしょう)はそのような状況じょうきょう打開だかいするために薬価やっか改定かいていおこない、くすり利益りえきない仕組しくみにえると同時どうじに、1990年代ねんだいよりは病院びょういん診療しんりょう所内しょないくすり調剤ちょうざいするよりも、院外いんがい処方箋しょほうせん発行はっこうする価格かかくすうばいたか設定せっていするなどの利益りえき誘導ゆうどうによる医薬いやく分業ぶんぎょうはかった[10]。その結果けっか日本にっぽんでも調剤ちょうざい薬局やっきょく増加ぞうか医薬いやく分業ぶんぎょう伸展しんてんしてきた。しかし、欧州おうしゅう本来ほんらいてき医薬いやく分業ぶんぎょう制度せいど普及ふきゅうにはまだ程遠ほどとお現状げんじょうである。

2015ねん5月21にちには、厚生こうせい労働省ろうどうしょうは、複数ふくすう病院びょういん診療しんりょうしょから処方しょほうされたくすりをまとめて管理かんりしセルフメディケーションに寄与きよする「かかりつけ薬局やっきょく」への転換てんかん促進そくしん目的もくてきで、いわゆる調剤ちょうざいしかおこなわないような「門前もんぜん薬局やっきょく」について、2016年度ねんどから診療しんりょう報酬ほうしゅうらすことをめた[10]

これをけて2015ねん10月23にち厚生こうせい労働省ろうどうしょうから次世代じせだい日本にっぽんにおける薬局やっきょくのビジョンである患者かんじゃのための薬局やっきょくビジョン」~「門前もんぜん」から「かかりつけ」、そして「地域ちいき」へ~発表はっぴょうされた。このビジョンは医薬いやく分業ぶんぎょう原点げんてんかえり、現在げんざい薬局やっきょく患者かんじゃ本位ほんいのかかりつけ薬局やっきょく再編さいへんするために策定さくていされ、患者かんじゃ本位ほんい医薬いやく分業ぶんぎょう実現じつげんけて、服薬ふくやく情報じょうほう一元いちげんてき継続けいぞくてき把握はあくとそれにもとづく薬学やくがくてき管理かんり指導しどう、24あいだ対応たいおう在宅ざいたく対応たいおう医療いりょう機関きかんとうとの連携れんけいなど、かかりつけ薬剤師やくざいし薬局やっきょく今後こんご姿すがたあきらかにするとともに、中長期ちゅうちょうきてき視野しやって、かかりつけ薬局やっきょくへの再編さいへん道筋みちすじしめすものである[11]

薬局やっきょく飽和ほうわ状態じょうたいによる変化へんか

編集へんしゅう

利益りえき誘導ゆうどうにより、医薬いやく分業ぶんぎょう伸展しんてんしていた時代じだい医療いりょう機関きかん新規しんき開業かいぎょうをすると、そのとなり薬局やっきょくもできる風景ふうけいがよくみられた(門前もんぜん薬局やっきょく)。しかし、一部いちぶ地域ちいきでは薬局やっきょくすう飽和ほうわし、患者かんじゃ薬局やっきょく選択せんたくするようになってきた。

本来ほんらい医薬いやく分業ぶんぎょう達成たっせいするためには、まちちゅう薬局やっきょく処方箋しょほうせんけるめん分業ぶんぎょうであることがのぞましい。日本にっぽん導入どうにゅうされた不完全ふかんぜん分業ぶんぎょう医薬いやく分業ぶんぎょう当初とうしょのメリットであった「はや正確せいかく綺麗きれいに」調剤ちょうざいすることは、そもそも医薬いやく分業ぶんぎょう先進せんしんこくである欧米おうべいでにおいては、調剤ちょうざい調剤ちょうざい助手じょしゅおこな仕事しごとであり、機械きかいすることが十分じゅうぶん可能かのうである。

そのため調剤ちょうざい薬局やっきょくは、薬剤師やくざいし専門せんもんせい発揮はっき患者かんじゃたいするあらたなサービスにみ、あらたな差別さべつはかることが薬局やっきょく課題かだいとなっている。複数ふくすう病院びょういん診療しんりょうしょから調剤ちょうざいされるくすりわせなどを管理かんりする、「かかりつけ薬局やっきょく」としてのアピールはもちろん、先取せんしゅせいのある薬局やっきょくでは栄養士えいようし配置はいちしてより専門せんもんてき栄養えいよう指導しどうおこなったり、リフレクソロジーごう提携ていけいして簡易かんい理学りがく療法りょうほう紹介しょうかいできる体制たいせいをとったり、介護かいご分野ぶんやにおいて在宅ざいたく薬学やくがく管理かんり指導しどうおこなうなど薬局やっきょく機能きのう充実じゅうじつはかっている。

また、調剤ちょうざい薬局やっきょくでは患者かんじゃ医療いりょう安全あんぜんせいげるため、くすり手帳てちょう配布はいふ処方しょほう調剤ちょうざい内容ないよう記載きさいしている。1かい記載きさいき1わり負担ふたん場合ばあいは10えん、2わり負担ふたんで20えん、3わり負担ふたんで40えん負担ふたんきんやすくなる(2020ねん4がつからどの薬局やっきょくにおいても適用てきよう、かつては調剤ちょうざい基本きほんりょうによっては負担ふたんきん影響えいきょうない場合ばあいもあった)。糖尿とうにょうびょう患者かんじゃ路上ろじょうたおれた場合ばあい、おくすり手帳てちょうっていることで、服用ふくようしているくすりからてい血糖けっとう判断はんだんされ、グルコース投与とうよにより延命えんめいつながったり、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい平成へいせい28ねん熊本くまもと地震じしんなどの被災ひさいでは、おくすり手帳てちょうっている患者かんじゃは、どのくすり服用ふくようしているのかをボランティア医療いりょうスタッフにつたえることで、スムーズにボランティア医師いしより処方しょほうけることが出来できたりするという利点りてんがある。さらに、発売はつばいから1ねん以上いじょう経過けいかした薬剤やくざいについては、15にち以上いじょう長期ちょうき処方しょほう可能かのう薬剤やくざいが、こう精神せいしんやくふくえつつある。

米国べいこくなど欧米おうべいおおくのくにでは、リフィル処方箋しょほうせんという処方しょほう制度せいどで、14にちぶんすうかい調剤ちょうざい可能かのうである。日本にっぽんではそれに制度せいどとして「分割ぶんかつ調剤ちょうざい制度せいど」があるが、薬剤師やくざいし薬物やくぶつ治療ちりょうのマネジメントをおこなう、本来ほんらいのリフィル処方箋しょほうせんとはことなるものである。

問題もんだいてん今後こんご展開てんかい

編集へんしゅう

薬剤師やくざいし専門せんもんせい問題もんだい

編集へんしゅう

日本にっぽんでは医薬いやく分業ぶんぎょう浸透しんとうはじめたばかりでありしょ外国がいこくられるような薬剤師やくざいし専門せんもんせいのレベルにたない薬剤師やくざいしおお薬剤師やくざいし高度こうど専門せんもんせい向上こうじょう急務きゅうむであるとえる。このため2006ねんより薬剤師やくざいし免許めんきょ取得しゅとくするためには6ねんせい課程かてい薬学部やくがくぶ修了しゅうりょう必要ひつようとなった。薬局やっきょく現場げんばにおいても、今後こんごきゅう課程かてい免許めんきょ取得しゅとくした薬剤師やくざいしかく専門せんもん分野ぶんや最新さいしん知識ちしき取得しゅとくするためのそつ研修けんしゅう充実じゅうじつさせるなど専門せんもんせい向上こうじょうつとめる必要ひつようがある。

医療いりょうしょくとの関係かんけい

編集へんしゅう

ながらく医薬いやく分業ぶんぎょうをとってこなかったため医療いりょうしょくなかでも医薬いやく分業ぶんぎょう理解りかいしていないケースが多々たたある。薬剤師やくざいし専門せんもんせい向上こうじょうとともに認知にんちひろめる必要ひつようがある。また医師いしとう条件じょうけんきでの調剤ちょうざい現時点げんじてんでもみとめられていたり、麻薬まやく管理かんりしゃ資格しかく取得しゅとくできたりと完全かんぜん分業ぶんぎょうとはえない状況じょうきょうであり欧米おうべいのように医師いし薬剤師やくざいし医療いりょうしょくとの業務ぎょうむ線引せんひき(ファイアウォールによって人事じんじ当局とうきょく規制きせいすること )が必要ひつようである。

めん分業ぶんぎょうへの転換てんかん

編集へんしゅう

医薬いやく分業ぶんぎょうたすのであれば門前もんぜん薬局やっきょくではなくめん分業ぶんぎょうのかかりつけ薬局やっきょく形態けいたいのぞましいとされる。欧米おうべい諸国しょこくれいればアメリカは調剤ちょうざい薬局やっきょく併設へいせつしたドラッグストアが医薬いやく分業ぶんぎょうになっており[12]しゅうによっては薬局やっきょく予防よぼう接種せっしゅけることが可能かのうである[13]。ドイツでは一般いっぱんよう医薬品いやくひん雑貨ざっかそろえた薬局やっきょく医薬いやく分業ぶんぎょうになっている。

ITによる課題かだい

編集へんしゅう

薬局やっきょくチェーンは情報じょうほう技術ぎじゅつがないと機能きのうしないといわれる。目覚めざましく進化しんかする情報じょうほう技術ぎじゅつ(IT)によって、医薬いやく分業ぶんぎょう姿すがた刻々こくこくわりつつある。個人こじん番号ばんごう医療いりょう分野ぶんやにも導入どうにゅうすることが検討けんとうされている。

医療いりょう高騰こうとう問題もんだい

編集へんしゅう

厚生こうせい労働省ろうどうしょうは、医薬いやく分業ぶんぎょう観点かんてんで「くすり医療いりょう」をあらため、適切てきせつ医療いりょう医療いりょう抑制よくせいはかろうとしてきたが、保険ほけん調剤ちょうざい支払しはらわれる保険ほけん金額きんがく年々ねんねん増加ぞうかし、その効果こうか疑問ぎもんされている。背景はいけいにはくに推進すいしんしたい医療いりょう政策せいさくほど診療しんりょう報酬ほうしゅうがつくような日本にっぽん特有とくゆう保険ほけん制度せいど問題もんだいもあり保険ほけん制度せいど問題もんだい本来ほんらい医薬いやく分業ぶんぎょう問題もんだいとはけてかんがえる必要ひつようもある。院内いんない処方しょほうもどせば患者かんじゃ負担ふたんやすくなるという意見いけん現状げんじょう院外いんがい保険ほけん点数てんすうたか設定せっていされているだけで院内いんない処方しょほうもどせば保険ほけん点数てんすう院内いんないたか設定せっていされる可能かのうせいもあり、院内いんないもどせばやすくなるとはかぎらないので注意ちゅうい必要ひつようである。また医療いりょう削減さくげんについて現在げんざい日本にっぽん医療いりょう制度せいどでは海外かいがいくらべて薬剤師やくざいし介入かいにゅうできる機会きかいかぎられており医療いりょう削減さくげんするためには薬剤師やくざいしによる医師いしへの監査かんさなどの本格ほんかくてき介入かいにゅう必要ひつようという意見いけんもある。実際じっさい近年きんねん研究けんきゅうでは医薬いやく分業ぶんぎょうすすんでいる地域ちいきほど、院外いんがい処方しょほうにおける1にちあたりのぜん薬剤やくざい減少げんしょうするという研究けんきゅうもある[14]

メリットとデメリット

編集へんしゅう

医薬いやく分業ぶんぎょうによって、患者かんじゃあるいは患者かんじゃ家族かぞくけるメリットとデメリットを例示れいじする。

  • 薬局やっきょく選択せんたくすることで患者かんじゃ分散ぶんさんするのでくすりをもらうまで時間じかん短縮たんしゅくになる[1]
  • 病院びょういん診療しんりょうしょくすり出来上できあがりをつことなく、都合つごうのよい場所ばしょにある薬局やっきょく都合つごうのよい時刻じこくくすりることが可能かのうである。
  • 自分じぶんこのみにわせて薬局やっきょく選択せんたくすることができる(選択肢せんたくし多様たよう)。
  • 処方箋しょほうせん患者かんじゃ交付こうふすることで患者かんじゃ自身じしん服用ふくようしているくすりについてることができる[15]
  • 医師いしよりくすりについてよりひろ知識ちしきっている薬剤師やくざいしによって、処方しょほうされているくすり内容ないよう投与とうよ方法ほうほう投与とうよりょうくすり相互そうご作用さようなどについてじゅうのチェックがおこなわれることが期待きたいできる[15]
  • 処方しょほうする医師いしくすり処方しょほうするほど、病院びょういん診療しんりょうしょもうかるという仕組しくみをなくすことができるため、必要ひつようくすり処方しょほうふせぐことができる(くすり治療ちりょう抑制よくせい)。
  • 病院びょういん在庫ざいこにすることなく医師いし処方しょほうすることができる[15]
  • 後発こうはつやく存在そんざいする成分せいぶんやく処方しょほうされている場合ばあい院内いんない処方しょほうをしている病院びょういん診療しんりょうしょ医師いし大半たいはん後発こうはつやくではなく新薬しんやくめい処方しょほうし、また院内いんない薬局やっきょくでは後発こうはつやくいていないことがおおいため、後発こうはつやくあつか院外いんがい薬局やっきょくほう薬代くすりだい大幅おおはばやすくなり、院内いんない薬局やっきょくの3ぶんの1以下いか薬代くすりだいむケースも存在そんざいする[ちゅう 1]
  • 入院にゅういん患者かんじゃにおいては外来がいらい患者かんじゃ院外いんがい処方しょほうにすることで病院びょういん薬剤師やくざいし入院にゅういん患者かんじゃ薬学やくがく管理かんりてることができるため、より専門せんもんてき薬物やくぶつ療法りょうほうのケアをけることができる[15]
  • 在宅ざいたく医療いりょう介護かいごける患者かんじゃ地域ちいき薬局やっきょくから薬学やくがくてきなケアをけることができる。
  • くすり効果こうか副作用ふくさよう用法ようほう用量ようりょうなどについて薬剤師やくざいし処方しょほうした医師いし連携れんけいして患者かんじゃ説明せつめいすることにくわえ、服薬ふくやくじょう問題もんだいがあるか、問題もんだい解決かいけつするためにはなに必要ひつよう患者かんじゃともかんがえることでアドヒアランスを良好りょうこう維持いじする[15]
  • 処方しょほう調剤ちょうざい責任せきにん体系たいけい明確めいかくになる[1]

今後こんご欧米おうべいみの制度せいど導入どうにゅうされた場合ばあいのメリットをしめす。

  • リフィル処方箋しょほうせん制度せいど導入どうにゅうされれば、慢性まんせいてき疾患しっかんかんして病院びょういん診療しんりょうしょ頻繁ひんぱんかようことなく、かかりつけの薬局やっきょく薬剤師やくざいし管理かんりのもと薬物やくぶつ治療ちりょうけられる。
  • 薬局やっきょくもうけられた相談そうだんしつ時間じかんけてくすりかんして相談そうだんすることができる。
  • 従来じゅうらいであれば、診察しんさつのち院内いんないくすりることができ、用件ようけんいちしょませることができたが、医薬いやく分業ぶんぎょう場合ばあい病院びょういん診療しんりょうしょから薬局やっきょくまで移動いどうしなくてはならず[15]患者かんじゃ家族かぞくにとっては負担ふたんとなる。
  • 料金りょうきん支払しはらいが2ヶ所かしょになるため、現行げんこう保険ほけん制度せいどじょう患者かんじゃ自己じこ負担ふたんえる[15]

現在げんざい不完全ふかんぜん医薬いやく分業ぶんぎょうのデメリットをしめす。

  • 薬剤師やくざいし専門せんもんせい薬局やっきょくあいだがある[15]
  • 院内いんない処方しょほう可能かのうであるが院内いんない処方しょほう診療しんりょうしょでは薬剤師やくざいしやとことむずかしいため資格しかく調剤ちょうざいおこなわれる場合ばあいがある[16]
  • おおくの病院びょういん診療しんりょうしょける体制たいせいめん分業ぶんぎょう)になっていない薬局やっきょくでは、くすり在庫ざいこすくなく処方しょほうやくをすぐにそろえられないため、すべそろうまでに時間じかんかる場合ばあいがある。
  • 病院びょういん診療しんりょうしょなかくすり在庫ざいこがないため、休日きゅうじつ時間じかんがい診療しんりょうおこなったさい対応たいおうできる薬局やっきょくすくない[15](ただし、時間じかんがい診療しんりょうかんしては、病院びょういん職員しょくいん努力どりょく地域ちいき薬剤師やくざいしかい調剤ちょうざい薬局やっきょく協力きょうりょくにより、医薬いやく分業ぶんぎょうおこなっていても対応たいおうできているところ多々たたある)。

以上いじょうのようなデメリットから、井上いのうえ晃宏あきひろのように医薬いやく分業ぶんぎょう制度せいど批判ひはんし、廃止はいしもとめる医療いりょう識者しきしゃ存在そんざいする[17]

出典しゅってん

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ たとえば、神経しんけい内科ないか末梢まっしょう神経しんけい障害しょうがい治療ちりょうのためにメコバラミンビタミンB12)を主成分しゅせいぶんとする「メチコバールじょう0.5mg」(22.70えん/1じょう/エーザイ株式会社かぶしきがいしゃせい)を処方しょほう(1にち3かい服用ふくよう30にち)した場合ばあい院内いんない薬局やっきょくでの薬価やっかは2043えん/つきとなるのにたいし、院外いんがい薬局やっきょく後発こうはつやくの「ノイメチコールじょう0.5mg」(6.10えん/1じょう/寿ことぶき製薬せいやく株式会社かぶしきがいしゃせい)をうと薬価やっかは549えん/つきとなり、院内いんない薬局やっきょくよりも1494えん薬価やっかやすくなる。

出典しゅってん

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  1. ^ a b c くすり健康けんこうまめ知識ちしき 23 医薬いやく分業ぶんぎょうってどんなことですか エルドメットエーザイ
  2. ^ だい95かい薬剤師やくざいし国家こっか試験しけん過去かこ問題もんだいしゅう とい104 メディセレ教育きょういく出版しゅっぱん, ISBN 9784904325834
  3. ^ “14. Separation of Pharmacy and Medicine”. ワシントン州立しゅうりつ大学だいがく. (1965ねん). http://www.pharmacy.wsu.edu/history/A%20History%20of%20Pharmacy%20in%20Pictures.pdf 2015ねん6がつ17にち閲覧えつらん 
  4. ^ 安江やすえ政一まさかず西欧せいおうにおける医薬いやく分業ぶんぎょう成立せいりつ背景はいけいくすり史学しがく雑誌ざっし、1977ねん、7-14ぺーじ 
  5. ^ ドイツ、たか薬局やっきょく独立どくりつせい現地げんち開局かいきょくした日本人にっぽんじん解説かいせつ 2015ねん06がつ03にちみず アイデムエキスパート ファーマシストマガジン,薬事やくじ日報にっぽう[リンク]
  6. ^ Kobayashi Medical Clinic 医療いりょう情報じょうほう[リンク]
  7. ^ おさらいしようリフィル処方箋しょほうせんのメリットデメリット くすりキャリ+
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関連かんれん項目こうもく

編集へんしゅう

en:Pharmacy#Separation_of_prescribing_from_dispensing