帯域たいいき幅はば

帯域たいいき幅はば（たいいきはば）または、帯域たいいき（たいいき）、周波数しゅうはすう帯域たいいき（しゅうはすうたいいき）、バンド幅はば（英えい: Bandwidth）とは、周波数しゅうはすうの範囲はんいを指さし、一般いっぱんにヘルツで示しめされる。帯域たいいき幅はばは、情報じょうほう理論りろん、電波でんぱ通信つうしん、信号しんごう処理しょり、分光ぶんこう法ほうなどの分野ぶんやで重要じゅうような概念がいねんとなっている。

帯域たいいき幅はばと情報じょうほう伝達でんたつにおける通信つうしん路ろ容量ようりょうとは密接みっせつに関連かんれんしており、通信つうしん路ろ容量ようりょうのことを指さす代名詞だいめいしのように「帯域たいいき幅はば」の語かたりがしばしば使つかわれる。特とくに何なんらかの媒体ばいたいや機器ききを経由けいゆして情報じょうほう（データ）を転送てんそうする際さいの転送てんそうレートを「帯域たいいき幅はば」あるいは「バンド幅はば」と呼よぶ。

概要がいよう

電波でんぱによる通信つうしんでは、搬送波はんそうはの変調へんちょうで占しめる周波数しゅうはすうの範囲はんいを占有せんゆう周波数しゅうはすう帯たい幅はば、あるいは単たんに帯域たいいき幅はばと呼よぶ。光学こうがくでは個々ここのスペクトル線せんの幅はばやスペクトル全体ぜんたいの幅はばを指さす。

汎用はんよう的てきな1つの定義ていぎは存在そんざいせず、漠然ばくぜんと関数かんすうの周波数しゅうはすう領域りょういきにおける広ひろがりの尺度しゃくどを表あらわすと理解りかいされる。

分野ぶんやによっては厳密げんみつな意味いみが定義ていぎされている。例たとえば、帯域たいいき幅はばは周波数しゅうはすう関数かんすうが 0 であるときの周波数しゅうはすうの範囲はんいと定義ていぎされることもある。この場合ばあい、数学すうがく的てきには関数かんすうのサポートに対応たいおうする（つまり、関数かんすうがゼロでない値ねとなる領域りょういきの全長ぜんちょう）。より厳密げんみつで便利べんりな定義ていぎとして、周波数しゅうはすう関数かんすうが「小ちいさい」ときの周波数しゅうはすうを指さす。この場合ばあい「小ちいさい」とは、最大さいだい値ちの 3 dB下方かほうを意味いみするか、（あまり使つかわれないが）10 dBでしべる 下方かほうを意味いみする（その他たの適当てきとうなある値ね）。いずれにしても、それぞれの関数かんすうの「幅はば」の定義ていぎは、それぞれの用法ようほうにとって便利べんりなように設定せっていされている。

シャノン＝ハートレーの定理ていりによれば、信頼しんらいできる通信つうしんのデータ転送てんそうレートは、通信つうしんに使つかわれる周波数しゅうはすうの幅はばに比例ひれいする。その意味いみでは、帯域たいいき幅はばとデータ転送てんそうレートは同おなじ意味いみに使つかわれることがある。

アナログ

スペクトル密度みつどのグラフ。-3 dBでしべるでの帯域たいいき幅はばを示しめしたもの。

アナログ信号しんごうは数学すうがく的てきには時間じかんの関数かんすうであり、帯域たいいき幅はば $\Delta f$ は信号しんごうをフーリエ変換へんかんしたときにゼロでない値ねとなる周波数しゅうはすう範囲はんいの幅はば（単位たんいはヘルツ）である。一般いっぱんにこのゼロでない範囲はんいは非常ひじょうに広範囲こうはんいになるため、定義ていぎを修正しゅうせいして、ある程度ていどの強つよさの周波数しゅうはすう範囲はんいを指さすこともある。この場合ばあい、最大さいだい値ちの半分はんぶんとなる範囲はんいを使つかうことが多おおい（$\mathrm {log} _{10}(1/2)\approx -0.3$ であるため、約やく -3 dBでしべる で半分はんぶんとなる）。信号しんごうの帯域たいいき幅はばは、そのパラメータ（振幅しんぷくや位相いそう）が時間じかんと共ともに変化へんかする早はやさの尺度しゃくどである。帯域たいいき幅はばが大おおきければ、信号しんごうのパラメータは早はやく変化へんかする。帯域たいいき幅はばという用語ようごは信号しんごうにも使つかわれるが、システムにも適用てきようされる。その場合ばあい、あるシステムの帯域たいいき幅はばとは、そのシステムが処理しょりできる信号しんごうの帯域たいいき幅はばを示しめす。

ベースバンドの帯域たいいき幅はばと言いった場合ばあい、信号しんごうの周波数しゅうはすう範囲はんいの上限じょうげんだけを指さす。ベースバンド以外いがいの帯域たいいき幅はばは、上限じょうげんと下限かげんの差分さぶんである。

例たとえば、図ずに示しめしたような非ひベースバンドの 3-dB 帯域たいいき幅はばは $\Delta f=f_{2}-f_{1}$ であるが、他たの定義ていぎでは異ことなった答こたえになるだろう。

よく使つかわれる量りょうとして「比ひ帯域たいいき; fractional bandwidth」がある。これは帯域たいいき幅はばを中心ちゅうしん周波数しゅうはすうで割わった値ねである。例たとえば、中心ちゅうしん周波数しゅうはすうが 10 MHz で帯域たいいき幅はばが 2 MHz なら、比ひ帯域たいいきは 2/10 あるいは、20% となる。

実数じっすうのベースバンドは正せいの周波数しゅうはすうと負まけの周波数しゅうはすうの合成ごうせいであり、このことが帯域たいいき幅はばの混乱こんらんを招まねく（実じつ信号しんごうは複素ふくそ平面へいめん上じょうの右みぎ回転かいてんするベクトルと左ひだり回転かいてんするベクトルの合成ごうせいで表あらわされ、角すみ周波数しゅうはすうの符号ふごうが逆ぎゃくになっている）。帯域たいいき幅はばとして正せいの部分ぶぶんだけを指さすことがあり、例たとえば $B=2W$ が全ぜん帯域たいいき幅はばを表あらわすとした場合ばあい、$W$ は正せいの帯域たいいき幅はばである。実際じっさい、信号しんごうを保持ほじするには、少すくなくとも $W$ の遮断しゃだん周波数しゅうはすうのローパスフィルタが必要ひつようとなる。

3-dB の帯域たいいき幅はばのバンドパスフィルタは、中心ちゅうしん周波数しゅうはすう付近ふきんのピークから 3 dBでしべる 以内いないの周波数しゅうはすう応答おうとうとなる範囲はんいとなるフィルタである。

信号しんごう処理しょりや制御せいぎょ理論りろんでは、ピークから利得りとくが 3 dBでしべる 減衰げんすいする周波数しゅうはすうの範囲はんいを帯域たいいき幅はばという。

電気でんき回路かいろでのバンドパスフィルタなどでは、帯域たいいき幅はばとは信号しんごうの強つよさが最大さいだいの ${\frac {1}{\sqrt {2}}}$（半分はんぶんの電力でんりょく）となる周波数しゅうはすう領域りょういきの2地点ちてんの距離きょりである。

光通信ひかりつうしん学がくでは帯域たいいき幅はばは以下いかのような様々さまざまな意味いみで使つかわれる:

• ASE光源こうげんやレーザーのような何なんらかの光源こうげんの出力しゅつりょくの帯域たいいき幅はば。光ひかりの周波数しゅうはすうは非常ひじょうに高たかいため、帯域たいいき幅はばは大おおきくなる。
• 光ひかりファイバーなどの媒体ばいたいが転送てんそうできる周波数しゅうはすうの範囲はんい。
• 光ひかり増幅器ぞうふくきの利得りとく帯域たいいき幅はば。
• 何なんらかの現象げんしょうにおける範囲はんい（反射はんしゃ、非線形ひせんけいプロセスでの位相いそう合あわせ、共振きょうしんなど）
• 光ひかり変調へんちょう装置そうちの最大さいだい変調へんちょう周波数しゅうはすう（または変調へんちょう周波数しゅうはすうの範囲はんい）
• 測定そくてい装置そうちが動作どうさできる周波数しゅうはすうの範囲はんい
• 光通信ひかりつうしんシステムのデータ転送てんそうレート（Gビット/秒びょう）

デジタル

理論りろん

「シャノン＝ハートレーの定理ていり」も参照さんしょう

デジタル信号しんごう処理しょりでは、帯域たいいき幅はばは標本ひょうほん化か定理ていりに従したがってサンプリング周波数しゅうはすうと関連かんれんしている。

デジタル通信つうしん路ろに加算かさん性せいホワイトガウスノイズがあるとき、シャノン＝ハートレーの定理ていりにより、通信つうしん路ろの帯域たいいき幅はば（伝送でんそう路ろ容量ようりょう）とS/N比ひの関係かんけいが示しめされる。

同どう定理ていりにおいては、帯域たいいき幅はば B (Hz) に対たいし、通信つうしん路ろ容量ようりょう C (bps) が規定きていされる。ただし、C は通信つうしん路ろが誤あやまり無なしまたは低てい誤あやまり率りつである時ときに転送てんそう可能かのうな最大さいだいレート（の理論りろん値ち）を示しめす。

実際じっさいの転送てんそうレートR (bps) は、効率こうりつ的てきな符号ふごう化か方式ほうしきの採用さいようにより C に近ちかづける事ことができる。R が C を超こえた場合ばあいは誤あやまり率りつが増大ぞうだいするため正常せいじょうなデジタル通信つうしんができない。よって C は理想りそう的てきな通信つうしん路ろにおける頭打あたまうち転送てんそうレートである。

実際じっさい

デジタル通信つうしんでの「帯域たいいき幅はば」は、比喩ひゆ的てきに使つかわれることもあって曖昧あいまいである。ボーのい換いかえとして帯域たいいき幅はばやバンド幅はばという用語ようごを使つかうこともある。また、伝送でんそう路ろ容量ようりょう（転送てんそう可能かのうなビットレート）を表あらわすことも多おおい。したがって、ビットレート 66 Mbps で32本ほんのデータ線せんからなるデジタルバスの帯域たいいき幅はばは 33MHz で、容量ようりょうは 2.1 ギガビット/秒びょうとなるが、これを「帯域たいいき幅はばが 2.1 ギガビット/秒びょう」とすることも少すくなくない。

同様どうようの混乱こんらんは可聴かちょう帯域たいいきのモデムにもある。電話でんわ回線かいせんの真しんの帯域たいいき幅はばはわずか 4kHzきろへるつ だが、56キロビット/秒びょうもの情報じょうほうを転送てんそうできることから帯域たいいき幅はばを誤あやまることがある。関連かんれんする統計とうけい的てき量りょうとして、ネットワーク全体ぜんたいの帯域たいいき幅はばの総計そうけいを示しめす「2分割ぶんかつ帯域たいいき幅はば; bisection bandwidth」がある。これは、ネットワークを2つに分割ぶんかつし、その間あいだにある全ぜんリンクの帯域たいいき幅はばを合計ごうけいしたものである。

Webホスティングにおける帯域たいいき幅はば

ホスティングサーバでは、「月間げっかん最大さいだいデータ転送てんそう量りょう」の意味いみで（間あいだ違ちがって）帯域たいいき幅はばという言葉ことばを使つかうことがある。ホスティングを提供ていきょうする企業きぎょうは、例たとえば「バンド幅はば制限せいげんはWebサイト当あたり月間げっかん500ギガバイト」などとしていることがある。この場合ばあい、ユーザーがそのサイトから一いちヶ月かげつ以内いないに500ギガバイト以上いじょうのデータをダウンロードしようとすると、制限せいげんを超こえてしまう。

他者たしゃの帯域たいいき幅はばを不正ふせいに利用りようすることを「バンド幅はば窃盗せっとう」と呼よぶこともある（例たとえば、他たのWebサイトの画像がぞうを無断むだんで自分じぶんのWebサイトにリンクする場合ばあいなど。ユーザーがそのページにアクセスすると自動的じどうてきにリンク先さきサイトへのアクセスも発生はっせいし、帯域たいいき幅はばを消費しょうひする。いわゆる直ちょくリンク）。

音声おんせいにおける帯域たいいき幅はば

音声おんせいの品質ひんしつは音声おんせい周波数しゅうはすうの帯域たいいき幅はばに依存いぞんする。またヒトは可聴かちょう域いきをもちそれ以外いがいの帯域たいいきをき取きとることができない。ゆえにデジタル音声おんせいでは音質おんしつと情報じょうほう量りょうのトレードオフを考慮こうりょしながらサンプリング周波数しゅうはすうを設定せっていする。帯域たいいき幅はばの広ひろさに基もとづいていくつかの名称めいしょうがある。

表ひょう. 典型てんけい的てきな音声おんせい帯域たいいき幅はば

	帯域たいいき幅はば	(典型てんけい的てき) サンプリング周波数しゅうはすう	notes
ナローバンド	0.3kHzきろへるつ ~ 3.4kHzきろへるつ	8kHzきろへるつ	電話でんわで利用りよう
ワイドバンド	~ 7kHzきろへるつ	16kHzきろへるつ
スーパーワイドバンド	~ 14kHzきろへるつ
フルバンド	0.02kHzきろへるつ ~ 21kHzきろへるつ	44.1kHzきろへるつ, 48kHzきろへるつ	全ぜん可聴かちょう域いきをカバー, CD音質おんしつ

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• ナローバンド - ブロードバンド
• 変調へんちょう方式ほうしき
• スループット
• ビット毎秒まいびょう
• Q値ね
• 電波でんぱの周波数しゅうはすうによる分類ぶんるい
• デバイス帯域たいいき幅はばの一覧いちらん
• スペクトル効率こうりつ
• 帯域たいいき幅はば調整ちょうせい（帯域たいいき制限せいげん） - 帯域たいいき制御せいぎょ
• スプリアス

外部がいぶリンク

• Conversion: 'bandwidth per octave' N to 'quality factor' Q and vice versa