廃はい炉ろ

廃はい炉ろ（はいろ）とは、製鉄せいてつ所しょや原子力げんしりょく発電はつでん所しょ等ひとしにおいて、必要ひつようなくなった炉ろを停止ていしさせて炉ろと関連かんれんする設備せつびを解体かいたいすること、あるいは危険きけんがない程度ていどに整理せいりし、その状態じょうたいのまま放棄ほうきすることである。原子げんし炉ろに関かんしては専門せんもん的てき・法的ほうてきには「廃止はいし措置そち（はいしそち、Decomissioning）」の語かたりを用もちいる^[1]。

廃止はいしの理由りゆうとしては、設備せつびの老朽ろうきゅう化かにより安全あんぜん性せいに問題もんだいが生しょうじる場合ばあいと、単純たんじゅんな不ふ採算さいさんによる事業じぎょうの中止ちゅうしや、建たて替かえによって将来しょうらいの維持いじ費ひが安やすくつくなどの経済けいざい性せいによるものがある。コストを抑おさえるために廃はい炉ろに準じゅんじた長期ちょうき休止きゅうしの措置そちを行おこなう場合ばあいもあるが、これは廃はい炉ろとは呼よばない。この場合ばあい、老朽ろうきゅう化かを防ふせぐため、設備せつびの一部いちぶのみを解体かいたいして密閉みっぺいするモスボールを行おこなうことがある。

廃はい炉ろ時じの流ながれと措置そち

炉ろを廃はい炉ろとするときは、炉ろの停止ていし日び・炉ろの解体かいたいの開始かいし日び・設備せつびを解体かいたいする順序じゅんじょを決きめることから始はじめる。その計画けいかく書しょを炉ろを所管しょかんする官庁かんちょうに提出ていしゅつし、認可にんかを得える。また、廃はい炉ろに踏ふみ切きる場合ばあいは、炉ろを止とめる作業さぎょう（製鉄せいてつなら高炉こうろの消火しょうか、原子げんし炉ろなら制御せいぎょ棒ぼうを挿入そうにゅうする作業さぎょう）を始はじめに行おこなう。

おおよその流ながれ

廃はい炉ろの手順てじゅんの計画けいかく
炉ろの停止ていし
解体かいたい準備じゅんび作業さぎょう
炉ろに関係かんけいのない設備せつびの解体かいたい
炉ろに関係かんけいのある設備せつび・機器ききの解体かいたい
炉ろの解体かいたい
炉ろがあった建物たてものの解体かいたい

ただし、人体じんたいに害がいが及およばない場合ばあい、作業さぎょうを並行へいこうして行おこなうことがある。

原子げんし炉ろの場合ばあいは、これは解体かいたい撤去てっきょ方式ほうしきのものであり、後述こうじゅつにもあるようにさまざまな廃はい炉ろ方式ほうしきがある。

原子げんし炉ろの廃はい炉ろ

東海とうかい原発げんぱつの廃止はいし解体かいたい工程こうてい

ふげん廃はい炉ろ計画けいかく^[2]

浜岡原発はまおかげんぱつ(第だい一いち炉ろ)廃棄はいき計画けいかく^[3]

原子げんし炉ろの場合ばあいは、制御せいぎょ棒ぼうの挿入そうにゅう後ごの数時間すうじかんは蒸気じょうきが発生はっせいし、原子力げんしりょく発電はつでん所しょ自体じたいの稼働かどうは続つづいており、核かく燃料ねんりょうの冷却れいきゃくも6ヶ月かげつから3年ねんほどかかるため、実際じっさいの廃はい炉ろ作業さぎょうは約やく3年ねん後ごから始はじまる。また、使用しよう済ずみ核かく燃料ねんりょうの運はこび出だしとの兼かね合あいも考慮こうりょしなければならない。

東海とうかい発電はつでん所しょの場合ばあいは1998年ねん3月がつに運転うんてん終了しゅうりょうし廃止はいし・解体かいたい作業さぎょう（23年間ねんかん）を開始かいし、原子げんし炉ろ領域りょういきの解体かいたい撤去てっきょは16年ねん後ごの2014年ねんから6年間ねんかんで完了かんりょうする予定よていになっている^[4]。

問題もんだい点てん

20世紀せいき半なかばから建設けんせつされた原子力げんしりょく発電はつでん所しょでは数すう十じゅう年ねんの運転うんてんを終おえ廃はい炉ろとなる原子げんし炉ろが増ふえてきたが、建設けんせつ当時とうじの設計せっけい図ずが無なく解体かいたい作業さぎょう用ようロボットが作成さくせいできない、そもそも廃はい炉ろを前提ぜんていとした造つくりではない等とうで作業さぎょうに大おおきな支障ししょうが出でてきている。火力かりょく発電はつでん所しょであればボイラーなどに立入たちいって確認かくにんでき、さらに直接ちょくせつ解体かいたいできるが、原子げんし炉ろでは長年ながねんの運転うんてんにより放射ほうしゃ化かが激はげしくなかなか立入たちいれない状態じょうたいとなっているため建設けんせつ当時とうじの設計せっけい図ずが必要ひつよう。1970年ねん〜80年代ねんだいは設計せっけい図ずを保管ほかんする義務ぎむがなかった事ことから資料しりょうの劣化れっかが激はげしく或あるいは散逸さんいつして問題もんだいに直結ちょっけつしている原子げんし炉ろもある（東海とうかい発電はつでん所しょ）^[5]。

また数すう十じゅう年間ねんかんの運転うんてん中ちゅうに累積るいせきした大量たいりょうの放射ほうしゃ性せい廃棄はいき物ぶつの処理しょりに関かんしては恒久こうきゅう的てきな措置そちは未いまだ決きまっていない。低ていレベルの放射ほうしゃ性せい廃棄はいき物ぶつに関かんしては処理しょり後ご廃棄はいき処分しょぶんされる予定よていであるが、高こうレベルの放射ほうしゃ性せい廃棄はいき物ぶつに関かんしてはどこでどういう方法ほうほうで隔離かくり保管ほかんするかは未定みていである。この隔離かくり保管ほかん期間きかんは数すう百ひゃく・数すう千せんから数すう万まん年ねんと長期ちょうきに渡わたる為ため、未来みらいの地球ちきゅう上じょう生命せいめい体たいへの負まけの遺産いさんの影響えいきょうをできる限かぎり低減ていげんさせる必要ひつようがある。

原子げんし炉ろの廃はい炉ろ方法ほうほう

IAEAが定義ていぎするところによると、廃はい炉ろ方法ほうほうは大おおきく分わけて3種類しゅるいあり、それぞれ

「完全かんぜん密閉みっぺい」
「遮蔽しゃへい管理かんり」
「解体かいたい撤去てっきょ」

とされている。このほかにもさまざまな廃はい炉ろ方式ほうしきがある(例れい：完全かんぜん密閉みっぺい方式ほうしきと遮蔽しゃへい管理かんり方式ほうしきの組くみ合あわせる方法ほうほう、原子げんし炉ろを直接ちょくせつ改良かいりょう更新こうしんする方法ほうほう等とう)

ボイラーの廃はい炉ろ