解体(かいたい)とは、ばらばらにすること。解体される対象によってさまざまな意味を持つ。
輸送機器の場合、以下のような理由で輸送機器本来の役割を果たせなくなった場合、解体されることになる。
- 老朽化が著しく進んだ場合
- 耐用年数に達した場合
- 災害や事故などにより損傷し、修理不可能の場合
- まだ使えても、技術的に陳腐化し新型に代替される場合
- 使用側の事情により余剰となり、転用先もない場合
鉄道車両・自動車については、所定の廃車手続を行い、監督官庁に受理されてから解体作業を行う。ただし事故などやむを得ない場合は、現地で解体された後に手続が行われる場合もある。
航空機の耐久年数は20年程度とされているが、旅客機の場合は、途上国などで飛び続ける老朽機を除き、ほとんどが10年程度で陳腐化し売却される。
「飛行機の墓場」と呼ばれる場所が、アメリカ合衆国のアリゾナ州やニューメキシコ州の砂漠にある。こうした砂漠は空気が乾燥しており、軍用機や旅客機の機体を長期保存(モスボール)するのに最適な気候とされる。
アリゾナ州ツーソン郊外のディヴィス・モンサン (Davis Monthan) 空軍基地は爆撃機や戦闘機の墓場、カリフォルニア州のモハーヴェ砂漠にあるモハーヴェ空港は旅客機の墓場として知られ、滑走路沿いの広大な荒野に世界中から集まった無数の軍用機や旅客機がたたずんでいる。それぞれの機体は一時保管の名目であり、まだ使える機体は途上国などに売却、部品は取り外されて航空機メーカーや航空会社などのメンテナンス用に売却されており、残った機体は最終的にはスクラップにされる運命にある。
ただし、アリゾナ州ツーソン郊外にある核兵器搭載可能な爆撃機については、長期保存や譲渡のために置かれているのではなく、軍事衛星から観測可能な状態で解体処分を待つための留置である。詳しくは第一次戦略兵器削減条約 (START I) を参照されたい。
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鉄道車両の場合、廃車手続がなされた車両は、その鉄道事業者の車両基地などに回送の上、専用の解体線に移されて重機やガスバーナーで解体される。
例えば、JRなどではいくつかの車両工場に解体線がある。また東武鉄道では館林市内の北館林荷扱所に専用の解体場がある。
古い鉄道車両では石綿が使用されているものがあり、環境上の問題などから、最近は大手私鉄であっても自社に解体設備はもたず、専門の解体業者に委託して、車両を陸送して解体工事を行う場合も多い。なお東武鉄道の北館林荷扱所では、自社車両以外に他社局の廃車車両の解体も請け負っている。
解体の際に発生した部品や設備は、部品取り車として他の車両に転用したり、運転台などの車体の一部をそのまま他の車両に移設することもしばしば行われる。その他の部材は廃材・くず鉄として再利用されたり、廃棄物として処分される。また鉄道ファン向けの一般公開イベントで、愛好家向けに廃品が販売されることもある。
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自動車の場合、抹消登録と呼ばれる廃車手続を行った後の解体となる。自動車は鉄道車両と比較して輸送が容易であるため、解体業者が所有する専用施設に運び込まれた上で解体処理される。
自動車の場合はパーツの流用も容易であるため、解体車両の再利用も頻繁になされる。部品取りとして金属部分やエンジンなどの有価物は中古(リユース及びリビルド)部品として流通したり、取り外したシートなどのパーツが中古品として販売される。また解体した車両の部品から再生車両を組み上げることもある(ニコイチ)。流用できない部分もくず鉄などの形で再資源化され、残滓は廃棄物として処分される。
またバス車両の場合は鉄道車両と同様、近年バスファンの増加にともない、愛好家向けにイベントなどで方向幕などの廃品が販売されることが増えている。
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船舶解体はスクラップアンドビルドの規制により、20世紀の終わりまでは先進国、とりわけ日本の造船所などで行われていた。内航船については現在も国内において解体されている。国内には100m以上の船を解体できる業者は6社ある。自衛隊の潜水艦・海上保安庁の大型船も国内の解体業者により解体される。その殆どが瀬戸内地方に集中している。
GT1,000以上の大型船は、使用価値のある状態で海外へ使用する船として売却される場合が多く、国内において解体されることは稀である。
GT20,000以上の超大型船は、インドおよびバングラデシュ(チッタゴンなど)の遠浅で干満差の大きい砂浜において、無数の未熟練労働者によって解体されている。船主は解体に伴うコストを軽減・忌避するためバングラデシュなどに船を輸出し、現地の解体業者は解体した船の残骸をスクラップとして各国に売却している。これら危険作業や有害物質の途上国への輸出には批判も多く、船舶は2004年11月のバーゼル条約で有毒廃棄物と規定された。
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人間の社会集団における解体は、集団としての性質を失うこと。「解散」という語と似ているが、解散は自発的に行われることが多く、解体は第三者の手によるものが多い。組織解体や財閥解体など。