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海事法 - Wikipedia

海事かいじほう

海事かいじ問題もんだい違反いはん行為こうい規定きていする独立どくりつした法体ほうたいけい

海事かいじほう(かいじほう、えい: Admiralty law, maritime law)は、海事かいじ問題もんだい違反いはん行為こうい規定きていする独立どくりつした法体ほうたいけいである。海事かいじ活動かつどう規律きりつする国内こくないほうから、海洋かいよう船舶せんぱく運航うんこうする私企業しきぎょうあいだ関係かんけい規定きていする国際こくさい私法しほうにわたる。航行こうこうけん採鉱さいこうけん海岸かいがん水域すいいき司法しほうけんおよび国家こっかあいだ関係かんけい規定きていする国際こくさいほうである海洋かいようほう(Law of the Sea)とは区別くべつされている。

現在げんざい国際こくさい連合れんごう専門せんもん機関きかんである国際こくさい海事かいじ機関きかん国際こくさいてき協定きょうてい条約じょうやくのとりまとめをおこなっている。国際こくさい海事かいじ機関きかんには世界せかいの166カ国かこく加盟かめいしている[1]日本にっぽん場合ばあい海難かいなん審判しんぱんほう船舶せんぱく所有しょゆうしゃとう責任せきにん制限せいげんかんする法律ほうりつなどの法令ほうれいとして執行しっこうされている。

背景はいけい

編集へんしゅう

もっと古代こだいからある商業しょうぎょう経路けいろひとつとして海上かいじょう使つか輸送ゆそうについて、海上かいじょう貿易ぼうえき紛争ふんそう解決かいけつのための規則きそく有史ゆうしじょうのかなり初期しょきから発展はってんした。このほう古典こてんてきなものとして、ロドスほう(このほう文書ぶんしょによるいち史料しりょうのこっていないが、のローマ法典ほうてんやビザンチン法典ほうてんなか示唆しさされている)、およびハンザ同盟どうめい慣習かんしゅうほうがある。

イスラムほうも、それ以前いぜんローマほうおよびビザンチン海事かいじほうから色々いろいろ意味いみかれて、国際こくさいてき海事かいじほうに「おおきな貢献こうけん」をたした。これらには、契約けいやくで「ある期間きかんについてある料金りょうきん」を規定きていするイスラムの慣習かんしゅうまもるために、脱走だっそう不正ふせい行為こういった場合ばあい借金しゃっきんうという理解りかいで、「前金まえきんで」固定こていきゅう支払しはらわれるイスラムの水夫すいふふくまれていた。対照たいしょうてきにローマほうやビザンチンほう水夫すいふは、船長せんちょう乗組のりくみいん同様どうよう海洋かいよう事業じぎょう利害りがい関係かんけいしゃであり、多少たしょう例外れいがいはあるものの、航海こうかい成功せいこうしたときのみに、役割やくわりわせたぶん事業じぎょう利益りえき比例ひれいした給与きゅうよ支払しはらわれた。イスラムの法学ほうがくしゃは「沿海えんかい航行こうこうすなわちカボタージュ」と「海洋かいよう」の航海こうかいとの区別くべつもしており、また船荷ふなにぬしは、ふね船荷ふなに双方そうほう捕獲ほかくされた場合ばあいのぞ大半たいはん場合ばあいに、船荷ふなに責任せきにんつともしていた。奴隷どれい追放ついほう非難ひなんすることではユスティニアヌス法典ほうてん学説がくせつ彙纂および「ノモス・ローディオン・ノーティコス」からかれてもており、またイスラムの「キラド」はヨーロッパの「コメンダ」有限ゆうげん共同きょうどう経営けいえい先駆せんくしゃでもあった。イスラムの国際こくさい海洋かいようほう発展はってんあたえた影響えいきょうは、ローマほう影響えいきょうとも確認かくにんできる[2]

海事かいじほうアクイテインのエレノアが、その息子むすこであるリチャード獅子しししんおう摂政せっしょうつとめているときに、エレノアによってイングランド導入どうにゅうされた。エレノアは、最初さいしょおっとであるフランスおうルイ7せいとも十字軍じゅうじぐんひがし地中海ちちゅうかいにいたときに海事かいじほうについてまなび、自分じぶん所有しょゆうするオレロンとう以前いぜん海事かいじほう設定せっていしていた(ロールズ・オブ・オレロンとして出版しゅっぱんされた)。エレノアは海事かいじほう書籍しょせきでは「ギュイエンヌのエレノア」とばれている。イングランドでは特別とくべつの「海事かいじ裁判所さいばんしょ」が海事かいじかんするすべての係争けいそうあつかっている。これらの裁判所さいばんしょはイングランドの慣習かんしゅうほう使つかわず、ユスティニアヌス1せい市民しみんほう大全たいぜん大半たいはんもとづいている市民しみんほう裁判所さいばんしょである。

海事かいじ裁判所さいばんしょアメリカ独立どくりつ戦争せんそう誘発ゆうはつする顕著けんちょ役割やくわりがあった。たとえば、アメリカ独立どくりつ宣言せんげん言葉ことばに「おおくの場合ばあい陪審ばいしんいんによる裁判さいばん恩恵おんけいげ」というのは、印紙いんしほうをアメリカ植民しょくみん強制きょうせいするためにイギリスの議会ぎかい海事かいじ裁判所さいばんしょ司法しほうけんあたえたことをしていた[3]印紙いんしほう不人気ふにんきだったので、植民しょくみん陪審ばいしんいんはそれに違背いはいした植民しょくみんじん有罪ゆうざいにできそうになかった。海事かいじ裁判所さいばんしょ陪審ばいしんいんによる裁判さいばんみとめていなかったので、印紙いんしほう違背いはいしたとして告発こくはつされた植民しょくみんじん陪審ばいしんいんしで海事かいじ裁判所さいばんしょ判事はんじまえ審判しんぱんけることになった。

1789ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽう採択さいたくされたのちで、海事かいじかんする係争けいそうえ、海事かいじほう徐々じょじょ導入どうにゅうされることでアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくほう一部いちぶになってきた。アメリカ独立どくりつ戦争せんそう著名ちょめいになったおおくのアメリカじん法律ほうりつは、その個人こじんてき生活せいかつでは海事かいじ海洋かいよう弁護士べんごしであった。ニューヨークしゅうアレクサンダー・ハミルトンマサチューセッツしゅうジョン・アダムズひとしがいる。

1787ねん当時とうじちゅうフランス大使たいしであったトーマス・ジェファーソンジェームズ・マディソンてて、当時とうじ各州かくしゅう審議しんぎちゅうであったアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽうは、国法こくほう海事かいじほう対立たいりつするもの)で裁判さいばんおこなえるものはすべ陪審ばいしんいんによる裁判さいばんとし、諸国しょこくほうによらない(すなわち、海事かいじほうによらない)という修正しゅうせいくわえるべきとおくった。その結果けっかアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽう修正しゅうせいだい7じょうとなった。

国際こくさい協定きょうてい

編集へんしゅう

1970ねんだいなかばまで、海事かいじ貿易ぼうえき商業しょうぎょうかんする大半たいはん国際こくさい協定きょうていは、国際こくさい海事かいじ委員いいんかいばれる海事かいじ弁護士べんごし私的してき組織そしきつくっていた。国際こくさい海事かいじ委員いいんかいは1897ねん設立せつりつされ、ハーグ協定きょうてい船荷ふなに証券しょうけんかんする国際こくさい協定きょうてい)、ビスビュー修正しゅうせい条項じょうこう(ハーグ協定きょうてい修正しゅうせい)、海難かいなん救助きゅうじょ協定きょうていなどおおくの国際こくさい協定きょうてい起草きそうする責任せきにんってきた。国際こくさい海事かいじ委員いいんかい助言じょげん機関きかんとしての機能きのうつづける一方いっぽうで、1958ねん国際こくさい連合れんごうによって設立せつりつされた国際こくさい海事かいじ機関きかんによってその機能きのう肩代かたがわりされてきたが、1974ねんごろまでは本当ほんとう機能きのうしてはいなかった。

国際こくさい海事かいじ機関きかんは、海上かいじょうにおける人命じんめい安全あんぜんのための国際こくさい条約じょうやく (SOLAS)、船員せんいん訓練くんれんおよび資格しかく証明しょうめいならびに当直とうちょく基準きじゅんかんする国際こくさい条約じょうやく (STCW)、海上かいじょうにおける衝突しょうとつ予防よぼうのための国際こくさい規則きそくかんする条約じょうやく (COLREGS)、海洋かいよう汚染おせん防止ぼうし規定きていかんする条約じょうやく(MARPOL)、航空機こうくうき船舶せんぱくによる海難かいなん捜索そうさく救助きゅうじょかんする国際こくさい条約じょうやく (IAMSAR)など、海事かいじ安全あんぜんせいかかわるおおくの国際こくさい協定きょうてい準備じゅんびしてきた。海洋かいようほうかんする国際こくさい連合れんごう条約じょうやく (UNCLOS)は海洋かいよう環境かんきょう保護ほご様々さまざま海上かいじょう境界きょうかいかんするめを定義ていぎしている。

国際こくさい協定きょうてい一旦いったん採択さいたくされれば、署名しょめいした個々ここ国家こっかによって、そこの沿岸えんがん警備けいびたいあるいは裁判所さいばんしょつうじて執行しっこうされている。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

編集へんしゅう

ロナルド・レーガン政権せいけん海運かいうん政策せいさくけて、1984ねん6がつ改正かいせいされている。主要しゅよう改正かいせいてんは①独占どくせん禁止きんしほう適用てきよう除外じょがい、②協定きょうてい早期そうき認可にんか、③インディペンデントアクション制度せいど強制きょうせい導入どうにゅう、④タイムボリュームレート/サービスコントラクトの導入どうにゅう、⑤じゅう運賃うんちんせい廃止はいし以上いじょうてんであった。①②はふねしゃがわ要請ようせいであった。合衆国がっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょは1981ねんふね会社かいしゃ共同きょうどう行為こうい独禁法どっきんほう適用てきようみとめ、関係かんけい7しゃ科料かりょうしていた。それだけに反対はんたいろん有力ゆうりょくで、①にたいしては欧州おうしゅう委員いいんかい反発はんぱつ、2005ねん適用てきよう除外じょがい制度せいど廃止はいし方針ほうしん正式せいしき表明ひょうめいした。③④は荷主にぬしがわとくデュポンひとしちょう大手おおて企業きぎょう要請ようせい反映はんえいしたものである。③は同盟どうめい価格かかく協定きょうてい無力むりょくし、北米ほくべいトレードの価格かかく競争きょうそう激化げきかさせた。④は荷物にもつ多寡たかにより荷主にぬし差別さべつしてはならないという従来じゅうらい慣行かんこうくつがえすものであった。

1998ねんにも改正かいせいされたが、①は継続けいぞくされた。また、運賃うんちんインターネットうえ公表こうひょうされることになった。

司法しほうけん

編集へんしゅう

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽうだい3じょうだい2せつ海事かいじ海洋かいよう事項じこうについてアメリカ連邦れんぽう裁判所さいばんしょだいいちしん管轄かんかつけんみとめている。海事かいじ事件じけん連邦れんぽう裁判所さいばんしょ専属せんぞく管轄かんかつけんまる一方いっぽうで、海事かいじにおける事故じこともなおおくの係争けいそう連邦れんぽう裁判所さいばんしょしゅう裁判所さいばんしょまれている。

連邦れんぽう裁判所さいばんしょは28 U.S.C. § 1333の条件じょうけんしたが海事かいじ訴訟そしょうおよび海洋かいよう訴訟そしょうについて専属せんぞく管轄かんかつけんっている。このほうでは、連邦れんぽう地方裁判所ちほうさいばんしょ海事かいじ訴訟そしょうの「原告げんこく救済きゅうさい」、すなわちこれら訴訟そしょう大半たいはんしゅう裁判所さいばんしょうったえる権利けんりについてだいいちしん管轄かんかつけんみとめられている。原告げんこく救済きゅうさい条項じょうこうがあるにもかかわらず、特定とくてい訴訟そしょう連邦れんぽう裁判所さいばんしょ海事かいじ事項じこうとしてうったえることしかみとめられない。これにはすべての「対物たいぶつ海事かいじ訴訟そしょうふくまれる。これには海事かいじ抵当ていとうけん担保たんぽ物権ぶっけん執行しっこうするための船舶せんぱく拘束こうそくもとめる訴訟そしょう重大じゅうだい事故じこのち船主せんしゅ責任せきにんふね限定げんていする請願せいがん、および船舶せんぱく分割ぶんかつ所有しょゆうもとめる訴訟そしょうふくまれる。しかし、船荷ふなに損傷そんしょう船員せんいんたいする危害きがい船舶せんぱく同士どうし衝突しょうとつ航路こうろ損傷そんしょう、および海洋かいよう汚染おせんのような海事かいじ訴訟そしょうだい多数たすう原告げんこく救済きゅうさい条項じょうこうによって、しゅう裁判所さいばんしょまたは連邦れんぽう裁判所さいばんしょまれている。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく連邦れんぽう裁判所さいばんしょでは、海事かいじ事件じけんについて陪審ばいしんいんによる裁判さいばんける権利けんり一般いっぱんい。しかし、連邦れんぽう議会ぎかいは、陪審ばいしんいん裁判さいばん方法ほうほうみとめられるジョーンズほうもとづいてげられた船員せんいん人体じんたい損傷そんしょうかんする訴訟そしょうにおける陪審ばいしんいん裁判さいばんなど限定げんていしたかたち法制ほうせいしてきた。しゅう裁判所さいばんしょでは、陪審ばいしんいん裁判さいばんける権利けんり訴訟そしょうこされたしゅう法律ほうりつめられる。その結果けっかしゅう裁判所さいばんしょまれた海事かいじ訴訟そしょう陪審ばいしんいん裁判さいばんとすることができる。

適用てきようほう

編集へんしゅう

海事かいじまたは海洋かいよう訴訟そしょう審問しんもんするしゅう裁判所さいばんしょは、海事かいじほうおよび海洋かいようほう州法しゅうほう矛盾むじゅんする場合ばあいであっても、「はんエリー原則げんそく」とばれる原則げんそくもとで、海事かいじほう海洋かいようほう適用てきようもとめられる。「エリー原則げんそく」とは、しゅう訴訟そしょう審問しんもんする連邦れんぽう裁判所さいばんしょ州法しゅうほう適用てきようしなければならないということである。「はんエリー原則げんそく」は、海事かいじ訴訟そしょう審問しんもんするしゅう裁判所さいばんしょ連邦れんぽう海事かいじほう適用てきようしなければならないとしている。このことはおおきなちがいをしょうじることがある。たとえば、合衆国がっしゅうこく海事かいじほう不法ふほう行為こういしゃ共同きょうどう責任せきにんという概念がいねんみとめているが、おおくのしゅうはそうではない。2人ふたり以上いじょう個人こじん単一たんいつ傷害しょうがいあるいは損失そんしつこしたときの共同きょうどう責任せきにんでは、少量しょうりょうしかかかわっていないものでもすべてのものひとしく責任せきにんがあることになる。海事かいじ訴訟そしょう審問しんもんするしゅう裁判所さいばんしょは、そのしゅうがこの概念がいねん違法いほうとしている場合ばあいでも共同きょうどう責任せきにん原理げんり適用てきようもとめられる。

以下いかアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける海事かいじほう基本きほん原則げんそくである。

船主せんしゅ責任せきにん制限せいげん

編集へんしゅう

海事かいじほう固有こゆうかんがえのひとつは、重大じゅうだい事故じこのち船主せんしゅ責任せきにん能力のうりょくふね限定げんていすることである。この制限せいげんほう使用しようれいは1912ねんタイタニックごう沈没ちんぼつであった。タイタニックごうアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくたことがかったが、沈没ちんぼつほうせっした船主せんしゅはニューヨークの連邦れんぽう裁判所さいばんしょんで有限ゆうげん責任せきにん条項じょうこう適用てきよう申請しんせいをした。制限せいげんほうでは、船主せんしゅの「関係かんけい知識ちしき」のおよばない事情じじょうによって事故じここったならば、その船主せんしゅふねしずんだのち責任せきにんふね限定げんていすることができるとしている。

タイタニックごう沈没ちんぼつのちのこされたものは14せき救命きゅうめいボートだけだったが、その資産しさん価値かちやく3,000ドルであり、「未収みしゅう運賃うんちん」はやく91,000ドルにのぼった。1とう船室せんしつ、スイート切符きっぷ費用ひようは4,350ドル以上いじょうだった。タイタニックごう船主せんしゅはその沈没ちんぼつ関係かんけい知識ちしき原因げんいんこったことの証明しょうめい成功せいこうし、よって死亡しぼうした乗客じょうきゃく家族かぞく個人こじん所有しょゆうひんくした生存せいぞん乗客じょうきゃくは、のこった救命きゅうめいボートと未収みしゅう運賃うんちんの91,000ドルをける権利けんりあたえられた。

現代げんだい通信つうしん技術ぎじゅつにあっては、制限せいげんほう継続けいぞくしておく必要ひつようせい疑問ぎもんとされている。このほう背後はいごにあった理論りろんは、ふね適切てきせつ装備そうび乗組のりくみいん配置はいちした船主せんしゅは、ふね船主せんしゅ管轄かんかつおよばないとき発生はっせいする事項じこう責任せきにんたせるべきではないというものだった。現代げんだい船舶せんぱく陸上りくじょうにいる船主せんしゅ管轄かんかつおよばないことは滅多めったにありないが、このほうかれらにたいする実行じっこう可能かのう保護ほごでありつづけている。

制限せいげんほう大型おおがたせんには適用てきようされない。それはモーターボートの所有しょゆうしゃがそのボートを他人たにんし、りたもの事故じここしたときにその責任せきにんから船主せんしゅまもるために使つかわれる。ジェットスキーの所有しょゆうしゃであっても、その責任せきにんからみずからをまもるために制限せいげんほうをうまく使つかことができた。

船荷ふなにクレーム

編集へんしゅう

国際こくさい取引とりひきまれた船荷ふなに損傷そんしょうたいするクレームは海上かいじょう物品ぶっぴん運送うんそうほう (COGSA)であつかわれる。これはハーグ協定きょうていをアメリカが法制ほうせいしたものである。このほう重要じゅうよう性格せいかくひとつは、船主せんしゅが「フックからフックまで」すなわちみからおろしまで船荷ふなに損傷そんしょう責任せきにんがあることであり、例外れいがいとして17の免除めんじょ条項じょうこうさだめている。たとえば「かみ行為こうい」(天災てんさい)、商品しょうひん固有こゆう性質せいしつ航法こうほうあやまり、およびふね管理かんりなどである。船主せんしゅ一般いっぱんに、積荷つみに価値かちあきらかにされ、かつ容器ようき明示めいじされていなければ、1梱包こんぽうあたり500ドルまでにその責任せきにんおさえる権利けんりがある。容器ようきとして外洋がいようようコンテナをあつか能力のうりょくは、コンテナの中身なかみが500ドルの1000ばい以上いじょうであるとしても、船主せんしゅ事実じじつじょう責任せきにんはコンテナたり500ドルにおさえられる。このやりかたはアメリカにおいてかなりのりょうのまたうちつづ訴訟そしょうになってきた。船荷ふなにクレームの期限きげんは1年間ねんかんである。

船員せんいんたいする人体じんたい損傷そんしょう

編集へんしゅう

船上せんじょう負傷ふしょうした船員せんいんには3つの補償ほしょう方法ほうほう可能かのうである。生活せいかつ医療いりょう原則げんそくたいこうせい原理げんり、およびジョーンズほうである。生活せいかつ医療いりょう原則げんそくでは、負傷ふしょうした船員せんいん完治かんじするまで医療いりょうはらうことと、もしその船員せんいんがもはやふねれない場合ばあいでも航海こうかい完了かんりょうまで基本きほんてき生活せいかつ供給きょうきゅうすることを船主せんしゅもとめている。船員せんいんはその怪我けが自分じぶん故意こい重過失じゅうかしつによるものでなければ、生活せいかつ医療いりょう権利けんりられる。これはある意味いみ労働ろうどう災害さいがい補償ほしょう類似るいじしている。たいこうせい原理げんりは、ふねが、あるいはふね器具きぐが「たいこうせい」である、すなわちなんらかの欠陥けっかんがあるために船員せんいん負傷ふしょうしたならば、船主せんしゅ責任せきにんがあるとしている。ジョーンズほうでは、船員せんいん、あるいはかれ関係かんけいあるものに、不法ふほう行為こういによる損傷そんしょうあるいは不法ふほう死亡しぼうについて船主せんしゅ陪審ばいしんいんによる裁判さいばんうったえることをみとめている。ジョーンズほうは、鉄道てつどう労働ろうどうしゃ負傷ふしょうあつか連邦れんぽう雇用こようしゃ責任せきにんほう (FELA)をんでおり、石炭せきたん坑夫こうふほう類似るいじしている。船主せんしゅは、鉄道てつどう運行うんこうしゃ過失かしつのために負傷ふしょうした雇員こいんたいして鉄道てつどう運行うんこうしゃ責任せきにんがあるのとおな方法ほうほうで、船員せんいんたいして責任せきにんがある。期限きげんは3年間ねんかんである。

船上せんじょう負傷ふしょうした労働ろうどうしゃすべてが、ジョーンズほうたいこうせい原理げんり、および生活せいかつ医療いりょう原則げんそく提供ていきょうされる保護ほごけられる「船員せんいん」ではない。船員せんいんかんがえられるためには、特定とくてい船舶せんぱくあるいは共通きょうつう船主せんしゅまたは管轄かんかつにある船隊せんたいのいずれかにっている時間じかんの30%以上いじょうはたらいている必要ひつようがある。少数しょうすう例外れいがいはあるが、航行こうこう可能かのう水域すいいき負傷ふしょうした船員せんいんではない労働ろうどうしゃは、そのわりにべつ労働ろうどう災害さいがい補償ほしょうかたちである沿岸えんがん港湾こうわん労働ろうどう災害さいがい補償ほしょうほうによって保護ほごされている。

生活せいかつ医療いりょう

編集へんしゅう

生活せいかつ医療いりょう原則げんそく西暦せいれき1160ねんごろ公布こうふされたロールズ・オブ・オレロンのだい6じょう起源きげんがある。「治療ちりょう」をおこな義務ぎむは、船上せんじょう乗務じょうむちゅう負傷ふしょうした船員せんいんが「完治かんじ」するまで無償むしょう医療いりょうほどこすことを船主せんしゅもとめている。「完治かんじ」という概念がいねんは「治癒ちゆ」という概念がいねんよりひろ意味いみがある。船員せんいんの「治療ちりょう」をおこな義務ぎむは、かり船員せんいん現実げんじつ状態じょうたい改善かいぜんしないまでも、その機能きのう改善かいぜんする医薬いやく医療いりょう機械きかい供給きょうきゅうする義務ぎむふくんでいる。船員せんいん機能きのうつづけさせる長期ちょうき治療ちりょうふくむこともある。一般いっぱんてきれいとしては人工じんこう装具そうぐ車椅子くるまいすおよび鎮痛ちんつうざいがある。

生活せいかつ」の義務ぎむは、船員せんいん回復かいふくにあるときの基本きほんてき生活せいかつ船員せんいん供給きょうきゅうすることを船主せんしゅもとめている。船員せんいん一旦いったんはたらけるようになれば、船員せんいん自分じぶんでやっていくことを期待きたいされる。その結果けっか船員せんいん生活せいかつ権利けんりうしない、治療ちりょう義務ぎむ継続けいぞくする。

乗客じょうきゃくたいする人体じんたい損傷そんしょう

編集へんしゅう

船主せんしゅ乗客じょうきゃくたいして相当そうとう治療ちりょうおこな義務ぎむう。この結果けっか船上せんじょう負傷ふしょうした乗客じょうきゃく陸上りくじょう第三者だいさんしゃ過失かしつにより怪我けがった場合ばあい同様どうよう訴訟そしょうこすことができる。乗客じょうきゃく船主せんしゅ過失かしつがあったということを証明しょうめいしなければならない。期限きげん一般いっぱんに3年間ねんかんであるが、船旅ふなたび会社かいしゃたいする訴訟そしょう乗船じょうせん切符きっぷ制限せいげんれられているために、通常つうじょう1年間ねんかん以内いないうったえなければならない。大半たいはん船旅ふなたび会社かいしゃ乗船じょうせん切符きっぷには、訴訟そしょう場合ばあいフロリダしゅうマイアミまたはワシントンしゅうシアトルのどちらかで訴訟そしょうこすことをもとめる条項じょうこうもある。

海事かいじ担保たんぽ物権ぶっけんおよび抵当ていとうけん

編集へんしゅう

船舶せんぱく購入こうにゅうするための資金しきん銀行ぎんこう燃料ねんりょう貯蔵ちょぞうひんのような必需ひつじゅひんふね供給きょうきゅうする業者ぎょうしゃ賃金ちんぎん支払しはらわれる船員せんいん、およびおおくのもの船舶せんぱくたいして保証ほしょう支払しはらいもとめる抵当ていとうけんっている。抵当ていとうけん行使こうしするためには、船舶せんぱく拘束こうそくされなければならない。これは連邦れんぽう裁判所さいばんしょげられなければならない救済きゅうさいさくひとつであり、しゅう裁判所さいばんしょではできない。

海難かいなん救助きゅうじょおよび財産ざいさん救助きゅうじょ

編集へんしゅう

財産ざいさん海上かいじょううしなわれ、ものによってすくわれたとき救出きゅうしゅつしたもの救出きゅうしゅつした財産ざいさんについて救出きゅうしゅつ賞金しょうきん請求せいきゅうする権利けんりがある。「人命じんめい救助きゅうじょ」にはい。あらゆる船員せんいん報償ほうしょう期待きたいしに危機ききにある他人たにん生命せいめいすく義務ぎむがある。よって海難かいなん救助きゅうじょほう財産ざいさん救助きゅうじょにのみ適用てきようされる。

救助きゅうじょには2種類しゅるいある。契約けいやく救助きゅうじょ純粋じゅんすい救助きゅうじょであり、純粋じゅんすい救助きゅうじょは「メリット救助きゅうじょ」(功徳くどく救助きゅうじょ)ともばれる。契約けいやく救助きゅうじょでは、財貨ざいか所有しょゆうしゃ救助きゅうじょしゃ救助きゅうじょ活動かつどう開始かいしまえ契約けいやくむすび、救助きゅうじょしゃ支払しはらわれる金額きんがく契約けいやく決定けっていされる。通常つうじょう救助きゅうじょ契約けいやくは「ロイド公開こうかい形式けいしき救助きゅうじょ契約けいやく」とばれる。

純粋じゅんすい救助きゅうじょでは、財貨ざいか所有しょゆうしゃ救助きゅうじょしゃあいだ契約けいやくい。その関係かんけい法律ほうりつ示唆しさされているものである。純粋じゅんすい救助きゅうじょでの財貨ざいか救助きゅうじょしゃは、その救助きゅうじょたいする請求せいきゅう連邦れんぽう裁判所さいばんしょまねばならず、連邦れんぽう裁判所さいばんしょはその用役ようえきの「メリット」と救助きゅうじょされた財貨ざいか価値かちもとづいて救助きゅうじょ対価たいかめる。

純粋じゅんすい救助きゅうじょ請求せいきゅうは「高次こうじ」と「ていつぎ」の救助きゅうじょけられる。高次こうじ救助きゅうじょでは救助きゅうじょしゃ損傷そんしょうけた船舶せんぱく救助きゅうじょするために自分じぶん自身じしんやその乗組のりくみいん負傷ふしょうしたり、設備せつび損傷そんしょうけたりする危険きけんせいさらされる。高次こうじ救助きゅうじょれいとしては、悪天候あくてんこうなかしずふね乗船じょうせんすること、火災かさいちゅうふね乗船じょうせんすること、すでしずんでいる船舶せんぱくげること、あるいはきしからとおなみあらわれているふね曳航えいこうすることがある。ていつぎ救助きゅうじょ救助きゅうじょしゃがほとんど危険きけんせいさらされないか、身体しんたいてき危険きけんせい場合ばあいこる。ていつぎ救助きゅうじょれいには、静穏せいおんうみふね曳航えいこうすること、ふね燃料ねんりょう補給ほきゅうすること、あるいは砂洲さすはいったふねすことがある。高次こうじ救助きゅうじょおこな救助きゅうじょしゃていつぎ救助きゅうじょおこなものよりも基本きほんてきたか救助きゅうじょ報酬ほうしゅうける。

高次こうじ場合ばあいていつぎ場合ばあい救助きゅうじょ報酬ほうしゅうおおきさはまずすくわれる資産しさん価値かちもとづく。なにすくわれなければ、あるいは損傷そんしょう追加ついかされたような場合ばあいは、報償ほうしょうい。考慮こうりょすべきほか要因よういん救助きゅうじょしゃ技術ぎじゅつ救助きゅうじょされる資産しさんさらされている危険きけんせい救助きゅうじょ影響えいきょうする危険きけんさらされる資産しさん価値かち救助きゅうじょ作業さぎょう消費しょうひされる時間じかんかねりょうなどである。

純粋じゅんすい救助きゅうじょ報酬ほうしゅう救助きゅうじょされる資産しさん価値かちの50%をえることは滅多めったい。この規則きそく例外れいがい宝物ほうもつ救助きゅうじょ場合ばあいである。しずんでいる宝物ほうもつすうひゃくねんうしなわれたままであり、もともとの所有しょゆうしゃふね保険ほけんはいっていれば保険ほけんじん)がそれに興味きょうみつづけているので、救助きゅうじょしゃあるいは発見はっけんしゃ一般いっぱん資産しさん価値かち過半数かはんすうることになる。スパニッシュ・メインからの沈船(たとえばフロリダ・キーズにおけるNuestra Senora de Atocha)が通常つうじょう宝物ほうもつ救助きゅうじょ類型るいけいかんがえられるが、価値かち歴史れきしてき工芸こうげいひんんだだい世界せかい大戦たいせんなかドイツ潜水せんすいかん南北戦争なんぼくせんそう艦船かんせん(セントジョーンズがわのUSSメイプルリーフチェサピークわんのUSSモニター (装甲そうこうかん))およびしずんだ商船しょうせん(ケープ・ハッテラスおきのSSセントラルアメリカ)などのほかのタイプのふねすべ宝物ほうもつ救助きゅうじょ報酬ほうしゅう対象たいしょうであった。側面そくめん走査そうさソナーの精度せいど向上こうじょうによって、以前いぜん行方ゆくえからなかったおおくのふね所在しょざいめられており、宝物ほうもつ救助きゅうじょ過去かこよりも危険きけんせいすくない作業さぎょうになっている。ただし、いまでも高度こうど投機とうきてきであることはわらない。

コモン・ローのくに海事かいじほう

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コモン・ローのくにパキスタンシンガポールインドカナダおよびおおくのイギリス連邦れんぽう国々くにぐに)の大半たいはんはイギリスの制定せいていほう判例はんれいほうしたがっている。インドは依然いぜんとしてふるいビクトリアほうすなわち海事かいじ裁判所さいばんしょほう 1861 [24 Vict c 10]にしたがっている。パキスタンは独自どくじ制定せいていほうすなわち高等こうとう裁判所さいばんしょ条例じょうれい海事かいじ裁判さいばんけん 1980 (Ordinance XLII of 1980)をっているが、いまもイギリスの判例はんれいほうしたがっている。ひとつの理由りゆうはパキスタンほうが1956ねん司法しほうけんほう布告ふこくされたふるいイギリス海事かいじほう複製ふくせいであるからである。イングランドとウェールズの高等こうとう裁判所さいばんしょ海事かいじ司法しほうけんあつか現在げんざい制定せいていほうは1981ねん最高さいこう裁判所さいばんしょほう (sec.20-24,37)である。この制定せいていほうは1952ねん国際こくさい拘束こうそく条約じょうやくもとづいている。イギリスの制定せいていほう判例はんれいほうしたがわないほかくに、たとえばパナマ定期ていきてき国際こくさい訴訟そしょうあつかられた海事かいじ裁判所さいばんしょ設立せつりつした。

海事かいじ裁判所さいばんしょは、そのふねくにのものかそうではないか、登録とうろくされているかか、および本籍ほんせき居住きょじゅうかあるいはその所有しょゆうしゃ何処どこにいるかにかかわりく、そのふねがいる領域りょういきない司法しほうけんによって、その司法しほうけん判断はんだんする。ふね通常つうじょう司法しほうけん保有ほゆうするために裁判所さいばんしょ拘束こうそくされる。しゅう所有しょゆうするふね通常つうじょう拘束こうそく免除めんじょされる。

海事かいじほうプログラム

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世界中せかいじゅうにはこの分野ぶんや興味きょうみ専門せんもんことなるタイプの代案だいあん提供ていきょうするいくつかの大学だいがくがある。

以下いか大学院生だいがくいんせい海事かいじコースを提供ていきょうする海外かいがい大学だいがく一部いちぶである。

シンガポール

1. シンガポール

スウェーデン

2. 世界せかい海事かいじ大学だいがく

ノルウェー

3. オスロ大学だいがく

オランダ

4. エラスムス大学だいがくロッテルダム

イギリス

5. サウサンプトン大学だいがく

6. カーディフ大学だいがく

7. シティ大学だいがく

8. グラスゴー大学だいがく

9. ニューキャッスル大学だいがく

10. プリマス大学だいがく

11. ストラスクライド大学だいがく

12. ウェールス・スワンシー大学だいがく

13. グリニッジ大学だいがく

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

14. チューレーン大学だいがくロースクール

カナダ

15. ダルフージー・ロースクール

フランス

16. ナント大学だいがく

17. ニース大学だいがく

18. パリだい大学だいがく

19. ノルマンディー大学だいがく

20. ブレスト大学だいがく

21. ルアーブル大学だいがく

22. リール大学だいがく

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ http://www.imo.org/home.asp?topic_id=315&doc_id=840
  2. ^ Tai, Emily Sohmer (2007), “Book Review: Hassan S. Khalilieh, Admiralty and Maritime Laws in the Mediterranean Sea (ca. 800-1050): The “Kit?b Akriyat al-Sufun” vis-a-vis the “Nomos Rhodion Nautikos””, Medieval Encounters 13: 602-12 
  3. ^ the Stamp Act, March 22, 1765, D. Pickering, Statutes at Large, Vol. XXVI, p. 179 ff. (Clause LVII relates to jurisdiction in admiralty)

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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