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象徴 - Wikipedia

象徴しょうちょう(しょうちょう)は、抽象ちゅうしょうてき概念がいねんを、より具体ぐたいてき物事ものごとかたちによって表現ひょうげんすること、また、その表現ひょうげんもちいられたもの[1]一般いっぱんに、英語えいご symbolフランス語ふらんすご symbole)の訳語やくごであるが[2]翻訳ほんやく共通きょうつうする混乱こんらんがみられ、使用しようしゃによって、表象ひょうしょうとも解釈かいしゃくされることもある[3]

様々さまざま運動うんどうのシンボルアウェアネス・リボンホワイトリボン
れい

言葉ことばとしての定義ていぎ

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日本語にほんごにおける「象徴しょうちょう」という言葉ことばは、使用しようほうから細分さいぶんした場合ばあいに、つぎようなものがある。

  1. あるものを、そのものとはべつのものをわりにしめすことによって、間接かんせつてき表現ひょうげんし、らしめるという方法ほうほう
  2. 抽象ちゅうしょうてき概念がいねんかたちのない事物じぶつに、より具体ぐたいてき事物じぶつかたちによって、表現ひょうげんすること。
  3. ある事物じぶつ側面そくめんいちてんを、事物じぶつかたちによって、強調きょうちょう表現ひょうげんすること。

学術がくじゅつてき定義ていぎ

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図像ずぞう形象けいしょうにおいての象徴しょうちょうについては、哲学てつがくしゃ言語げんご学者がくしゃなどによって、相当そうとう蓄積ちくせきがある。これらは、過去かこ成立せいりつした数多すうた社会しゃかい体制たいせいにおいてはぐくまれた文化ぶんかてき概念がいねん、すなわち言語げんご芸術げいじゅつ宗教しゅうきょう哲学てつがく風俗ふうぞく時事じじなど、歴史れきしてき経緯けいいにより成立せいりつしてひろまり、当時とうじ人々ひとびとあいだきて使つかわれていた社会しゃかい通念つうねん概念がいねんのうち、えるかたち表現ひょうげんされ、後世こうせいのこされたものである。あつか研究けんきゅう対象たいしょうによって、ありとあらゆるものがられるが、いちれいとして、エルンスト・カッシーラーの「象徴しょうちょう形式けいしき哲学てつがく」やスザンヌ・ランガーの「シンボルの哲学てつがく」、ホワイトヘッド論考ろんこう象徴しょうちょう作用さよう」、パース記号きごう理論りろん宗教しゅうきょう人類じんるい学者がくしゃミルチャ・エリアーデ「イメージとシンボル」などがある。論者ろんしゃによって象徴しょうちょう定義ていぎことなるが、「記号きごうのうち、とく表示ひょうじされる対象たいしょう直接的ちょくせつてき対応たいおう関係かんけい類似るいじせいをもたないもの」として定義ていぎされることもある[1]。これは定義ていぎの 2. に相当そうとうする代名詞だいめいしてき用法ようほうである。

無論むろん平面へいめんじょう記号きごう絵図えずのみならず、(実在じつざい如何いかかかわらず)存在そんざい立体りったい無形むけいぶつであるおとひかりかおり、言葉ことばうえだけの概念がいねんなども広義こうぎ象徴しょうちょうふくまれ、研究けんきゅう対象たいしょうとなる。ただしそのほとんどがうしなわれた概念がいねんという無形むけいぶつであるために調査ちょうさ類推るいすい困難こんなんで、体系たいけいされているのは象徴しょうちょう意味いみとの対応たいおうせいがよく保存ほぞんされている宗教しゅうきょう象徴しょうちょう偶像ぐうぞう美術びじゅつイコン)や言語げんごがく分野ぶんやのみであるが、通常つうじょうこれらは象徴しょうちょうとはばれずかく分野ぶんや名称めいしょう独立どくりつてきあつかわれる。そのがかりはそうじてすくなく、前述ぜんじゅつ体系たいけいされた分野ぶんやからの知見ちけんのみで類推るいすいというかたち場合ばあいおおい。象徴しょうちょう研究けんきゅうは、文化ぶんか総体そうたいから理解りかいがなされる必要ひつようせいから、通常つうじょう文明ぶんめい単位たんいとした考古学こうこがくふくまれ、しかも研究けんきゅうしゃごとに必要ひつようおうじておこなわれており(文化ぶんかてき背景はいけいから象徴しょうちょう意味いみるのではなく、うしなわれた文化ぶんかがかりとして象徴しょうちょう意味いみ類推るいすいもとめられる)、象徴しょうちょうのみをせんもん体系たいけいした学問がくもんはまだ存在そんざいしない。概念的がいねんてきちかものとして美術びじゅつ分野ぶんやにおける図像ずぞう解釈かいしゃくがくがある。

精神せいしん科学かがくでの定義ていぎ

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ひと意識いしきそのものの構成こうせいさぐ精神せいしん科学かがく分野ぶんやでは、象徴しょうちょうとは、意識いしきなかにある複雑ふくざつ概念がいねん抽象ちゅうしょうてきなイメージとしてかたちびたものととらえる。漠然ばくぜんと「AがBを象徴しょうちょうする」といった場合ばあいに、(そこまでの心理しんり解析かいせきおこなわれていないが)究極きゅうきょくてきにはその関連かんれんせい理由りゆう科学かがくてき論拠ろんきょをもって説明せつめい可能かのうとする学問がくもんである。

ジャック・ラカン精神せいしん分析ぶんせき理論りろんふつ: schéma RSI)においての象徴しょうちょうとは、自己じこうちにある概念がいねんやイメージのえであり、一般いっぱんには言語げんご活動かつどうによって説明せつめいされ、言語げんごによって表現ひょうげんされるべき「自己じこうちきあがるもの」と定義ていぎされる。言葉ことばそれ自体じたい肉声にくせいえられた象徴しょうちょうであるとする。これはゆう意識いしきにおける象徴しょうちょう発現はつげん過程かていろんずるものである。

カール・グスタフ・ユング精神せいしん医学いがく研究けんきゅう臨床りんしょう心理しんりがく)において発見はっけんされた無意識むいしきかたちつくられる象徴しょうちょうは、コンプレックス原型げんけいもととし自己じこ無意識むいしきしずむイメージと、そこから意識いしき表層ひょうそうかたちとなってかびがるものをす。無意識むいしきあたえる象徴しょうちょうは、心理しんりがくにおいて意識いしき根底こんていがいがたじょうでの重要じゅうようがかりとなる。

芸術げいじゅつにおける用法ようほう

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芸術げいじゅつにおいては、19世紀せいきフランスに「象徴しょうちょう主義しゅぎ」という運動うんどうこった(象徴しょうちょう)。ボードレールをはじめ、ヴェルレーヌランボーマラルメヴァレリーといった詩人しじんがいる。これらの運動うんどうけて、直接的ちょくせつてきあらわしにくい抽象ちゅうしょうてき観念かんねん想像そうぞうりょく媒介ばいかいにして暗示あんじてき表現ひょうげんする手法しゅほう含意がんいするようになった。

17世紀せいきごろまでの静物せいぶつには、一見いっけん無意味むいみ構図こうず対象たいしょう意味いみたせてえがく、つまり象徴しょうちょうおおれられ、宗教しゅうきょう寓意ぐういとしての性質せいしつつよかった。これは絵画かいがそのものだけでなく、象徴しょうちょう理解りかいすることで婉曲えんきょく表現ひょうげん技法ぎほうえがかれた精神せいしんせいにもうつくしさを見出みいだすことができるため、図像ずぞうがく図像ずぞう解釈かいしゃくがくによって象徴しょうちょう研究けんきゅうがなされている。

人文じんぶんてき意味いみ

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人間にんげん定義ていぎ象徴しょうちょうてき活動かつどうおこな動物どうぶつ定義ていぎされる。プラトンは「人間にんげんとはそくはね動物どうぶつなり」と定義ていぎし、ディオゲネスから嘲笑ちょうしょうされたが、この一連いちれんのやりとりも人間にんげんらしい象徴しょうちょうてき行為こういえるだろう。

ちょう(しるし)

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人間にんげん以外いがい存在そんざいしめした象徴しょうちょうしるしちょうえい: signs)とばれて区別くべつされる。宗教しゅうきょうまとには、信仰しんこう対象たいしょうひとあたえたものと理解りかいされ、現実げんじつしめされる予兆よちょう奇跡きせきのほか、啓示けいじ懺悔ざんげ(の発端ほったんとしてのひらめき)など、ひと精神せいしん世界せかい直接ちょくせつしめされるものがふくまれる。

  • キリストにおいて、「預言よげんしゃヨナのしるしのほかにはなんのしるしもあたえられない」とべられている。
  • 聖書せいしょには奇跡きせきとしておおくのしるしがしめされている。またキリスト教きりすときょうでのしるしはかみ実在じつざいあかしかんがえられ有意ゆういさがもとめられるものだった。

古代こだい祈祷きとううらな神託しんたく予言よげんは、しかるべき手順てじゅんんでた「しるし」から意味いみろうとするものである。供物くもつ音楽おんがくおどりをささげて儀式ぎしきおこなったり、いのちがけで危険きけん行為こういをするひとしは、行為こうい状況じょうきょうとおして自然しぜんそのもの、あるいはちょう自然しぜんてき存在そんざいからなに特別とくべつな「しるし」をため手段しゅだんであり、「しるし」を人間にんげん理解りかい可能かのうな「象徴しょうちょう」へとえる手法しゅほうであると表現ひょうげんできる。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c 松村まつむらあきらへん象徴しょうちょう」『大辞林だいじりん』(だい2はん三省堂さんせいどう、1995ねんISBN 4-385-13900-8http://dictionary.goo.ne.jp/srch/all/象徴しょうちょう/m0u/2010ねん2がつ9にち閲覧えつらん 
  2. ^ 中江なかえ兆民ちょうみん訳書やくしょ『維氏美学びがく』(1883ねんかん)でもちいられた。
  3. ^ 松村まつむらあきらへん表象ひょうしょう」『大辞林だいじりん』(だい2はん三省堂さんせいどう、1995ねんISBN 4-385-13900-8http://dictionary.goo.ne.jp/srch/all/表象ひょうしょう/m0u/2010ねん2がつ9にち閲覧えつらん 

関連かんれん項目こうもく

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