会社は収益をあげるために、出資者や債権者から調達した資本を運転資金や設備などとして用いる。これらの、会社に帰属し将来的に会社に収益をもたらすことが期待される経済的価値を資産としてとらえる。資産には換金価値を有するものだけではなく、繰延資産のようにそれ自体では換金できない項目も含まれる。将来の収益のために前もって支出されたコストは繰延資産という見えない資産とみなされ、将来の費用として繰延べられる。
資産価値の評価の考え方には取得原価主義と時価主義とがあるが、現在の日本の財務会計では原則として取得原価主義が適用される。例えば、建物を購入し、その後建物の時価が値上がりしたとしても、資産価値の評価替えは行わない。ただし、環境変化などにより将来的に会社に収益をもたらすことが期待できなくなった資産については、減損を行って評価額を減少させなければならない。
財務会計上の資産は、貨幣を尺度とする評価が可能であることも要件の一つである。人材資源や信用、ブランド価値といった要素は、企業経営において重要な要素であると考えられているが、合併時を除けば財務会計上の資産として認識されない[注釈 1]。
製造業においては、企業は外部からさまざまな原価財を購入し、製品を製造するためにそれらを消費し、直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費が発生する。さらにそれらは仕掛品、製品に変化していく。製品が完成した時点でそれらの原価は製造原価として把握されるが、ここまでは資産なのである。つまり、資産は利益を得ることを目的に行われた努力のうち、まだ利益を生み出していない、「生ける原価」(資本的支出)と見なすことができる。そして、製品が販売された時点で、製造原価は売上原価となり「費用」として認識される。つまり、利益獲得という役目を果たし、「死せる原価」(収益的支出)になるのである。