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郷ごう学まなぶ

高麗こうらい王朝おうちょうおよび朝鮮ちょうせん王朝おうちょう時代じだいの教育きょういく機関きかん

郷ごう学まなぶ（ごうがく[1][2][3]、きょうがく[1]）は、江戸えど時代じだいから明治めいじ初年しょねんにかけて存在そんざいした教育きょういく機関きかんの一種いっしゅ。郷さと校こう（ごうこう）、郷さと学校がっこう（ごうがっこう）、義ぎ校こう（ぎこう）など[注釈ちゅうしゃく 1]ともいう。

現在げんざい用もちいられる「郷ごう学まなぶ」という用語ようごは、藩校はんこう・家いえ塾じゅく・寺子屋てらこやに分類ぶんるいされない教育きょういく機関きかんを指さすものとして創出そうしゅつされた概念がいねんであり、内実ないじつは多様たようである[4][5][6]。大おおきくは主しゅたる教育きょういく対象たいしょうが武士ぶしであるか庶民しょみんであるかによって2種類しゅるいに分わけられる[2][3][7]。武士ぶし教育きょういく機関きかんとしての郷さと学がくは、藩校はんこうの延長えんちょう、あるいは小規模しょうきぼの藩校はんこうともいうべきものである[3]。また庶民しょみん教育きょういく機関きかんとしての郷さと学がくについては、官かん（藩主はんしゅや代官だいかんなど）が設立せつりつ・運営うんえいに関与かんよしたものから、民間みんかん有志ゆうしによって設立せつりつ・運営うんえいされるものとで性格せいかくを分わけられ得える[1]。

「郷ごう学まなぶ」と総称そうしょうされる学校がっこうである郷さと校こうは、江戸えど時代じだいから明治めいじ初年しょねんまでの全ぜん期間きかんに全国ぜんこくで1000余よ校こうあったとされる[1]が、成立せいりつ時期じきは明治めいじ初年しょねんに集中しゅうちゅうしている[1]。郷さと校こうは寛政かんせい期きの頃ころから増ふえ始はじめ天保てんぽう期きに急増きゅうぞう、明治めいじに入はいる頃ころに激増げきぞうし近代きんだい学校がっこう制度せいどの基礎きそとなった。

明治維新めいじいしん期きに設立せつりつされた「郷ごう学まなぶ」あるいは「郷さと学校がっこう」は、1872年ねんの学制がくせい公布こうふに先立さきだって初等しょとう教育きょういくの普及ふきゅうを担にない[7]、学制がくせい公布こうふ後ごは多おおくが小学校しょうがっこう[注釈ちゅうしゃく 2]に転換てんかんした[3]。

定義ていぎと研究けんきゅう

編集へんしゅう

「郷ごう学まなぶ」や「郷さと校こう」という用語ようご自体じたいは中国ちゅうごく古典こてんに由来ゆらいするものである[4]。江戸えど時代じだいに設立せつりつされるようになった在郷ざいきょうの教育きょういく機関きかんについて用もちいられた「郷ごう学まなぶ」は、多分たぶんに儒者じゅしゃたちの憧憬どうけいを反映はんえいした雅称がしょうであった[4]。18世紀せいき後半こうはん、庶民しょみん教育きょういく機関きかんである久世くぜ典のり学がく館かん・笠岡かさおか敬けい業ぎょう館かんを担になった儒者じゅしゃたちが「郷さと校こう」を自称じしょうしたのが早はやい例れいとされている[4]。幕末ばくまつ期き、水戸みと藩はんは領内りょうないに設置せっちした庶民しょみん教育きょういく機関きかんについて地名ちめいを冠かんした「○○郷さと校こう」という名称めいしょうを用もちいた[4]。同どう時代じだいの公文書こうぶんしょでは「教諭きょうゆ所しょ」「教戒きょうかい所しょ」「学がく館かん」など多様たような用語ようごで称しょうされていた[4]。

明治めいじ期きに文部省もんぶしょうが学制がくせい以前いぜんの教育きょういくについての史料しりょうを収集しゅうしゅうし『日本にっぽん教育きょういく史し資料しりょう』を編纂へんさんした際さいに、藩はん立たて学校がっこう・家いえ塾じゅく・寺子屋てらこやに分類ぶんるいできない学校がっこうを「郷ごう学まなぶ」としてまとめた[4][5]。これによって現代げんだい用もちいられている「郷ごう学まなぶ」という概念がいねんが創出そうしゅつされることとなったが[5]、多様たような性格せいかくを持もつ学校がっこうを含ふくむこととなった[5]。

郷さと学がく研究けんきゅうの基礎きそを築きずいたのは石川いしかわ謙けんである[4]。1927年ねん、石川いしかわは『日本にっぽん教育きょういく史し資料しりょう』に掲載けいさいされた以上いじょうの事例じれいを発掘はっくつし、対象たいしょうによる2分類ぶんるいを提唱ていしょうした[5]。「藩侯はんこうの支族しぞく又または家老がろうなどの采さい地ちに建たてられた陪臣ばいしん学問がくもん所しょ」と「領内りょうない各地かくちの庶民しょみんを教育きょういくする為ために、藩主はんしゅ又または領主りょうしゅが設立せつりつしたり、又または設立せつりつを補助ほじょしたり設立せつりつを嘉納かのうしたりした学校がっこう」である[6]。石川いしかわは第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごまで研究けんきゅうを深ふかめ、

  • 学問がくもん所しょとしての郷さと学がく（閑谷しずたに学校がっこう）
  • 藩はん直営ちょくえいの郷さと学がく（岡山おかやま藩はん手しゅ習所）
  • 民間みんかんの郷さと学がく（会かい輔堂、懐ふところ徳とく堂どう、含翠堂どう）
  • 官民かんみん協力きょうりょくの郷さと学がく（伊勢崎いせざき郷きょう学がく）

の事例じれいを検討けんとうした[4]。

1978年ねんに津田つだ秀夫ひでおは「民衆みんしゅうの自主じしゅ性せいや内うち発はつ性せいが出発しゅっぱつ点てんとなった公的こうてき教育きょういく運動うんどう」から生うまれた郷さと学がくに対たいして「第だい三種さんしゅ郷きょう学がく」概念がいねんを提唱ていしょう、1970年代ねんだいから1980年代ねんだいにかけて「第だい三種さんしゅ郷きょう学がく論争ろんそう」が展開てんかいされるとともに事例じれい研究けんきゅうが進すすめられた[5]。

江戸えど時代じだいの郷ごう学まなぶ

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武士ぶし教育きょういく機関きかんとしての郷ごう学まなぶ

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有ゆう備館（宮城みやぎ県けん大崎おおさき市し）

武士ぶしを対象たいしょうとする郷さと学がくは、藩主はんしゅが藩はん内ないの遠隔えんかく地ちに設もうけたり、藩主はんしゅ一族いちぞくや家老がろう・重臣じゅうしんが自みずからの知行ちぎょう地ちに設置せっちしたものである[7]。重臣じゅうしんらが自みずからの知行ちぎょう地ちで自みずからの家臣かしん（藩主はんしゅの陪臣ばいしん）を対象たいしょうとして開ひらいたものについて石川いしかわ謙けんは「陪臣ばいしん学問がくもん所しょ」と解説かいせつした[6]。

これらの郷さと学がくは、教育きょういく内容ないようからも藩校はんこうの延長えんちょうにあるといえる[7][1]。会津あいづ藩はん、秋田あきた藩はん、盛岡もりおか藩はん、萩はぎ藩はん、佐賀さが藩はん、熊本くまもと藩はんなど、遠方えんぽうの大藩たいはんに多おおく設もうけられた[1]。

このほか、大身たいしん旗本はたもとが知行ちぎょう地ちで家臣かしんの教育きょういくのために開設かいせつした学校がっこうも郷さと校こうに分類ぶんるいされる（藩校はんこう#主おもな郷さと学がく (大身たいしん旗本はたもと領内りょうないに設置せっち)参照さんしょう）。

主おもな武士ぶし教育きょういく機関きかんとしての郷ごう学まなぶ

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庶民しょみん教育きょういく機関きかんとしての郷ごう学まなぶ

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閑谷しずたに学校がっこう（岡山おかやま県けん）

庶民しょみんを対象たいしょうとする郷さと学がくは、庶民しょみん教育きょういく機関きかんである点てんでは寺子屋てらこやと同様どうようであるが、幕府ばくふや藩主はんしゅの保護ほご・監督かんとくをうけていた点てんで寺子屋てらこやと区別くべつされる[7]。

石川いしかわ謙けんは、庶民しょみんを対象たいしょうとする学校がっこうを、成人せいじんを対象たいしょうとする教諭きょうゆ所しょと、子弟していに初等しょとう教育きょういくを施ほどこす学校がっこうとに区分くぶんした[6]。教諭きょうゆ所しょについて郷さと校こうと区別くべつする見解けんかいもある[8]が、郷さと学がくと教諭きょうゆ所しょは多おおく役割やくわりを兼かねた[9]。

官かんが主導しゅどう・保護ほごした郷ごう学まなぶ

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藩主はんしゅや代官だいかんが庶民しょみん教育きょういくのために開ひらいたり、あるいは民間みんかん有志ゆうしが設立せつりつして領主りょうしゅが保護ほご・監督かんとくした郷ごう学まなぶ[1]。

1668年ねん（寛文ひろふみ8年ねん）に岡山おかやま藩はん主あるじ池田いけだ光政みつまさが領内りょうないに123か所しょの手て習所を開ひらいた例れいが古ふるく、また代表だいひょう的てきである[6]。この手て習所はのちに閑谷しずたに学校がっこうに統合とうごうされた[1]。

18世紀せいき末まつ、幕府ばくふ代官だいかん早川はやかわ八郎はちろう左衛門さえもん正紀まさきは、任地にんちに3つの郷さと校こう（美作みさく久世くぜの典てん学がく館かん、備中びっちゅう笠岡かさおかの敬けい業ぎょう館かん、武蔵むさし久喜くきの遷善館かん）を開設かいせつした[8]。久世くぜの典てん学がく館かんは土地とちや建物たてものとその維持いじ費ひを地域ちいきの村役人むらやくにんや富農ふのうからの寄付きふによってまかない、『六ろく諭さとし衍義』や早川はやかわ自身じしんの著書ちょしょ『條じょう教きょう説話せつわ』などを早川はやかわ本人ほんにんや代官だいかん所しょ雇用こようの儒者じゅしゃによって庶民しょみんに講釈こうしゃくした[8]。

上野うえの国こく伊勢崎いせざき藩はん領りょうでは、享とおる和わ3年ねん（1803年ねん）に伊与久いよく村むら（現在げんざいの伊勢崎いせざき市し境さかい伊与久いよく）の豪農ごうのう宮崎みやざき有ゆう成なりら有志ゆうしによって庶民しょみん教育きょういく機関きかんとして五ご惇あつし堂どうが設立せつりつされた[10]。文化ぶんか5年ねん（1808年ねん）には藩はんが五ご惇あつし堂どうを公認こうにんし、敷地しきちや建物たてものにかかる年貢ねんぐを免除めんじょし、講師こうしを派遣はけんするなどの支援しえんを行おこなった[10]。五ご惇あつし堂どうに続つづき伊勢崎いせざき領りょうでは多おおくの郷さと学がくが組織そしきされており、「官民かんみん協力きょうりょくの郷さと学がく」と評ひょうされる。

これらの郷さと学がくの教育きょういくは、社会しゃかい的てきな危機ききの深化しんかに対応たいおうするため、道徳どうとくの高揚こうようや農業のうぎょうの奨励しょうれいなど学問がくもんを通とおして一般いっぱん民衆みんしゅうに封建ほうけん的てきな陶冶とうやを施ほどこすことが主しゅ目的もくてきであったと評価ひょうかされる[8]。郷さと学がくでは基礎きそ的てきな漢学かんがくを主おもとし、読よみ書かきにも力ちからが注そそがれた[8]。

民間みんかんの設立せつりつ・運営うんえいによる郷ごう学まなぶ

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民衆みんしゅう教育きょういく運動うんどうの自発じはつ性せい・内ない発はつ性せいを評価ひょうかして「第だい三種さんしゅ郷きょう学がく」とも捉とらえられるもので[1]、摂津せっつ国こく平野郷ひらのごう（大阪おおさか市し平野ひらの区く）の含翠堂どうがその代表だいひょう例れいとして挙あげられる[1][6]。含翠堂どうは1717年ねん（享とおる保ほ2年ねん）、平野郷ひらのごうの有力ゆうりょく者しゃである土橋どばし友とも直ただしらによって開設かいせつされ（開設かいせつ当初とうしょの名称めいしょうは「老松おいまつ堂どう」）、1872年ねん（明治めいじ5年ねん）の学制がくせい頒布はんぷまで続つづいた[1]。この学校がっこうの維持いじ運営うんえいに当あたったのは平野郷ひらのごう有力ゆうりょく者しゃたちの「同志どうし中ちゅう」であり、維持いじ費ひの拠出きょしゅつ、運営うんえい、教師きょうしの選択せんたくまでを行おこなう「民間みんかん有志ゆうしの手てのみになった郷ごう学まなぶ」であった[6]。また飢饉ききんに備そなえて積つみ立たてを行おこない窮民きゅうみんを救済きゅうさいする社会しゃかい的てき機能きのうも有ゆうしていた[11]。

含翠堂どうは次つぎの要素ようそを有ゆうしており、近代きんだい公こう教育きょういくの先駆せんくとも評価ひょうかされている[1]。

  • 教育きょういく内容ないようは儒学じゅがくが中心ちゅうしんであるが特定とくていの学がく統みつるによるものではなく、町人ちょうにんとしての実践じっせん道徳どうとくに重点じゅうてんを置おいている。
  • 設立せつりつ維持いじ者しゃと教師きょうしとが分離ぶんりしており、教育きょういくは教師きょうしに任まかされている。
  • 経済けいざい的てき基礎きそは有志ゆうしの共同きょうどう出資しゅっしによっている。
  • 権力けんりょくに公認こうにんされている。

大坂おおさかの懐ふところ徳とく堂どうを郷さと学がくと捉とらえ[2]、その大だい規模きぼで専門せんもん的てきな事例じれいと見みなす理解りかいもある[2]。

主おもな庶民しょみん教育きょういく機関きかんとしての郷ごう学まなぶ

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明治めいじ初年しょねんの郷さと学校がっこう

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「郷ごう学まなぶ」と総称そうしょうされる学校がっこうは、江戸えど時代じだいから明治めいじ初年しょねんまでの全ぜん期間きかんに全国ぜんこくで1000余よ校こうあったとされる[1]が、その多おおくは明治めいじ初年しょねんの成立せいりつである[1]。

明治維新めいじいしん後ご、府県ふけんや諸しょ藩はんはそれぞれの方針ほうしんで小学校しょうがっこう・郷さと学校がっこうの整備せいびを進すすめた[12]。当時とうじ「小学しょうがく」「小学校しょうがっこう」といった名称めいしょうは民衆みんしゅうになじみが薄うすく、士族しぞく向むけの学校がっこうと見みなされたことから[12]、「郷さと学校がっこう」「郷さと学がく所しょ」「啓蒙けいもう所しょ」「教導きょうどう所しょ」などの名称めいしょうが用もちいられた[12]。郷さと学校がっこうは主しゅとして地方ちほう住民じゅうみんの有志ゆうしによって設立せつりつ・維持いじされた学校がっこうであり[12]、その経営けいえい形態けいたいからも、近代きんだいの小学校しょうがっこうの前身ぜんしんと見みなされうる[7][12]。

1872年ねん（明治めいじ5年ねん）の学制がくせい発布はっぷにより、多おおくの郷さと学校がっこうは公おおやけ教育きょういくの中なかの小学校しょうがっこうへと転換てんかんしていった。

各かく府県ふけん・諸しょ藩はんの郷さと学校がっこう

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京都きょうとの小学校しょうがっこう（番組ばんぐみ小学校しょうがっこう）

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→詳細しょうさいは「番組ばんぐみ小学校しょうがっこう」を参照さんしょう

1869年ねん（明治めいじ2年ねん）に京都きょうとの町衆まちしゅうによって設立せつりつされた小学校しょうがっこう（京都きょうと小学校しょうがっこう[6]、あるいは番組ばんぐみ小学校しょうがっこうと総称そうしょうされる）は、民間みんかん主導しゅどうの郷さと学校がっこう[1][6]と見みなされ得えるもので、1872年ねんの学制がくせい公布こうふに先立さきだち設立せつりつされた小学校しょうがっこうとしてその時期じきの早はやいこと、また学区がっく制せいによって組織そしき的てきに設立せつりつされたことからも著名ちょめいなものである[12]。京都きょうと府ふは新あらたな町まち組ぐみ（番組ばんぐみ）を設もうけ、1868年ねん（明治めいじ元年がんねん）10月がつに小学校しょうがっこう設置せっちの趣旨しゅしを諭さとし達たち。その後ご小学校しょうがっこうの諸しょ規則きそくも定さだめられ、学制がくせい以前いぜんに64校こうの小学校しょうがっこうが設立せつりつされた。京都きょうとの小学校しょうがっこうは、地域ちいきの集会しゅうかい所しょや大人おとなの教諭きょうゆ所しょなどを兼かねる役割やくわりを持もっていた[12]。

神奈川かながわ県けんの郷さと学校がっこう

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神奈川かながわ県けんは1871年ねん（明治めいじ4年ねん）8月がつ、郷ごう村むらの組合くみあい（寄場よせば組合くみあい）を単位たんいとして全ぜん県けんを27に分わけ、各かく地区ちくに郷さと学校がっこうを設立せつりつする計画けいかくを示しめした[7]。計画けいかくによれば、各かく村むらに学校がっこう世話ぜわ役人やくにんを置おいて学校がっこう運営うんえいにあたらせ、学校がっこうの運営うんえい費用ひようは学童がくどうの有無うむにかかわらず各戸かっこに割わり当あてるというものであった[7]。就学しゅうがく期間きかんや教科きょうか、教授きょうじゅ内容ないようも示しめされた[7]。

名古屋なごや県けんの義ぎ校こう

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名古屋なごや藩はんは明治維新めいじいしん後ご、藩校はんこう明倫めいりん堂どうを改革かいかくして「小学しょうがく」を設もうけ、庶民しょみんにも門戸もんこを開ひらこうとした[12]。しかし、士族しぞくと庶民しょみんの間あいだの意識いしきの隔へだたりもあり、結局けっきょくは士族しぞく子弟していの学校がっこうとなった[12]。廃藩置県はいはんちけんにより名古屋なごや県けんとなった後のちの1871年ねん（明治めいじ4年ねん）9月がつ、県けんは一般いっぱん庶民しょみんの学校がっこうとして民間みんかん有志ゆうしによる「義ぎ校こう」の設置せっちを奨励しょうれいした[12]。1871年ねん（明治めいじ4年ねん）10月がつ、最初さいしょの義ぎ校こうとして第一義だいいちぎ校こう（のち菅原すがわら尋常じんじょう小学校しょうがっこうや名古屋なごや市立しりつ名城めいじょう小学校しょうがっこうなどを経へて、現在げんざいの名古屋なごや市立しりつ丸まるの内うち小学校しょうがっこう）が設立せつりつされた[12]。

隣接りんせつする額田ぬかた県けんでも「郷さと学校がっこう」設立せつりつが奨励しょうれいされ、1872年ねん（明治めいじ5年ねん）に名古屋なごや県けん・額田ぬかた県けんが合併がっぺいして愛知あいち県けんが成立せいりつすると、旧きゅう額田ぬかた県域けんいきの「郷さと学校がっこう」も「義ぎ校こう」に改称かいしょうした。愛知あいち県けんが学制がくせいに基もとづく「小学校しょうがっこう」の設置せっちに乗のり出だした1873（明治めいじ6年ねん）5月がつ時点じてんで、400校こうを越こえる義ぎ校こうが存在そんざいしていた。

なお、岐阜ぎふ県けんでも「義ぎ校こう」が設立せつりつされた。

堺さかい県けんの郷さと学校がっこう

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堺さかい県けんでは強力きょうりょくな行政ぎょうせい指導しどうによって郷さと学校がっこうが設立せつりつされたことが特徴とくちょうとされる[13]。なお、堺さかいの市内しない（堺さかい市し九間くけん町まちの天神てんじん社内しゃない）には江戸えど時代じだいより「郷さと学がく所しょ」があったが、明治めいじ初年しょねんには「堺さかい郷きょう学校がっこう」への改名かいめいを経へて「県けん学がく」と格上かくあげされ、英語えいごを教おしえる中等ちゅうとう教育きょういく機関きかんと位置いちづけられた[14]。

1872年ねん（明治めいじ5年ねん）年ねん2月がつ、堺さかい県けんは県域けんいきの河内かわち国こく（河かわ州しゅう）を29区く、和泉いずみ国こく（泉州せんしゅう）を25区くに分わける区く制せい[注釈ちゅうしゃく 3]を導入どうにゅう[13]。1872年ねん（明治めいじ5年ねん）年ねん3月がつ、県けんは寺子屋てらこや・私塾しじゅくの廃止はいしを指示しじ、その師匠ししょうを吸収きゅうしゅうし[13]、各区かっくに1校こうの郷さと学校がっこう（必要ひつように応おうじて分校ぶんこう）を設置せっちすることが指示しじされた[13]。

1873年ねん（明治めいじ6年ねん）4月がつ13日にち、堺さかい県けんで学制がくせいが施行しこうされ、従来じゅうらいの「郷さと学校がっこう」は「小学校しょうがっこう」に再編さいへんされた[13]。この際さい、小学校しょうがっこう名めいは通とおし番号ばんごうが採用さいようされた[13]。

民衆みんしゅう運動うんどうとしての郷さと学校がっこう

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1871年ねん（明治めいじ4年ねん）、武蔵むさし国こく南多摩みなみたま郡ぐん小野路おのじ村むら（現在げんざいの東京とうきょう都と町田まちだ市し）に、周辺しゅうへん諸もろ村むらの有力ゆうりょく者しゃたちの決議けつぎによって小野おの郷ごう学まなぶが開設かいせつされた[5]。民衆みんしゅう運動うんどうとしての着目ちゃくもくからは、多おおくの自由じゆう民権みんけん運動うんどうの地域ちいき指導しどう者しゃを輩出はいしゅつしたことで知しられる[5]。小しょう野郷のざと学がくは1873年ねん（明治めいじ6年ねん）、学制がくせいによる小学校しょうがっこう設置せっちに向むけ、合議ごうぎによって解体かいたいされた[5]。

明治めいじ初年しょねんの主おもな郷さと学校がっこう

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群馬ぐんま県けん
埼玉さいたま県けん

参照さんしょう：[23]

東京とうきょう都と
神奈川かながわ県けん
岐阜ぎふ県けん
静岡しずおか県けん
愛知あいち県けん
三重みえ県けん
京都きょうと府ふ
大阪おおさか府ふ
兵庫ひょうご県けん
広島ひろしま県けん
  • 福山ふくやま領りょうの啓蒙けいもう所しょ（約やく160校こう）
徳島とくしま県けん

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ほかに郷さと黌（ごうこう）[1][3]、郷ごう学まなぶ所しょ[1][3]などともいう。明治めいじ初期しょきには義ぎ校こう[1]などの名称めいしょうも用もちいられた。
  2. ^ 1872年ねん（明治めいじ5年ねん）の学制がくせいでは学区がっく制せいが敷しかれ、初等しょとう教育きょういく機関きかんとして尋常じんじょう小学校しょうがっこう（下等かとう4年ねん、上等じょうとう4年ねん）や女児じょじ小学しょうがく・村落そんらく小学しょうがくなど（4年ねん制せい）が規定きていされた。その後ご1879年ねん（明治めいじ12年ねん）の教育きょういく令れいでは学区がっく制せいを廃止はいしした上うえで教育きょういく権限けんげんの多おおくを地方ちほうに移うつし、小学校しょうがっこうは初等しょとう科か3年ねん・中等ちゅうとう科か3年ねん・高等こうとう科か2年ねんと規定きていされた。1886年ねん（明治めいじ19年ねん）の第だい一いち次じ小学校しょうがっこう令れい（学校がっこう令れいのひとつ）により尋常じんじょう小学校しょうがっこう（4年ねん制せい・義務ぎむ教育きょういく）と高等こうとう小学校しょうがっこう（4年ねん制せい）が設もうけられた（旧制きゅうせい小学校しょうがっこう）。日本にっぽんの学校がっこう制度せいどの変遷へんせんも参照さんしょう。
  3. ^ 戸籍こせき編成へんせい上じょうの行政ぎょうせい区画くかく。大だい区く小お区く制せいのバリエーションで「単たん一いち区く制せい」と言いわれる。明治めいじ7年ねん以降いこう堺さかい県けんでも大だい区く小お区く制せいに移行いこうした。

出典しゅってん

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関連かんれん項目こうもく

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