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高射砲 - Wikipedia
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高射こうしゃ砲ほう

高射こうしゃ砲ほう（英語えいご: anti-aircraft gun[注ちゅう 1]）は、空中くうちゅう目標もくひょうを主しゅとして射撃しゃげきする火砲かほう[1]。防衛ぼうえい省しょう規格きかく（NDS）では対空たいくう砲ほうと同義どうぎとされている[1]。

1943年ねんに撮影さつえいされた、ドイツ空軍くうぐんの88ミリ高射こうしゃ砲ほう陣地じんち。
ドイツ軍ぐんによる88ミリ高射こうしゃ砲ほうの直撃ちょくげき弾だんによって、主翼しゅよくを破壊はかいされるB-24爆撃ばくげき機き

概要がいよう

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普ひろし仏ふつ戦争せんそう中なかの1870年ねん、偵察ていさつや弾たま着ぎ観測かんそく用ようの軍用ぐんよう気球ききゅうを狙ねらい撃うつため、クルップ社しゃが開発かいはつしてプロイセン軍ぐんが用もちいた軽量けいりょう砲ほう架かの小しょう口径こうけい砲ほうが、高射こうしゃ砲ほうの祖そ形がたである[2]。第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんにかけて航空機こうくうきが発達はったつすると、各国かっこくで高射こうしゃ砲ほうが開発かいはつされていったが、多おおくは野砲やほうなど速射そくしゃ砲ほうに大だい仰角ぎょうかくを与あたえて高角こうかく射撃しゃげきができるようにしたものであった[3]。その後ご、航空機こうくうきの高速こうそく化かに伴ともなって、高射こうしゃ砲ほうにおいては、高角こうかく射撃しゃげきのほかにも、高こう初速しょそくや大だい発射はっしゃ速度そくど、また旋回せんかい・俯仰ふぎょうの迅速じんそくさなどといった特質とくしつも求もとめられるようになり、各国かっこくともこれらの要求ようきゅうを満みたす砲ほうの開発かいはつにしのぎを削けずるようになった[4]。

また高射こうしゃ砲ほうにおいては有効ゆうこうに作動さどうする信管しんかんも重要じゅうようであり、当初とうしょは火薬かやく燃焼ねんしょう式しきの時限じげん信管しんかんが用もちいられていたが、第だい一いち次じ大戦たいせん中ちゅうに改良かいりょうが重かさねられたにもかかわらず、信頼しんらい性せいの問題もんだいに悩なやまされ続つづけていた[5]。大戦たいせん末期まっきには、ドイツのクルップ社しゃが機械きかい式しきの時限じげん信管しんかんを実用じつよう化かし、この時点じてんではあまりに複雑ふくざつ・高価こうかで長ちょう射程しゃていの榴弾りゅうだん砲ほうで使つかわれたのみであったが、戦せん間あいだ期きには高射こうしゃ砲ほうにも用もちいられるようになった[6]。しかし第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかの経験けいけんから、ドイツ空軍くうぐんは時限じげん信管しんかんの使用しようを中止ちゅうしし、着発ちゃくはつ信管しんかんに切きり替かえた[7]。これに対たいし、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは近接きんせつ信管しんかん（VT信管しんかん）を実用じつよう化かし、高射こうしゃ砲ほうの有効ゆうこう性せいは著いちじるしく向上こうじょうした[8]。

一方いっぽう、1930年代ねんだい頃ころからは、低てい高度こうどを飛行ひこうする目標もくひょうに対たいしては高射こうしゃ砲ほうでは捕捉ほそく困難こんなんという問題もんだいが生しょうじ、これを補完ほかんするために対空たいくう機関きかん砲ほうも注目ちゅうもくされるようになった[9]。また航空機こうくうきの性能せいのう向上こうじょうが続つづくにつれて、中なか・高こう高度こうど目標もくひょうについても高射こうしゃ砲ほうでは対応たいおう困難こんなんとなっていき、地ち対空たいくうミサイル（SAM）が台頭たいとうしたが[4]、高射こうしゃ砲ほうも、電子でんし攻撃こうげき（EA）を受うけてレーダーが使つかえない場合ばあいでも目視もくし照準しょうじゅんで発砲はっぽうできるなどのメリットがあり、特とくに東側ひがしがわ諸国しょこくでは引ひき続つづき使つかわれた[10]。

高角こうかく砲ほう

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→「艦かん砲ほう § 対空たいくう兵器へいきとしての艦かん砲ほう (20世紀せいき)」も参照さんしょう

艦かん砲ほうにおいては、高たかい仰角ぎょうかくを与あたえられる砲ほうを高角こうかく砲ほう（英語えいご: high-angle gun, HA gun）と称しょうし[注ちゅう 2]、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん以降いこうのイギリス海軍かいぐんでは、高角こうかく砲ほう架かには「HA」の記号きごうを付ふすこととした[12]。大戦たいせん中ちゅう、各国かっこくの主要しゅような艦艇かんていには高角こうかく砲ほうが搭載とうさいされたものの、この時点じてんでは洋上ようじょうでの航空機こうくうきの運用うんようは限定げんてい的てきで、真剣しんけんな脅威きょういとはなっていなかった[13]。

高角こうかく砲ほうにおいて、最大さいだい仰角ぎょうかくを増ますと砲ほう耳みみを高たかくしなければならず、砲塔ほうとうの機構きこうも複雑ふくざつ化かするため重量じゅうりょうが増大ぞうだいし、また再さい装填そうてんにも機き力りょく補助ほじょが必要ひつようになる[14]。このため、戦せん間あいだ期きのイギリス海軍かいぐんでは、艦内かんないの容積ようせきや甲板かんぱんの面積めんせきに余裕よゆうが少すくない駆逐くちく艦かんでは専用せんようの高角こうかく砲ほうは搭載とうさいせず、既存きそんの砲ほう架かの設計せっけいを修正しゅうせいして仰角ぎょうかくをわずかに増ました程度ていどの平射へいしゃ砲ほうと、高角こうかく射撃しゃげきに対応たいおうした重じゅう機関きかん銃じゅうのみを対空たいくう兵器へいきとしている場合ばあいもあった[15]。

これに対たいし、アメリカ海軍かいぐんでは対空たいくう・対たい水上すいじょう射撃しゃげきに兼用けんようできる両用りょうよう砲ほう (Dual-purpose gun) の搭載とうさいを志向しこうしており、1926年ねん起工きこうの重じゅう巡洋艦じゅんようかん「ペンサコーラ」の副ふく砲ほうを25口径こうけい5インチ高角こうかく砲ほうとして両用りょうよう化かを実行じっこう、次つぎに駆逐くちく艦かんの主砲しゅほうとして38口径こうけい5インチ両用りょうよう砲ほうを開発かいはつ、戦艦せんかん・巡洋艦じゅんようかんや航空こうくう母艦ぼかんの副ふく砲ほうとしても広ひろく搭載とうさいした[16]。またイギリス海軍かいぐんでも、第だい二に次じ大戦たいせん劈頭へきとうのノルウェーおよびダンケルク撤退てったい作戦さくせんでの戦せん訓くんから、上記じょうきのような構成こうせいや既存きそんの高角こうかく砲ほうでは増大ぞうだいする経けい空そら脅威きょういに対抗たいこうできないと判断はんだんして、両用りょうよう砲ほうの搭載とうさいを模索もさくしたものの、完全かんぜんな両用りょうよう砲ほう化かはバトル級きゅう駆逐くちく艦かんを待まつこととなった[17]。

主要しゅような高射こうしゃ砲ほうの一覧いちらん

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  アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

  イギリス

  フランス

  イタリア

  ソビエト連邦れんぽう

  ドイツ国こく

  大日本帝国だいにっぽんていこく

脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ドイツ語ごのFliegerabwehrkanone ないし Flugabwehrkanone（直訳ちょくやくすると「対たい航空機こうくうきカノン」）由来ゆらいの略称りゃくしょう「FLAK」（FLugAbwehr Kanone）は、英語えいご圏けんでも多おおく使つかわれる。
  2. ^ カナダ海軍かいぐんでは、仰角ぎょうかく50度ど以上いじょうと定義ていぎした[11]。

出典しゅってん

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  1. ^ a b 防衛ぼうえい省しょう 2009, p. 2.
  2. ^ Hogg 1982, p. 7.
  3. ^ 佐山さやま 2008, pp. 194–217.
  4. ^ a b 猪口いのぐち修道しゅうどう「高射こうしゃ砲ほう」『日本にっぽん大だい百科全書ひゃっかぜんしょ』株式会社かぶしきがいしゃDIGITALIO〈コトバンク〉。https://kotobank.jp/word/%E9%AB%98%E5%B0%84%E7%A0%B2-62225。2022年ねん10月がつ19日にち閲覧えつらん。 
  5. ^ Hogg 1982, pp. 24–25.
  6. ^ Hogg 1982, pp. 60–65.
  7. ^ Hogg 1982, pp. 120–123.
  8. ^ Hogg 1982, pp. 136–138.
  9. ^ ワールドフォトプレス 1986, pp. 70–84.
  10. ^ Dunnigan 1992, pp. 188–190.
  11. ^ Sandy McClearn. “Canadian Navy Gun Systems”. 2022年ねん11月1日にち閲覧えつらん。
  12. ^ Friedman 2011, p. 37.
  13. ^ 堤つつみ 2006.
  14. ^ Friedman 2012, pp. 22–35.
  15. ^ Friedman 2009, pp. 213–216.
  16. ^ 中名生なかのみょう 1996.
  17. ^ Friedman 2012, pp. 108–131.

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Dunnigan, James F.「第だい8章しょう 防空ぼうくう」『新しん・戦争せんそうのテクノロジー』岡おか芳輝よしき (訳わけ)、河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、1992年ねん（原著げんちょ1988年ねん）、185-201頁ぺーじ。ISBN 978-4309241357。 
  • Friedman, Norman (2009). British Destroyers From Earliest Days to the Second World War. Naval Institute Press. ISBN 978-1-59114-081-8 
  • Friedman, Norman (2011). Naval Weapons of World War One - Guns, Torpedoes, Mines, and ASW Weapons of All Nations. Naval Institute Press. ISBN 978-1848321007 
  • Friedman, Norman (2012) [2006]. British Destroyers & Frigates: The Second World War & After. Naval Institute Press. ISBN 978-1473812796 
  • Hogg, Ian V.『対たい空戦くうせん』陸上りくじょう自衛隊じえいたい高射こうしゃ学校がっこう (翻訳ほんやく)、原はら書房しょぼう、1982年ねん（原著げんちょ1978年ねん）。ISBN 978-4562012466。 
  • 佐山さやま二郎じろう『大砲たいほう入門にゅうもん―陸軍りくぐん兵器へいき徹底てってい研究けんきゅう』光人みつひと社しゃ〈光人みつひと社しゃNF文庫ぶんこ〉、2008年ねん。ISBN 978-4769822455。 
  • 堤つつみ明夫あきお「砲ほう熕兵装そう (特集とくしゅう・対空たいくう兵へい装そうの変遷へんせん)」『世界せかいの艦船かんせん』第だい662号ごう、海人あま社しゃ、78-83頁ぺーじ、2006年ねん8月がつ。 NAID 40007357719。 
  • 中名生なかのみょう正巳まさみ「艦かん砲ほう発達はったつの節目ふしめをプロットする (特集とくしゅう・艦かん砲ほう 昔むかしと今いま)」『世界せかいの艦船かんせん』第だい518号ごう、海人あま社しゃ、69-75頁ぺーじ、1996年ねん12月。NDLJP:3292302。 
  • 防衛ぼうえい省しょう『火器かき用語ようご（火砲かほう）』防衛ぼうえい装備そうび庁ちょう〈防衛ぼうえい省しょう規格きかく〉、2009年ねん。NDLJP:11719358。https://www.mod.go.jp/atla/nds/Y/Y0003B.pdf。 
  • ワールドフォトプレス 編へん『世界せかいの重火器じゅうかき』光文社こうぶんしゃ〈ミリタリー・イラストレイテッド〉、1986年ねん。ISBN 978-4334703738。 

関連かんれん項目こうもく

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