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海軍中佐 - Wikipedia
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海軍かいぐん中佐ちゅうさ

（2等とう海うみ佐さから転送てんそう）

海軍かいぐん中佐ちゅうさ（かいぐんちゅうさ、英語えいご: commander）は、海軍かいぐんの階級かいきゅう。海軍かいぐん大佐たいさの下した、海軍かいぐん少佐しょうさの上うえ。

主おもに中小ちゅうしょう規模きぼの軍艦ぐんかんの艦長かんちょうや大だい規模きぼ艦船かんせんの副長ふくちょう（英語えいご版ばん）等ひとしを務つとめる。

「コマンダー」の系譜けいふ

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イギリス海軍かいぐんにおいて、日本にっぽんの「海軍かいぐん中佐ちゅうさ」（二に等とう海うみ佐さ）に相当そうとうする階級かいきゅうが「コマンダー」（commander）である[1]。これは階級かいきゅう制度せいどが未み発達はったつで配置はいちを基準きじゅんとして補職ほしょくを行おこなっていた時代じだいのイングランド王国おうこく海軍かいぐんにおいて、艦長かんちょうである「キャプテン」（後ごの海軍かいぐん大佐たいさ）と、これを補佐ほさする「レフテナント」（後ごの海軍かいぐん尉官いかん）とのあいだに生うまれた配置はいちを起源きげんとし、後のちに配置はいちと階級かいきゅうのヒエラルキーが整合せいごうされるようになっても、その時代じだいの配置はいち名めいがそのまま階級かいきゅうの呼称こしょうとして残のこされたものである[2]。

初期しょきステュアート朝あさ期きの17世紀せいき初頭しょとうの時点じてんで、イングランド王国おうこく海軍かいぐんの兵力へいりょくの半分はんぶんは民間みんかん船せんの徴用ちょうように依存いぞんしており[3]、共和きょうわ制せい期きには更さらに商船しょうせんの軍艦ぐんかん転用てんようが進すすめられた[4]。これらの船ふねは船長せんちょう・船員せんいんとともに海軍かいぐんに雇やとい入いれられたが、戦闘せんとうで損害そんがいを被こうむっても海軍かいぐんや国家こっかによる補償ほしょうはない一方いっぽう、船長せんちょうたちは依然いぜんとして船主せんしゅに対たいして船ふねの安全あんぜん確保かくほの責任せきにんを負おわねばならなかったことから、極力きょくりょく危険きけんを回避かいひする傾向けいこうが強つよく、しばしば戦列せんれつを離脱りだつして味方みかたを危険きけんに晒さらした[5]。この問題もんだいに対たいして、17世紀せいき半なかばからは熟練じゅくれんのレフテナントが雇やとい入船いりふねに配はいされるようになったが、これらのレフテナントは指揮しき官かん（コマンダー）と船長せんちょうないし航海こうかい長ちょう（マスター）を兼かねることから当初とうしょはコマンダー・アンド・マスター、後のちに前後ぜんごが逆転ぎゃくてんしてマスター・アンド・コマンダーと称しょうされた[2]。

1674年ねん、6等とう艦かん艦長かんちょうの資格しかくに、トリニティ・ハウスでのマスター試験しけんに合格ごうかくすることが加くわわった[2]。1748年ねんにセカンド・マスターが正式せいしきな階級かいきゅうとなり、ノンポストシップにも配員はいいんされるようになると、マスター・アンド・コマンダーが航海こうかい専門せんもん士官しかんを部下ぶかに持もつことになることから「マスター・アンド」の部分ぶぶんが不要ふようとなり、1794年ねんにこの部分ぶぶんを外はずして「コマンダー」という階級かいきゅうが制定せいていされた[2]。また1827年ねんには、コマンダーは小型こがた艦かんの艦長かんちょうだけでなく大型おおがた艦かんの副長ふくちょうとしても配置はいちされるようになった[2]。なお、当初とうしょは陸軍りくぐん少佐しょうさと同等どうとうの階級かいきゅうとして扱あつかわれていたが[6] [注ちゅう 1]、1912年ねんにレフテナントのうち先任せんにん者しゃが「レフテナント・コマンダー」として少佐しょうさと同等どうとうに扱あつかわれるようになると、コマンダーは中佐ちゅうさ相当そうとうとなった[2]。

なお階級かいきゅう制度せいどへの移行いこう期きにあたるナポレオン戦争せんそう期きを扱あつかったホーンブロワーシリーズを翻訳ほんやくするにあたり、「コマンダー」については、高橋たかはし泰やすし邦くには「海うみ尉じょう艦長かんちょう」[9]、菊池きくち光ひかりは「准じゅん海うみ佐さ」という造語ぞうごをあてている[10][注ちゅう 2]。 また、1872年ねん（明治めいじ5年ねん）の海軍かいぐん省しょう刊本かんぽんである英国えいこく海軍かいぐん官かん名めい録ろくや1881年ねん（明治めいじ14年ねん）の五ご国こく対照たいしょう兵へい語ご字書じしょでは「准じゅん艦長かんちょう」の語かたりを充あてている[12] [注ちゅう 3]。

各国かっこくの例れい

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「キャプテン」との上下じょうげ関係かんけいに由来ゆらいするものを含ふくめて、下記かきのような例れいがある。

「フリゲふりげート艦とかん長ちょう」の系譜けいふ

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イギリス海軍かいぐんでは、帆走はんそうフリゲートの艦長かんちょうとしてはポスト・キャプテン（後ごの海軍かいぐん大佐たいさ）が補ほされていた[2]。これに対たいし、大陸たいりくヨーロッパでは下記かきのように「フリゲふりげート艦とかん長ちょう」を意味いみする名称めいしょうが海軍かいぐん中佐ちゅうさに当あてられている例れいが少すくなくない[21]。

各国かっこくの例れい

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律令りつりょうに由来ゆらいする系譜けいふ

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日本にっぽん

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その他たの漢字かんじ圏けん

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北朝鮮きたちょうせん軍ぐんは日本にっぽんと同様どうようの呼称こしょうである。

著名ちょめいな海軍かいぐん中佐ちゅうさ

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日本にっぽん

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広瀬ひろせ武夫たけお海軍かいぐん中佐ちゅうさ、日本にっぽんの軍神ぐんしん
  • 広瀬ひろせ武夫たけお - 大日本帝国だいにっぽんていこく海軍かいぐん中佐ちゅうさ（少佐しょうさ。戦死せんし後ご中佐ちゅうさに昇進しょうしん）、日にち露ろ戦争せんそう
  • 岩佐いわさ直治なおじ - 大日本帝国だいにっぽんていこく海軍かいぐん中佐ちゅうさ（大尉たいい。戦死せんし後ご中佐ちゅうさに昇進しょうしん）、太平洋戦争たいへいようせんそう
  • 友永ともなが丈たけ市し - 大日本帝国だいにっぽんていこく海軍かいぐん中佐ちゅうさ（海軍かいぐん大尉たいい。戦死せんし後ご中佐ちゅうさに昇進しょうしん）、空母くうぼ飛ひ龍りゅう艦かん攻おさむ隊長たいちょう。

諸しょ外国がいこく

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  • ダニエル・クレイグ - 名誉めいよ海軍かいぐん中佐ちゅうさ。演えんじたジェームズ・ボンド（6代目だいめ）が「イギリス海軍かいぐん志願しがん予備よび隊たい（RNVR）中佐ちゅうさ」という設定せっていにちなみ、実際じっさいイギリス海軍かいぐんから階級かいきゅうが与あたえられた。

架空かくうの海軍かいぐん中佐ちゅうさ

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脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 1872年ねん（明治めいじ5年ねん1月がつ12日にち）に日本にっぽんの海軍かいぐん省しょうが定さだめた外国がいこくと国内こくないの海軍かいぐん武官ぶかんの呼称こしょうでもジューニヲル・ケプテインを中佐ちゅうさに、コマンドルを少佐しょうさに対応たいおうさせている[7]。1886年ねん（明治めいじ19年ねん）に外国がいこく海軍かいぐんで同一どういつの官かんであるものが日本にっぽんでは異ことなる官かん名めいに分わかれていると外交がいこう上じょう不都合ふつごうが多おおいとして海軍かいぐん中佐ちゅうさと海軍かいぐん中尉ちゅういを廃止はいししており、そのときの閣議かくぎに参考さんこう資料しりょうとして提出ていしゅつされた英国えいこく陸海りくかい軍ぐん武官ぶかん官等かんとう比較ひかく表ひょうでも大だい（中なか）佐さはケピテン、少佐しょうさはコマンドルとしている[8]。
  2. ^ 「コマンダー」の上級じょうきゅう者しゃにあたる「ポスト・キャプテン」と対応たいおうさせた訳語やくごであり、こちらについては高橋たかはし泰やすし邦くには「勅みことのり任にん艦長かんちょう」[11]、菊池きくち光ひかりは「海うみ佐さ」という訳語やくごをあてている[10]。
  3. ^ 五ご国こく対照たいしょう兵へい語ご字書じしょによると准じゅん艦長かんちょうは フランス語ふらんすご: Officier commandant、ドイツ語ご: Befehlshaber、英語えいご: Commander、オランダ語ご: Bevelhebber にあたる[13]。
  4. ^ 直訳ちょくやくすると「海軍かいぐん大佐たいさの補佐ほさ者しゃ」となる。
  5. ^ a b c スウェーデン海軍かいぐんやノルウェー海軍かいぐん、ポーランド海軍かいぐんでは、「コマンダー」は海軍かいぐん大佐たいさに相当そうとうする[16][17][18]。
  6. ^ 高こう千せん石せき、役やく金きん150両りょうが支給しきゅうされた[19]。要員よういん教育きょういくにあたりオランダ海軍かいぐんから支援しえんを受うけたこともあって"Kapitein-luitenant-ter-zee"というオランダ語ご呼称こしょうも付ふされている[19]。なお上級じょうきゅう者しゃである軍艦ぐんかん頭あたまには"Kapitein-ter-zee"というオランダ語ご呼称こしょうが付ふされたが[19]、これも現代げんだいオランダ海軍かいぐんにおける「海軍かいぐん大佐たいさ」と同おなじ呼称こしょうである[15]。

出典しゅってん

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  1. ^ 小林こばやし 2007, pp. 62–69.
  2. ^ a b c d e f g 小林こばやし 2007, pp. 72–77.
  3. ^ 小林こばやし 2007, pp. 156–159.
  4. ^ 小林こばやし 2007, pp. 167–169.
  5. ^ 小林こばやし 2007, pp. 180–182.
  6. ^ Universal Dictionary of Marine(1780年度ねんど版ばん)
  7. ^ 「海軍かいぐん武官ぶかん彼我ひがノ称呼しょうこヲ定ていム」国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かん、請求せいきゅう番号ばんごう：太たい00432100、件名けんめい番号ばんごう：003、太ふとし政せい類るい典てん・第だい二に編へん・明治めいじ四よん年ねん～明治めいじ十じゅう年ねん・第だい二に百ひゃく十じゅう巻かん・兵制へいせい九きゅう・武官ぶかん職制しょくせい九きゅう
  8. ^ 「海軍かいぐん武官ぶかん官等かんとう表ひょうヲ改正かいせいス」JACAR（アジア歴史れきし資料しりょうセンター）Ref.A15111142400、公文こうぶん類聚るいじゅう・第だい十じゅう編へん・明治めいじ十じゅう九きゅう年ねん・第だい十じゅう四よん巻かん・兵制へいせい三さん・陸海りくかい軍ぐん官制かんせい三さん（国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かん）（第だい1画像がぞう目め、第だい7画像がぞう目め）
  9. ^ 高橋たかはし 1973, p. 291.
  10. ^ a b 菊池きくち 1974.
  11. ^ 高橋たかはし 1973.
  12. ^ 「海軍かいぐん官かん名めい諸しょ艦船かんせんトモ英国えいこく海軍かいぐん官かん名めい録ろくノ通つうリ唱ヘシム」国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かん、請求せいきゅう番号ばんごう：太たい00432100、件名けんめい番号ばんごう：004、太ふとし政せい類るい典てん・第だい二に編へん・明治めいじ四よん年ねん～明治めいじ十じゅう年ねん・第だい二に百ひゃく十じゅう巻かん・兵制へいせい九きゅう・武官ぶかん職制しょくせい九きゅう（第だい3画像がぞう目め）
  13. ^ 室岡むろおか峻たかし徳とく、若藤わかふじ宗むね則そく、矢島やじま玄げん四よん郎ろう ほか 編へん『五ご国こく対照たいしょう兵へい語ご字書じしょ』 〔本編ほんぺん〕、参謀さんぼう本部ほんぶ、東京とうきょう、1881年ねん2月がつ、682頁ぺーじ。NDLJP:842999/350。 
  14. ^ a b Saunders 2015, pp. 55–56.
  15. ^ a b Saunders 2015, p. 47.
  16. ^ a b Saunders 2015, p. 53.
  17. ^ a b Saunders 2015, p. 48.
  18. ^ a b Saunders 2015, p. 49.
  19. ^ a b c d 高橋たかはし 1965.
  20. ^ a b Saunders 2015, p. 38.
  21. ^ Saunders 2015, pp. 28–57.
  22. ^ Saunders 2015, p. 42.
  23. ^ Saunders 2015, p. 52.
  24. ^ Saunders 2015, p. 37.
  25. ^ Saunders 2015, p. 50.

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 菊池きくち光ひかり「訳者やくしゃあとがき」『砲艦ほうかんホットスパー』早川書房はやかわしょぼう〈ハヤカワ文庫ぶんこ〉、1974年ねん、453-459頁ぺーじ。ISBN 978-4150400590。 
  • 小林こばやし幸雄ゆきお『図説ずせつイングランド海軍かいぐんの歴史れきし』原はら書房しょぼう、2007年ねん。ISBN 978-4562040483。 
  • 高橋たかはし茂夫しげお「徳川とくがわ家か海軍かいぐんの職制しょくせい」『海事かいじ史し研究けんきゅう』、日本にっぽん海事かいじ史し学会がっかい、17-44頁ぺーじ、1965年ねん4月がつ。doi:10.11501/2642080。 
  • 高橋たかはし泰やすし邦くに「訳者やくしゃあとがき」『スペイン要塞ようさいを撃滅げきめつせよ』早川書房はやかわしょぼう〈ハヤカワ文庫ぶんこ〉、1973年ねん、373-380頁ぺーじ。ISBN 978-4150400590。 
  • Saunders, Stephen (2015), Jane's Fighting Ships 2015-2016, Janes Information Group, ISBN 978-0710631435 

関連かんれん項目こうもく

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