OEM

OEM（オーイーエム、英えい: original equipment manufacturer）は、他社たしゃブランドの製品せいひんを製造せいぞうすること、またはその企業きぎょうである。日本語にほんごでは「相手あいて先さき（委託いたく者しゃ）ブランド名めい製造せいぞう」、「納入のうにゅう先さき（委託いたく者しゃ）商標しょうひょうによる受託じゅたく製造せいぞう」などと訳わけされる。

名称めいしょうについて

英語えいごの原義げんぎでは、知的ちてき財産ざいさん権けん（IP）を有ゆうする自社じしゃ製品せいひんを製造せいぞうする事業じぎょう者しゃ（manufacturer）のことを意味いみするものである。英語えいご圏けんにおいても他社たしゃブランド製品せいひんの製造せいぞうないしは他社たしゃ製品せいひんの自社じしゃブランドでの販売はんばいを行おこなう企業きぎょうという意味いみでも使用しようされる。

また、日本語にほんごでは元来がんらいの「OEM」の意味合いみあいに加くわえて「OEM契約けいやく」、「OEM生産せいさん」や「OEM販売はんばい」など「OEM◯◯」と様々さまざまな言葉ことばや用語ようごを派生はせいしている。

「original equipment manufacturing」の略りゃくであると解かいして「他社たしゃブランドの製品せいひんを製造せいぞうすること」とされることも多おおいが、「OEM」という単語たんごそのものの意味合いみあいと、後のちになって派生はせいした「OEM◯◯」には意味合いみあいの変化へんかも見みられる。

概要がいよう

OEMは家電かでんや食品しょくひん、自動車じどうしゃメーカーなど様々さまざまな業種ぎょうしゅで利用りようされている。販売はんばいブランドが流通りゅうつう業ぎょうの場合ばあいはプライベートブランド（PB）と呼よばれることが多おおい。

OEMを行おこなう理由りゆうは市場いちばの時期じきにより大おおきく3つに分わけられる。

1. 市場いちばが立たち上あがる時期じき。製造せいぞうの技術ぎじゅつやラインを持もたない企業きぎょうにとって、自社じしゃ製造せいぞうを開始かいしするまでの期間きかん、OEM供給きょうきゅうを受うけることで他社たしゃとの市場いちば投入とうにゅう時期じきの差さを埋うめることができる。
2. 市場いちばが成長せいちょう期きを迎むかえた段階だんかい。自社じしゃの生産せいさん能力のうりょくが追おいつかない時ときに他社たしゃに委託いたくする。
3. 市場いちばが衰退すいたいする時期じき。自社じしゃ生産せいさんから撤退てったいし、低ひくコストで市場いちばへの製品せいひん供給きょうきゅうが可能かのうとなる（軽けいトラックなど）。

中小ちゅうしょう企業きぎょうなど営業えいぎょう力りょくの弱よわい企業きぎょうにおいてはOEM先さきの営業えいぎょう力りょくを活用かつようできるメリットもある。

一方いっぽう、生産せいさん委託いたく者しゃは生産せいさんを外部がいぶに委託いたくすることにより利益りえき率りつが低下ていかするほか、技術ぎじゅつ流出りゅうしゅつのリスクがある。生産せいさん受託じゅたく者しゃにとっては、OEM生産せいさんだけでは市場いちばに自社じしゃブランドが浸透しんとうせず、生産せいさん量りょうが委託いたく者しゃに左右さゆうされるというデメリットがある。

自動車じどうしゃ産業さんぎょうの分野ぶんやでは、通常つうじょうの用法ようほうとは異ことなりサプライヤ対たいする自動車じどうしゃメーカ（自社じしゃブランドを含ふくみ）を意味いみすることがある。これは、品質ひんしつマネジメントシステムの国際こくさい規格きかくであるIATF16949でそのように用語ようご定義ていぎされているからである。自社じしゃブランドを持もたず他社たしゃからの委託いたく生産せいさんに特とく化かした企業きぎょうとしてマグナ・シュタイアがある。また英語えいご圏けんにおいて自動車じどうしゃ部品ぶひんについて OEM と称しょうされるものは、新車しんしゃ製造せいぞう時じの部品ぶひん（original equipment）と同おなじ製造せいぞう業者ぎょうしゃによる部品ぶひんという意味いみで日本語にほんごの純正じゅんせい部品ぶひんにほぼ等ひとしいものとなる。

歴史れきし

1950年代ねんだいにIBM社しゃで造つくられた造語ぞうごとされ、1960年ねん代だい後半こうはんからDEC社しゃの制御せいぎょ用ようミニコンピュータの販売はんばい対象たいしょうの業界ぎょうかいの定義ていぎとしてアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでOEMという言葉ことばが次第しだいに使つかわれ始はじめたと考かんがえられる。

アメリカのコンピュータや電子でんし部品ぶひん業界ぎょうかいから使つかわれ始はじめたが例れいとして汎用はんよう性せいのあるコンピュータをコンピュータ製造せいぞう業者ぎょうしゃA（以下いか「業者ぎょうしゃA」）から購入こうにゅうした別べつのコンピュータ製造せいぞう業者ぎょうしゃB（以下いか「業者ぎょうしゃB」）がそこで独自どくじの技術ぎじゅつ的てき（ハードウェアやソフトウェアなど）価値かちを付つけ加くわえ、独特どくとくの、または特定とくてい（汎用はんようの反対はんたいの意味いみ）の機能きのうを持もつ製品せいひんに造つくり上あげ、業者ぎょうしゃBは付加ふか価値かち再販さいはん業者ぎょうしゃ（VAR）としてその製品せいひんを市場いちばに出だした製造せいぞう者しゃを指さした。この様ように文字通もじどおり、「オリジナリティーや独創どくそう性せいのある製品せいひん化か（装置そうち化か）を行おこなう製造せいぞう者しゃ（業者ぎょうしゃB）」として言葉ことばOEMは使つかわれた経緯けいいがある。この時代じだいの「OEM」は文字通もじどおり「製造せいぞう者しゃ」を意味いみし、業者ぎょうしゃAと業者ぎょうしゃBの間あいだに資本しほん関係かんけいや委託いたく製造せいぞう、販売はんばい提携ていけいなどの契約けいやくなどはなく、あくまで両者りょうしゃの別個べっこの企業きぎょう行動こうどうであった。

OEMが造語ぞうごとして造つくられた1960年代ねんだい頃ころには既すでにメインフレームや小型こがたのコンピュータによる事務じむ、会計かいけいや給与きゅうよなどいわゆる事務じむに関かんする処理しょりは広ひろく行おこなわれていた。一方いっぽう、制御せいぎょ、計測けいそく、生産せいさん管理かんりなどいわゆる第だい二に次じ産業さんぎょうの生産せいさん現場げんばや研究けんきゅう現場げんばでは多おおくの機器ききや機械きかいを用もちいて行おこなわれていたがこれらを統合とうごう的てきに結合けつごうしたものではなかった。PDP-8に代表だいひょうされるミニコンピュータの登場とうじょうによってこれらを有機ゆうき的てきに結むすびつけた装置そうちやシステムを業者ぎょうしゃB自身じしんが独自どくじに学習がくしゅうし従来じゅうらいの技法ぎほうや技術ぎじゅつを生いかした「original equipment」と言いわれる「独自どくじ性せいを持もった装置そうち・システム」を差別さべつ化か戦略せんりゃくとして行おこなえるようになった。

形態けいたいの多様たよう化かと用法ようほう

歴史れきしとしてコンピュータ製造せいぞう業者ぎょうしゃAに限かぎらず、各種かくしゅの機器ききを製造せいぞうする者ものが差別さべつ化か戦略せんりゃくや販売はんばい戦略せんりゃくとして「OEM」への転換てんかんを業者ぎょうしゃBに促うながす方法ほうほうが次第しだいに広ひろまっていった。一いち例れいとして、ソニーでは1980年ねん代だい前半ぜんはんに3.5インチフロッピーディスクドライブを搭載とうさいしたワードプロセッサを発売はつばいした時とき、フロッピーディスクドライブそのものの普及ふきゅうや販売はんばい戦略せんりゃくとして製造せいぞう業者ぎょうしゃBへOEMとなるように働はたらきかけており、この時とき「OEM供給きょうきゅう」や「OEMビジネス」という表現ひょうげんが用もちいられている。元来がんらい造語ぞうごである用語ようご「OEM」は業者ぎょうしゃBを表あらわしていたが、デ・ファクトの用語ようごなので、製造せいぞう者しゃ、委託いたく製造せいぞう者しゃ、販売はんばい者しゃ、消費しょうひ者しゃのそれぞれの立場たちばから解釈かいしゃくや用法ようほうが変化へんかした。

用語ようご「OEM」は、1980年代ねんだい後半こうはんごろからコンピュータ製造せいぞう業者ぎょうしゃC（以下いか「業者ぎょうしゃC」）に製造せいぞう委託いたくし販売はんばい業者ぎょうしゃD（以下いか「業者ぎょうしゃD」）が自社じしゃのブランドとする商品しょうひんやその手法しゅほうや両りょう業者ぎょうしゃなども含ふくめて「OEM化か」、「OEMをする」、「OEM製品せいひん」、「OEM供給きょうきゅう」、「OEM元もと」や「OEM先さき」などと多様たよう化かして用もちいられている。また、「OEM」のE（equipment）は、装置そうちや比較的ひかくてき大おおきな機器ききや機械きかいを表あらわすが、equipment に当あたらないと考かんがえられる機器きき、製品せいひんや商品しょうひん分野ぶんやにまでわたって幅広はばひろく用法ようほうや用語ようごとして定着ていちゃくした。例たとえば、自動車じどうしゃ業界ぎょうかいなどにおいて「OEM元もと」や「OEM先さき」が用もちいられるが、完成かんせいした自動車じどうしゃを装置そうちや機器ききと呼よべるかどうかは議論ぎろんが分わかれる。

なお、製造元せいぞうもとの企業きぎょうをOEM元もと、供給きょうきゅう先さきの企業きぎょうをOEM先さきと呼よぶことが多おおいが、逆ぎゃくに製造せいぞうの委託いたく元もとの企業きぎょうをOEM元もと、委託いたく先さきの企業きぎょうをOEM先さきと呼よぶ場合ばあいもあり、注意ちゅういが必要ひつようである。

一方いっぽう、ODM（original design manufacturer）という用語ようごがあり、「相手あいて先さき（委託いたく者しゃ）ブランドでの製品せいひん設計せっけい・生産せいさん（者しゃ）」を表あらわす。業者ぎょうしゃCが設計せっけいから製造せいぞうまで行おこない業者ぎょうしゃDに提供ていきょうすることを主おもな業態ぎょうたいとする場合ばあい、または業者ぎょうしゃDが設計せっけい段階だんかいから全面ぜんめん的てきに業者ぎょうしゃCに依存いぞんしてその製品せいひんを購入こうにゅう・販売はんばいする場合ばあいに、業者ぎょうしゃCをODMと呼よんでいる。例たとえば、台湾たいわんの多おおくの半導体はんどうたいファウンダリや半導体はんどうたい受託じゅたく製造せいぞう会社かいしゃは「OEM企業きぎょう」というより「ODM企業きぎょう」である。

近年きんねんでは、相互そうご供給きょうきゅうやOEM元もととOEM先さきの逆転ぎゃくてんなどの他ほか、他社たしゃから供給きょうきゅうを受うけたOEM製品せいひんを他社たしゃブランドで販売はんばいするためにさらにOEM供給きょうきゅうする「二に段だんOEM」とでもいうべき製品せいひんも見みられるようになっている。

他社たしゃブランド

「他社たしゃブランドの製品せいひんの製造せいぞう」を表あらわすこととなった製造せいぞう委託いたくにおいて、以前いぜんは競争きょうそう相手あいてのブランドを製造せいぞうするということで製品せいひん供給きょうきゅう側がわからは敬遠けいえんされていた。しかし1980年代ねんだいにVTR戦争せんそうが始はじまると、VHS陣営じんえいである日本にほんビクター（現げん：JVCケンウッド）や松下電器産業まつしたでんきさんぎょう（現げん：パナソニック）といったメーカーはVHS陣営じんえい他社たしゃにVTRを供給きょうきゅうするようになる。このVTRの黎明れいめい期きはまさしく上記じょうきの1つ目めの市場いちばが立たち上あがる時期じきにOEMが行おこなわれていた。

DVDレコーダーなどのデジタルAV機器ききの普及ふきゅうに伴ともない、日本にっぽん国内こくないの家電かでんメーカーの多おおくは自社じしゃ生産せいさんから韓国かんこくや中国ちゅうごくなどの日本にっぽん国外こくがいのメーカーに製造せいぞうを委託いたくするOEMに移行いこうしていった。

他社たしゃブランドとしてある製造せいぞう者しゃによって製造せいぞうされ、販売はんばい者しゃのブランドで市場いちばに出だす製品せいひんは必かならずしもその製品せいひんがOEM製品せいひんであり製造せいぞう者しゃが別べつの者ものであることは明あきらかにされていない。例たとえば過去かこにGEブランドのVTRは松下寿電子工業まつしたことぶきでんしこうぎょう（現げん：PHC）で製造せいぞうされ、取扱とりあつかい説明せつめい書しょの箱詰はこづめまで行おこなわれてGEへ出荷しゅっか・輸出ゆしゅつされ販売はんばいされた。

脚注きゃくちゅう

関連かんれん項目こうもく

• 生産せいさん技術ぎじゅつ
• 姉妹しまい車しゃ
• バッジエンジニアリング
• EMS (製造せいぞう業ぎょう)
• プライベートブランド
• ノックダウン生産せいさん
• ライセンス生産せいさん
• プリインストール
• ODM
• ファブレス
• 請負うけおい

外部がいぶリンク

• 独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん中小ちゅうしょう企業きぎょう基盤きばん整備せいび機構きこう 製造せいぞう委託いたく契約けいやく書しょ作成さくせいにあたっての一般いっぱん的てき注意ちゅうい事項じこう（2005年ねん8月がつ 掲載けいさい）2005年ねん12月24日にちアーカイブ
• TYPESET-8, the pioneer of the "turnkey" computer system（英語えいご） - TYPESET-8と呼よばれたコンピュータ式しき組版くみはん、ターンキーシステムの草分くさわけ