天一神

天てん一いち神かみ（てんいちじん、てんいつじん）は方角ほうがく神しんの一ひとつで、十二天じゅうにてん将しょうの主将しゅしょうである。中神なかがみ（なかがみ）、天てん一いち（てんいち）、天てん乙おつ（てんおつ）、貴人きじん（きじん）ともいう。天てん一いち神かみは天てんと地ちとの間あいだを往復おうふくし、四方しほうを規則きそく的てきに巡めぐるとされ、天てん一いち神かみのいる方角ほうがくを犯おかすと祟たたりがあるとされた。天てん一いち神かみの出自しゅつじについては帝釈天たいしゃくてんの大臣だいじんであるという説せつや、北極星ほっきょくせいの精せいであるという説せつ、荒神こうじんであるという説せつ、天女てんにょであるという説せつなど色々いろいろある。天てん一いち神かみの別名べつめい「中神なかがみ」は、天てん一いち神かみが十二天じゅうにてん将しょうの中央ちゅうおうに立たつからという説せつや、一ひとつの方角ほうがくに長ながく留とまるため「長ちょう神かみ」の意味いみであるという説せつがある。

天てん一いち神かみ遊行ゆぎょう

天てん一いち神かみは、以下いかに記しるす44日間にちかんは天上てんじょうから降おりて下界げかいで四方しほうを巡めぐる。これを天てん一いち神かみ遊行ゆぎょう（てんいちじんゆぎょう）という。それぞれの期間きかんに天てん一いち神かみがいる方角ほうがくを塞ふさが（ふたがり）といい、その方角ほうがくに向むかって事ことを起おこしたり、その方角ほうがくに真まっ直じきに進すすんだりすることを避さけた。これを方忌かたいみという。天てん一いち神かみは特とくに平安へいあん時代じだいに強つよく信しんじられ、当時とうじの方違かたたがえのほとんどは天てん一いち神かみのいる方角ほうがくを避さけた物ものであった。下表かひょう内ないの干支えとの後のちの数字すうじは甲子きのえねから数かぞえた数字すうじ。

初日しょにち		日数にっすう	方角ほうがく
己おのれ酉とり	第だい46	6日間にちかん	艮うしとら	北東ほくとう
乙おつ卯う	第だい52	5日間にちかん	卯う	東ひがし
庚申こうしん	第だい57	6日間にちかん	巽たつみ	南東なんとう
丙へい寅とら	第だい3	5日間にちかん	午うま	南みなみ
辛からし未ひつじ	第だい8	6日間にちかん	坤ひつじさる	南西なんせい
丁ちょう丑うし	第だい14	5日間にちかん	酉とり	西にし
壬みずのえ午うま	第だい19	6日間にちかん	乾いぬい	北西ほくせい
戊子ぼし	第だい25	5日間にちかん	子こ	北きた

天てん一いち天上てんじょう

天てん一いち天上てんじょうは選せん日びの1つ。

癸巳きし（30番目ばんめ）から戊つちのえ申さる（45番目ばんめ）までの16日間にちかんは天てん一いち神かみが天上てんじょうに帰かえるため、この期間きかんは天てん一いち神かみの祟たたりはなくなる。この期間きかんを天てん一いち天上てんじょう（てんいちてんじょう）といい、選せん日びの一ひとつとして暦こよみに記載きさいされている。天てん一いち天上てんじょうの期間きかんは天てん一いち神かみの祟たたりはなく、どこへ出でかけるにも吉きちとされ、縁起えんぎをかつぐ相場そうば師しはこの日ひを相場そうばが上うえ騰あがする諺ことわざとして用もちいた。しかし、その代かわりに日にち遊ゆう神しんが地上ちじょうに降おりて家いえの中なかに留とまるため、この期間きかんは家いえの中なかを清潔せいけつにしなければ日にち遊ゆう神しんの祟たたりがあるとされている。その年としの最初さいしょの天てん一いち天上てんじょうの1日にち目めを「天てん一太郎いちたろう」といい、上うえ吉日きちじつとされている。この日ひに雨あめが降ふるとその後ごの天候てんこうが良よくなくなるとされ、この日ひの天候てんこうによってその年としの豊作ほうさくと凶作きょうさくを占うらなった。

参考さんこう文献ぶんけん

• 岡田おかだ芳朗よしろう、阿久根あくね末まつ忠ただし『現代げんだいこよみ読よみ解とき事典じてん』柏書房かしわしょぼう、1993年ねん。ISBN 4-7601-0951-X。