帝釈天たいしゃくてん

帝釈天たいしゃくてん
	帝釈天たいしゃくてん立像りつぞう; （アジア美術館びじゅつかん（英語えいご版ばん））
名な	帝釈天たいしゃくてん
梵名	「インドラ」; （इन्द्र Indra）
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帝釈天たいしゃくてん（たいしゃくてん）は、仏教ぶっきょうの守護神しゅごじんである天てん部ぶの一ひとつ。天主てんしゅ帝釈たいしゃく・天帝てんてい・天皇てんのうともいう^[1]。^[2]。バラモン教ばらもんきょう・ヒンドゥー教きょう・ゾロアスター教きょうの武神ぶしん（天帝てんてい）でヒッタイト条文じょうぶんにも見みられるインドラ（梵: इन्द्र [indra]）と同一どういつの神かみ。妻つまは阿修羅あしゅらの娘むすめであるシャチー（舎しゃ脂あぶら）。梵天ぼんてんと一いち対ついの像ぞうとして表あらわされることが多おおく、両者りょうしゃで「梵釈」ともいう。釋しゃく提ひさげ桓因（しゃくだいかんいん）とも記載きさいされる。

概説がいせつ

帝釈天たいしゃくてんの元もとの名前なまえは、雷神らいじんインドラ神しんであり、インドラの名前なまえのシャックロー・デーヴァーナーン・インドラハ（梵: Śakro devānām indraḥ, 巴ともえ: Sakko devānam indo）のうち、śakraを釈しゃくと音訳おんやくしたものに、devaを天てんと意訳いやくして後部こうぶに付つけ足たし、indraを帝みかどと意訳いやくして冠かんしたものになる。

本来ほんらいのインドラ神しんは、阿修羅あしゅらとも戦闘せんとうしたという武勇ぶゆうの神かみであったが、仏教ぶっきょうに取とり入いれられ、成道じょうどう前まえから釈迦しゃかを助たすけ、またその説法せっぽうを聴聞ちょうもんしたことで、梵天ぼんてんと並ならんで仏教ぶっきょうの二に大だい護法ごほう善ぜん神しん、冥界めいかいの侵攻しんこうを阻止そしする逸材いつざいとなった（インドラの項こうを参照さんしょう）。

四天王してんのうなどを配下はいかとし、須弥山しゅみせんの頂上ちょうじょう・忉利天てんの善ぜん見城けんじょう（喜き見城けんじょう）に住すむとされる。インドにおける仏伝ぶつでん図様ずようにおいては、釈迦しゃかに従したがう帝釈天たいしゃくてんの様子ようすが描えがかれることがある。

『涅槃ねはん経けい』巻まき33や『大智たいち度ど論ろん』巻まき56には、帝釈天たいしゃくてんが人間にんげんだった頃ころの名前なまえは憍尸迦（きょうしか、梵: Kauśika [カウシカ]）であると説とかれている。かつて昔むかしにマガダ国こくの中なかで名なを摩ま伽とぎ（まか）、姓せいを憍尸迦という、福徳ふくとくと大だい智慧ちえあるバラモンがいた。

彼かれには知人ちじん友人ゆうじんが32人にんいて共ともに福徳ふくとくを修しゅうして命いのち終おわりして、須弥山しゅみせんの頂いただきの第だい2の天上てんじょうに生うまれた。摩ま伽とぎバラモンは天主てんしゅとなり、32人にんは輔相大臣だいじんとなったため、彼かれを含ふくめた33人にんを三さん十じゅう三さん天てんという。これゆえに釈迦しゃか仏ほとけは彼かれの本名ほんみょうである憍尸しかばね迦と呼よぶという。また、このために彼かれの妻つま・シャチーを憍尸迦夫人じんと呼よぶこともある。

日本にっぽんでは頭上ずじょうに宝たから髻たぶさを結むすび、大だい衣ころもや天てん衣ころもを着きた二に臂ひじ像ぞう・立像りつぞう、あるいは白しろ象ぞうに乗のった状態じょうたいが多おおい。手てには金きむ剛つよし杵きねや蓮はちす茎くきなどを持もち、着衣ちゃくい下かに甲冑かっちゅうを着つけることもある。密教みっきょうにおいては、一いち面めん二に臂ひじで宝冠ほうかんを戴いただき、身体しんたいには甲冑かっちゅうを着つけ、手てには独鈷とっこ杵きねを持もつ例れいが見みられる。

帝釈天たいしゃくてんは、天てん部ぶの最高さいこう位いに属ぞくするが、独どく尊みこととなることはほとんどない。そのため、映画えいが『男おとこはつらいよ』でも有名ゆうめいな「柴又しばまたの帝釈天たいしゃくてん（題だい経けい寺てら）」が本尊ほんぞんとして祀まつられるのは、大変たいへん珍めずらしいケースである^[3]。

真言しんごん

オン・インドラヤ・ソワカ^[4]
ナウマク・サンマンダ・ボダナン・インドラヤ・ソワカ^[5]

日本にっぽんにおける帝釈天たいしゃくてん

日本にっぽん最古さいこの遺のこ存そん例れいは、法隆寺ほうりゅうじの玉虫たまむし厨子ずし（飛鳥あすか時代ときよ）に描えがかれた「施ほどこせ身み聞偈図ず」（せしんもんげず）に見みられるものである。同どう寺てらの食堂しょくどう（じきどう）には梵天ぼんてん・帝釈天たいしゃくてんの塑像そぞう（奈良なら時代じだい）が安置あんちされている（現在げんざいは大だい宝蔵ほうぞう院いんに安置あんち）。東大寺とうだいじ法華ほっけ堂どう（三さん月がつ堂どう）には、乾漆かんしつ造づくりの梵天ぼんてん・帝釈天たいしゃくてん像ぞう（奈良なら時代じだい）がある。

唐招提寺とうしょうだいじ金堂こんどうには、梵天ぼんてん・帝釈天たいしゃくてんの木像もくぞう（奈良なら時代じだい）が見みられる。京都きょうと・東寺とうじ講堂こうどうには、密教みっきょう系けいの白しろ象ぞうに乗のった木像もくぞう（平安へいあん時代じだい前期ぜんき）が安置あんちされる。

日本にっぽんにおいては庚申こうしんの日ひを縁日えんにちとする。