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しんしょ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
仏教ぶっきょう用語ようご
しんしょ
パーリ cetasika
サンスクリット caitasika, caitika, caitta
チベット སེམས་བྱུང་
(Wylie: sems byung;
THL: semjung
)
中国ちゅうごく しんしょ (T) / しんしょ (S)
しんしょほう (T) / しんしょほう (S)
しんすう (T) / しんすう (S) (旧訳きゅうやく)
しんすうほう (T) / しんすうほう (S) (旧訳きゅうやく)
日本語にほんご しんしょ
(マ字まじ: shinjo)
朝鮮ちょうせん 심소, 심소법,
마음작용

(RR: simso, simsobeob,
maeumjakyong
)
英語えいご mental factors
mental events
mental states
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しんしょ(しんじょ、ともえ: cetasika, チェータシカ: caitasika, チャイタシカ)とは、仏教ぶっきょうにおけるしんともえ: citta )の構成こうせい要素ようそ機能きのう中身なかみのこと[1]分類ぶんるいにおいては、「しんしょほう」として表現ひょうげんされる。

今日きょうアビダルマによって研究けんきゅうされ注釈ちゅうしゃくされるおもしんしょ以下いかがある[2]

仏教ぶっきょう

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上座かみざ大寺おおてら

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みなみでん上座かみざ仏教ぶっきょう上座かみざ大寺おおてら)では、『アビダンマッタ・サンガハ』にのっとり、しんしょ(しんじょ、cetasika, チェータシカ)を以下いかぜん52しゅとする[3][4]しんしょは4つある勝義まさよしたいのひとつである[1]

Terasaññasamānā ca cuddasākusalā tathā; Sobhanā pañcavīsāti dvipaññāsa pavuccare.

このように、13のどうしんしょ)、14の不善ふぜんしんしょ)、25のきよししんしょ)という、52(しんしょ)がかれている。[5]

アビダンマッタ・サンガハ II. Cetasikaparicchedo
  • どう他心たしんしょ(どうたしんじょ、aññasamāna cetasika, アンニャサマーナ・チェータシカ)(13)[5]
    • きょう一切いっさい心心こころごころしょ(くいっさいしんしんじょ、sabba-citta-sādhārana cetasika, サッバチッタサーダーラナ・チェータシカ)(7) - あらゆるしんかならまれるななつのしんしょ[5]
      • さわ(そく、phassa, パッサ
      • (じゅ、vedanā, ヴェーダナー
      • そう(そう、saññā, サンニャー
      • おもえ(し、cetanā, チェータナー) - 意思いし
      • いちさかいせい(いっきょうしょう、ekaggatā, エーカッガター) - 集中しゅうちゅうりょく
      • いのち(みょうこん、jīvitindriya, ジーヴィティンドリヤ
      • 作意さくい(さい、manasikāra, マナシカーラ) - 注意ちゅういりょく
    • ざつしんしょ(ぞうしんじょ、pakinnaka cetasika, パキンナカ・チェータシカ)(6)
      • ひろ(じん、vitakka, ヴィタッカ
      • (し、vicāra, ヴィチャーラ
      • かちかい(しょうげ、adhimokkha, アディモッカ
      • 精進しょうじん(しょうじん、viriya, ヴィリヤ) - 努力どりょく
      • (き、pīti, ピーティ) - よろこ
      • よく(いよく、chanda, チャンダ
  • 善心ぜんしんしょ(ふぜんしんじょ、akusala cetasika, アクサラ・チェータシカ)(14)
    • けい
      • (ち、moha, モーハ) - 無知むち
      • (むざん、ahirika, アヒリカ) - つみじないこと
      • (むき、anottappa, アノッタッパ) - つみおそれないこと
      • 掉挙(じょうこ、uddhacca, ウッダッチャ
    • よくけい
      • むさぼ(とん、lobha, ローバ) - むさぼり
      • (けん、diṭṭhi, ディッティ) - 邪見じゃけん
      • (まん、māna, マーナ
    • いかけい
      • (しん、dosa, ドーサ) - いか
      • (しつ、issā, イッサー) - ねたみ、嫉妬しっと
      • (けん、macchariya, マッチャリヤ) - 物惜ものおしみ
      • あくさく(おさ/あくさ、kukkucca, クックッチャ) - 後悔こうかい
    • 【その
      • 昏沈(こんじん / こんぢん、thīna, ティーナ) -
      • 睡眠すいみん(すいめん、middha, ミッダ) - 眠気ねむけ
      • うたぐ(ぎ、vicikicchā, ヴィチキッチャー) - うたが
  • 浄心じょうしんしょ(じょうしんじょ、sobhana cetasika, ソーバナ・チェータシカ)(25)
    • きょう浄心じょうしんしょ
      • しん(しん、saddhā, サッダー) - 仏法僧ぶっぽうそうなど、ぜんなる対象たいしょうたいしてしんませること
      • ねん(ねん、sati, サティ) - づき、自覚じかく
      • (ざん、hiri, ヒリ) - つみじること
      • (き、ottappa, オッタッパ) - つみおそれること
      • むさぼ(むとん、alobha, アローバ
      • (むしん、adosa, アドーサ) - いつくしみ
      • ちゅう(ちゅうしゃ、tatramajjhattatā, タトラマッジャッタター) - しん平静へいせい
      • 身軽みがるやす(しんきょうあん、kāyappassaddhi, カーヤッパッサッディ
      • こころけいやす(しんきょうあん、cittappassaddhi, チッタッパッサッディ
      • 軽快けいかいせい(しんきょうかいしょう、kāyalahutā, カーヤラフター) - からだ身軽みがる
      • こころ軽快けいかいせい(しんきょうかいしょう、cittalahutā, チッタラフター) - しん身軽みがる
      • 柔軟じゅうなんせい(しんにゅうなんしょう、 kāyamudutā, カーヤムドゥター) - からだ柔軟じゅうなん
      • こころ柔軟じゅうなんせい(しんにゅうなんしょう、 cittamudutā, チッタムドゥター) - しん柔軟じゅうなん
      • 適合てきごうせい(しんちゃくごうしょう、kāyakammaññatā, カーヤカンマンニャター
      • しん適合てきごうせい(しんちゃくごうしょう、cittakammaññatā, チッタカンマンニャター
      • 練達れんたつせい(しんれんだつしょう、kāyapāguññatā, カーヤパーグンニャター
      • しん練達れんたつせい(しんれんだつしょう、cittapāguññatā, チッタパーグンニャター
      • はしじきせい(しんたんじきしょう、kāyujukatā, カーユジュカター
      • こころはしじきせい(しんたんじきしょう、cittujukatā, チットゥジュカター
    • はなれしんしょ
      • せい(しょうご、sammā-vācā, サンマーヴァーチャー) - うそをつくことなどしき言葉ことば行為こういからはなれること
      • 正業せいぎょう(しょうごう、sammā-kammanta, サンマーカンマンタ)
      • せいいのち(しょうみょう、sammā-ājīva, サンマーアージーヴァ)
    • 無量むりょうしんしょ
      • (ひ、karunā, カルナー) - 他人たにんくるしみをのぞいてあげたいというしん
      • (き、muditā, ムディター) - 他人たにん幸福こうふくよろこしん
    • 智慧ちえしんしょ
      • とし(えこん、paññindriya, パンニンドゥリヤ) - 真理しんりたいする智慧ちえ

せつ一切いっさいゆう

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せつ一切いっさいゆうの『倶舎ろん』では、しんしょしんしょほう)を以下いかぜん46しゅとする。

  • しんしょほう(しんじょほう、caitasika dharma, チャイタシカ・ダルマ)(46)
    • 大地だいちほう(だいじほう、mahā-bhūmika dharma, マハーブーミカ・ダルマ)(10)
    • だい善地ぜんちほう(だいぜんじほう、kuśala-mahābhūmika dharma, クシャラ・マハーブーミカ・ダルマ)(10)
      • しん(しん、śraddhā, シュラッダー
      • つとむ(ごん、vīrya, ヴィーリヤ
      • (しゃ、upekṣā, ウペークシャー
      • (ざん、hrī, フリー
      • (き、apatrāpya, アパトラーピヤ
      • むさぼ(むとん、alobha, アローバ
      • (むしん、adveśa, アドヴェーシャ
      • がい(ふがい、ahiṃsā, アヒンサー
      • けいやす(きょうあん、praśrabdhi, プラシュラブディ
      • 放逸ほういつ(ふほういつ、apramāda, アプラマーダ
    • だい不善ふぜんほう(だいふぜんじほう、akuśala-mahābhūmika dharma, アクシャラ・マハーブーミカ・ダルマ)(2)
      • (むざん、āhrīkya, アーフリーキヤ
      • (むき、anapatrāpya, アナパトラーピヤ
    • だい煩悩ぼんのうほう(だいぼんのうじほう、kleśa-mahābhūmika dharma, クレーシャ・マハーブーミカ・ダルマ)(6)
      • (ち、moha, モ-ハ
      • 放逸ほういつ(ほういつ、pramāda, プラマーダ
      • 懈怠けたい(げだい、kauśīdya, カウシーディヤ
      • 不信ふしん(ふしん、āśraddhya, アーシュラッディヤ
      • 惛沈(こんじん、styāna, スティヤーナ
      • 掉挙(じょうこ、auddhatya, アウッダティヤ
    • しょう煩悩ぼんのうほう(しょうぼんのうじほう、parītta-kleśabhūmika dharma, パリーッタクレーシャブーミカ・ダルマ)(10)
      • 忿(ふん、krodha, クローダ
      • くつがえ(ふく、mrakṣa, ムラクシャ
      • (けん、mātsarya, マーツァリヤ
      • (しつ、īrṣyā, イールシヤー
      • (のう、pradāsa, プラダーサ
      • がい(がい、vihiṃsā, ヴィヒンサー
      • (こん、upanāha, ウパナーハ
      • (てん、śāṭhya, シャーティヤ
      • (おう、māyā, マーヤー
      • (きょう、mada, マダ
    • 不定ふていほう(ふじょうじほう、aniyatabhūmika dharma, アニヤタブーミカ・ダルマ)(8)
      • あくさく(おさ/あくさ、kaukṛtya, カウクリティヤ
      • ねむり(めん、middha, ミッダ
      • ひろ(じん、vitarka, ヴィタルカ
      • (し、vicāra, ヴィチャーラ
      • むさぼ(とん、rāga, ラーガ
      • (しん、pratigha, プラティガ
      • (まん、māna, マーナ
      • うたぐ(ぎ、vicikitsā, ヴィチキッツァー

大乗だいじょう仏教ぶっきょう

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唯識ゆいしき法相ほうしょうむね

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唯識ゆいしきおよびそのひがしアジア後継こうけいである法相ほうしょうむねでは、『唯識ゆいしきさんじゅう』にのっとり、しんしょしんしょほう)を以下いかぜん51しゅとする[6]

  • しんしょほう(しんじょほう、caitasika dharma, チャイタシカ・ダルマ)(51)
    • あまねぎょうしんしょ(へんぎょうしんじょ、sarvatraga, サルヴァトラガ)(5)
      • 作意さくい(さい、manaskāra, マナスカーラ
      • さわ(そく、sparśa, スパルシャ
      • (じゅ、vedanā, ヴェーダナー
      • そう(そう、saṃjñā, サンジュニャー
      • おもえ(し、cetanā, チェータナー
    • べつさかいしんしょ(べっきょうしんじょ、viniyata, ヴィニヤタ)(5)
      • よく(よく、chanda, チャンダ
      • かちかい(しょうげ、adhimokṣa, アディモークシャ / adhimukti、アディムクティ
      • ねん(ねん、smṛti, スムリティ
      • じょう(じょう、samādhi, サマーディ
      • とし (え、prajñā, プラジュニャー / mati, マティ
    • 善心ぜんしんしょ(ぜんしんじょ、kuśala, クシャラ)(11)
    • 煩悩ぼんのうしんしょ(ぼんのうしんじょ、kleśa, クレーシャ)(6)
      • むさぼ(とん、rāga, ラーガ
      • (しん、pratigha, プラティガ
      • (ち、mūḍhi, ムーディ / moha, モーハ
      • (まん、māna, マーナ
      • うたぐ(ぎ、vicikitsā, ヴィチキッツァー
      • あく(あっけん、dṛṣṭi, ドリシュティ
    • ずい煩悩ぼんのうしんしょ(ずんぼんのうしんじょ、upakleśa, ウパクレーシャ)(20)
      • しょうずい煩悩ぼんのう(10)
        • 忿(ふん、krodha, クローダ
        • (こん、upanāha, ウパナーハ
        • くつがえ(ふく、mrakṣa, ムラクシャ
        • (のう、pradāsa, プラダーサ
        • (しつ、īrasyā, イールシヤー
        • (けん、mātsarya, マーツァリヤ
        • (おう、māyā, マーヤー
        • (てん、śāṭhya, シャーティヤ
        • がい(がい、vihiṃsā, ヴィヒンサー
        • (きょう、mada, マダ
      • ちゅうずい煩悩ぼんのう(2)
        • (むざん、āhrīkya, アーフリーキヤ
        • (むき、anapatrāpya, アナパトラーピヤ
      • だいずい煩悩ぼんのう(8)
        • 掉挙(じょうこ、auddhatya, アウッダティヤ
        • 惛沈(こんじん / こんぢん、styāna, スティヤーナ
        • 不信ふしん(ふしん、āśraddhya, アーシュラッディヤ
        • 懈怠けたい(けだい、kausīdya, カウシーディヤ
        • 放逸ほういつ(ほういつ、pramāda, プラマーダ
        • 失念しつねん(しつねん、muṣitasmṛtitā, ムシタスムリティター
        • 散乱さんらん(さんらん、vikṣepa, ヴィクシェーパ
        • 不正ふせい(ふしょうち、asaṃprajanya, アサンプラジャニヤ
    • 不定ふていしんしょ(ふじょうしんじょ、aniyata, アニヤタ)(4)
      • (あくさく)(げ (おさ/あくさ)、kaukṛtya, カウクリティヤ
      • (ねむ)ねむり((すい)めん、middha, ミッダ
      • ひろ(じん、vitarka, ヴィタルカ
      • (し、vicāra, ヴィチャーラ

ボンきょう

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ボンきょうの『ぞうくつ』 (mdzod phug)では、しんしょ('du byed)を以下いかぜん51しゅとする[7][8]

  • あまねぎょうしんしょ (5)
    • (tshor ba)
    • そう ('du shes)
    • おもえ (sems dpa')
    • さわ (reg pa)
    • 作為さくい (yid la)
  • べつさかいしんしょ (5)
    • よく ('dun pa)
    • しんかい (mos pa)
    • ねん (dran pa)
    • 三昧ざんまい ('dzin pa)
    • 知恵ちえ (shes pa)
  • 善心ぜんしんしょ (11)
    • 養育よういく (gso ba) - 憐憫れんびん気持きもちをこすこと。 ()
    • むさぼ (ma chags)
    • (mi len) - 自分じぶんのものにしないしん。 (偸盗ちゅうとう)
    • せい (smra ba, bden pa) - わらない言葉ことばしゃべしん
    • (kun dga') - いさかいがしずまったこころ
    • 静寂せいじゃく音声おんせい (ngag zhi) - じつしずまったこころ
    • 柔和にゅうわ言葉ことば (tshig 'jam) - よろこばしい言葉ことばしょうじさせるしん
    • かみしん (lha sems) - 一切いっさい平等びょうどういたこころ。 ()
    • (byams pa) - きわめてすぐれた友愛ゆうあいしん
    • 真実しんじつくだり (bden pa) - 確証かくしょうせること。
    • 逸脱いつだつ (mi 'da') - よし(don)から後戻あともどりしないしん
  • 根本ねもと煩悩ぼんのうしんしょ (6)
    • (zhe sdang)
    • (gti mug)
    • (nga rgyal)
    • むさぼ ('dod chags)
    • ('phra dog)
    • 無明むみょう (ma rig)
  • ずい煩悩ぼんのうしんしょ (20)
    • あく (lta ba)
    • うたぐ (the tshom)
    • 忿 (khro ba)
    • (mkhon 'dzin)
    • くつがえ ('chab pa)
    • あまねけいところ (kun brtags)
    • (yang pa, ser sna)
    • (sgyu ma)
    • (g.yo ba)
    • おご (rgyag pa)
    • がい ('tshe ba)
    • (ngo tsha med pa)
    • 憂鬱ゆううつゆめ (non rmis) - 落胆らくたんすこと。
    • 掉挙 (rgod pa)
    • 不信ふしん (ma dad)
    • 懈怠けたい (le lo)
    • 放逸ほういつ (bag med)
    • 失念しつねん (brjed ngas)
    • 散乱さんらん (g.yeng ba)
    • 迷乱 ('khrul pa)
  • 不定ふていしんしょ (4)
    • あくさく ('gyod pa)
    • 睡眠すいみん (gnyid)
    • ひろ (rtog pa)
    • (dpyod pa)

脚注きゃくちゅう出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • ウ・ウェープッラ、戸田とだただし『アビダンマッタサンガハ 南方みなかた仏教ぶっきょう哲学てつがく教義きょうぎ概説がいせつ新装しんそうばん〕』中山なかやま書房しょぼう仏書ぶっしょりん、2013ねんISBN 978-4-89097-076-6 
  • 熊谷くまがい まこと慈 (編集へんしゅう)『ボンきょう: 弱者じゃくしゃくチベットの知恵ちえそうもとしゃ、2022ねんISBN 978-4422140308 
  • アルボムッレ・スマナサーラ『ブッダの実践じっせん心理しんりがく アビダンマ講義こうぎシリーズ』サンガ〈だい3かん しんしょ〉、2007ねんISBN 978-4901679305 

関連かんれん項目こうもく

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