羅ら睺羅

羅ら睺羅 Rāhula（梵） Rāhula（巴ともえ）
(左ひだりから順じゅんに) 羅ら睺羅と釈迦しゃか、耶輸陀羅
尊称そんしょう	密行みっこう第だい一いち
生地きじ	コーサラ国こくカピラ城じょう
宗派しゅうは	声聞しょうもん（初期しょき仏教ぶっきょう）
師し	釈迦しゃか、舎利しゃり弗どる

ラーフラ Rāhula
シャーキヤ王国おうこく王子おうじ
全ぜん名な	ラーフラ/ラゴーラ
出生しゅっしょう	不ふ詳しょう コーサラ国こくカピラ城じょう
死去しきょ	不ふ詳しょう
父親ちちおや	ガウタマ・シッダールタ
母親ははおや	ヤショーダラー
宗教しゅうきょう	仏教ぶっきょう

羅ら睺羅（らごら、梵/巴ともえ: Rāhula ラーフラ）は、仏教ぶっきょうの開祖かいそである釈迦しゃかの実子じっしであり、またその弟子でしの一人ひとりである。釈迦しゃか族ぞくの王子おうじ瞿曇悉達多た（ガウタマ・シッダールタ＝釈迦牟尼しゃかむにの俗名ぞくみょう）の妃ひ耶輸陀羅（ヤショーダラー）が釈迦しゃかの出家しゅっけ前まえに妊娠にんしんした子こで、釈迦しゃかが出家しゅっけして5年ねん後ごに生うまれたとされる。釈迦しゃか十じゅう大だい弟子でしの一人ひとりに数かぞえられ、正ただしい修行しゅぎょうを為なした密行みっこう第だい一いちと称しょうされる。また十六羅漢じゅうろくらかんの一人ひとりでもある。

名称めいしょう

• 音おと写うつし：羅ら侯ほう羅ら、羅ら怙羅、羅ら護まもる羅ら、何なに羅ら怙羅、羅ら吼ほえ羅ら、羅ら雲くもなど
• 漢かん訳やく：障碍しょうがい、障さわ月つき、覆くつがえ月つき、覆くつがえ障さわなど

カタカナでは、ラーフラ（あるいはラゴーラ）と表記ひょうきされるが、これが多おおくの仏典ぶってんで羅ら睺羅と漢かん訳やく音おん写うつされることから、これが通つう名めいとなっている。

羅ら睺羅は障碍しょうがいや障さわ月つきなどと翻訳ほんやくされ、その意味いみは日食にっしょく・月食げっしょくを起おこす魔神まじんラーフ、転てんじて障害しょうがいをなすもの）など、諸説しょせつあるが、彼かれの名前なまえの由来ゆらいには様々さまざまな説せつがある。

1. 耶輸陀羅妃ひが子こを産うむ時とき、月食げっしょくがありラーフラと名付なづけたという説せつ（『衆しゅう許もと摩ま訶帝経けい』巻まき6）。
2. 耶輸陀羅妃ひの胎内たいないに6年間ねんかん障さわ蔽されていたことによる説せつ。
3. 釈迦しゃかが悉多（シッダールタ）太子たいしの頃ころに出家しゅっけ学がく道どうを志こころざした時とき、懐妊かいにんしたことを聞きき「我わが破やぶらねばならぬ障碍しょうがい（ラーフラ）ができた」と言いったことからという説せつ。
4. 古代こだいのインド語ごでは、「ラーフ」はナーガ（龍りゅう）の頭あたま、「ケートゥ」は尻尾しっぽを意味いみした。そしてシャカ族ぞくのトーテムは、他たならぬナーガであった。このことから、ラーフラとは、古代こだいインドのい回いまわしで、竜りゅうの頭あたまを意味いみしたと考かんがえられ、「ナーガの頭あたまになる者もの」が生うまれたことを歓喜かんきした釈迦しゃかが名なづけたという説せつ。
5. 「悪魔あくまラーフのような者もの」、「ラーフという悪魔あくま性せいを有ゆうする者もの」とする説せつ。

なお釈迦しゃか当時とうじのヴェーダ経典きょうてんでは、日食にっしょく・月食げっしょくをおこすものとして、アスラ（非ひ天てん）があげられているが、ラーフが由来ゆらいであるという記述きじゅつは存在そんざいしない。

出生しゅっしょう

彼かれの母おもや身辺しんぺんについては諸説しょせつある。

1. 『十じゅう二に遊ゆう経けい』には、釈迦しゃかが悉多太子たいしの頃ころ、第だい一いち妃ひ・瞿夷（ゴーピー、あるいはゴーパ）、第だい二に妃ひ・耶輸陀羅、第だい三さん妃ひ・鹿野かのあり、しかして『須大拏経』・『瑞応ずいおう経けい』では瞿夷の子ことする。
2. 『未曾有みぞう因縁いんねん経けい』・『涅槃ねはん経けい』・『法華経ほけきょう』では耶輸陀羅の子ことする。通常つうじょうの多おおくはこの説せつを採用さいようしている。

なお、釈迦しゃかの出家しゅっけ前まえには、彼かれ以外いがいにも第だい一いち妃ひ瞿夷との間あいの子こで優ゆう波は摩ま那な（ウパマナ）、第だい三さん妃ひ鹿野かのとの間あいだに善ぜん星ぼし（スナッカッタ）という子供こどもがいて皆みな出家しゅっけし仏ふつの待まち者しゃとなった、という説せつもある（『處處しょしょ経けい』、西國さいごく佛祖ぶっそ代代だいだい相承そうしょう傳法でんぼう記き及および内證ないしょう佛法ぶっぽう相承そうしょう血脈けちみゃく譜ふなど）が、第だい二に妃ひ耶輸陀羅との子こであるラーフラだけが、諸しょ難なん克服こくふくし証しょう果はてを得えた（悟さとった）といわれる。その為ために各かく経典きょうてんでは「一いち子し羅ら睺羅」と表現ひょうげんされることが多おおい。

また、彼かれの誕生たんじょうについても諸説しょせつある。

1. 悉多太子たいし、出家しゅっけ時じにすでに7歳さいであった。
2. 出家しゅっけ直前ちょくぜんに誕生たんじょうした。多おおくはこの説せつを採用さいようしている。
3. 出家しゅっけ後ご、母ははの胎内たいないに6年間ねんかんもいたが、釈迦しゃか成道じょうどうの夜よるに生うまれた。

3の説せつでは、『仏ふつ本ほん行ぎょう集しゅう経けい』55に彼かれが過去かこ世よで国王こくおうであった時とき、仙人せんにんがいて盗ぬすめ戒を犯おかし、王おうに就ついて懺悔ざんげとして王宮おうきゅうに詣もうでるに、王おうが五ご欲よくに耽ふけって六ろく日にち外人がいじんを見みず、この因縁いんねんを以って今生こんじょう6年ねん母胎ぼたいにいたとある。

生涯しょうがい

チベット画がの羅ら睺羅（16世紀せいき）

釈迦しゃかは成道じょうどう後ごにカピラ城じょうに帰かえった際さい、2日にち目めの孫まご陀羅難なん陀（スンダラ・ナンダ）をはじめ多おおくの釈迦しゃか族ぞくの青年せいねんを出家しゅっけさせたが、羅ら睺羅は7日にち目めにして出家しゅっけしたという（律蔵りつぞう・大だい品しな第だい1健けん度どなど）。

彼かれは母ははの耶輸陀羅に連つれられ仏前ぶつぜんに赴おもむき、母ははから釈迦しゃか仏ふつが父親ちちおやだから「王位おういを継つぐので財宝ざいほうを譲ゆずって下ください」というように言いわれ、そのようにすると釈迦しゃかは長老ちょうろうの舎利しゃり弗どるを呼よび出家しゅっけせしめたという説せつもある。この時ときの彼かれの年齢ねんれいも6歳さい・9歳さい・12歳さい・15歳さいという諸説しょせつがあるが、いずれにしても沙弥さや（比丘びくとなるまでの年少ねんしょうの見習みならい修行しゅぎょう者しゃ）となったという。

20歳さいにして具足ぐそく戒を受うけ比丘びくとなった。舎利しゃり弗どるに就ついて修行しゅぎょう学がく道どうし、当初とうしょは仏ふつの実子じっしということもあり特別とくべつ扱あつかいを受うける事こともあったが、その分ぶんを弁わきまえてよく制せい戒を守まもり多おおくの比丘びくにも敬うやまわれるようになったという。彼かれは不言ふげん実行じっこうを以って密行みっこうを全まっとうし、密行みっこう第だい一いちと称しょうせられたが、釈迦しゃか仏ふつより、多おおくの比丘びく衆しゅでも学がくを好このむことで、学習がくしゅう第だい一いちとも称しょうせられた。

なお、羅ら睺羅の忍耐にんたいを描えがいた経典きょうてんとしては羅ら雲くも忍辱にんにく経けいがある。

関連かんれん項目こうもく

• 十じゅう大だい弟子でし（シャーリプトラ／モッガラーナ／大だいカッサパ／スブーティ／プンナ／大だいカッチャーナ／アヌルッダ／ウパーリ／ラーフラ／アーナンダ）
• 十六羅漢じゅうろくらかん
• ラーフラバドラ
• ラーフ／ケートゥ

外部がいぶリンク

• 仏教ぶっきょう夜話やわ・19 仏弟子ぶつでし群ぐん像ぞう(6)釈尊しゃくそんの実子じっしラーフラ（上うえ）
• 仏教ぶっきょう夜話やわ・20 仏弟子ぶつでし群ぐん像ぞう(7)釈尊しゃくそんの実子じっしラーフラ（下した）