暦こよみ

ベリー公こうのいとも豪華ごうかなる時とき祷いのり書しょ（3月がつ）

暦こよみ（こよみ、れき）とは、時間じかんの流ながれを年とし・月つき・週しゅう・日ひといった単位たんいに当あてはめて数かぞえるように体系たいけい付つけたもの。また、その構成こうせいの方法ほうほう論ろん（暦法れきほう）や、それを記載きさいした暦こよみ書しょ・暦こよみ表ひょう（日本にっぽんのいわゆる「カレンダー」）を指さす。さらに、そこで配当はいとうされた各日かくじつごとに、月齢げつれい、天体てんたいの出没しゅつぼつ（日ひの出で・日ひの入いり・月がつの出だし・月がつの入いり）の時刻じこく、潮汐ちょうせき（干満かんまん）の時刻じこくなどの予測よそく値ちを記しるしたり、曜日ようび、行事ぎょうじ、吉凶きっきょう（暦こよみ注ちゅう）を記しるしたものをも含ふくめる。

細分さいぶんすると、

• 日ひを記録きろくするものを暦こよみ（こよみ、calendar）
• 暦こよみによる日付ひづけの並ならびを表おもて形式けいしき等とうで表示ひょうじした暦こよみ表ひょう・カレンダー (calendar)
• 暦こよみの方法ほうほう論ろんである暦法れきほう（新暦しんれき、旧暦きゅうれき）(calendar)
• 天象てんしょうの予報よほう・天体てんたいの軌道きどうを記述きじゅつするものを天体てんたい暦れき（れき、ephemeris）
• 一いち年間ねんかんの日ひごとに天象てんしょうに加くわえて行事ぎょうじや占うらないや曜日ようびなどを総合そうごうして記述きじゅつしたものを生活せいかつ暦れき (almanac)
• 航海こうかい用ように一いち年間ねんかんの天象てんしょう・天体てんたいの視み位置いちを記述きじゅつした航海こうかい暦れき（nautical almanac）
• 紀年きねん法ほう、すなわち西暦せいれき・和わ暦れきなど (calendar era)

となる。

語釈ごしゃく

「こよみ」の語源ごげんは、江戸えど時代じだいの谷川たにがわ士し清きよしの『和訓わくん栞しおり』では「日読ひよみ」（かよみ）であるとされ、定説ていせつとなっており、一いち日にち・二日ふつか...と正ただしく数かぞえることを意味いみする。ほかに、本ほん居きょ宣長のりながの「一いち日にち一いち日にちとつぎつぎと来歴らいれき（きふ）るを数かずへゆく由よし（よし）の名な」、新井あらい白石はくせきは「古語こごにコといひしには、詳細しょうさいの義ぎあり、ヨミとは数かずをかぞふる事ごとをいひけり」などの定義ていぎがある。

単位たんい

暦こよみは、地球ちきゅうの自転じてんを元もとにした日ひ、月つきの公転こうてんを元もとにした月つき、地球ちきゅうの公転こうてんを元もとにした年としなど、いくつかの単位たんいに細分さいぶん化かされている。

このうち古代こだいの人々ひとびとがまず最初さいしょに気きづいたのは太陽たいようの出没しゅつぼつ、すなわち1日にちであった。また、季き節ぶしの推移すいいと、それが一定いっていの周期しゅうきで一巡いちじゅんすることにも気付きづき、年としの概念がいねんが現あらわれる。さらに周期しゅうき的てきな月つきの満みち欠かけに気付きづき、これがおよそ12回かい繰くり返かえすと季き節ぶしの一巡いちじゅんすることに気きづいた。こうして日ひ・月がつ・年ねんの単位たんいが成立せいりつした。暦こよみ月がつが月つきの満みち欠かけと一致いっちするのは太陰暦たいいんれきだけで、太陽暦たいようれきと月つきの動うごきは全まったく関連付かんれんづけられていないが、それでも多おおくの言語げんごで暦こよみ月がつと月つきの名称めいしょうに関連かんれんがあり、また太陽暦たいようれきでも通常つうじょう1ヶ月かげつが30日にち前後ぜんこうとなっているのは太陰暦たいいんれきの名残なごりであると考かんがえられている。

天体てんたいの運行うんこうに基もとづいた年月日ねんがっぴとは異ことなり、週しゅうは自然しぜん現象げんしょうに起源きげんを持もたない。月つきと日にちの間あいだの計測けいそく単位たんいは各かく文明ぶんめいによってさまざまで、例たとえば古代こだい中国ちゅうごくでは月つきを3分ふんし10日にちを1単位たんいとした旬しゅんという単位たんいを用もちいており、これは現代げんだい日本にっぽんでも使用しようされる。また、古代こだいローマでは7日にち制せい以前いぜんには8日にちを1周期しゅうきとする週しゅうが使用しようされていたほか、4日にちや5日にち、6日にち、15日にちなど、多おおくの周期しゅうきが用もちいられていた。週しゅうと曜日ようびの起源きげんは古代こだいメソポタミア文明ぶんめいにさかのぼる。メソポタミア文明ぶんめいでは7が聖ひじり数すうであったため、当時とうじ判明はんめいしていた地球ちきゅう以外いがいの7つの天体てんたい（月つき・火星かせい・水星すいせい・木星もくせい・金星かなぼし・土星どせい・太陽たいよう）にそれぞれ1日にちを割わり当あてて、7日にちで1周期しゅうきとなるようにした。ただし、7日にち周期しゅうきに関かんしては古代こだいエジプトが発祥はっしょうであるとする文献ぶんけんもある。いずれにせよ古代こだいオリエントにおいて1週間しゅうかん7日にち制せいが成立せいりつし、これが周辺しゅうへん文明ぶんめいに伝つたえられ、ヨーロッパではロろーマ帝国まていこく期きに一般いっぱん的てきに使用しようされるようになった。このため各かく曜日ようびの名称めいしょうは本来ほんらい天体てんたい名めいに由来ゆらいするが、周辺しゅうへん文明ぶんめいにおいてはあとから取とり入いれられた概念がいねんであるため天体てんたいと曜日ようびの結むすびつきが薄うすく、例たとえばヨーロッパ諸しょ言語げんごにおいては太陽たいよう（日曜日にちようび）と月つき（月曜日げつようび）は天体てんたい由来ゆらい名めいが残のこったものの、惑星わくせい由来ゆらいの5曜日ようびについては独自どくじの名称めいしょうが取とり入いれられ、天体てんたいとの関係かんけいが消滅しょうめつした。週しゅうは中国ちゅうごくを経由けいゆして日本にっぽんにも伝つたわり、10世紀せいき末まつからは七曜しちようとして暦こよみに記載きさいされるようになったが、これは主おもに吉凶きっきょうを判はんずるためだった。その後ご、明治めいじに入はいりグレゴリオ暦れきを採用さいようすると、週しゅうは生活せいかつの上うえで重要じゅうような位置いちを占しめるようになった。

暦法れきほう

詳細しょうさいは「暦法れきほう」を参照さんしょう

古代こだいの人々ひとびとは生活せいかつの中なかで季き節ぶしの存在そんざいやそれにともなう自然しぜん現象げんしょうの推移すいいに徐々じょじょに気きづいていき、その体験たいけんを元もとにある程度ていどの「月つき」を定さだめて農業のうぎょうや狩猟しゅりょうなどの目安めやすとするようになった。これが暦こよみの起おこりであると考かんがえられている。その性質せいしつ上じょう、原始げんし的てきな暦こよみは1ヶ月かげつの長ながさが不定ふていであり、また後世こうせいの暦こよみのように1年ねんが正確せいかくに繰くり返かえされるような性質せいしつのものでもなかった。こうした原始げんし的てきな暦こよみは自然しぜん暦れきと総称そうしょうされている。こうした自然しぜん暦れきには、かつてイヌイットが周辺しゅうへんの環境かんきょう変化へんかに基もとづいて作成さくせいした暦こよみや、オーストラリア・アボリジニのヨロンゴ人じんが風向ふうこうに基もとづいて使用しようしていた暦こよみなど、さまざまな種類しゅるいが存在そんざいする。

次ついで、月つきの満みち欠かけの周期しゅうきが暦こよみとして使用しようされるようになった。太陰暦たいいんれきである。太陰暦たいいんれきでは「何なん日にち」と月つきのみかけの形かたちが一致いっちするためわかりやすく、また月齢げつれいと潮しおの干満かんまんが対応たいおうしているため漁業ぎょぎょうには適てきしているものの、完全かんぜんな太陰暦たいいんれきにおいては一いち年ねんが約やく354日にちであり、太陽暦たいようれきに比くらべ11日にち短みじかくなるため、3年間ねんかんで33日にち、つまり1か月げつほどずれてしまい、実際じっさいの季き節ぶしと大おおきく食くい違ちがってしまう。このため太陰暦たいいんれきが使用しようされはじめたころは、1年ねんの終おわりと翌年よくねんの始はじまりの間あいだに何なん日にちかの空白くうはくがあったと考かんがえられている。また季き節ぶしがずれていく性質せいしつ上じょう、農業のうぎょうでの使用しようには適てきしていないため、完全かんぜん太陰暦たいいんれきの使用しよう例れいは歴史れきし上じょう極きわめて少すくない。21世紀せいきにおいて完全かんぜん太陰暦たいいんれきを使用しようしているのはイスラム教いすらむきょう圏けんで採用さいようされているヒジュラ暦れきのみである。ヒジュラ暦れきは閏月じゅんげつを排除はいじょし、完全かんぜんに月つきの満みち欠かけのみによった完全かんぜん太陰暦たいいんれきであるが、このためイスラム暦れきは太陽暦たいようれきに比くらべ毎年まいとし11日にち程度ていど短みじかく、33年ねんでほぼ1年ねんのずれを生しょうじる。

やがて、月つきの運行うんこうと季き節ぶしのずれを調整ちょうせいする方法ほうほうとして太陽暦たいようれきを補助ほじょ的てきに使用しようし、閏月じゅんげつを挿入そうにゅうすることで実際じっさいの季き節ぶしと暦こよみとのずれを修正しゅうせいする方法ほうほうがとられるようになった。これが太陰たいいん太陽暦たいようれきである。閏月じゅんげつの挿入そうにゅうは、導入どうにゅう当初とうしょは社会しゃかいの指導しどう者しゃたちが状況じょうきょうに応おうじ適宜てきぎ挿入そうにゅうを決定けっていしたと考かんがえられているが、やがて天文学てんもんがくの発達はったつによって正確せいかくな置おけ閏うるう法ほうが定さだめられ、決きめられた時期じきに閏月じゅんげつが挿入そうにゅうされるようになった。置おけ閏うるう法ほうとしては、19年ねんに7度どの閏月じゅんげつを挿入そうにゅうするメトン周期しゅうきがギリシアで使用しようされており、また中国ちゅうごくでもこの方法ほうほうで閏月じゅんげつが挿入そうにゅうされていた。太陰たいいん太陽暦たいようれきは多おおくの世界せかいで採用さいようされ、バビロニア暦れき、ユダヤ暦れき、ローマ暦れき、ヴィクラム暦れき、中国ちゅうごく暦れきなど多おおくの暦法れきほうが存在そんざいする。

これに対たいし、太陽たいようが黄道こうどう上うえのある点てんを出でてその場所ばしょに戻もどってくるまでの周期しゅうき、いわゆる太陽年たいようねんを暦こよみとして使用しようするのが太陽暦たいようれきである。太陽暦たいようれきは太陰暦たいいんれきに比くらべずれが非常ひじょうに小ちいさいものの、正確せいかくな太陽年たいようねんは365.2422日にちであるため、適切てきせつな間隔かんかくで閏うるう日びをおかない限かぎり、やがて季き節ぶしとのずれが生しょうじる。太陽暦たいようれきが最初さいしょに制定せいていされたのは古代こだいエジプトで、ナイル川がわの氾濫はんらんの時期じきとシリウスの動うごきの周期しゅうきが近似きんじしていることから考案こうあんされたとされる。これはシリウス暦れきと呼よばれ1年ねんが365日にちとなっていたが、閏うるう日びが制定せいていされていなかったため長ながい年月としつきのうちに季き節ぶしと暦こよみのずれが生しょうじるようになった。このためプトレマイオス朝あさ期きに4年ねんに1度どの閏年うるうどしが設もうけられるようになり、これがユリウス・カエサルによって共和きょうわ政せいローマに持もち込こまれ、ユリウス暦れきとして長ながく使用しようされた。またイランにおいてはイスラム教いすらむきょう伝来でんらい後ごも、ヒジュラ暦れきが季き節ぶしを示しめす役割やくわりを持もたなかったため、農業のうぎょう上じょうや行事ぎょうじ上じょうの要請ようせいから旧来きゅうらいの太陽暦たいようれきが存続そんぞく・発展はってんし、イラン暦れきとして現代げんだいでも使用しようされている。このほかにも、エチオピア暦れき、シャカ暦れきやコッラム暦れきといったインドのいくつかの暦こよみは太陽暦たいようれきとなっている。

ユリウス暦れきはかなり正確せいかくなものであり、暦こよみと太陽年たいようねんのずれは128年ねんに1日にちに過すぎなかったものの、ユリウス暦れき施行しこうから1000年ねん以上いじょう経たつとそのずれは無視むしできないほどにまで広ひろがっていた。そこで1582年ねんにローマ教皇きょうこうグレゴリウス13世せいによって改暦かいれきが行おこなわれ、より正確せいかくなグレゴリオ暦れきが導入どうにゅうされた。グレゴリオ暦れきはカトリック圏けんではほぼ即座そくざに採用さいようされ、プロテスタント圏けんでは18世紀せいき、ギリシア正教せいきょう圏けんでは20世紀せいきに入はいってから導入どうにゅうされた。また1873年ねんの日本にっぽんを皮切かわきりに非ひ西欧せいおう諸国しょこくでも相次あいついでグレゴリオ暦れきが採用さいようされるようになり、21世紀せいきにはほとんどの国くにでグレゴリオ暦れきが使用しようされている。

日本にっぽんと暦こよみ

詳細しょうさいは「日本にっぽんの暦こよみ」を参照さんしょう

中国ちゅうごくの暦こよみが日本にっぽんに伝つたえられたのがいつであるか定さだかではないが、『日本書紀にほんしょき』には欽明天皇てんのう14年ねん（553年ねん）に百済くだらに対たいし暦こよみ博士はかせの来朝らいちょうを要請ようせいし、翌年よくねん2月がつに来きたとの記事きじがあり、遅おそくとも6世紀せいきには伝来でんらいしていたと考かんがえられる。この頃ころの百済くだらで施行しこうされていた暦法れきほうは元げん嘉よしみ暦れきであるので、このときに伝来でんらいした暦こよみも元げん嘉よしみ暦れきではないかと推測すいそくされる。元岡もとおか古墳こふん群ぐん（福岡ふくおか県けん福岡ふくおか市し）出土しゅつどの金かね錯銘大刀たち（庚かのえ寅とら銘めい大刀たち）には「庚かのえ寅とら正月しょうがつ六ろく日にち庚かのえ寅とら」の銘文めいぶんがあるが、元げん嘉よしみ暦れきに基もとづけば570年ねん1月がつ6日にちと推定すいていされ、これが日本にっぽんにおける最古さいこの暦こよみ使用しようを示しめす考古こうこ資料しりょうとなる可能かのう性せいがある。また、推古天皇すいこてんのう10年ねん（602年ねん）に百済くだらから学僧がくそう観かん勒が暦本れきほんや天文てんもん地理ちり書しょなどを携たずさえて来日らいにちし、幾いく人にんかの子弟していらがこの観かん勒について勉強べんきょうしたとある。

平安へいあん時代じだいに編集へんしゅうされた『政事せいじ要略ようりゃく』という本ほんには推古天皇すいこてんのう12年ねん（604年ねん）から初はじめて暦こよみの頒布はんぷを行おこなったと書かかれているが、『日本書紀にほんしょき』では持もち統すべ天皇てんのう4年ねん（690年ねん）の条じょうにある「勅みことのりを奉まつりて始はじめて元もと嘉よしみ暦れきと儀ぎ鳳おおとり暦れきとを行おこなう」という記事きじが初はじめてであり、正式せいしき採用さいようは持もち統すべ天皇てんのう6年ねん（692年ねん）からという説せつがある。文武ぶんぶ天皇てんのう元年がんねん（697年ねん）8月がつからは元もと嘉よしみ暦れきが廃はいされ、儀ぎ鳳おおとり暦れきが専用せんようされた。儀ぎ鳳おおとり暦れきは唐とうで施行しこうされた麟徳暦れきのことである。元げん嘉よしみ暦れきと儀ぎ鳳おおとり暦れきの大おおきな違ちがいは朔日さくじつの決定けってい方法ほうほうと閏月じゅんげつの置おき方かたである。朔日さくじつについては、前者ぜんしゃは平たいら朔さくを、後者こうしゃは定てい朔ついたちを使用しようしていた。また、置おけ閏うるう法ほうについては、元げん嘉よしみ暦れきが19年ねん7閏月じゅんげつという章あきら法ほうを採用さいようしていたのに対たいし、儀ぎ鳳おおとり暦れきでは章しょう法ほうに拘かかわらない破やぶ章あきら法ほうを用もちいていた。

儀ぎ鳳おおとり暦れき以降いこう、天平てんぴょう宝たから字じ7年ねん（763年ねん）に大だい衍暦、天てん安やす2年ねん（858年ねん）に五紀いつき暦れき、貞さだ観かん4年ねん（862年ねん）に宣明のぶあき暦れきと、唐とうで施行しこうされた暦法れきほうが相次あいついで輸入ゆにゅうされ施行しこうされたが、その後ご改暦かいれきは行おこなわれず、宣明のぶあき暦れきは江戸えど時代じだいの1684年ねんまで823年間ねんかんも施行しこうされた。実際じっさいの毎年まいとしの暦こよみの作成さくせい・頒布はんぷは暦こよみ博士はかせなどの暦こよみ道どうの人々ひとびとが行おこなった。

貞享ていきょう暦れき。1729（享とおる保ほ14）年版ねんばん。国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかんの展示てんじ。

江戸えど時代じだいになると日本にっぽんでも独自どくじに天文てんもん暦学れきがくが発展はってんした。長期ちょうきにわたって改暦かいれきが行おこなわれなかったことから、置おけ閏うるうに必要ひつような二に十じゅう四よん節気せっき測定そくていに、誤差ごさが累積るいせきしてずれが目立めだちはじめ、置おけ閏うるうに問題もんだいをきたすようになった（旧暦きゅうれきは朔日さくじつ（新月しんげつ）を1日にちとするルールだが、それは破綻はたんしていない）。このような中なかで、渋川しぶかわ春海しゅんかいが最初さいしょの日本にっぽん独自どくじの暦法れきほうである貞享ていきょう暦れきを作つくるのに成功せいこうし、貞享ていきょう元年がんねん（1684年ねん）に改暦かいれきが行おこなわれた。

貞享ていきょう暦れき以後いご、宝たから暦れき5年ねん（1755年ねん）宝たから暦れき暦れきが施行しこうされたがあまり正確せいかくなものではなく、寛政かんせい10年ねん（1798年ねん）には高橋たかはし至時よしときや間あいだ重富しげとみらによって寛政かんせい暦れきが作製さくせいされ施行しこうされた。そして弘ひろし化か元年がんねん（1844年ねん）には日本にっぽんで最後さいごの太陰たいいん太陽暦たいようれきとなる天保てんぽう暦れきが施行しこうされた。天保てんぽう暦れきはこれまでに実施じっしされた太陰たいいん太陽暦たいようれきの中なかで最もっとも精密せいみつなものといわれ、当時とうじ中国ちゅうごくで用もちいられていた時どき憲けん暦れきを上回うわまわったと評ひょうされているが、当時とうじの世界せかいの流ながれに逆行ぎゃっこうして不ふ定時ていじ法ほうを導入どうにゅうするなどの問題もんだい点てんもあった。

幕末ばくまつに開国かいこくが行おこなわれ欧米おうべい諸国しょこくとの貿易ぼうえきが本格ほんかく化かすると、日付ひづけや年としのずれからトラブルが発生はっせいし、またこれら諸国しょこくの採用さいようする太陽暦たいようれきが使つかいやすく世界中せかいじゅうで広ひろく使用しようされていることから、日本にっぽんでも太陽暦たいようれき採用さいようを求もとめる動うごきが出ではじめ、明治めいじ5年ねん11月に明治めいじ政府せいふによってグレゴリオ暦れき施行しこうが決定けっていされて、翌よく明治めいじ6年ねん（1873年ねん）から導入どうにゅうされた。

現在げんざいでも民間みんかんでは太陰たいいん太陽暦たいようれきは年中ねんじゅう行事ぎょうじや占うらないのために用もちいることがあり、これを旧暦きゅうれきと呼よんでいるが、これは閏月じゅんげつの置おき方かたを天保てんぽう暦れきに借かりはしているものの数値すうちや計算けいさん法ほうは現代げんだいの理論りろんに従したがっているので、厳密げんみつには天保てんぽう暦れきと同義どうぎではない。また、すでに公的こうてきには廃止はいしされた暦こよみであるため公的こうてき機関きかんによるメンテナンスが存在そんざいせず、2033年ねんには旧暦きゅうれきの月つきが決定けっていできない旧暦きゅうれき2033年ねん問題もんだいが発生はっせいすることが予想よそうされているため、いくつかの解決かいけつ案あんが提唱ていしょうされている。現在げんざいの中国ちゅうごくでも太陰たいいん太陽暦たいようれきが農のう暦れきという名なで使つかわれており、基本きほん的てきに日本にっぽんの旧暦きゅうれきと同おなじであるが、1時じ間あいだの時差じさのために日ひがずれることが少すくなからずある。

紀年きねん法ほう

2019年ねん5月1日にち、日本にっぽんの元号げんごうは平成へいせいから令れい和わへと改元かいげんされた

暦法れきほうによって定さだめられた年としの記しるし方かたを紀年きねん法ほうと呼よび、ある起点きてんから期間きかんを区切くぎらず無限むげんに年数ねんすうが加算かさんされていく紀元きげん、君主くんしゅや統治とうち者しゃ、政体せいたいの統治とうち期間きかんなどによって期限きげんを区切くぎられる元号げんごう、一定いっていの期間きかんで循環じゅんかんする周期しゅうきによって年としを表あらわす方法ほうほうが存在そんざいする。

紀年きねん法ほうについても、「西暦せいれき」「主体しゅたい暦れき」のように接尾せつび語ごとして「暦こよみ」が用もちいられることがあるが、暦法れきほうと混同こんどうしてはならない。

紀元きげんの例れいとしては、セレウコス朝あさではセレウコス1世せいのメソポタミア占領せんりょうを紀元きげんとするセレウコス紀元きげんを用もちいていた。キリスト教徒きりすときょうとの間あいだでは、まずローマ皇帝こうていディオクレティアヌスの即位そくいした284年ねんを紀元きげんとするディオクレティアヌス紀元きげんが広ひろまり、さらに6世紀せいきにはディオニュシウス・エクシグウスによってイエス・キリストが生誕せいたんしたとされる年としを紀元きげん1年ねんとするキリスト紀元きげん（AD）が導入どうにゅうされた。このキリスト紀元きげんは世界せかいで広ひろく使つかわれているが、その起源きげんや名称めいしょうから非ひキリスト教きりすときょう信者しんじゃや世俗せぞく主義しゅぎ者しゃの批判ひはんを浴あびることがある。このほか日本にっぽんの皇紀こうき、中華民国ちゅうかみんこく（台湾たいわん）の民みん国こく紀元きげん、北朝鮮きたちょうせんの主体しゅたい年号ねんごうなどいくつかの紀元きげん法ほうが存在そんざいする。

古代こだいギリシアでは、当該とうがい年ねんの統治とうち者しゃの名なを用もちいて年としを表あらわすことが広ひろく行おこなわれていた。しかしギリシアは多数たすうの都市としが存在そんざいしていたため、複数ふくすうの都市としにまたがる事柄ことがらを記録きろくする際さいには、当該とうがい都市としの氏名しめいと統治とうち者しゃを全すべて列記れっきする必要ひつようがあった。この方法ほうほうは古代こだいローマにおいても踏襲とうしゅうされ、当該とうがい年ねんのコンスル2名めいの名なをもって年としを表あらわしていた。

古代こだいオリエントでは王おうの治世ちせい期間きかんで年としを表記ひょうきする紀年きねん法ほうが広ひろく使つかわれた。この即位そくい紀元きげんは古代こだい中国ちゅうごくにおいても広ひろく使用しようされたが、前漢ぜんかんの時代じだいに在位ざいい中ちゅうに紀元きげんを改あらためる改元かいげんが始はじまり、武たけ帝みかどの時代じだいに入はいるとこれに名前なまえをつけ、元号げんごうが創始そうしされた。改元かいげんは君主くんしゅの代替だいがわりだけではなく、吉事きちじや天変地異てんぺんちいなどさまざまな理由りゆうで行おこなわれ、本来ほんらいは君主くんしゅの統治とうち期間きかんと連動れんどうしているわけではなかったが、明あきら代だいに一世一元いっせいいちげんの制せいが始はじまって君主くんしゅの統治とうち期間きかんと元号げんごうが一本いっぽん化かされた。

周期しゅうきを用もちいる紀年きねん法ほうとしては、古代こだいギリシアでは4年ねんに1度ど開催かいさいされる古代こだいオリンピックを1周期しゅうきとし、「第だい○オリンピア紀き第だい×年とし目め」のように年としを表あらわすオリンピアード（オリンピア紀元きげん）が用もちいられた。また中国ちゅうごくでは、十干じっかんと十二支じゅうにしを組くみ合あわせ60を1周期しゅうきとする干支えとが紀年きねん法ほうに用もちいられ、日本にっぽんでも長ながく使用しようされた。

日本にっぽんで暦こよみが用もちいられだした当初とうしょは干支えとを年としの表記ひょうきとして使用しようしていたが、645年ねんに日本にっぽん最初さいしょの年号ねんごうである大化たいかが制定せいていされ、和わ暦れきがはじまった。その後ごは幾いく度どかの空白くうはくを挟はさみながら断続だんぞく的てきに年号ねんごうが制定せいていされていたが、701年ねんに大宝たいほうの元号げんごうが定さだめられ、あわせて以後いごの公文書こうぶんしょには必かならず元号げんごう表記ひょうきを用もちいることが定さだめられたため、以後いご元号げんごう制度せいどは固定こてい化かされ、中断ちゅうだんすることはなくなった。明治天皇めいじてんのうの即位そくいした1868年ねんには一世一元いっせいいちげんの詔みことのりが発はっせられ、日本にっぽんでも一世一元いっせいいちげん制せいが施行しこうされた。その後ご、旧きゅう皇室こうしつ典範てんぱんの失効しっこうにより一時いちじ元号げんごうの法的ほうてき根拠こんきょが不ふ明確めいかくなものとなったが、1979年ねんに元号げんごう法ほうが定さだめられて元号げんごうの法的ほうてき根拠こんきょおよび改元かいげんの要綱ようこうが定さだまった。

現況げんきょう

岩沼いわぬま市し・竹駒たけこま神社じんじゃの初詣はつもうで。日本にっぽんでは正月しょうがつはほぼ完全かんぜんに新暦しんれきへと移行いこうした

ニューヨーク・チャイナタウンの春節しゅんせつ。中華ちゅうか圏けんでは旧きゅう正月しょうがつである春節しゅんせつを盛大せいだいに祝いわう

21世紀せいきにおいてはほとんどの国家こっかでグレゴリオ暦れきが使用しようされており、イスラム圏けんのように元々もともとはヒジュラ暦れきを用もちいる地域ちいきにおいても、公式こうしきにはグレゴリオ暦れきを用もちいる国くにがほとんどである。グレゴリオ暦れき使用しようはさらに拡大かくだいしており、2016年ねんにはこれまでヒジュラ暦れきを公式こうしきの暦こよみとしていたサウジアラビアが、公式こうしき暦れきのグレゴリオ暦れきへの変更へんこうを発表はっぴょうした。ただし旧来きゅうらいの暦こよみが完全かんぜんに廃棄はいきされたわけではなく、新旧しんきゅう両りょう暦こよみの併記へいき・併用へいようは珍めずらしくない。

紀年きねん法ほうについても、多おおくの国くにではグレゴリオ暦れきと一体化いったいかしているキリスト紀元きげん（AD）が使用しようされている。一方いっぽうで、いくつかの国くにではグレゴリオ暦れきを使用しようしつつ、紀年きねん法ほうにおいてはキリスト紀元きげんのかわりに独自どくじのものを採用さいようしている。例たとえばタイ王国おうこくでは釈迦しゃかが入滅にゅうめつした翌年よくねんの紀元前きげんぜん543年ねんを紀元きげんとする仏滅ぶつめつ紀元きげんを採用さいようしており、また中華民国ちゅうかみんこくでは建国けんこくした1912年ねんを紀元きげんとする民みん国こく紀元きげんが西暦せいれきと併用へいようされる。1997年ねんには、北朝鮮きたちょうせんにおいて金きむ日成いるそんの生誕せいたん年ねんである1912年ねんを紀元きげんとする主体しゅたい年号ねんごうの使用しようが開始かいしされた。また、日本にっぽんにおいては元号げんごうの使用しようが世界せかいで唯一ゆいいつ残存ざんそんしており、2019年ねん5月がつ1日にちには令れい和わへの改元かいげんが行おこなわれた。

世界せかいの暦法れきほうはほとんどの地域ちいきでグレゴリオ暦れきへと切きり替かえられたが、旧暦きゅうれきによって行おこなわれていた年中ねんじゅう行事ぎょうじや祭日さいじつが新暦しんれきへ直接ちょくせつ移行いこうするわけではないことが多おおい。例たとえば日本にっぽんでは、雛ひな祭まつりのように完全かんぜんに新暦しんれきへと移行いこうしたもの、新暦しんれきの8月がつ13日にちから8月がつ16日にちにかけて行おこなわれるお盆ぼんのように、旧暦きゅうれきに配慮はいりょして1ヶ月かげつだけ行事ぎょうじを遅おくらせる月遅つきおくれ、そして十五夜じゅうごやのように完全かんぜんに旧暦きゅうれきのまま行おこなうものが存在そんざいする。中国ちゅうごくや韓国かんこく、ベトナムでは新暦しんれき移行いこう後ごも旧暦きゅうれきの正月しょうがつである春節しゅんせつを盛大せいだいに祝いわっている。またロシア正教会せいきょうかいやジョージア正教会せいきょうかい、セルビア正教会せいきょうかいなど一部いちぶの正教会せいきょうかいは祭日さいじつを従来じゅうらいのユリウス暦れきで行おこなっているため、これらの国々くにぐにではクリスマスはユリウス暦れきの12月25日にち（グレゴリオ暦れきでは1月がつ7日にち）に行おこなわれる。イスラム圏けんの国々くにぐにではヒジュラ暦れきに基もとづいて行事ぎょうじや祭礼さいれいが行おこなわれるが、特とくにラマダーンの開始かいしは目視もくしによる新月しんげつの観測かんそくから求もとめられるため、実際じっさいには日取ひどりがずれることが珍めずらしくない。

提案ていあんされている暦法れきほう

現在げんざい世界せかいの大だい部分ぶぶんで使用しようされているグレゴリオ暦れきは精度せいどが高たかいものの、1ヶ月かげつの日数にっすうが一定いっていでないことや、1ヶ月かげつが7の倍数ばいすうでないため週しゅうとのかみ合あわせが悪わるく日付ひづけと曜日ようびが一致いっちしないこと、そしてキリスト教きりすときょう色しょくが強つよすぎるといった問題もんだい点てんが存在そんざいするため、それを改善かいぜんするための改暦かいれき案あんが数多かずおおく提案ていあんされてきた。1793年ねんにはフランスの国民こくみん公会こうかいがフランス革命かくめい暦れきを制定せいていし、グレゴリオ暦れきからの脱却だっきゃくを図はかったものの、週しゅうの廃止はいしや時制じせいの十進法じっしんほうへの変更へんこうなどといった急進きゅうしん的てきすぎる改革かいかくは大おおきな混乱こんらんを生うみ、1806年ねんにはナポレオンによって廃止はいしされた。フランス革命かくめい暦れきの失敗しっぱい後ご、1か月げつを28日にちで固定こていし1年ねんを13か月げつとするオーギュスト・コントの実証じっしょう暦れきや国際こくさい固定こてい暦れきのような13の月つきの暦こよみ、また暦日れきじつと曜日ようびが固定こていできる世界せかい暦れきといったさまざまな改暦かいれき案あんが提唱ていしょうされたものの、実現じつげんせずに終おわった。2012年ねんには閏うるう週しゅうの挿入そうにゅうによって曜日ようびと日付ひづけを固定こていさせるハンキ＝ヘンリー・パーマネント・カレンダーが提唱ていしょうされたものの、採用さいようの見込みこみはほぼ存在そんざいしないと見みなされている。

実用じつよう品ひんとしての暦こよみ

インドネシアのカレンダー

この場合ばあい、暦こよみとはいわずカレンダーということが多おおい （詳くわしくはカレンダーの項こうを参照さんしょう）。主おもに予定よてい管理かんりなどに使つかわれる。形式けいしきは日ひめくり、月つきめくりなど様々さまざまなものがあり、月つきめくりのカレンダーの場合ばあいだけでも月曜げつよう始はじまりと日曜にちよう始はじまりの2種類しゅるいがある（稀まれに土曜どよう始はじまりもある）。そのほかにも、1日にち1日にちが分離ぶんりされていてパズルのように組くみ立たててカレンダーにする、というものもある。

カレンダーの始はじまりは年初ねんしょである1月がつであるものが多おおいが、日本にっぽんの学校がっこうや会社かいしゃなどでは年度ねんどの始はじまりである4月がつを先頭せんとうとするカレンダーも存在そんざいする。カレンダーは印刷いんさつ業者ぎょうしゃや出版しゅっぱん業者ぎょうしゃによって生産せいさんされ、おもに翌年よくねんに備そなえて年末ねんまつに購入こうにゅうされることが多おおい。また、日本にっぽんでは宣伝せんでんなどのために一般いっぱん企業きぎょうが生産せいさん業者ぎょうしゃに社名しゃめい入いりのカレンダーの制作せいさくを依頼いらいし、粗品そしなとして配布はいふされることも多おおい。カレンダーが各種かくしゅ企業きぎょうや団体だんたいからの依頼いらいで受注じゅちゅう生産せいさんされることは世界せかいでもほぼ共通きょうつうで、宗教しゅうきょう団体だんたいや公的こうてき機関きかん、民間みんかん団体だんたい、企業きぎょうといったさまざまな団体だんたい名義めいぎのカレンダーが世界中せかいじゅうで発行はっこうされているほか、商品しょうひんとして販売はんばいされるものが存在そんざいすることも同様どうようである。

日本にっぽんでは大宝たいほう元年がんねん（701年ねん）に陰陽いんよう寮りょうが設置せっちされ、そこに置おかれた暦こよみ博士はかせが暦こよみを制作せいさくし、御ご暦こよみ奏そうの後のちに官庁かんちょうへと頒暦していた。ここで制作せいさくされた暦こよみは吉凶きっきょう判断はんだんのための様々さまざまな暦こよみ注ちゅうが漢文かんぶんで記しるされたいわゆる具ぐ注ちゅう暦こよみだったが、平安へいあん時代じだい後期こうきには簡略かんりゃく化かされ仮名かめい文字もじで書かかれた仮名かめい暦れきも広ひろく発行はっこうされるようになり、また暦こよみ道どうが幸徳こうとく井い家かの家職かしょく化かされた。一方いっぽう、鎌倉かまくら時代じだいになると暦こよみの需要じゅようが高たかまって具ぐ注ちゅう暦れきや仮名かめい暦れきの筆写ひっしゃでは供給きょうきゅうが追おいつかなくなり、木版もくはん印刷いんさつによる摺すり暦れきの生産せいさんが始はじまった。摺すり暦れきは伊豆いず国こくの三島みしまで始はじまったと考かんがえられており、三島みしま暦れきをはじめとして京きょう暦こよみや大宮おおみや暦れきなど日本にっぽん各地かくちで盛さかんに発行はっこうされるようになった。こうした暦こよみは地方ちほう暦れきと総称そうしょうされる。江戸えど時代じだいに入はいると御ご師しの手てによって伊勢神宮いせじんぐう信仰しんこうが全国ぜんこくに広ひろまるが、彼かれらが御札おさつを配布はいふする際さいに土産みやげとして伊勢いせ暦れきを配布はいふしたことから、伊勢いせ暦れきが暦こよみの代名詞だいめいしとなるまでに普及ふきゅうしたが、各かく地方ちほうでも特色とくしょくある暦こよみが作成さくせい・配布はいふされ続つづけた。なかには非ひ識字しきじ者しゃを対象たいしょうに文字もじを使つかわず絵えや記号きごうで暦こよみを表示ひょうじした、南部なんぶ絵暦えごよみに代表だいひょうされる盲暦めくらごよみや、大だいの月つき・小しょうの月つきの順番じゅんばんのみを記しるし贈答ぞうとう品ひんとして流行りゅうこうした大小だいしょう暦れきといった暦こよみが作つくられたのもこの頃ころのことである。

明治めいじ時代じだいに入はいると、従来じゅうらいの頒暦者しゃたちを統合とうごうして明治めいじ5年ねんに頒暦商社しょうしゃが設立せつりつされたが、同年どうねんにグレゴリオ暦れきへの改暦かいれきが行おこなわれたため、すでに翌年よくねん分ぶんの旧暦きゅうれきで暦こよみを作成さくせいしていた頒暦商社しょうしゃは大だい損害そんがいを受うけた。この救済きゅうさいとして商社しょうしゃには10年間ねんかんの専売せんばい権けんが与あたえられたが、新暦しんれきでは従来じゅうらいの暦こよみに記載きさいされていた暦こよみ注ちゅうの記載きさいが禁きんじられたため使つかい勝手がってが非常ひじょうに悪わるく、商社しょうしゃの専売せんばい権けんが終了しゅうりょうした明治めいじ15年ねん頃ごろからは暦こよみ注ちゅうを記載きさいした違法いほうのお化ばけ暦れきが盛さかんに発行はっこうされるようになった。また明治めいじ16年ねんからは神宮じんぐう司つかさ庁ちょうにより神宮じんぐう暦れきの発行はっこうがはじまった。

文化ぶんか

中国ちゅうごくの歴代れきだい王朝おうちょうにおいては、天象てんしょうを把握はあくして正確せいかくな暦こよみを策定さくていし施行しこうすることは観かん象ぞう授時と呼よばれ、王朝おうちょうの責務せきむとされていた。このため、暦こよみは強つよい政治せいじ性せいを持もつようになり、王朝おうちょうや支配しはい者しゃが交代こうたいした際さいにはしばしば改暦かいれきが行おこなわれた。また臣下しんかや支配しはい地域ちいきでは王朝おうちょうの定さだめた暦こよみを施行しこうすることが義務ぎむづけられた。このため、暦こよみを受うけいれることを意味いみする「正せい朔ついたちを奉ほうずる」という言葉ことばが、そのまま王朝おうちょうの統治とうちに服ふくすることを意味いみするようになった。この暦こよみの使用しようは冊さつ封ふう体制たいせい下したにある全すべての国家こっかでも義務ぎむづけられ、独自どくじの暦こよみを作成さくせい・使用しようすることは禁きんじられていた。この元号げんごう強制きょうせいにより朝鮮半島ちょうせんはんとうでは新しん羅ら中期ちゅうき以降いこうは独自どくじ元号げんごうの使用しようは停止ていしされ中国ちゅうごく元号げんごうが使用しようされたものの、日本にっぽんでは645年ねん以降いこう、ベトナムでは970年ねん以降いこう独自どくじ元号げんごうが制定せいていされ使用しようされ続つづけた。

中国ちゅうごくの暦こよみは、月日つきひの決定けっていだけでなく日月じつげつ食しょくの予報よほうや惑星わくせい運行うんこうの推算すいさん（天体てんたい暦れき）などを扱あつかうものであった。過去かこに関かんする記録きろくは「歴れき」、現在げんざいから未来みらいに関かんする記録きろくは「暦こよみ」であるが、これをともに扱あつかう役職やくしょくを史官しかんといい、今いまでいう歴史れきし学者がくしゃと天文学てんもんがく者しゃを兼かねていた。

また暦こよみは未来みらいを扱あつかうものであるから、予言よげん的てきな性格せいかくをもち、占星術せんせいじゅつと大おおきく関かかわる。これは東洋とうようにおいても同様どうようであり、旧暦きゅうれきにはさまざまな暦こよみ注ちゅうが付つくのが常つねであった。こうした暦こよみ注ちゅうには二に十じゅう四よん節気せっきなどの有用ゆうようなものもあったが、大半たいはんは吉凶きっきょう判断はんだんなどに使用しようするものであったため、明治めいじ政府せいふは新暦しんれき変更へんこう後ごに一切いっさいの暦こよみ注ちゅうの表示ひょうじを禁止きんしした。しかし暦こよみ注ちゅうが全まったくないのは不便ふべんだったためにまもなく暦こよみ注ちゅうを記載きさいした違法いほうカレンダーであるおばけ暦れきが流行りゅうこうするようになり、旧来きゅうらいのものに加くわえて六ろく曜や九星きゅうせいといった新あらたな暦こよみ注ちゅうも暦こよみに入はいり込こむようになった。

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

• 岡田おかだ芳朗よしろう 編へん『暦こよみの大だい事典じてん』朝倉書店あさくらしょてん、2014年ねん7月がつ20日はつか。 
• 岡田おかだ芳朗よしろう、伊東いとう和彦かずひこ、後藤ごとう晶あきら男おとこ、松井まつい吉昭よしあき『暦こよみを知しる事典じてん』東京とうきょう堂どう出版しゅっぱん、2006年ねん5月がつ8日にち。 
• リオフランク・ホルフォード・ストレブンズ 著ちょ、正宗まさむね聡さとし 訳わけ『暦こよみと時間じかんの歴史れきし』丸善まるぜん出版しゅっぱん〈サイエンス・パレット9〉、2013年ねん5月がつ8日にち。 
• 渡邊わたなべ敏夫としお『暦こよみ入門にゅうもん　暦こよみのすべて』雄山閣ゆうざんかく、2012年ねん5月がつ30日にち。 
• 所ところ功いさお、久禮くれ旦だん雄ゆう、吉野よしの健一けんいち『元号げんごう　年号ねんごうから読よみ解とく日本にっぽん史し』〈文春ぶんしゅん新書しんしょ〉2018年ねん3月がつ20日はつか。 
• 所ところ功いさお、久禮くれ旦だん雄ゆう、吉野よしの健一けんいち『元号げんごう読本とくほん　「大化たいか」から「令れい和わ」まで全ぜん248年ねん号ごうの読よみ物もの事典じてん』創つく元もと社しゃ、2019年ねん5月がつ20日はつか。 

関連かんれん項目こうもく

• 暦こよみの一覧いちらん
• 西暦せいれき
• 元号げんごうから西暦せいれきへの変換へんかん表ひょう
• クロノグラム
• 日曜日にちようびから始はじまる平年へいねん - 日曜日にちようびから始はじまる閏年うるうどし
• 月曜日げつようびから始はじまる平年へいねん - 月曜日げつようびから始はじまる閏年うるうどし
• 火曜日かようびから始はじまる平年へいねん - 火曜日かようびから始はじまる閏年うるうどし
• 水曜日すいようびから始はじまる平年へいねん - 水曜日すいようびから始はじまる閏年うるうどし
• 木曜日もくようびから始はじまる平年へいねん - 木曜日もくようびから始はじまる閏年うるうどし
• 金曜日きんようびから始はじまる平年へいねん - 金曜日きんようびから始はじまる閏年うるうどし
• 土曜日どようびから始はじまる平年へいねん - 土曜日どようびから始はじまる閏年うるうどし

今日きょうのこよみ

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2024年ねん（令れい和わ6年ねん）7月がつ1日にち 月曜日げつようび（日本にっぽん時間じかん）

以下いかは毎日まいにち自動じどう更新こうしんされる「今日きょうのこよみ」である。

7月がつ1日にち 月曜日げつようび（日本にっぽん時間じかん） - 旧暦きゅうれき:5月26日にち - 六ろく曜:赤口しゃっく - 日にちの干支えと:丙へい寅とら - 九星きゅうせい:七赤しちせき金星きんぼし - 二十八宿にじゅうはっしゅく:心こころ宿やど - 十じゅう二に直じき:成しげる - 三隣亡さんりんぼう、半夏生はんげしょう、節気せっきは夏至げし、小暑しょうしょまで5日にち（）

外部がいぶリンク

• When.exe Ruby版ばん(hosi.org) - 古今ここん東西とうざいあらゆる文化ぶんかおよび言語げんごで用もちいられた暦日れきじつ・暦法れきほう・時じ法ほう・暦年れきねん代だい・暦こよみ注ちゅうなどにユニークな名前なまえ付づけを行おこない、統一とういつ的てきに扱あつかうことを目的もくてきとしたRubyのフレームワーク。新暦しんれき旧暦きゅうれきのみならず、古代こだい暦れきの相互そうご換算かんさんにも対応たいおう。
• 日本にっぽん大だい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)『暦こよみ』 - コトバンク
• Calendar FAQ（英語えいご）
• LA GRANDE HISTOIRE DU CALENDRIER（フランス語ふらんすご）（カレンダーの偉大いだいな歴史れきし）
• Крайнев А.М. Современный календарь（ロシア語ご）（Krainev A.M. 現代げんだいのカレンダー）
• 暦こよみカレンダー｜年度ねんど別べつの暦こよみ分類ぶんるい
• 暦こよみのページ｜暦こよみの情報じょうほうが直すぐに手てに入はいる
• 暦こよみ計算けいさん Online（Google スプレッドシート、カタギリノエンレイソウ広報こうほう）