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天文学てんもんがくてき紀年きねんほう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

天文学てんもんがくてき紀年きねんほう(てんもんがくてききねんほう、Astronomical year numbering)は、しゅとして天文学てんもんがくもちいる紀年きねんほうである。紀元きげん1ねん西暦せいれき1ねん以後いご年数ねんすうについては通常つうじょう西暦せいれき紀年きねんほう歴史れきしねん)とおなじであるが、紀元きげん1ねん西暦せいれき1ねん)よりまえについては、0(ゼロ)と負数ふすうもちいて年数ねんすうあらわすので、通常つうじょう紀元前きげんぜん紀年きねんほうとは、1ねんしょうじる[1]たとえばカエサル暗殺あんさつされた紀元前きげんぜん44ねんは、西暦せいれき-43ねんである。

この紀年きねんほうは、日付ひづけ時刻じこく表記ひょうきかんする国際こくさい規格きかくであるISO 8601でも採用さいようされている(ISO 8601#とし表記ひょうき(0000ねんよりまえ、9999ねんよりこう)。西暦せいれき1ねんよりまえの、天文てんもんねん歴史れきしねん絶対ぜったいの1ねん差異さいは、しょくごうのような天文てんもんイベントを計算けいさんし、それらが言及げんきゅうされた歴史れきしイベントがいつ発生はっせいしたかを判断はんだんするときに重要じゅうようである。

なお、考古学こうこがく地質ちしつがくでは現時点げんじてんからなんねんまえであるかをしめす「BP (年代ねんだい測定そくてい)」(before present)を使用しようしている。

記法きほう

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通常つうじょう紀元きげん西暦せいれき表現ひょうげんもちいられる接頭せっとうADや接尾せつびCE(Common Era)、BC(Before Christ)、BCE(Before Common Era)などは使つかわない[1]

紀元前きげんぜんとし表示ひょうじ

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紀元前きげんぜん1ねんは0ねん紀元前きげんぜん2ねんは-1ねん紀元前きげんぜん3ねんは-2ねん紀元前きげんぜん4ねんは-3ねんとする。一般いっぱんに、紀元前きげんぜんnとしnせい整数せいすう)は”-(n-1)”であらわされる[1]

紀元きげんとし表示ひょうじ

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紀元きげん1ねん以降いこう通常つうじょう歴史れきしねん同一どういつであって、符号ふごうしまたはせい符号ふごうかれる。すなわち、紀元きげんnとしnせい整数せいすう)はたんnまたは+nかれる[1]

天文学てんもんがくてき紀年きねんほうもちいる理由りゆう

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天文学てんもんがくてき紀年きねんほうもちいる理由りゆうは、西暦せいれきまえから西暦せいれきにわたる期間きかん計算けいさん簡便かんべん単純たんじゅんにするためである。紀元前きげんぜん1ねんまた期間きかん年数ねんすう計算けいさんするときには、通常つうじょう紀年きねんほうでは0ねん存在そんざいしないことを考慮こうりょしなければならないので計算けいさん面倒めんどうかつ間違まちがえやすい。天文学てんもんがくてき紀年きねんほうでは、たん期間きかん最後さいごとしから期間きかん最初さいしょとしくだけでく、計算けいさん簡便かんべんである[2]

紀元きげん1ねん(「1」)の前年ぜんねん紀元前きげんぜん1ねん(「-1」)となる紀元前きげんぜん年数ねんすうをそのままもちいると整数せいすう算法さんぽうはんすることとなって、天文学てんもんがくてき事象じしょう期間きかん計算けいさん不具合ふぐあいしょうじてしまう(「紀元前きげんぜん1ねん」、「1がつ0にち」も参照さんしょうのこと)。

  • 通常つうじょう紀年きねんほう紀元前きげんぜん4ねん紀元前きげんぜん3ねん紀元前きげんぜん2ねん紀元前きげんぜん1ねん紀元きげん1ねん紀元きげん2ねん紀元きげん3ねん
  • 天文学てんもんがくてき紀年きねんほう西暦せいれき -3ねん西暦せいれき -2ねん西暦せいれき -1ねん西暦せいれき 0ねん西暦せいれき1ねん西暦せいれき2ねん西暦せいれき3ねん

天文学てんもんがくてき紀年きねんほう準拠じゅんきょするかず直線ちょくせんNumberline

れい紀元きげん2ねん( = 西暦せいれき 2ねん)から紀元前きげんぜん4ねん( = 西暦せいれき -3ねん)までの年数ねんすう算出さんしゅつほう

  • 通常つうじょう紀年きねんほう:2 - (-4) - 1 = 5ねん紀元前きげんぜん1ねんまた場合ばあいには、1ねんげんじなければならない)
  • 天文学てんもんがくてき紀年きねんほう:2 - (-3) = 5ねん紀元前きげんぜん1ねんまたがない場合ばあい年数ねんすう算出さんしゅつ方法ほうほうおなじである)

ユリウスれきとグレゴリオれき

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天文学てんもんがくしゃは、1582ねんよりもまえ(0ねんふくむ)にはユリウスれきを、1582ねん以降いこうにはグレゴリオれき使用しようする。たとえば、ジャック・カッシーニ(1740ねん[3]サイモン・ニューカム(1898ねん[4]フレッド・エスペナック英語えいごばん(2007ねん[5]がそのようにしている。

0ねん使用しよう

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ヨハネス・ケプラールドルフひょう(1627ねん)において、太陽たいようがつ土星どせい木星もくせい火星かせい金星かなぼし水星すいせい平均へいきん運動うんどうひょうについて「0ねん」のプロトタイプを使つかっていた。かれは、Ante Christum紀元前きげんぜん)とPost Christum紀元きげん)のあいだChristi (Christ's)のとしいた。1702ねん、フランスの天文学てんもんがくしゃフィリップ・ド・ラ・イールは、Tabulæ Astronomicæ平均へいきん運動うんどうのページで、紀元前きげんぜんante Christum)の最後さいごとしを「Christum 0」とした。すなわち、ケプラーがChristi表記ひょうきしたものに「0」をけた[6]最後さいごに、1740ねんにフランスの天文学てんもんがくしゃジャック・カッシーニは、Tables astronomiquesにおいてこのとしたんに「0」と表記ひょうきし、それよりまえとしにはavant Jesus-Christとしにはaprès Jesus-Christけた[3]。これにより、「0ねん」という表記ひょうき発明はつめいしゃ伝統でんとうてきにカッシーニであるとされている[7][8][9]

カッシーニが0ねん使つかった理由りゆうつぎのようにべられている[10]

The year 0 is that in which one supposes that Jesus Christ was born, which several chronologists mark 1 before the birth of Jesus Christ and which we marked 0, so that the sum of the years before and after Jesus Christ gives the interval which is between these years, and where numbers divisible by 4 mark the leap years as so many before or after Jesus Christ.
Jacques Cassini
0ねんは、イエス・キリストが誕生たんじょうしたとみなされねんであり、何人なんにんかの年代ねんだい記者きしゃは、イエス・キリストの誕生たんじょうまえに1とマークする。その結果けっか、イエス・キリストの前後ぜんご年数ねんすう合計ごうけいがこれらのとしあいだ間隔かんかくあたえ、イエス・キリストのまえあと同様どうように、4でれるかず閏年うるうどしとすることができる。
ジャック・カッシーニ

NASAフレッド・エスペナック英語えいごばんは、0ねんにおける50かいつきしょうげ、それが瞬間しゅんかんではなく丸々まるまるいちねんであることをしめしている[5]ジャン・メーウスつぎのように説明せつめいしている[11]

There is a disagreement between astronomers and historians about how to count the years preceding year 1. In [Astronomical Algorithms], the 'B.C.' years are counted astronomically. Thus, the year before the year +1 is the year zero, and the year preceding the latter is the year −1. The year which historians call 585 B.C. is actually the year −584. The astronomical counting of the negative years is the only one suitable for arithmetical purpose. For example, in the historical practice of counting, the rule of divisibility by 4 revealing Julian leap-years no longer exists; these years are, indeed, 1, 5, 9, 13, ... B.C. In the astronomical sequence, however, these leap-years are called 0, −4, −8, −12, ..., and the rule of divisibility by 4 subsists.
Jean Meeus, Astronomical Algorithms
西暦せいれき1ねんよりまえ年数ねんすうかぞえる方法ほうほうについては、天文学てんもんがくしゃ歴史れきしあいだ意見いけん相違そういがある。[Astronomical Algorithms]では、紀元前きげんぜんとし天文学てんもんがくてきかぞえられる。したがって、+1ねんまえとしは0ねんであり、そのまえは-1ねんである。歴史れきし紀元前きげんぜん585ねんとしは、実際じっさいには−584ねんである。マイナスのとし天文てんもん計算けいさん算術さんじゅつ目的もくてきてきした唯一ゆいいつのものである。たとえば、歴史れきしがくにおける紀年きねんほうでは、ユリウスれき閏年うるうどしあらわす4によるざん法則ほうそくはもはや存在そんざいしない。紀元前きげんぜん閏年うるうどし紀元前きげんぜん1ねん、5ねん、9ねん、13ねん、...である。しかし、天文学てんもんがく紀年きねんほうでは、紀元前きげんぜん閏年うるうどしは0、-4、-8、-12、...であり、4によるざん法則ほうそくつ。
ジャン・メーウス, Astronomical Algorithms

0ねんなしの符号ふごうねん

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ビザンチンの歴史れきしVenance Grumelは、紀元前きげんぜんとしに(マイナス記号きごう識別しきべつされる)まけとしを、紀元きげんとし符号ふごうなしのせいとしひょうにおいて使用しようした。ただし、かれほんほか場所ばしょでは、とし表記ひょうきするのに通常つうじょうフランス語ふらんすごの"avant J.-C." (before Jesus Christ)と"après J.-C." (after Jesus Christ)を使つかっている。おそらくかれ表示ひょうじスペースを節約せつやくするためにそうしただけであり、0ねん使つかっていない[12]

XML Schemaのバージョン1.0は、コンピュータあいだ交換こうかんされるデータをXML記述きじゅつするためによく使用しようされるが、これにはみのプリミティブデータがたdateおよびdateTimeふくまれる。これらは、先発せんぱつグレゴリオれき使用しようするISO 8601観点かんてんから定義ていぎされているため0ねんふくめる必要ひつようがあるが、XML schemaの仕様しようでは0ねんはないと規定きていされている。バージョン1.1では0ねんふくめることによってISO 8601の仕様しよう沿うようにさい定義ていぎされたが、これにより後方こうほう互換ごかんせいうしなうこととなった[13]

出典しゅってん

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  1. ^ a b c d Espenak. “Year Dating Conventions”. NASA Eclipse Web Site. NASA. 2009ねん2がつ8にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2009ねん2がつ19にち閲覧えつらん
  2. ^ 佐藤さとう正幸まさゆき世界せかいにおける時間じかん』(1はん1さつ山川やまかわ出版しゅっぱんしゃ、2009ねん8がつ30にち、71ぺーじISBN 978-4-634-34966-7 
  3. ^ a b Jacques Cassini, Tables Astronomiques (1740), Explication et Usage pp. 5 (PA5), 7 (PA7), Tables pp. 10 (RA1-PA10), 22 (RA1-PA22), 63 (RA1-PA63), 77 (RA1-PA77), 91 (RA1-PA91), 105 (RA1-PA105), 119 (RA1-PA119). フランス語ふらんすご
  4. ^ Simon Newcomb, "Tables of the Motion of the Earth on its Axis and Around the Sun" in Astronomical Papers Prepared for the Use of the American Ephemeris and Nautical Almanac, Volume VI: Tables of the Four Inner Planets, (United States Naval Observatory, 1898), pp. 27 & 34–35.
  5. ^ a b Fred Espenak, Phases of the Moon: −99 to 0 (100 to 1 BCE) Archived 5 June 2009 at the Wayback Machine. NASA Eclipse web site
  6. ^ Tabulae Astronomicae - Philippo de la Hire (1702), Tabulæ 15, 21, 39, 47, 55, 63, 71; Usus tabularum 4. (Latin)
  7. ^ Robert Kaplan, The nothing that is (Oxford: Oxford University Press, 2000) 103.
  8. ^ Dick Teresi, "Zero", The Atlantic, July 1997 (see under Calendars and the Cosmos).
  9. ^ L. E. Doggett, "Calendars" Archived 10 February 2012 at the Wayback Machine., Explanatory Supplement to the Astronomical Almanac, ed. P. Kenneth Seidelmann, (Sausalito, California: University Science Books, 1992/2005) 579.
  10. ^ Jacques Cassini, Tables Astronomiques, Explication et Usage 5, translated by Wikipedia from the French:
    "L'année 0 est celle dans laquelle on suppose qu'est né J. C. que plusieurs Chronologistes marquent 1 avant la naissance de J. C. & que nous avons marquée 0, afin que la somme des années avant & après J. C. donne l'intervalle qui est entre ces années, & que les nombres disibles par 4 marquent les années bissextiles tant avant qu'après J. C."
  11. ^ Jean Meeus, Astronomical Algorithms (Richmod, Virginia: Willmann-Bell, 1991) 60.
  12. ^ V. Grumel, La chronologie (Paris: Presses Universitaires de France, 1958) 30. フランス語ふらんすご
  13. ^ Biron, P.V. & Malhotra, A. (Eds.). (28 October 2004). XML Schema Part 2: Datatypes (2nd ed.). World Wide Web Consortium.

関連かんれん項目こうもく

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