(Translated by https://www.hiragana.jp/)
荒神 - Wikipedia コンテンツにスキップ

荒神こうじん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

荒神こうじん(あらがみ または こうじん)とは、日本にっぽん民間みんかん信仰しんこうにおいて、地域ちいき台所だいどころかみとしてまつられる神格しんかくいちれい

概要がいよう

[編集へんしゅう]

民俗みんぞくがく報告ほうこくする様々さまざま習俗しゅうぞく信仰しんこう形態けいたい地方ちほう伝承でんしょうなども様々さまざまであり、きわめて複雑ふくざつ形成けいせいであるとかんがえられている。そのおおくは仏教ぶっきょうみことかくとしてのぞうようそなえているが、にせけいのぞけば本来ほんらい仏典ぶってんには根拠こんきょがなく、かくとなったのは土着どちゃく信仰しんこうだったとおもわれる。現在げんざいでは純粋じゅんすい神道しんとうかみとして説明せつめいされるケース(後述こうじゅつ)もあるが、それらは江戸えど国学こくがく以降いこう思弁しべんによってかまどしんさだめたものとされる場合ばあいもある。

名称めいしょう

[編集へんしゅう]

猛々たけだけしくも荒々あらあらしく、霊験れいけんあらたかなかみとして「あらがみ」と場合ばあいもあり、くりや(くりや)を守護しゅごする「こうじん」とはことなるかみとして区別くべつする場合ばあいもある。とき荒神こうじんまつしゃ(やしろ)を荒神こうじん殿どの(こうじんでん)としょうしたり、そこでおこなわれる鎮魂ちんこん舞踊ぶよう、またはしゃないしじょう自体じたい荒神こうじん神楽かぐら(あらがみかぐら)とぶケースなどがられる。これは地域ちいき信仰しんこうによってことなり、台所だいどころまもかみについて「あらがみ」としょうするれいおおく、みが一定いっていしない[1][2][3]

信仰しんこう

[編集へんしゅう]

荒神こうじん信仰しんこうは、西日本にしにほんとく瀬戸内海せとないかい沿岸えんがん地方ちほうさかんだったようである。かくけん荒神こうじんしゃかずげると、岡山おかやま(200しゃ)、広島ひろしま(140しゃ)、島根しまね(120しゃ)、兵庫ひょうご(110しゃ)、愛媛えひめ(65しゃ)、香川かがわ(35しゃ)、鳥取とっとり(30しゃ)、徳島とくしま(30しゃ)、山口やまぐち(27しゃ)のように中国ちゅうごく四国しこくひとし瀬戸内海せとないかい中心ちゅうしんとした地域ちいき上位じょういめている。けんすべて10しゃ以下いかである。県内けんない荒神こうじんしゃひとつもないけんおおい。

荒神こうじん信仰しんこうには後述こうじゅつするように大別たいべつするととおりの系統けいとうがある(さん系統けいとうともいう)。屋内おくないまつられるいわゆる「三宝さんぼうたから荒神こうじん」、屋外おくがいの「荒神こうじん」である。

屋内おくないかみは、中世ちゅうせい神仏しんぶつ習合しゅうごうさいして修験しゅげんしゃ陰陽いんようなどの関与かんよにより、かみかまどかみ荒神こうじん信仰しんこうに、仏教ぶっきょう修験しゅげんどう三宝荒神さんぼうこうじん信仰しんこうむすびついたものである。荒神こうじんは、やまかみ屋敷やしきしん氏神うじがみ村落そんらくしん性格せいかくもあり、集落しゅうらく同族どうぞくごとに樹木じゅもくづかのようなものを荒神こうじんんでいる場合ばあいもあり、また牛馬ぎゅうば守護神しゅごじんうし荒神こうじん信仰しんこうもある。

祭神さいじんかくけんにより若干じゃっかんちがいはあるが、道祖神どうそじん奥津おくつ彦命(おきつひこのみこと)、奥津おくつひめいのち(おきつひめのみこと)、軻遇突智しん神様かみさまけい荒神こうじんとしてまつっている。神道しんとうけいにもこれらかみかまどかみ荒神こうじん信仰しんこうと、密教みっきょう道教どうきょう陰陽いんようどうひとし習合しゅうごうした「牛頭ごず天王てんのう(ごずてんのう)」のスサノオ信仰しんこうとの両方りょうほうがあったものとかんがえられる。祇園ぎおんしゃ八坂神社やさかじんじゃ)では、三寶荒神さんぼうこうじん牛頭ごず天王てんのう眷属けんぞくかみだとしている。

牛頭ごず天王てんのうは、祇園ぎおんかいけいまつりにおいてまつられるかみであり、インドのかみが、中国ちゅうごく密教みっきょう道教どうきょう陰陽いんよう思想しそう習合しゅうごうし、日本にっぽんつたわってからさらに陰陽いんようどうかかわりをふかめたものである。疫神性格せいかくち、スサノオみこと同体どうたいになり、祇園ぎおんかい系統けいとうまつりの地方ちほう伝播でんぱとおして、鎮守ちんじゅしんとしても定着ていちゃくしたものである。

種類しゅるい

[編集へんしゅう]

家庭かてい台所だいどころまつ三宝荒神さんぼうこうじんと、地域ちいき共同きょうどうたいまつ荒神こうじんとがある。荒神こうじんしょ要素ようそには三宝荒神さんぼうこうじんにみられないものもおおく、両者りょうしゃ異質いしつとみるせつもあるが、荒神こうじんにみられる地域ちいきはその成立せいりつ関与かんよしたものがわ生活せいかつ様式ようしきにあったとみて本来ほんらい三宝荒神さんぼうこうじん同系どうけいとするせつもある。ただし地域ちいき文化ぶんか多様たようせいたん信仰しんこうふるさを反映はんえいしているにすぎないともかんがえられるので、かならずしも文化ぶんか伝達でんたつしゃ現地げんちじんのギャップという観点かんてん必要ひつようはない。

三宝荒神さんぼうこうじん

[編集へんしゅう]

三宝荒神さんぼうこうじんは『无障礙経』(むしょうげきょう)のくところでは、如来にょらい荒神こうじん(にょらいこうじん)、麁乱荒神こうじん(そらんこうじん)、忿怒ふんど荒神こうじん(ふんぬこうじん)三身みつみ(ただし『无障礙経』は中国ちゅうごく作成さくせいされたにせけい)。後世こうせい下級かきゅうそう陰陽いんようるいが、財産ざいさんをもたない出家しゅっけしゃ生活せいかつ援助えんじょをうけやすくするため、三宝荒神さんぼうこうじん帰依きえするようにいたことに由来ゆらいしている。ぞうようとしての荒神こうじんは、インド由来ゆらい仏教ぶっきょう尊像そんぞうではなく、日本にっぽん仏教ぶっきょう信仰しんこうなか独自どくじ発展はってんした尊像そんぞうであり、三宝荒神さんぼうこうじんはその代表だいひょうてきなものである。不浄ふじょう災難さいなん除去じょきょするかみともされ、もっと清浄せいじょう場所ばしょであるかまどかみ台所だいどころかみ)としてまつられる。俗間ぞっかん信仰しんこうである。

かまど荒神こうじんけんりょくによると、まれたての幼児ようじがく荒神こうじんすみる、あるいは「あやつこ」といておけば悪魔あくまはらいえるとしんずるかんがかたがある。また荒神こうじんすみったおかげで河童かっぱ(かっぱ)のなんをのがれたというはなし九州きゅうしゅう北西ほくせいにはおおい。荒神こうじん神棚かみだな荒神こうじんだな毎月まいつき晦日みそか(みそか)のまつりを荒神こうじんはらい(はらい)、そのときそなえるまつしょうえだ胡粉ごふん(ごふん)をまぶしたものを荒神こうじんまつ、またかまどはらほうき(ほうき)を荒神こうじんほうきとよんで、不浄ふじょうほうきとはべつあつかう。

荒神こうじん

[編集へんしゅう]

荒神こうじんは、屋外おくがい屋敷やしきしん同族どうぞくしん部落ぶらくしんなどとしてまつ荒神こうじん総称そうしょうである。 中国ちゅうごく地方ちほう山村さんそんや、瀬戸内せとうち島々しまじま四国しこく北西ほくせい九州きゅうしゅう北部ほくぶには、樹木じゅもくとか、大樹たいじゅしたづか荒神こうじんんで、同族どうぞくかぶないごとにまたしょう集落しゅうらくごとにこれをまつれいおおい。やまかみ荒神こうじんウブスナ荒神こうじん山王さんのう荒神こうじんといった習合しゅうごう関係かんけいしめ名称めいしょうのほか、地名ちめいかんしたものがおおい。祭祀さいし主体しゅたいによりカブ荒神こうじん部落ぶらく荒神こうじんそう荒神こうじんなどともしょうされる。

旧家きゅうかでは屋敷やしきかその周辺しゅうへん屋敷やしき荒神こうじんまつれいがあり、同族どうぞくまつ場合ばあいにはづかいしのあるもり聖域せいいきとみる傾向けいこうつよい。部落ぶらくまつるものは生活せいかつ全般ぜんぱん守護しゅごするかみとして山麓さんろくまつられることがおおい。樹木じゅもく場合ばあいは、地主じぬししんさくしん(さくがみ)であり、牛馬ぎゅうば安全あんぜんまもるが、はなはたたりやすいともいう。またまつひとたちのいえ火難かなん窃盗せっとうふせぐという。荒神こうじん三宝荒神さんぼうこうじん同様どうよう毎月まいつき28にちとか、正月しょうがつ、5月、9月の28にちまつりをおこなれいおおい。あるいは旧暦きゅうれき9がつか11がつかに、稲作いなさく収穫しゅうかくさいのようなかんじをもっておこなわれる。あたま(とうや)せい同族どうぞく集落しゅうらく家々いえいえ輪番りんばんまつり主宰しゅさいするふるまつりの形式けいしきつたえているものがある。広島ひろしまけん北部ほくぶ岡山おかやまけん西部せいぶでは、「」というじゅうすう単位たんいとして、7ねんや13ねん単位たんいとする式年しきねんの「だい神楽かぐら」がおこなわれ、最後さいご荒神こうじんかみがかりがあって託宣たくせん[4]比婆ひば荒神こうじん神楽かぐら備中びっちゅう神楽かぐらは、くに重要じゅうよう無形むけい民俗みんぞく文化財ぶんかざい指定していされている。

大荒おおあら大明神だいみょうじん

[編集へんしゅう]

聖徳太子しょうとくたいしのブレーン・はたかわしょう大荒おおあら大明神だいみょうじんとしてまつられたとされる。播磨はりま赤穂あこう郷土きょうど世阿弥ぜあみぜんちくしる猿楽さるがく起源きげんせつなどにおいてもはたかわしょうだい荒神こうじんとなったとしるされてある。

仏教ぶっきょうにおける荒神こうじん信仰しんこう

[編集へんしゅう]
三宝荒神さんぼうこうじん

仏教ぶっきょうけいではふつほうそう三宝さんぼうまも神様かみさまとされる。荒神こうじん尊像そんぞうは、三面六臂さんめんろっぴまたは八面六臂はちめんろっぴ三面さんめんぞう頭上ずじょうに5つの小面こおもてつ)で、不動明王ふどうみょうおうつうじる慈悲じひきわまりた憤怒ふんぬ形相ぎょうそうである。ろくひじものはそのぞうによって差異さいがあるが、一般いっぱんには 右手みぎて独鈷とっこ蓮華れんげ宝塔ほうとう鈷杵・きむつよしけん)。左手ひだりて金剛こんごうりん宝珠ほうしゅ・羯磨(金剛こんごうりんゆみ・戟またはやり)のようなかたちがとられている。江戸えど時代じだいには民家みんか台所だいどころにはかならずといってよいほどまつられていた。そしてそのまつかた御札おさつあり、御宮おみやあり、幣束へいそくもあっていろいろなかたちがとられていた。

民間みんかん習俗しゅうぞくにおける荒神こうじん信仰しんこう

[編集へんしゅう]
あやつこ(綾子あやこ[5])

子供こどもの「宮参みやまい」のときに、鍋墨なべずみ(なべずみ)やべになどで、がくに「×」、「いぬ」とくことをいう。あくよけのしるしで、イヌのそだつということに由来ゆらいするとされ、全国ぜんこくてきにではいが、地方ちほうによっておこなわれるところがある。

文献ぶんけんによると、この「あやつこ(綾子あやこ)」はべにいたとされるが、べに上流じょうりゅう階級かいきゅうでのみ使つかわれたことから、一般いっぱん庶民しょみんは「すみ」、それも「なべずみ」でくのがまりであったという。この「なべずみ」をがくけることは、いえかみとしての荒神こうじん(こうじん)の庇護ひごけていることのしるしであった。東北とうほく地方ちほうで、このしるしくことを「やすこ」をくとう。宮参みやまいりのみでなく、神事しんじ参列さんれつする稚児ちご(ちご)が同様どうようしるしけるれいがある。

「あやつこ(綾子あやこ)」をけたものは、かみ保護ほごけたものであることを明示めいじし、それにれることをきんじたのであった。のちには子供こども事故じこ防止ぼうしのおまじないとして汎用はんようされている。柳田やなぎだ國男くにおの『おもね也都こう』によると、奈良なら時代じだいみやおんなには「あやつこ(綾子あやこ)」の影響えいきょうけたとおもわれる化粧けしょうみとめられ、また物品ぶっぴんにもこのしるしけることもされていたらしい。

語源ごげん

[編集へんしゅう]
語源ごげん不明ふめいである。

日本にっぽん古典こてんにある伝承でんしょうには、かずたましい(にぎみたま)、あらたましい(あらみたま)を対照たいしょうてき信仰しんこうした様子ようすしるされている。民間みんかん伝承でんしょうでも、温和おんわ福徳ふくとく保障ほしょうするかみと、きわめてたたやすく、これの畏敬いけい(いけい)のまこと実現じつげんしないと危害きがい不幸ふこうにあうとおもわれたるいかみがあった。後者こうしゃ害悪がいあくをなす悪神あくじんだがまつることによってあらたましいたましいてんじるという信仰しんこうがあった。そこでこの「荒神こうじん」とはこの後者こうしゃをさしたものではないかとのせつもある。ただし同様どうよう思想しそうインドでも、たとえば夜叉やしゃ羅刹らせつなどの悪神あくじんまつりこれを以って守護神しゅごじんとする風習ふうしゅうがあり、またヒンドゥーきょう仏教ぶっきょうからすれば外道げどう宗教しゅうきょう)のかみが、仏教ぶっきょう帰依きえしたとして守護神しゅごじん護法ごほうぜんしん(いわゆるてん)とされたことも有名ゆうめいであり、純粋じゅんすい仏教ぶっきょうわくないでも悪神あくじんまつってぜんしんてんじるということはありうる。神仏しんぶつ習合しゅうごう文化ぶんかなかで、陰陽いんよう(おんようじ)やそのながれを祈祷きとう(きとうし)が、古典こてんじょうの(神道しんとうの)こうぶるかみるいを、外来がいらい仏典ぶってんもとづくかみのようにいたことからはっしたのではないかとのせつ古来こらいからいうあらたましいまつって荒神こうじんとしたのではないかというせつもある。しかし、まつってたましいなりぜんしんなりにてんじたのであればもはやあらたましいでも悪神あくじんでもなくなるため、守護神しゅごじんになったうえで「荒神こうじん」とネガティブな呼称こしょうでよばれつづけるのはれいがない。

創作そうさく題材だいざいとしての荒神こうじん

[編集へんしゅう]
主演しゅえん内田うちだ有紀ゆきでドラマ(2018ねん2がつ17にちNHK BSプレミアム[6]

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
講座こうざ日本にっぽん民俗みんぞく宗教しゅうきょう 3 かみ観念かんねん民俗みんぞくISBN 978-4-335-51003-8らいおも ほかへん[7]
  • 出版しゅっぱん社名しゃめい弘文こうぶんどう
  • 出版しゅっぱん年月としつき:1979ねん9がつ
  • 引用いんよう三浦みうらしげるなだめ荒神こうじん[8]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく

[編集へんしゅう]

出典しゅってん

[編集へんしゅう]
  1. ^ 荒神こうじん-”あらがみ”と”こうじん” アラハバキかいひろし日本にっぽん古代こだい信仰しんこうなぞせま
  2. ^ 荒神こうじん(あらがみ) とは? goo辞書じしょ
  3. ^ あら‐がみ【荒神こうじん weblio辞書じしょ
  4. ^ 鈴木すずきただしたかし伝承でんしょう持続じぞくさせるものとはなにか―比婆ひば荒神こうじん神楽かぐら場合ばあい」『国立こくりつ歴史れきし民俗みんぞく博物館はくぶつかん研究けんきゅう報告ほうこく』186しゅう、2014ねん、 1-29ぺーじ
  5. ^ 漢字かんじ表記ひょうき出典しゅってん広辞苑こうじえんだいはん(はん岩波書店いわなみしょてん)
  6. ^ スペシャルドラマ「荒神こうじん」メインビジュアル・放送ほうそう決定けってい NHK
  7. ^ 講座こうざ日本にっぽん民俗みんぞく宗教しゅうきょう 3/らいじゅう/〔ほか〕へん - オンライン書店しょてんe-hon
  8. ^ 講座こうざ日本にっぽん民俗みんぞく宗教しゅうきょう - Webcat Plus

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]