住吉すみよし三神みかみ

イザナギの禊みそぎぎによって生うまれた神かみ々（『古事記こじき』に基もとづく） SVGで表示ひょうじ（対応たいおうブラウザのみ）

住吉すみよし三神みかみ（すみよしさんじん）は、神道しんとうで信仰しんこうされる神かみである。

概要がいよう

『日本書紀にほんしょき』では主おもに底そこ筒とう男おとこ命いのち（そこつつのおのみこと）・中ちゅう筒とう男おとこ命いのち（なかつつのおのみこと）・表ひょう筒とう男おとこ命いのち（うわつつのおのみこと）、『古事記こじき』では主おもに底そこ筒とう之の男神おかみ（そこつつのおのかみ）・中ちゅう筒とう之の男神おかみ（なかつつのおのかみ）・上うえ筒とう之の男神おかみ（うわつつのおのかみ）と表記ひょうきされる3神かみの総称そうしょうである。住吉すみよし大神おおがみともいうが、この場合ばあいは住吉すみよし大社たいしゃにともに祀まつられている息いき長ちょう帯たい姫ひめ命いのち（神功じんぐう皇后こうごう）を含ふくめることがある。

其底筒とう之の男おとこ命いのち、中ちゅう筒とう之の男おとこ命いのち、上うえ筒とう之の男おとこ命いのち三さん柱はしら神かみ者しゃ、墨江すみえ之これ三さん前ぜん大神だいじん也。

—古事記こじき

審しん神かみ者しゃ曰「今こん不ふ答こたえ而更後ご有ゆう言げん乎。」則のり對たい曰「於 日向ひなた國こく 橘たちばな小門おかど之の水底みなそこ所しょ居きょ 而水葉は稚やや之の出で居きょ神しん、名めい表ひょう筒とう男おとこ・中ちゅう筒とう男おとこ・底そこ筒とう男神おかみ之の有ゆう也。」問とい「亦また有ゆう耶。」答こたえ曰「有無うむ之の不知ふち焉。」

—日本書紀にほんしょき

「住吉すみよし」は、元もとは「すみのえ」（墨江すみえ）と読よんだ。

かつての神仏しんぶつ習合しゅうごうの思想しそうでは、それぞれ薬師やくし如来にょらい（底そこ筒とう之の男神おかみ）、阿弥陀如来あみだにょらい（中ちゅう筒とう之の男神おかみ）、大日如来だいにちにょらい（上うえ筒とう之の男神おかみ）を本地ほんじとすると考かんがえられた。

誕生たんじょう

伊い邪よこしま那な岐命と伊い邪よこしま那な美び命いのちは国生こくしょうみの神しんとして大だい八はち島とうを生うみ、またさまざまな神かみを生うんだが、伊い邪よこしま那な美び命いのちが火ひ之の迦具土ど神しんを生うんだときに大だい火傷かしょうを負おい、黄泉よみ国こく（死しの世界せかい）に旅立たびだった。その後ご、伊い邪よこしま那な岐命は、黄泉よみ国こくから伊い邪よこしま那な美び命いのちを引ひき戻もどそうとするが果はたせず、「筑紫つくしの日向ひなたの橘たちばなの小戸おうべの阿波岐原あわぎがはら」で、黄泉よみ国こくの汚穢おあいを洗あらい清きよめる禊みそぎを行おこなった。このとき、瀬せの深ふかいところで底そこ筒とう之の男神おかみが、瀬せの流ながれの中間ちゅうかんで中なか筒とう之の男神おかみが、水みず表ひょうで上うえ筒とう之の男神おかみが、それぞれ生うまれ出でたとされる。

住吉すみよし三神みかみと神功しんこう皇后こうごう

日本書紀にほんしょきによれば、仲哀ちゅうせつ天皇てんのうの御代みよ、熊くま襲かさね、隼人はやとなど大和やまと朝廷ちょうていに反抗はんこうする部族ぶぞくが蜂起ほうきしたとき、神功じんぐう皇后こうごうが神かみがかりし、「貧まずしい熊くま襲かさねの地ちよりも、金銀きんぎん財宝ざいほうに満みちた新しん羅らを征討せいとうせよ。我われら三さん神かみを祀まつれば新しん羅らも熊くま襲かさねも平伏へいふくする」との神託しんたくを得えた。しかし仲哀ちゅうせつ天皇てんのうはこの神託しんたくに対たいして疑問ぎもんを口くちにしたため、祟たたり殺ころされてしまう。その後ご、再ふたたび同様どうようの神託しんたくを得えた神功じんぐう皇后こうごうは、自みずから兵へいを率ひきいて新しん羅らへ出航しゅっこうした。皇后こうごうは神かみ々の力ちからに導みちびかれ、戦たたかわずして新しん羅ら、高こう麗うらら、百済くだらの三さん韓かんを従したがわせたという。

土佐とさ日記にっきにおける記述きじゅつ

『土佐とさ日記にっき』（10世紀せいき中頃なかごろ成立せいりつ）における記述きじゅつ（「住吉すみよしの明神みょうじん」の項こう）として、船旅ふなたびの際さい、突風とっぷうを起おこして進すすめなくし、番頭ばんがしらが客きゃくに対たいして、住吉すみよし明神みょうじんが何なにかを欲ほしがっているといって幣ぬさを奉納ほうのうさせるが、波なみは荒あれ、弊へいでは満足まんぞくできていないため、もっと喜よろこぶような品しなを奉納ほうのうしなさいといわれたため、鏡かがみを海うみに奉納ほうのうすると、たちまち海うみは鏡面きょうめんのように静しずまったとされ、欲ほしがりな神かみとして描えがかれている。「ちぶりの神かみ」の項こうでは、海賊かいぞくが追おいかけてくると聞きき、番頭ばんがしらに命めいじて幣ぬさを落おとさせ、幣ぬさが散ちった方ほう＝海神わたつみに手向たむけた方角ほうがくに舟ふねを漕こぎ、海神わたつみを祀まつる場面ばめんが見みられる。

住吉すみよし三神みかみを祀まつる主おもな神社じんじゃ

住吉すみよし三神みかみを祀まつる神社じんじゃは住吉すみよし神社じんじゃなどという社名しゃめいで、日本にっぽん全国ぜんこくに約やく600社しゃある。その内うち、4社しゃが近代きんだい社格しゃかく制度せいどにおいて官かん社しゃ (国くに幣ぬさ中社なかやしろ、官かん幣ぬさ小社しょうしゃ、官かん幣ぬさ中社なかやしろ、官かん幣ぬさ大社たいしゃ) に列れつ格かくされている。 （おおまかにいって、西にしから東ひがしに広ひろまっていったと推定すいていされる。）

• 最古さいこの住吉すみよし神社じんじゃ（三さん韓かん征伐せいばつに由来ゆらい）
  • 住吉すみよし神社じんじゃ（長崎ながさき県けん壱岐いき市し）
• 三さん大だい住吉すみよし　三さん韓かん征伐せいばつに由来ゆらいする神社じんじゃ
  • 住吉すみよし神社じんじゃ（福岡ふくおか市し博多はかた区く）・ 住吉すみよし神社じんじゃ（山口やまぐち県けん下関しものせき市し）・ 住吉すみよし大社たいしゃ（大阪おおさか市し住吉すみよし区く）
• 三さん大だい住吉すみよし以外いがいで三さん韓かん征伐せいばつに由来ゆらいする神社じんじゃ
  • 風浪ふうろう宮みや（福岡ふくおか県けん大川おおかわ市し）・ 本ほん住吉すみよし神社じんじゃ（神戸こうべ市し東灘ひがしなだ区く住吉宮すみよしみや町まち）
• 三さん韓かん征伐せいばつに由来ゆらいする神社じんじゃから勧進かんじんされた神社じんじゃ
  • 高良こうら大社たいしゃ（福岡ふくおか県けん久留米くるめ市し）・住吉すみよし神社じんじゃ（兵庫ひょうご県けん明石あかし市し魚住うおずみ町まち）・住吉すみよし神社じんじゃ（兵庫ひょうご県けん加西かさい市し北条ほうじょう町まち）・服部はっとり住吉すみよし神社じんじゃ（大阪おおさか府ふ豊中とよなか市し）・安宅あたか住吉すみよし神社じんじゃ（石川いしかわ県けん小松こまつ市し）・安住あんじゅう神社じんじゃ（栃木とちぎ県けん塩谷しおや郡ぐん）・住吉すみよし神社じんじゃ（東京とうきょう都と中央ちゅうおう区く）

参考さんこう文献ぶんけん

• 秋田あきた書店しょてん 『歴史れきしと旅たび』 八はち百ひゃく万まんの神かみ々への祈いのり 航海こうかい安全あんぜん・豊漁ほうりょうの神かみ 住吉すみよし三神みかみ 、 尾崎おざき友とも季き著ちょ pp.82 - 85. 1999年ねん
• 宗像むなかた市し史ふみ編纂へんさん委員いいん会かい 『宗像むなかた市し史し 通史つうし編へん 第だい2巻かん(古代こだい・中世ちゅうせい・近世きんせい)』古代こだいの海神わたつみ 住吉すみよしの神かみ ツツノヲと住吉すみよし三神みかみ 津守つもり連れん 安曇あずみの神かみ 阿おもね曇くもり連れんとヤマト王権おうけん 宗像むなかた神しんと住吉すみよし・安曇あずみ神かみ、宗像むなかた市し史し編纂へんさん委員いいん会かい編へん pp.19 - 25. 1999年ねん
• 崎元さきもと正教せいきょう (2017年ねん3月がつ24日にち). “「スサノオと住吉すみよし大神おおがみとの関係かんけい」、”. 大だい己おのれ貴とうと（大国たいこく主ぬし）の国くに造づくり . 2017年ねん3月がつ24日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2018年ねん7月がつ27日にち閲覧えつらん。