だいおう型がた巡視じゅんし船せん (初代しょだい)

だいおう型がた巡視じゅんし船せん
タイプシップとなった「カクタス」
基本きほん情報じょうほう
艦かん種しゅ	700トン型がたPL
就役しゅうえき期間きかん	1950年ねん - 1974年ねん
前まえ級きゅう	みうら
次つぎ級きゅう	おじか型がた（海防かいぼう艦かん型がた）
要目ようもく
常備じょうび排水はいすい量りょう	842トン
総トン数そうとんすう	688トン
全長ぜんちょう	61.0 m
最大さいだい幅はば	9.3 m
深ふかさ	4.7 m
吃水きっすい	3.13 m
主おも機き	ディーゼルエンジン×2基き
推進すいしん器き	スクリュープロペラ×2軸じく
出力しゅつりょく	1,500馬力ばりき
速力そくりょく	15.8ノット
航続こうぞく距離きょり	7,200海うみ里さと (12kt巡航じゅんこう時じ)
乗員じょういん	59名めい
兵へい装そう	※後日ごじつ装備そうび 3インチ単たん装そう緩なる射い砲ほう×1基き 70口径こうけい20mm単たん装そう機銃きじゅう×2基き

だいおう型がた巡視じゅんし船せん（だいおうがたじゅんしせん、英語えいご: Daiou-class patrol vessel）は、海上保安庁かいじょうほあんちょうの巡視じゅんし船せんの船級せんきゅう。分類ぶんるい上じょうはPL型がた、船ふね種しゅは700トン型がた。

来歴らいれき

1948年ねん5月1日にち、連合れんごう国軍こくぐん占領せんりょう下かの日本にっぽんにおいて洋上ようじょう警備けいび・救難きゅうなんおよび交通こうつうの維持いじを担当たんとうする文民ぶんみん組織そしきとして海上保安庁かいじょうほあんちょうが設立せつりつされた。設立せつりつ当初とうしょの海上保安庁かいじょうほあんちょうが有ゆうする船ふね艇ていは、いずれも第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの生いき残のこりや戦時せんじ中ちゅうに急造きゅうぞうされたものであり、戦後せんごの整備せいび不十分ふじゅうぶんもあり、業務ぎょうむ遂行すいこう上じょうの態勢たいせいが整ととのっているとは言いいがたい状況じょうきょうだった。

このことから、創設そうせつ翌年よくねんの昭和しょうわ24年度ねんどで約やく6億おく円えんの予算よさんが認みとめられて、海上保安庁かいじょうほあんちょうは初はじめて新しん造船ぞうせん艇ていを建造けんぞうすることになった。1949年ねん4月がつ、造船ぞうせん所しょ17社しゃの技術ぎじゅつ者しゃを中心ちゅうしんとして、海上保安庁かいじょうほあんちょう船舶せんぱく設計せっけい審議しんぎ会かいが発足ほっそくし、国内こくない造船ぞうせん所しょの全面ぜんめん協力きょうりょくのもと、船ふね艇ていに関かんする検討けんとうが開始かいしされた。計画けいかくに盛もり込こまれた船ふね艇ていのうち、もっとも大型おおがたの巡視じゅんし船せんであった700トン型がたについては、造船ぞうせん所しょ7社しゃが独自どくじの試案しあんを分担ぶんたん設計せっけいしたが、審議しんぎ会かいでの修正しゅうせい調整ちょうせいの結果けっか、日本鋼管にほんこうかん鶴見つるみ造船ぞうせん所しょの案あんを基本きほんとした設計せっけいが採択さいたくされた。しかしこの案あんでは、凌しのげ波なみ性せいを重視じゅうしして長ちょう船首せんしゅ楼ろう型がたとして設計せっけいされていたものの、連合れんごう国軍こくぐん最高さいこう司令しれい官かん総そう司令しれい部ぶ（GHQ/SCAP）が前ぜん甲板かんぱんでの設しつらえ標しるべ作業さぎょうを要望ようぼうしたことから、ネームシップの建造けんぞうを担当たんとうしていた石川いしかわ島とう重工業じゅうこうぎょうにおいて基本きほん計画けいかくからの再さい検討けんとうが行おこなわれることになった。

設計せっけい

上記じょうきの経緯けいいより、本ほん型がたでは、アメリカ沿岸えんがん警備けいび隊たいのカクタス級きゅう設しつらえ標しるべ船せんをタイプシップとした、船首せんしゅ楼ろう付つきの船尾せんび楼ろう型がたとされた。主要しゅよう構造こうぞうは鋲びょう接せっ、居住きょじゅう設備せつびなどの艤装ぎそうは商船しょうせん式しきで、木材もくざいなども多用たようされている。本ほん型がた以外いがいの初期しょき建造けんぞう巡視じゅんし船せんは溶接ようせつを全面ぜんめん的てきに採用さいようし、また防火ぼうか・耐たい燃もえに徹てっした実用じつよう主義しゅぎを打うち出だしているのとは対称たいしょう的てきな方針ほうしんであった。なお「だいおう」では、特とくに船橋ふなばし構造こうぞうや艤装ぎそう品ひんの一部いちぶに、重量じゅうりょう約やく1トンにおよぶ耐蝕たいしょくアルミニウム合金ごうきんが使用しようされており、国内こくない船せんにおける軽けい合金ごうきん利用りようの先例せんれいとなった。

主おも機きとしては、三菱重工みつびしじゅうこう（神戸こうべ）製せいの4サイクル中ちゅう速そくディーゼルエンジン（出力しゅつりょく750馬力ばりき）2基きが搭載とうさいされて、2軸じくのスクリュープロペラを駆動くどうする方式ほうしきであった。当時とうじ、海上保安庁かいじょうほあんちょう法ほうで定さだめられていた制限せいげん一いち杯はいの15ノットの速力そくりょくを有ゆうするとともに、マッカーサー・ライン内うちにおいて余裕よゆうをもって遭難そうなん船舶せんぱくの救助きゅうじょを行おこなえるよう、7,000海うみ里さとの航続こうぞく距離きょりが考慮こうりょされている。また最大さいだい2,000トン程度ていどの船舶せんぱくに対応たいおうできる曳航えいこう能力のうりょくを有ゆうし、後部こうぶにフックおよびワイヤ摺すれが設もうけられた。

船内せんない電源でんげんは直流ちょくりゅう225ボルトで、主あるじ発電はつでん機き2基き（出力しゅつりょく各かく80キロワット）、副ふく発電はつでん機き1基き（出力しゅつりょく各かく40キロワット）を備そなえた。無線むせん機き・航海こうかい計器けいきにはそれぞれ単独たんどくの電動でんどう発電はつでん機きを設もうけ、またセルシンモーターなどの共用きょうよう電源でんげんとして55ボルト・50サイクル電動でんどう発電はつでん機きを備そなえた。

装備そうび

上記じょうきの要望ようぼうに基もとづき、船橋ふなばし前まえに力量りきりょう9トンのデリックを備そなえ、ウェル部ぶの船倉ふなぐらには80トンの貨物かもつを収容しゅうようできた。このデリックによって特大とくだい型がた浮標ふひょう2個こまたは10メートル測量そくりょう艇てい2隻せきの積つみ下おろしが可能かのうとされていたが、実際じっさいに運用うんようされることはなかった。

航海こうかい設備せつびおよび艤装ぎそう関係かんけいは、おおむね大日本帝国だいにっぽんていこく海軍かいぐんの基準きじゅんを参考さんこうとした。建造けんぞう当時とうじ、レーダーはGHQにより使用しようを禁止きんしされていたものの、後日ごじつ装備そうびとして考慮こうりょされ、1951年ねんに搭載とうさいした。また竣工しゅんこう時じは非ひ武装ぶそうだったが、1954年ねん、船首せんしゅ楼ろう甲板かんぱん後ご端はしから延のべ設しつらえされたスポンソン部ぶに3インチ単たん装そう緩なる射い砲ほう1基き、また後部こうぶ甲板かんぱん室しつ上じょうおよび後こう甲板かんぱん上じょうに各かく1基きの70口径こうけい20mm単たん装そう機銃きじゅう2基きを装備そうびした。その後ご、後こう甲板かんぱんの20mm単たん装そう機銃きじゅうは撤去てっきょされた。

長船おさふね尾お楼ろう甲板かんぱん両りょう舷ふなばたには、6メートル・カッター2隻せき、6メートル通どおり船せん1隻せきと7.5メートル内火艇ないかてい1隻せきを搭載とうさいした。揚あげ降くだ装置そうちとしては「カクタス」そのままに手動しゅどう式しきのコロンバス式しきダビットが装備そうびされたが、この形式けいしきのボート・ダビットが装備そうびされたのは本ほん型がた2隻せきととかち型がた2隻せき、「やはぎ」の計けい5隻せきのみであった。その後ご、1952年ねん頃ごろには、カッター2隻せきは救命きゅうめい艇てい (サーフボート) へ搭載とうさい替がえが行おこなわれた。また上記じょうきの後のち甲板かんぱんの機銃きじゅうの撤去てっきょとあわせて内火艇ないかていと同どうダビットの廃止はいし、伝馬船てんませんの撤去てっきょが行おこなわれ、かわりに高速こうそく機動きどう艇ていが搭載とうさいされた。

同型どうけい船せん

一覧いちらん表ひょう

#	船ふね名めい	建造けんぞう所しょ	竣工しゅんこう	解かい役やく
PL-02	だいおう	石川いしかわ島とう	1950年ねん 3月15日にち	1973年ねん 8月がつ15日にち
PL-03 →PL-01	むろと	浦賀うらが	1950年ねん 3月がつ20日はつか	1974年ねん 10月15日にち

運用うんよう史し

昭和しょうわ24年度ねんど計画けいかくで2隻せきが建造けんぞうされたのに続つづいて、昭和しょうわ25年度ねんど計画けいかくでも2隻せきの建造けんぞうが盛もり込こまれたものの、1949年ねん12月、占領せんりょう軍ぐん当局とうきょくより、本ほん型がたの建造けんぞうを中止ちゅうしして、かわってPL・PMの配属はいぞくが困難こんなんな基地きち向むけとして240トン型がた巡視じゅんし船せんを建造けんぞうするよう勧告かんこくされたことから、これは実現じつげんしなかった。

建造けんぞうされた2隻せきは、創設そうせつ期きの海上保安庁かいじょうほあんちょうにとって貴重きちょうな大型おおがた巡視じゅんし船せんとして活躍かつやくしたが、老朽ろうきゅう化かに伴ともない、1970年代ねんだい中盤ちゅうばんに運用うんようを終了しゅうりょうした。なお兵へい装そうのうち、20mm機銃きじゅうは同名どうめいの巡視じゅんし船せんに引ひき継つがれた。

登場とうじょう作品さくひん

『海底かいてい軍艦ぐんかん』

「PL-01 むろと」が登場とうじょう。冒頭ぼうとうにて、ムウ帝国ていこく人じんが誘拐ゆうかいのために盗ぬすんだタクシーが海うみに落おちた現場げんばの近ちかくに停泊ていはくしている。

参考さんこう文献ぶんけん

画像がぞう外部がいぶリンク
船型せんけい図ず

• 海人あま社しゃ 編へん「海上保安庁かいじょうほあんちょう全ぜん船ふね艇てい史し」『世界せかいの艦船かんせん』第だい613号ごう、海人あま社しゃ、2003年ねん7月がつ。 NAID 40005855317。 
• 徳永とくなが陽一郎よういちろう; 大塚おおつか至いたる毅あつし『海上保安庁かいじょうほあんちょう 船せん艇ていと航空こうくう』成山なりやま堂どう書店しょてん〈交通こうつうブックス〉、1995年ねん。ISBN 4-425-77041-2。 
• 中名生なかのみょう正ただし己おのれ「巡視じゅんし船せん 武装ぶそうの歩あゆみ(下した)」『世界せかいの艦船かんせん』第だい825号ごう、海人あま社しゃ、168-173頁ぺーじ、2015年ねん11月。 NAID 40020597434。 
• 森もり仁ひとし; 真山まやま良文よしふみ 編へん『北きたの巡視じゅんし船せん　－釧路くしろの海上かいじょう保安ほあん船せん艇てい－』釧路くしろ綜合そうごう印刷いんさつ、1978年ねん。国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんサーチ：R100000001-I108294082-00。