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アダムの言語げんご

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アダムの言語げんご (えい:Adamic language) とは、ユダヤ教徒きょうと (ミドラーシュ記録きろくされているように) といくらかのキリスト教徒きりすときょうとによれば、アダム (とおそらくイヴ) によってエデンのえんはなされていたとされる言語げんごである。これはかみがアダムと交信こうしんするために使用しようした言語げんご (かみ言語げんご en:divine language) とも、創世そうせい2:19にあるようにアダムが (イヴをふくむ) 万物ばんぶつ命名めいめいするのに発明はつめいした言語げんごとも、さまざまに説明せつめいされる。

中世ちゅうせい

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ミドラーシュなどの伝統でんとうてきユダヤの注釈ちゅうしゃくでは、アダムはヘブライはなしていたとされる。なぜならかれがイヴにあたえた名前なまえ"Isha" (創世そうせい 2:23) と "Chava" (創世そうせい 3:20) はヘブライでしか意味いみをなさないからである。一方いっぽうカバラ主義しゅぎでは、ヘブライかれたトーラーと同一どういつではない「永遠えいえんのトーラー」を想定そうていした。こうして13世紀せいきのアブラフィア (en:Abulafia) は、楽園らくえんはなされていた言語げんごはヘブライことなると推定すいていし、キリスト教徒きりすときょうと著述ちょじゅつにもひろまっていた、言語げんごてき刺激しげきにさらされなかったどもは自動的じどうてきにヘブライはなす、という主張しゅちょう退しりぞけた[1]

エーコ (1993) によれば、創世そうせいでは言語げんご混乱こんらん (創世そうせい 11:1-9) までアダムの言語げんごがアダムの子孫しそんによって保存ほぞんされていたか、それともバベル以前いぜん (創世そうせい 10:5) でさえ自然しぜん発展はってんしていったのかどうか、曖昧あいまいである[2]

ダンテは『俗語ぞくごろん』でこの話題わだいについてべた。かれ議論ぎろんでは、アダムの言語げんごかみてき起源きげんをもつので変化へんかしない[3]かれはまた、創世そうせいによれば最初さいしょ発話はつわ行動こうどうへびはなしかけたイヴによるもので、アダムによるものではない[4]

しかしかれかみきょくで、ダンテはかんがえをあらためてアダムの言語げんごはアダムの産物さんぶつとしてあつかった[5]。これはすでにアダムの言語げんご不変ふへんものとみなされないことの結果けっかで、そしてヘブライ楽園らくえん言語げんご同一どういつなすことができなくなった。 ダンテの結論けつろん (Paradiso XXVI) では、ヘブライはアダムの言語げんご派生はせいである。とくに、学問がくもんてき伝統でんとうでのかみ主要しゅようであるエルは、ことなるアダムの言語げんごかみから派生はせいしたもののはずであり、ダンテはそれをIとした[6]

近世きんせい

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エリザベスあさ学者がくしゃジョン・ディーは、自身じしん霊媒れいばいエドワード・ケリー個人こじん日誌にっし記録きろくしたオカルト言語げんごまたは天使てんしについて、記述きじゅつしている。ディーの日誌にっしではこの言語げんごエノクとのべたことはなく、そのわりに「天使てんしてき (Angelical)」「天空てんくう言葉ことば (Celestial Speech) 」「天使てんしたちの言語げんご (Language of Angels)」「かみ-キリストの最初さいしょ言語げんご」「神聖しんせい言語げんご (Holy Language) 」「アダムてき (Adamical)」と言及げんきゅうした。なぜならディーの天使てんしによれば、これはアダムが万物ばんぶつづけるため使用しようした言語げんごだからである。この言語げんごのちにエノク名付なづけられたのは、ディーの主張しゅちょうによれば(ディーとケリー以前いぜんで)聖書せいしょ族長ぞくちょうエノクがこの言語げんごっていた最後さいご人間にんげんだったからである。

近代きんだい

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末日まつじつ聖徒せいと運動うんどう

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末日まつじつ聖徒せいと運動うんどう (通称つうしょうモルモンきょう) の創設そうせつしゃジョセフ・スミス・ジュニアは、ジョセフ・スミスやく聖書せいしょ (en:Joseph Smith Translation of the Bible) (霊感れいかんやく "Inspired Version" とも、どうだいRLDS により出版しゅっぱん) で、アダムの言語げんごは「純粋じゅんすいよごされていなかった」と主張しゅちょうする[7]末日まつじつ聖徒せいと en:Latter-day Saints (LDS またはモルモン教徒きょうと)のいくにんかはかみ言語げんごであったとしんじる[8]

ブリガム・ヤング[9]や オーソン・プラット (en:Orson Pratt)[10] やエリザベス・アン・ホイットニー (en:Elizabeth Ann Whitney)[11] といった初期しょきのモルモン教徒きょうと指導しどうしゃいくにんかは、啓示けいじによってアダムの言語げんごのいくつかの単語たんごったと主張しゅちょうした。モルモン教徒きょうとのなかには、アダムの言語げんごゼファニヤ[12]によってはなされ世界せかい終末しゅうまつには人類じんるい普遍ふへん言語げんごとして回復かいふくされるだろう「純粋じゅんすい言語げんご」だとしんじるひともいる。[13][14][15]

モルモンきょう使徒しと (en:Apostle (LDS Church)) であるオルソン・プラットは、ミズーリしゅうデイビースぐん入植にゅうしょく「アダム・オンディ・アーマン」(en:Adam-ondi-Ahman) の一部いちぶの "Ahman" はアダムの言語げんごでのかみであったと言明げんめいした[10]en:Joseph Smith Papers からの1832ねん手書てがきの「純粋じゅんすい言語げんごいちれい」(A Sample of the Pure Language) とだいされたページは、つたえられるところによればスミスによって "Br. Johnson" に口述こうじゅつ筆記ひっきさせたものだが、かみAwmenべている[16]

モルモンきょうのエンダウメント (en:Endowment (Latter Day Saints)) の en:prayer circle で、 "Pay Lay Ale",[17]という単語たんご使用しようふくんだこともあり、この単語たんごは「ああかみよ、くち言葉ことばけ」[18]意味いみだとしんじる信者しんじゃもいる。翻訳ほんやくされない単語たんごはすでに寺院じいん (en:Temple (LDS Church)) の儀式ぎしき (オーディナンス、en:Ordinance (Latter Day Saints)) で英語えいごばんえられている[19]。 "Pay Lay Ale" のぶんはヘブライのフレーズ "pe le-El", פה לאל '(くちからかみへ)から派生はせいしたとかんがえる[19]

モルモン教徒きょうといくにんかがアダムの言語げんごから派生はせいしたとかんがえる単語たんごには、「デゼレト」(en:Deseret (Book of Mormon)) ("ミツバチ"、 エテルしょ (en:Book of Ether) 2:3参照さんしょう)や Ahman (かみ) がある。[不適切ふてきせつ合成ごうせい?]

高価こうか真珠しんじゅ」(en:Pearl of Great Price (Mormonism)) のジョセフ・スミスやく聖書せいしょのモーセしょふくふしで、アダムの言語げんごかれた「おぼえのしょ」に言及げんきゅうしている[20]

科学かがくてき発展はってん

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進化しんか言語げんごがく (en:evolutionary linguistics) の分野ぶんやは1988ねん Linguistic Bibliography に、心理しんり言語げんごがくふく分野ぶんやとしてさい出現しゅつげんした。1990ねんスティーブン・ピンカーとポール・ブルーム (en:Paul Bloom (psychologist)) は「自然しぜん言語げんご自然しぜん選択せんたく」 "Natural Language & Natural Selection"[21]という論文ろんぶん発表はっぴょうし、そのなかつよ言語げんご起源きげんへの適応てきおう主義しゅぎてきアプローチをろんじている。進化しんか言語げんごがくへの興味きょうみ復活ふっかつかれらの論文ろんぶんのおかげだとしばしばみなされている。この発展はってんは (1996ねんの) 言語げんご進化しんか (現在げんざいは "Evolang" としてられる) についての一連いちれん会合かいごうによってさらに強化きょうかされ、この問題もんだいたいする科学かがくてき学際がくさいてきなアプローチと、大手おおて学術がくじゅつ出版しゅっぱんしゃ (れい:2001ねんよりオックスフォおっくすふぉド大学どだいがく出版しゅっぱんきょく出版しゅっぱんStudies in the Evolution of Language シリーズ) や科学かがく雑誌ざっし興味きょうみ促進そくしんした。

関連かんれん項目こうもく

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ちゅう

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  1. ^ Eco (1993), p. 32 f.
  2. ^ Eco (1993), 7-10.
  3. ^ Mazzocco, p. 159
  4. ^ mulierem invenitur ante omnes fuisse locutam. Eco (1993), p. 50.
  5. ^ Mazzocco, p. 170
  6. ^ Paradiso 26.133f.; Mazzocco, p. 178f.
  7. ^ en:Book of Moses 6:6.
  8. ^ John S. Robertson, "Adamic Language", in en:Encyclopedia of Mormonism (New York: Macmillan) 1:18–19.
  9. ^ Brigham Young, "History of Brigham Young", en:Millennial Star, vol. 25, no. 28, p. 439 (1863-07-11), cited in History of the Church 1:297, footnote (Young prays in the Adamic tongue).
  10. ^ a b en:Journal of Discourses 2:342 (God = "Ahman"; Son of God = "Son Ahman"; Men = "Sons Ahman"; Angel = "Anglo-man").
  11. ^ en:Woman's Exponent 7:83 (1 November 1878) (Whitney sings a hymn in the Adamic tongue).
  12. ^ ゼファニヤ 3:9
  13. ^ en:Oliver Cowdery, "The Prophecy of Zephaniah", en:Evening and Morning Star, vol. 2, no. 18, p. 142 (March 1834).
  14. ^ en:Bruce R. McConkie (1966, 2d ed.). en:Mormon Doctrine (Salt Lake City, Utah: Bookcraft) p. 19.
  15. ^ エズラ・タフト・ベンソン (1988). Teachings of Ezra Taft Benson (Salt Lake City, Utah: Bookcraft) p. 93.
  16. ^ "Sample of the Pure Language" ca. March 1832
  17. ^ Steven Naifeh and Gregory White Smith, The Mormon Murders (New York: St. Martins's Press, 1988) ISBN 0-312-93410-6, p. 69. "the sign of the Second Token [is] raising both hands and then lowering them while repeating the incantation "Pay Lay Ale" three times"
  18. ^ Tamra Jean Braithwaite, A Mormon Odyssey (Xlibris Co., 2003) ISBN 1-4134-1878-3, p. 212. "In 1990, several significant portions of the endowment ceremony performed worldwide in Latter-day Saint temples were eliminated" including "the chanting in unison of "Pay Lay Ale, Pay Lay Ale, Pay Lay Ale" (supposedly meaning "Oh God, hear the words of my mouth" in the Adamic language)."
  19. ^ a b "Current Mormon Temple Ceremony Now Available", Salt Lake City Messenger, no. 76, November 1990.
  20. ^ Moses 6:5, 46.
  21. ^ Pinker, Steven; Bloom, Paul (2011). “Natural language and natural selection”. Behavioral and Brain Sciences 13 (04): 707–727. doi:10.1017/S0140525X00081061. ISSN 0140-525X.