アブラムシ

アブラムシ上うえ科か
分類ぶんるい
界さかい : 動物界どうぶつかい Animalia 門もん : 節足動物せっそくどうぶつ門もん Arthropoda 綱つな : 昆虫こんちゅう綱つな Insecta 亜あ綱つな : 有ゆう翅亜綱つな Pterygota 目め : カメムシ目め（半はん翅目） Hemiptera 亜あ目め : 腹はら吻亜目め Sternorrhyncha 上うえ科か : アブラムシ上うえ科か Aphidoidea
科か
アブラムシ科か Aphididae カサアブラムシ科か Adelgidae ネアブラムシ科か Phylloxeridae

ユキヤナギに寄生きせいするアブラムシ

ミカンミドリアブラムシとトビイロケアリの共生きょうせい

アブラムシ（油虫あぶらむし）は、カメムシ目め（半はん翅目）のアブラムシ上うえ科か（Aphidoidea）に属ぞくする昆虫こんちゅうの総称そうしょうである。アリマキ（蟻あり牧まき）とも呼よぶ。

植物しょくぶつの上うえでほとんど移動いどうせず、集団しゅうだんで維管束たばに口くち針はりを突つき刺さして師し管かん液えきを吸すって生活せいかつする、小型こがたで弱々よわよわしい昆虫こんちゅうと言いわれる。アリと共生きょうせいし、分泌ぶんぴつ物ぶつを与あたえるかわりに天敵てんてきから守まもってもらう習性しゅうせいや、単たん為ため生殖せいしょくによっても増ふえ真ま社会しゃかい性せいを持もつことなどから、生態せいたいや進化しんかの研究けんきゅうのモデル昆虫こんちゅうともなっている。

生物せいぶつ的てき特徴とくちょう

植物しょくぶつの師し管かん液えきを吸すう。体からだは太ふとく短みじかくて軟やわらかく、他たのヨコバイ亜あ目めの昆虫こんちゅうのように飛とんだり跳躍ちょうやくしたりすることはない。膜まく状じょうの小ちいさな翅を持もつ個体こたいはふわりふわりと飛とぶ事ことができるが、ごく限かぎられた時期じきに出現しゅつげんするだけで、それ以外いがいの期間きかんは翅を持もたず宿主しゅくしゅ植物しょくぶつ上じょうでじっと汁しるを吸すっている。

春はるから夏なつにかけてはX染色せんしょく体たいを2本ほん持もつ雌めすが卵たまご胎生たいせい単たん為ため生殖せいしょくにより、自分じぶんと全まったく同どうじ、しかも既すでに胎内たいないに子こを宿やどしている雌めすを産うむ。これにより短期間たんきかんで爆発ばくはつ的てきにその数かずを増ふやし、宿主しゅくしゅ上じょうに大おおきなコロニーを形成けいせいする。秋あきから冬ふゆにかけてはX0型がた、つまりX染色せんしょく体たいの一本いっぽん欠かけた雄ゆうが発生はっせいし、卵生らんせい有性ゆうせい生殖せいしょくを行おこなう。卵たまごは寒さむい冬ふゆを越こし、暖あたたかくなってから孵化ふかする。このとき生うまれるのは全すべて雌めすである。南方なんぽう系けいの種たねには広域こういき移動いどうを行おこなうものも知しられ、主おもに4月から6月がつに東南とうなんアジア方面ほうめんから気流きりゅうに乗のって飛来ひらいし野菜やさい・果樹かじゅ新芽しんめの茎くき上じょうや葉はの表面ひょうめん・裏面りめんに現あらわれ始はじめ、9月から11月には野菜やさい・果樹かじゅから移動いどうし、その後ご、越冬えっとうせずに死滅しめつする。

アブラムシは外そと殻からが柔やわらかく、集団しゅうだんで生活せいかつしているので、これを捕食ほしょくする動物どうぶつは数多かずおおい。特とくに代表だいひょう的てきな天敵てんてきは、ナナホシテントウ、ナミテントウなどのテントウムシ類るいと、クサカゲロウ、ヒラタアブの幼虫ようちゅうである。またくちばしが極きわめて小ちいさい小鳥ことりであるエナガもアブラムシを好このんで捕食ほしょくする。

自身じしんの防御ぼうぎょ力りょくが弱よわいアブラムシ類るいには、アリに外敵がいてきから守まもってもらう種たねがあり、これがアブラムシがアリマキと呼よばれる所以ゆえんになっている。食物しょくもつである師し管かん液えきには大量たいりょうの糖分とうぶんが含ふくまれ、甘露かんろと呼よばれる肛門こうもんからの排泄はいせつ物ぶつには余剰よじょうな糖分とうぶんが多おおく含ふくまれるため、アリ達いたるはこの甘露かんろを求もとめて集あつまってくる。中なかには、はっきりとアリとの共生きょうせい関係かんけいを持もち、アリに守まもられて暮くらすものもある。また、アブラムシの中なかには1齢よわい幼虫ようちゅうと2齢よわい幼虫ようちゅうの一部いちぶが兵隊へいたいアブラムシに分化ぶんかして積極せっきょく的てきに外敵がいてきに攻撃こうげきする真ま社会しゃかい性せいのものもいる。この幼虫ようちゅうは成長せいちょうせずに死しぬ。虫むし癭を形成けいせいするものでは、排出はいしゅつされた甘露かんろを幼虫ようちゅうが虫むしえい外がいに押おしだして「掃除そうじ」を行おこなうなどの社会しゃかい性せいが見みられる。

体内たいないでブフネラという大腸菌だいちょうきん近きん縁えんの細菌さいきんと共生きょうせいしており、ブフネラは師し管かん液えきからアブラムシにとって必要ひつような栄養分えいようぶんを合成ごうせいしている。アブラムシはブフネラの生育せいいくのために特とく化かした細胞さいぼうを提供ていきょうしており、ブフネラは親おやから子こへと受うけ継つがれる。ブフネラはアブラムシの体外たいがいでは生存せいぞんできず、アブラムシもブフネラ無なしでは生存せいぞん不可能ふかのうである。またアブラムシは、ブフネラとは別べつの細菌さいきんから遺伝子いでんしを獲得かくとくし、その獲得かくとくした遺伝子いでんしを利用りようしてブフネラを制御せいぎょしていることが、理化学研究所りかがくけんきゅうしょの研究けんきゅうにより判明はんめいした。

2014年ねんに豊橋技術科学大学とよはしぎじゅつかがくだいがくの中鉢ちゅうばち淳あつしが、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの科学かがく誌し『カレントバイオロジー』で発表はっぴょうした論文ろんぶんでも、アブラムシは体内たいない細菌さいきんから遺伝子いでんしを譲ゆずり受うけてアブラムシの細胞さいぼう中ちゅうで細菌さいきんに必要ひつようなタンパク質たんぱくしつを合成ごうせいし、それを細菌さいきん側がわへ戻もどす共生きょうせい関係かんけいを認みとめた。10億おく年ねん以上いじょうも前まえに、古代こだい細菌さいきんが単細胞たんさいぼう生物せいぶつに取とり込こまれてミトコンドリアや光合成こうごうせい葉は緑みどり体たいなどの器官きかんとなったが、アブラムシの体内たいないでも同様どうようの進化しんかが起おきている可能かのう性せいがある。 　

防除ぼうじょ法ほう

アブラムシを放置ほうちすると、農作物のうさくもつがウイルス病びょうにかかってしまい、作物さくもつに甚大じんだいな被害ひがいを与あたえる農業のうぎょう害虫がいちゅうなので、見みつけ次第しだい速すみやかに駆除くじょする。有機ゆうきリン系けい（マラチオン、フェニトロチオン、アセフェート等ひとし）、合成ごうせいピレスロイド系けい（ピレトリン等とう）、ネオニコチノイド系けい（アセタミプリド等ひとし）など、多おおくの殺虫さっちゅう剤ざいが有効ゆうこうである。しかし、最近さいきんの研究けんきゅう結果けっかでは、特とくに有機ゆうきリン系けいや合成ごうせいピレスロイド系けいに対たいし、高たかい薬剤やくざい抵抗ていこう性せいを持もつ傾向けいこうが顕著けんちょであるとの報告ほうこくが多数たすうある。

アブラムシは薬剤やくざい抵抗ていこう性せいを持もちやすいので、同一どういつの殺虫さっちゅう剤ざいの散布さんぷを長期間ちょうきかん繰くり返かえすよりも、2-3種しゅの系統けいとうの違ちがうものを定期ていき的てきに散布さんぷしていく「ローテーション散布さんぷ」が推奨すいしょうされている。また、最新さいしんの防除ぼうじょ法ほうとして、アブラムシを捕食ほしょくあるいは、アブラムシに寄生きせいする、寄生きせいバチ類るい、テントウムシ類るい、ヒラタアブ類るいなどの天敵てんてき類るいを利用りようした生物せいぶつ的てき防除ぼうじょが、ハウス栽培さいばい野菜やさいを中心ちゅうしんに実施じっしされつつある。但ただし、天敵てんてき類るいの多おおくは薬剤やくざいに対たいして抵抗ていこう性せいを持もたないため、農薬のうやくとの併用へいようによる総合そうごう的てき病害虫びょうがいちゅう管理かんり (IPM) を行おこなう際さいには留意りゅういする必要ひつようがある。

また、葉はを巻まいてその中なかに潜ひそむ種類しゅるいや、はっきりした虫むし癭を形成けいせいするものもある。このようなものは、虫むし体たいに殺虫さっちゅう剤ざいが接触せっしょくしにくいので、浸透しんとう移行いこう性せいのある殺虫さっちゅう剤ざいが効果こうか的てきである。

化学かがく薬品やくひんを使用しようせずに駆除くじょする場合ばあい、脂肪しぼう分ぶんの多おおい牛乳ぎゅうにゅうを水みずで1対たい1に割わったものを霧吹きりふきで散布さんぷすると、牛乳ぎゅうにゅうが乾燥かんそうするときにアブラムシの気き門もんを塞ふさいで窒息ちっそく死しさせるので、アブラムシが少数しょうすうのときは有効ゆうこうである。同おなじ原理げんりを利用りようし、機械きかい油ゆ（マシン油ゆ）や、濃度のうど調整ちょうせいしたでんぷんや食用しょくよう油脂ゆしを主成分しゅせいぶんとしたものが、農薬のうやくとして商品しょうひん化かされている。鉢はちごと袋ぶくろをかぶせ、蚊取線香かとりせんこうで1時じ間あいだほど燻いぶして防除ぼうじょする方法ほうほうもある。

鉢植はちうえなど園芸えんげい分野ぶんやでは、見みつけ次第しだい指先ゆびさきで念入ねんいりにすり潰つぶすことが簡単かんたんかつ最もっとも効果こうか的てきで、霧吹きりふきをジェットにして吹ふき飛とばす事ことも有効ゆうこう。

分類ぶんるい

• アブラムシ科か Aphididae
  • Aphis属ぞく　ワタアブラムシ、タンポポアブラムシ
  • Macchiatiella属ぞく　イタドリオマルアブラムシ
  • Prociphilus属ぞく　トドノネオオワタムシ
  • Uroleucon属ぞく　セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ

• カサアブラムシ科か Adelgidae
• ネアブラムシ科か Phylloxeridae

参考さんこう文献ぶんけん

• 浅間あさま茂しげる・石井いしい規雄のりお・松本まつもと嘉幸よしゆき 『改訂かいてい 校庭こうていのクモ・ダニ・アブラムシ』 全国ぜんこく農村のうそん教育きょういく協会きょうかい〈野外やがい観察かんさつハンドブック〉、2002年ねん、ISBN 4-88137-084-7。

関連かんれん項目こうもく

• 社会しゃかい性せい昆虫こんちゅう
• 微小びしょう昆虫こんちゅう
• 単たん為ため生殖せいしょく
• 害虫がいちゅうの一覧いちらん
• 農業のうぎょう害虫がいちゅう
• プラムポックスウイルス
• カリフラワーモザイクウイルス

外部がいぶリンク

• アブラムシ類るい - 有田ありたみかんデータベース