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ウイルス定量 - Wikipedia コンテンツにスキップ

ウイルス定量ていりょう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ウイルスの定量ていりょうは、ウイルス濃度のうど測定そくていするために特定とくてい容量ようりょうないウイルスかずかぞえること。産業さんぎょう学術がくじゅつなどでの研究けんきゅう開発かいはつ(R&D)のみならず、製造せいぞうでもさまざまな工程こうていにおいてウイルスのりょう重要じゅうようになることから必要ひつようになる。たとえば、ウイルスワクチンや、ウイルスベクターを使用しようしたくみタンパク質たんぱくしつ、ウイルス抗原こうげん生産せいさんでは、生産せいさん収量しゅうりょう最適さいてきし、つね変化へんかする需要じゅよう用途ようと対応たいおうするため、プロセスを継続けいぞくてき適応てきおうかんする目的もくてきでウイルス定量ていりょう必要ひつようとする。既知きちのウイルスを定量ていりょうする必要ひつようがあるれいとして、クローンスクリーニング、感染かんせん多重たじゅう(MOI)の最適さいてき細胞さいぼう培養ばいようほう改良かいりょうなどがある。このこうでは、液体えきたいサンプルちゅうのウイルスを定量ていりょうするために現在げんざい使用しようされているさまざまな手法しゅほうについて説明せつめいする。手法しゅほう従来じゅうらい手法しゅほう最新さいしん手法しゅほうの2つのカテゴリにけられる。従来じゅうらい手法しゅほうは、なんじゅうねんにもわたって使用しようされてきた業界ぎょうかい標準ひょうじゅん手法しゅほうであるが、一般いっぱんてき時間じかんがかかり、労力ろうりょく必要ひつようとする。最新さいしん手法しゅほうは、定量ていりょう時間じかん大幅おおはば短縮たんしゅくする比較的ひかくてきあたらしい市販しはん製品せいひんやキットである。ただし、すべての手法しゅほう網羅もうらてきなレビューではなく、従来じゅうらい手法しゅほうあたらしい市販しはん手法しゅほう代表だいひょうれいしめす。ウイルスの定量ていりょうにはほかにも公開こうかいされた方法ほうほう存在そんざいする可能かのうせいがあるが、ここでは商用しょうよう手法しゅほうについては説明せつめいしない。

従来じゅうらいほう

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プラークアッセイ

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単純たんじゅんヘルペスウイルスのプラーク

プラークベースのアッセイは、感染かんせんりょうからウイルス濃度のうど測定そくていする標準ひょうじゅんてき方法ほうほうである。プラークアッセイは、ウイルスりょうの1つの尺度しゃくどであるウイルスサンプルちゅうのプラーク形成けいせい単位たんい(pfu)のかず測定そくていする。この測定そくていほうは、ペトリさらまたはマルチウェルプレートで実施じっしされる微生物びせいぶつがくてき手法しゅほうであり、具体ぐたいてきには、コンフルエントなたんそう宿主しゅくしゅ細胞さいぼうに、さまざまな希釈きしゃくりつでウイルスを感染かんせんさせ、寒天かんてんカルボキシメチルセルロースなどのはん固体こたい培地ばいちおおって、ウイルス感染かんせん際限さいげんなくひろがるのをふせぐ。ウイルスプラークは、ウイルスが固定こてい細胞さいぼうたんそうない細胞さいぼう感染かんせんすると形成けいせいされる[1]。ウイルスに感染かんせんした細胞さいぼう溶解ようかいし、隣接りんせつする細胞さいぼう感染かんせんひろげ、感染かんせんから溶解ようかいまでのサイクルがかえされる。感染かんせんした細胞さいぼう領域りょういきは、光学こうがく顕微鏡けんびきょうまたは視覚しかくてきることができるプラーク(感染かんせんしていない細胞さいぼうかこまれた感染かんせん領域りょういき)を形成けいせいする。操作そうさ具体ぐたいれいとしては、重層じゅうそうした培地ばいちあらながし、細胞さいぼうしつ着色ちゃくしょくするまでクリスタルバイオレット溶液ようえき添加てんかし15分間ふんかんしずかおけする。余分よぶん染色せんしょくえきみずしずかにのぞくと、んだ細胞さいぼう位置いち着色ちゃくしょくしめされる[2]。プラークの形成けいせいには、分析ぶんせきするウイルスによってことなるが、3〜14にちかかる場合ばあいがある。プラークは通常つうじょう手動しゅどうでカウントされ、その結果けっかは、プレートの調製ちょうせい使用しようされた希釈きしゃく倍率ばいりつじょうじてサンプル単位たんい体積たいせきあたりのプラーク形成けいせい単位たんいかず(pfu/mL)を計算けいさんする。 pfu/mLの結果けっかは、サンプルない感染かんせんせい粒子りゅうしかずあらわし、形成けいせいされたかくプラークが1つの感染かんせんせいウイルス粒子りゅうしあらわすという仮定かていもとづいたかずである[3][4]

フォーカス形成けいせいアッセイ(FFA)

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ロタウイルスに感染かんせんした細胞さいぼううえ)と感染かんせんしていない細胞さいぼうした

フォーカス形成けいせいアッセイ(FFA)はプラークアッセイの一部いちぶであるが、FFAはウイルス抗原こうげん特異とくいてき蛍光けいこう標識ひょうしき抗体こうたい使用しようして、感染かんせんした宿主しゅくしゅ細胞さいぼうとプラークが形成けいせいされるまえ感染かんせんウイルス粒子りゅうし検出けんしゅつする免疫めんえき染色せんしょく技術ぎじゅつもちいる。 FFAは、プラーク形成けいせいことなり細胞さいぼう溶解ようかい必要ひつようとしないことから、細胞さいぼうまく溶解ようかいしないプラークアッセイにてきさないウイルスしゅ定量ていりょうとくもちいられる。プラークアッセイと同様どうように、たんそう宿主しゅくしゅ細胞さいぼう段階だんかい希釈きしゃくしたウイルスサンプルを感染かんせんさせ、感染かんせんせいウイルスの拡散かくさん制限せいげんするはん固体こたい重層じゅうそう培地ばいちした比較的ひかくてきみじか培養ばいよう時間じかん(24〜72あいだなど)インキュベートし、局所きょくしょてき感染かんせん細胞さいぼうのクラスター(フォーカス、病巣びょうそう)を形成けいせいする。つづいてプレートをウイルス抗原こうげんたいする蛍光けいこう標識ひょうしき抗体こうたい染色せんしょくし、蛍光けいこう顕微鏡けんびきょう使用しようしてフォーカスのかずかぞえ、定量ていりょうする。 FFAほうでは、通常つうじょう、プラークや50%組織そしき培養ばいよう感染かんせんりょう(TCID50)アッセイよりも短時間たんじかん結果けっかられるが、必要ひつよう試薬しやく機器ききてん高価こうかになることがある。測定そくてい時間じかんは、測定そくていしゃかぞえる領域りょういきのサイズにも依存いぞんする。よりおおきな領域りょういきはよりおおくの時間じかん必要ひつようとするが、より正確せいかくとなる。 FFAの結果けっかは、ミリリットルあたりのフォーカス形成けいせい単位たんい(FFU/mL)としてあらわされる。

限界げんかい希釈きしゃくほう

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50%組織そしき培養ばいよう感染かんせんりょう(50% Tissue Culture Infective Dose: TCID50)は、感染かんせんせいのウイルスちから尺度しゃくどである。TCID50接種せっしゅされた組織そしき培養ばいよう細胞さいぼうの50%をころす、あるいは細胞さいぼう変性へんせい効果こうかむのに必要ひつようなウイルスのりょう定量ていりょうする。TCID50臨床りんしょう研究けんきゅうなどにおいてウイルスの致死ちしりょう決定けっていする必要ひつようがある場合ばあいや、ウイルスがプラークを形成けいせいしない場合ばあいによくもちいられる。組織そしき培養ばいようでの操作そうされいとして、宿主しゅくしゅ細胞さいぼう播種はしゅし、段階だんかい希釈きしゃくしたウイルスを添加てんか培養ばいよう死滅しめつした細胞さいぼう感染かんせん細胞さいぼう)の割合わりあい手動しゅどう観察かんさつする。かくウイルス希釈きしゃくでの割合わりあい記録きろくし、結果けっかから数学すうがくてきにTCID50計算けいさんする[5]測定そくてい方法ほうほう測定そくてい原理げんりちがいから、TCID50やPFU/ml、感染かんせんせいアッセイの結果けっか等価とうかではない。この手法しゅほうは、細胞さいぼう感染かんせん必要ひつようであり、最大さいだい1週間しゅうかんかかる場合ばあいがある[6]

TCID50計算けいさんには、一般いっぱんてき以下いかの2つの計算けいさん方法ほうほう使用しようされる(EC50IC50LD50などのほかのタイプの50%エンドポイントの計算けいさんにも使用しようされる)

数学すうがくてきには、TCID50陰性いんせいだったウェルは0のプラーク形成けいせい単位たんいあらわし、陽性ようせいだったウェルはそれぞれ1個いっこ以上いじょうのプラーク形成けいせい単位たんいあらわすので、予想よそうされるPFUはTCID50の2ぶんの1よりも若干じゃっかんおおきくなる。ポアソン分布ぶんぷもとづくと、より正確せいかく推定すいていられ、やく0.69 PFU = 1 TCID50である[8]。ポアソン分布ぶんぷは、一定いってい空間くうかんにおいて、既知きち平均へいきん発生はっせいかくりつ発生はっせいするランダムなイベントの発生はっせい回数かいすうあらわかくりつ分布ぶんぷである。観測かんそくされた陰性いんせいのウェルは感染かんせんイベントが0かい発生はっせいしたとみなされることから、P(0)は陰性いんせいのウェルの比率ひりつであり、mは体積たいせきあたりの感染かんせん単位たんい平均へいきんすう(PFU/ml)であることから、P(0) = e-mである。TCID50としてあらわされるちから場合ばあい、P(0) = 0.5であるから、e-m = 0.5、すなわちm = -ln 0.5であり、これはやく0.69と計算けいさんされる。ただし、実際じっさいには、この関係かんけいおなじウイルスと細胞さいぼうわせでもてはまらないことがある。これは、2種類しゅるい測定そくていほう測定そくてい条件じょうけんことなることや、ウイルスの感染かんせんりょく細胞さいぼう年齢ねんれい重層じゅうそう培地ばいちとう非常ひじょう影響えいきょうけやすいことによる。しかし、つぎ文献ぶんけんでは、この関係かんけいことなるかたち定義ていぎしている。おな細胞さいぼうけい使用しようし、ウイルスがそれらの細胞さいぼうじょうでプラークを形成けいせいし、プラーク形成けいせい阻害そがいするような処置しょちくわえないと仮定かていすると、1 mlのウイルスストックはTCID50やく半分はんぶんかずのプラーク形成けいせい単位たんい(PFU)をつことが予想よそうされる。これは推定すいていぎないが、添加てんかした細胞さいぼうそうの50%に感染かんせんする限界げんかい希釈きしゃくえきでは、感染かんせんした細胞さいぼうそう最初さいしょに1つのプラークができると予想よそうされることがおおいという根拠こんきょもとづいている。場合ばあいによっては、偶然ぐうぜんにも2つ以上いじょうのプラークが形成けいせいされることもあるので、実際じっさいのPFUすう実験じっけんてき決定けっていされるべきである。(ATCC - Converting TCID50 to plaque forming units PFU-124参照さんしょう)

タンパク質たんぱくしつ定量ていりょう

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タンパク質たんぱくしつベースのウイルス定量ていりょうほうにはいくつかの種類しゅるいがある。一般いっぱんに、タンパク質たんぱくしつ定量ていりょうでは、感染かんせんした細胞さいぼうやウイルス粒子りゅうしかずではなく、サンプルちゅうそうタンパク質たんぱくしつりょうか、特定とくていウイルスタンパク質たんぱくしつりょうのいずれかを定量ていりょうする。一般いっぱんてきには蛍光けいこう検出けんしゅつによって定量ていりょうすることがもっとおおい。サンプルちゅうタンパク質たんぱくしつ直接ちょくせつ定量ていりょうする方法ほうほうもあるが、タンパク質たんぱくしつ定量ていりょうまえ宿主しゅくしゅ細胞さいぼう感染かんせんさせ、培養ばいようしてウイルスの増殖ぞうしょくする場合ばあいもある。サンプルちゅうタンパク質たんぱくしつ(すなわちウイルス)のりょう測定そくていほう自体じたい感度かんどおうじて使用しようする測定そくていほうえらばれる。ウイルスの増幅ぞうふく必要ひつよう場合ばあい分析ぶんせきまえ細胞さいぼうやウイルスの溶解ようかい分解ぶんかいおこなわれることがおおい。ほとんどのタンパク質たんぱくしつベースの測定そくていほう比較的ひかくてき迅速じんそく感度かんどたかいが、正確せいかく定量ていりょうには標準ひょうじゅんひん必要ひつようとし、実際じっさいのウイルス粒子りゅうし濃度のうどではなくタンパク質たんぱくしつ定量ていりょうしている。以下いかは、ひろ使用しようされているタンパク質たんぱくしつベースの定量ていりょうほう具体ぐたいれいである。

血球けっきゅう凝集ぎょうしゅうアッセイ

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血球けっきゅう凝集ぎょうしゅうアッセイ(HA)は、インフルエンザウイルスの定量ていりょう代表だいひょうされる一般いっぱんてき蛍光けいこうタンパク質たんぱくしつ定量ていりょうほうである。インフルエンザウイルスの表面ひょうめんタンパク質たんぱくしつである血球けっきゅう凝集ぎょうしゅうもと赤血球せっけっきゅう凝集ぎょうしゅうさせる反応はんのうにより定量ていりょうしている。この定量ていりょうほうでは、インフルエンザサンプルの希釈きしゃくえきを1%赤血球せっけっきゅう溶液ようえきと1あいだ培養ばいようし、凝集ぎょうしゅう最初さいしょ発生はっせいするウイルス希釈きしゃくえき目視もくし確認かくにんする。この定量ていりょうほう結果けっか赤血球せっけっきゅう凝集ぎょうしゅう単位たんい(hemagglutination units: HAU)のかたちられ、通常つうじょう、PFUにたいする比率ひりつは106範囲はんいである [9] [10]。この定量ていりょうほう測定そくていやく1〜2あいだかかり、測定そくてい結果けっか操作そうさしゃ技術ぎじゅつ経験けいけんによっておおきくことなることがある。

血球けっきゅう凝集ぎょうしゅう阻害そがいアッセイ(HI)は、血清けっせいちゅうのインフルエンザ特異とくいてき抗体こうたい濃度のうど測定そくていによくもちいられるHAアッセイのうちのいち手法しゅほうである。血清けっせいちゅうにインフルエンザウイルスにたいする抗体こうたい十分じゅうぶん濃度のうど存在そんざいする場合ばあい、ウイルスの赤血球せっけっきゅうへの付着ふちゃく妨害ぼうがいされ、血球けっきゅう凝集ぎょうしゅう反応はんのう阻害そがいされることを利用りようした測定そくていほうである[11]

ビシンコニンさんアッセイ

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ビシンコニンさんアッセイ(BCA)は、単純たんじゅんしょく測定そくていによるもっと一般いっぱんてきタンパク質たんぱくしつ定量ていりょう分析ぶんせきほうである。 BCAはLowryほうやBradfordほう類似るいじしており、現在げんざいThermo Fisher ScientificしゃとなっているPierceしゃによって最初さいしょ市販しはんされた。 BCAアッセイでは、タンパク質たんぱくしつのペプチド結合けつごうがCu2+をCu1+定量ていりょうてき還元かんげんし、うす青色あおいろていする。BCAはCu1+を2:1の比率ひりつキレートし、562 nmに吸収きゅうしゅうつよりいろ錯体さくたい形成けいせいする。分光ぶんこう光度こうどけいまたはプレートリーダーで562 nmでの試料しりょう吸光測定そくていし、既知きち標準ひょうじゅん曲線きょくせん比較ひかくすることで、試料しりょうちゅうそうタンパク質たんぱくしつ濃度のうど測定そくていすることができる[12]分析ぶんせき所要しょよう時間じかんは30ふん〜1あいだほどである。この分析ぶんせきほう汎用はんようてき高速こうそくだが、すべてのタンパク質たんぱくしつ定量ていりょうするため特異とくいせいけ、定量ていりょうするウイルス試料しりょうちゅう宿主しゅくしゅ細胞さいぼう由来ゆらいタンパク質たんぱくしつ混入こんにゅう非常ひじょうてい濃度のうどである必要ひつようがある。

一元いちげん放射状ほうしゃじょう免疫めんえき拡散かくさんほう

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一元いちげん放射状ほうしゃじょう免疫めんえき拡散かくさんほう(single radial immunodiffusion method;SRIDほう)は、マンチーニほうともばれ、はん固形こけい培地ばいち寒天かんてんなど)じょうでの拡散かくさんによって特定とくていのウイルス抗原こうげんりょう検出けんしゅつするタンパク質たんぱくしつ定量ていりょう分析ぶんせきである。目的もくてき抗原こうげん特異とくいてきこう血清けっせいふく培地ばいちうえに、抗原こうげんふく円筒えんとうじょうのディスクを中央ちゅうおうく。抗原こうげん培地ばいち放射状ほうしゃじょう拡散かくさんし、平衡へいこうたっするまで成長せいちょうする免疫めんえき沈降ちんこうのリングが形成けいせいされる。測定そくてい時間じかんは、抗原こうげん抗体こうたい平衡へいこう時間じかんおうじて、10あいだから数日すうじつ範囲はんいである。リングの直径ちょっけいは、タンパク質たんぱくしつ濃度のうど対数たいすう直線ちょくせん関係かんけいにあり、定量ていりょうには既知きちタンパク質たんぱくしつ標準ひょうじゅん直径ちょっけい比較ひかくする[13]。いくつかのキットと血清けっせいがこの分析ぶんせきよう市販しはんされている(れい:バインディングサイト株式会社かぶしきがいしゃ)。

透過とうかがた電子でんし顕微鏡けんびきょう

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ポリオウイルスのネガティブ染色せんしょくTEM(バー: 50 nm)
新型しんがたH1N1ビリオンの組織そしきつつみうめ切片せっぺん

透過とうかがた電子でんし顕微鏡けんびきょう(Transmission Electron Microscope; TEM)は、磁場じば集束しゅうそくした電子でんしせんをサンプルにあて画像がぞうする電子でんし顕微鏡けんびきょう一種いっしゅであり、光学こうがく顕微鏡けんびきょうの1000ばい(0.2 nm)の空間くうかん分解能ぶんかいのう[14]きょくうすくしたネガティブ染色せんしょくのサンプルが必要ひつようであり、サンプルの準備じゅんびとして、コーティングしたTEMグリッドとばれる金属きんぞくばんうえへの標本ひょうほんせ、電子でんし透過とうかせい液体えきたいによりネガティブ染色せんしょくおこな[15]組織そしき埋没まいぼつしているサンプルは、うす切片せっぺんすれば検査けんさ可能かのうである。サンプルの準備じゅんびはプロトコルと実験じっけんしゃによってことなるが、通常つうじょう数時間すうじかんかかる。 TEM画像がぞう個々ここのウイルス粒子りゅうし観察かんさつでき、定量ていりょうてき画像がぞう分析ぶんせきによりウイルス濃度のうど測定そくてい可能かのうである。TEMによるこう解像度かいぞうど画像がぞうは、方法ほうほうではむずかしい粒子りゅうし形態けいたい情報じょうほうることができる。感染かんせんりょく有無うむ関係かんけいなく、すべての粒子りゅうしかずを1 mLあたりのウイルスさま粒子りゅうしかず(vlp/mL)として定量ていりょうするため、定量ていりょうてきTEMの結果けっか分析ぶんせき結果けっかよりもおおきくなることがおおい。定量ていりょうてきTEMは一般いっぱんに106粒子りゅうし/mLをえるウイルス濃度のうど適用てきようできる。機器ききのコストがたかく、必要ひつようなスペースとサポート施設しせつ必要ひつようなため、TEMが利用りようできる施設しせつかぎられている。

最新さいしん分析ぶんせきほう

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調整ちょうせい可能かのう抵抗ていこうパルスセンシング(TRPS)

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調整ちょうせい可能かのう抵抗ていこうせいパルスセンシング(Tunable resistive pulse sensing; TRPS)は、個々ここのウイルス粒子りゅうしがサイズ調整ちょうせい可能かのうなナノポアを通過つうかするところを1つずつ測定そくていすることにより、こうスループットの単一たんいつ粒子りゅうし測定そくてい可能かのう測定そくてい技術ぎじゅつである[16]溶液ようえきちゅうのウイルス粒子りゅうしのサイズと濃度のうどこう解像度かいぞうど同時どうじ測定そくていできるという利点りてんがあり、サンプルの安定あんていせい凝集ぎょうしゅうたい評価ひょうかそうウイルス粒子りゅうし濃度のうど(vp/mL)測定そくてい使用しようできる[17]

TRPSの測定そくていはイオンせい緩衝かんしょうえきちゅうおこなわれ、分析ぶんせきまえにサンプルをぜん染色せんしょくする必要ひつようがないため、この手法しゅほう蛍光けいこう色素しきそによるぜん処理しょり必要ひつようとする手法しゅほうよりも迅速じんそくであり、そう調製ちょうせい時間じかん測定そくてい時間じかんはサンプルあたり10ふん以下いかである。TRPSによるウイルス分析ぶんせきはqViro-Xシステムとして市販しはんされており、測定そくていにオートクレーブ処理しょりによるしつかつ可能かのうである。

フローサイトメトリー

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ほとんどのフローサイトメーターはウイルス定量ていりょうには十分じゅうぶん感度かんどたないが、ウイルス定量ていりょう可能かのうなフローサイトメーターはいくつか市販しはんされている。ウイルスカウンターは、とも局在きょくざいするタンパク質たんぱくしつ核酸かくさん蛍光けいこうにより検出けんしゅつすることで、サンプルちゅう完全かんぜんウイルス粒子りゅうしすう定量ていりょうする。サンプルは、タンパク質たんぱくしつ特異とくいてき色素しきそ核酸かくさん特異とくいてき色素しきその2つの色素しきそ染色せんしょくされ、りゅうちゅうながれる粒子りゅうしをレーザーで分析ぶんせきする。ウイルス粒子りゅうし濃度のうど(vp/mL)は、2つのことなる蛍光けいこうチャネルで同時どうじ計測けいそくされた粒子りゅうしすうと、測定そくていされたサンプルの流量りゅうりょうから測定そくていされる[18]結果けっか一般いっぱんてきにTEMとちか結果けっかられる。この分析ぶんせきほうでは105–109 VP/mLでの範囲はんい直線ちょくせんせいがあり、分析ぶんせき時間じかんやく10ふんでサンプル調製ちょうせい時間じかんみじかい。

定量ていりょうポリメラーゼ連鎖れんさ反応はんのう(qPCR)

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定量ていりょうPCR(Quantitative polymerase chain reaction; qPCR)は、ポリメラーゼ連鎖れんさ反応はんのう利用りようしてウイルスDNAまたはRNA増幅ぞうふくし、蛍光けいこうにより検出けんしゅつ定量ていりょうおこな分析ぶんせきほう一般いっぱんに、qPCRでは、未知みちのサンプルと既知きち濃度のうど標準ひょうじゅん段階だんかい希釈きしゃく検量けんりょうせんとして並行へいこうして比較ひかく分析ぶんせきすることで定量ていりょうする。定量ていりょうてき検出けんしゅつは、配列はいれつ特異とくいてきプローブやSYBR Greenなどの非特異ひとくいてき蛍光けいこう色素しきそなど、さまざまな蛍光けいこう検出けんしゅつほうによりおこな[19] 。TaqMan(Applied Biosystemsが開発かいはつ)、Molecular Beacons、またはScorpionなどの配列はいれつ特異とくいてきプローブは、反応はんのうちゅう生成せいせいされた適切てきせつ配列はいれつのDNAにのみ結合けつごう蛍光けいこうはっする。 SYBR Green色素しきそは、反応はんのうちゅう生成せいせいされたすべてのほんくさりDNA[20]結合けつごう蛍光けいこうはっする。SYBR Greenは利用りようしやすいが、特異とくいせいがなく感度かんどひくいため、配列はいれつ特異とくいてきプローブのqPCR検出けんしゅつほう使用しようされることがおおい。内部ないぶ標準ひょうじゅんふく複数ふくすうのサンプルからのCt増幅ぞうふく産物さんぶつ統計とうけいてき有意ゆうい増加ぞうかしめしたPCRサイクルすう)の比較ひかくつうじて相対そうたい定量ていりょうおこな比較ひかくしきいほうなどqPCRにはおおくのバリエーションがある。PCRは、完全かんぜん感染かんせんせいウイルス粒子りゅうしビリオン)、こわれたウイルス粒子りゅうし溶液ようえきちゅう遊離ゆうり核酸かくさんふくむ、すべての標的ひょうてき核酸かくさん増幅ぞうふくする。このため、qPCRの結果けっか(ゲノムコピー/mLであらわされる)は、TEMの結果けっかよりも通常つうじょうおおきなになる。ウイルスの定量ていりょうでは、核酸かくさんのコピーすうたいするビリオンの比率ひりつが1たい1になることはまれである。これは、ウイルス複製ふくせいちゅうに、核酸かくさんとウイルスタンパク質たんぱくしつつねに1:1の比率ひりつ生成せいせいされるとはかぎらず、ウイルスのてプロセスにより、完全かんぜんなビリオン、そらキャプシドや、過剰かじょう遊離ゆうりウイルスゲノムがしょうじることによる。口蹄疫こうていえきウイルスのれいでは、活発かっぱつ複製ふくせいしている宿主しゅくしゅ細胞さいぼうないぜんビリオンとRNAコピーの比率ひりつやく1:1000である[21]。qPCRベースのウイルス定量ていりょうよう製品せいひんは、おおくの企業きぎょうから市販しはんされている(れい:Invitrogen、Roche、Qiagenなど)。 qPCRによる定量ていりょう利点りてんには、迅速じんそく分析ぶんせき時間じかん(1〜4あいだ)と感度かんど方法ほうほうよりもはるかにひく濃度のうどのウイルスを検出けんしゅつできる)などがある。

酵素こうそ免疫めんえき測定そくていほう(ELISA)

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ELISA

ELISAは、酵素こうそ結合けつごうした特定とくてい抗体こうたい利用りようして、サンプルちゅう未知みちりょう抗原こうげん(すなわちウイルス)の存在そんざい検出けんしゅつするタンパク質たんぱくしつ検出けんしゅつほうのより現代げんだいてき手法しゅほうである。サンプルちゅう抗原こうげん濃度のうどおうじて、酵素こうそ試薬しやく検出けんしゅつ可能かのう信号しんごう変換へんかんすることで、抗原こうげん抗体こうたい結合けつごう反応はんのう検出けんしゅつ定量ていりょうする[22]西洋せいようワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、シグナルを増幅ぞうふくし、分析ぶんせきほう感度かんどたかめることができることから、ELISAでよく利用りようされる酵素こうそである。 ELISAほうにはおおくの手法しゅほうがあるが、一般いっぱん直接ちょくせつほう間接かんせつほう競合きょうごうほう、サンドイッチ、ぎゃくELISAほうのいずれかに分類ぶんるいできる[23]。ELISAキットはおおくの企業きぎょうれい:Invitrogen、Santa Cruz Biotechnology Inc.)から市販しはんされており、定量ていりょう一般いっぱんてき発色はっしょくレポーターや蛍光けいこうによる。この手法しゅほうは、従来じゅうらい方法ほうほうよりもはるかに労力ろうりょくがかからず、抗体こうたいのインキュベーション時間じかんおうじ4〜24あいだほどかかる。

参考さんこう文献ぶんけん

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