ウスリー川がわ

ウスリー川がわ
ウスリー川がわ流域りゅういき
延長えんちょう	897 km
平均へいきん流量りゅうりょう	1,150 m³/s
流域りゅういき面積めんせき	193,000 km²
水源すいげん	ロシア沿海えんかい地方ちほう
水源すいげんの標高ひょうこう	1,682 m
河口かこう・合流ごうりゅう先さき	アムール川がわ
流域りゅういき	ロシア 中国ちゅうごく

ウスリー川がわ（ウスリーがわ、ウスリー江こう（ウスリーこう）とも、満まん洲しゅう語ご: ᡠᠰᡠᠷᡞ
ᡠᠯᠠ　転写てんしゃ：usuri ula、中国ちゅうごく語ご:Wūsūlǐ Jīang 乌苏里江さとえ（烏がらす蘇そ里江さとえ）、ロシア語ご:река Уссури）は、ユーラシア大陸たいりくの北東ほくとう部ぶを流ながれる川かわ。アムール川がわの支流しりゅうのひとつ。ロシア沿海えんかい地方ちほう・ハバロフスク地方ちほうと中国ちゅうごく東北とうほく部ぶ吉林きつりん省しょう・黒竜江こくりゅうこう省しょうの国境こっきょうをなす川かわとして重要じゅうよう視しされる。

ロシア沿海えんかい地方ちほうの中央ちゅうおうを貫つらぬくシホテアリニ山脈さんみゃくの雪融ゆきどけ水すいや泉いずみから無数むすうの川かわが発はっし、ウスリー・タイガと呼よばれる松まつや広葉樹こうようじゅ林りんの原生げんせい林りんを西にしに流ながれた後のち、東北とうほくに向むきを変かえて、西側にしがわの完かん達山たつやまという山脈さんみゃくと並行へいこうしながら、次々つぎつぎに支流しりゅうを合あわせながらロシア・中国ちゅうごくの国境こっきょうを流ながれ、ハバロフスクの近ちかくでアムール川がわに合流ごうりゅうする。合流ごうりゅう点てんに中ちゅう露ろの領土りょうど争あらそいの対象たいしょうとなってきた中州なかすである黒くろ瞎子島とう（大だいウスリー島とう）がある。

全長ぜんちょうは約やく897kmあり、流域りゅういき面積めんせきは193,000平方へいほうキロメートルにおよぶ。中国ちゅうごく側がわからの主要しゅような支流しりゅうは2つあり、ひとつは黒龍江こくりゅうこう省しょうと吉林きつりん省しょうの境さかいに発はっし黒龍江こくりゅうこう省しょうを東ひがしへ流ながれ、穆きよし棱市、鶏にわとり西市さいちなどを経へて虎とら林はやし市し付近ふきんで合流ごうりゅうする「穆きよし棱河」で、もうひとつはハンカ湖こ（興きょう凱湖）を源みなもとに国境こっきょうを北きたへ流ながれて合流ごうりゅうする「松まつ阿おもね察河（ソンガチャ河かわ）」である。それ以外いがいのウスリー川がわの支流しりゅうのほとんど（ホール川かわ、アニュイ川がわ、ビキン川がわ、といった大おおきな川かわなど）は、ロシア側がわのシホテアリニ山脈さんみゃくのタイガから流ながれている。

流域りゅういきの氾濫はんらん原ばら、湿地しっちと森林しんりんにはトラ（アムールトラ）、アカハジロ、コウノトリ、コウライアイサ、サカツラガンなどが生息せいそくしており、中国ちゅうごく側がわの珍宝ちんぽう島とう（ダマンスキー島とう）西側にしがわ一帯いったい、虎とら林はやし市しの東方とうほう紅べに湿地しっち付近ふきんおよび下流かりゅう部ぶの三江みえ平原へいげんはラムサール条約じょうやく登録とうろく地ちとなっている。

ウスリー川がわは大おおきな被害ひがいをもたらす洪水こうずいでも有名ゆうめいである。冬ふゆには氷こおりが張はり、11月には氷結ひょうけつして4月がつまで氷こおりは融とけない。またサケ、マス、チョウザメとその他た多おおくの魚さかなが豊富ほうふで漁業ぎょぎょうが盛さかんである。中国ちゅうごくの河川かせんとしては汚染おせんが少すくない川かわであるが、支流しりゅうの黒龍江こくりゅうこう省しょう東部とうぶ付近ふきんの鉱工業こうこうぎょう地帯ちたいの排水はいすいなどが今後こんご心配しんぱいされている。

歴史れきし

古代こだい以来いらい、ウスリー川がわの両りょう岸きしにわたり、ツングース系けいの粛慎・挹婁・勿吉・靺鞨や女おんな真しんといった民族みんぞくが活動かつどうしており、中国ちゅうごく・朝鮮ちょうせんとの間あいだで交易こうえきをするほか戦争せんそうも起おこしていた。

6世紀せいきから9世紀せいきにかけての唐とうの時期じき、勿吉は靺鞨と改称かいしょうし、南みなみの粟あわ末まつ靺鞨と北きたの黒水くろみず靺鞨にわかれ、粟あわ末まつ靺鞨は渤海を建国けんこくしてウスリー川がわ上流じょうりゅうを領土りょうどに納おさめ、黒水くろみず靺鞨はウスリー川がわの東岸とうがんや下流かりゅうで活動かつどうした。黒水くろみず靺鞨は後のちに女おんな真しんとなり、彼かれらの地ちであるウスリー川岸かわぎしを監督かんとくするため、元もと代だいには水みず達たち達たち路ろと阿おもね速はや骨ほね児じ千戸せんど府ふが建設けんせつされた。明あきら代だいには現在げんざいの虎とら林はやし市し虎頭鎮ことうちんの対岸たいがんの現げんロシア側がわに亦また麻あさ河かわ衛まもるを、虎とら林はやし市し虎とら林りん鎮の付近ふきんに失しつ里さと綿めん衛まもるを、饒にょう河かわ県けんの付近ふきんに失しつ児じ兀赤衛まもるを、饒にょう河かわ県けん大だい楞半島はんとうより東ひがしに失しつ木き魯河衛まもるを、撫なで遠どお市しの対岸たいがんの現げんロシア側がわに阿おもね倫りん衛まもる、伏ふく里さと其衛、喜き申さる衛まもるなどを置おき女おんな真しんを監督かんとくした。清きよし代だい初期しょきには寧やすし古こ塔とう副ふく都と統轄とうかつ区くとなり、雍正帝みかどの時代じだいには三さん姓せい副ふく都みやこ統みつる管領かんりょうとなった。

中国人ちゅうごくじんや満州まんしゅう人じんはこの川かわを往来おうらいし、流域りゅういきの諸しょ民族みんぞくやアムール河口かこうの対岸たいがんに住すむアイヌ人じんなどから貢みつぎ納おさめされる毛皮けがわと中国ちゅうごく産品さんぴんとを交換こうかんする取引とりひきを行おこなっていた。また、清きよしの末期まっきになると、流域りゅういきに中国人ちゅうごくじん農民のうみんや朝鮮ちょうせん王朝おうちょうから逃のがれる朝鮮ちょうせん人じん農民のうみんらが入植にゅうしょくをはじめた。1860年ねんの中ちゅう露ろ北京ぺきん条約じょうやく締結ていけつにより、ウスリー川がわの東ひがし（外そと満まん洲しゅう）はロシア領りょうとなり、東岸とうがんはすべてロシア帝国ていこくのプリモルスキー州しゅう（いわゆる沿海州えんかいしゅう、プリモルスキーとは沿岸えんがん部ぶの意味いみ）となった。沿岸えんがんにはウスリー・コサックが置おかれた。

ウスリー川がわ（中国ちゅうごく側がわ）

満州まんしゅう国こく時代じだいはウスリー川がわはソ満まん国境こっきょうの川かわとなり、関東軍かんとうぐんによる国境こっきょうの警備けいびが厳きびしく行おこなわれていた。沿岸えんがん部ぶの平原へいげんには日本人にっぽんじん開拓かいたく団だんが入植にゅうしょくしたほか、関東軍かんとうぐんはウスリー川がわを来きたるべきソ連それんとの戦争せんそうの際さいの防衛ぼうえい線せん、および沿海州えんかいしゅうへの侵攻しんこう拠点きょてんとすべく都市としや鉄道てつどうなどを整備せいびした。

1945年ねん8月がつ、ソ連それん軍ぐんは対たい日にち宣戦せんせん布告ふこくによりウスリー川がわを渡わたり満州まんしゅうへ侵入しんにゅう、関東かんとう軍ぐんおよび満州まんしゅう国こくは崩壊ほうかいした。その後ご成立せいりつした中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくとソ連それんは蜜月みつげつ関係かんけいの時代じだいに盛さかんにウスリー川がわを行いき来きしたが、やがて路線ろせんをめぐり決別けつべつし、ウスリー川がわとアムール川がわの合流ごうりゅう点てんの島々しまじまなどの領有りょうゆう権けんを巡めぐって領土りょうど紛争ふんそうが発生はっせいするようになった。1969年ねんにはウスリー川がわの中州なかす・珍宝ちんぽう島とう（ダマンスキー島とう）をめぐる大だい規模きぼな軍事ぐんじ衝突しょうとつ（中ちゅうソ国境こっきょう紛争ふんそう）が発生はっせいしたが、1991年ねんに中ちゅう露ろ両国りょうこくはほとんどの地域ちいきにおける東部とうぶ国境こっきょうの確定かくてい完了かんりょうを宣言せんげんし、対立たいりつは鎮静ちんせい化かしている。

関連かんれん項目こうもく

• ウスリースク - ウスリー川がわに近ちかい都市とし、ただし流域りゅういきではない。