エコフェミニズム

政治せいじイデオロギー > フェミニズム > エコフェミニズム

エコフェミニズム (ecofeminism) は、エコロジー運動うんどうとフェミニズム運動うんどうの概念がいねんを併あわせ持もった社会しゃかい的てき・経済けいざい的てきな思想しそうや活動かつどうの総称そうしょう。「エコロジカル・フェミニズム」とも呼よばれる。

「エコフェミニズム」は1974年ねん、フランス人じん作家さっか・フェミニストのフランソワーズ・ドボンヌにより提唱ていしょうされた。エコフェミニズムは、「女性じょせいの抑圧よくあつと自然しぜん破壊はかいには関連かんれんがある」と考かんがえる思想しそう・運動うんどうである。

ドボンヌは1974年ねん出版しゅっぱんの『フェミニズムか、死しか (Le Féminisme ou la mort)』において人類じんるいが直面ちょくめんしている危機ききの原因げんいんは人口じんこう過多かたと資源しげん破壊はかいであるとし、男性だんせいによる女性じょせいの支配しはいと自然しぜんの支配しはいは同おなじイデオロギーに基もとづいており、女性じょせいの受胎じゅたい能力のうりょくと大地だいちの肥沃ひよくさの発見はっけんが家父長制かふちょうせいの誕生たんじょうにつながったと論ろんじた。

最近さいきんは、女性じょせいの抑圧よくあつと自然しぜん破壊はかいのみならず、階級かいきゅう支配しはい・人種じんしゅ差別さべつ・動物どうぶつ虐待ぎゃくたいなど多種たしゅ多様たような不平等ふびょうどうも視野しやに入いれてきている。

また特とくにポスト構造こうぞう主義しゅぎの影響えいきょうを受うけ、「女性じょせい」というカテゴリーの本質ほんしつ性せいも問とわれるようになった。現在げんざいは「第だい三さん世界せかいの女性じょせい」「レズビアン女性じょせい」などの視点してんからのエコフェミニズム再考さいこうも行おこなわれている。

代表だいひょう的てきなエコフェミニストには、キャロリン・マーチャント、ヴァンダナ・シヴァ、マリア・ミース、メアリー・メラー、スーザン・グリフィン、カレン・ウォレン、ヴァル・プラムウッドらがいる。日本にっぽんでは青木あおきやよひ、綿貫わたぬき礼子あやこ、萩原はぎはらなつ子こらがいる。

マーチャント（1994）はエコフェミニズムを4分類ぶんるいしている。4分類ぶんるいとは、

1. リベラル・エコフェミニズム
2. カルチュラル・エコフェミニズム
3. ソーシャル・エコフェミニズム
4. ソーシャリスト・エコフェミニズム

である。

1.は既存きそんの社会しゃかい経済けいざい体制たいせいでの男女だんじょ平等びょうどうと女性じょせいの環境かんきょう運動うんどうへの参加さんか、2.は前ぜん近代きんだい的てきな自然しぜん・女性じょせい（性せい）の賞賛しょうさん、3.はマレイ・ブクチンの唱となえたソーシャル・エコロジーのフェミニスト版ばんで社会しゃかい経済けいざい体制たいせいの改革かいかくを、4.はソーシャリスト・エコロジーのフェミニスト版ばんで3.と同様どうように社会しゃかい経済けいざい体制たいせいの改革かいかくを、それぞれ志向しこうする。日本にっぽんでは、エコフェミニズムをめぐって、80年代ねんだい半なかば上野うえの千鶴子ちづこと「イリイチ流ながれエコフェミニズム」「カルチュラル・エコフェミニズム」を標榜ひょうぼうする青木あおきやよひとの間あいだに「青木あおき・上野うえの論ろん争そう」が生しょうじたが、その後ご、日本にっぽんにおけるエコフェミニズムは失速しっそくした。90年代ねんだい半なかばにはメラーやミースが来日らいにちし、エコフェミニズムの再考さいこう／再興さいこうが生しょうじたが、これも一時いちじ的てきなものにとどまった。

具体ぐたい的てきな運動うんどう

エコフェミニズムの具体ぐたい的てきな運動うんどうとしては、ノーベル平和へいわ賞しょうを受賞じゅしょうしたケニアのワンガリ・マータイによる「グリーン・ベルト・ムーブメント」、女性じょせいたちが木きに抱だきついて森林しんりん破壊はかいに抵抗ていこうしたインドの「チプコ運動うんどう」などが挙あげられる。日本にっぽんでは北九州きたきゅうしゅう市しの「青空あおぞらがほしい運動うんどう」、滋賀しが県けんの「せっけん運動うんどう」などがあった。

批評ひひょう

文芸ぶんげい評論ひょうろんの分野ぶんやでは、エコクリティシズムの1分野ぶんやにエコフェミニズム批評ひひょうがある。これはエコクリティシズムにエコフェミニズムの視点してんを取とり入いれたエコフェミニズム批評ひひょうで、基本きほん的てきにはテクストの批評ひひょうである。その方法ほうほう論ろんとしては、テクスト内ないでの西洋せいよう的てき二元論にげんろんの脱だつ構築こうちく、エクリチュール・フェミニンの機能きのう、女性じょせい／自然しぜんの表象ひょうしょうの効果こうかなどが挙あげられる。テリー・テンペスト・ウィリアムスの作品さくひんはエコフェミニズム批評ひひょうの対象たいしょうとなる重要じゅうようなネイチャーライティングである。代表だいひょう的てきなエコフェミニズム批評ひひょう家かにはGreta GaardやPatrick Murphyらがいる。

人物じんぶつ

• フランソワーズ・ドボンヌ
• キャロリン・マーチャント
• ヴァンダナ・シヴァ
• マリア・ミース
• メアリー・メラー
• スーザン・グリフィン
• カレン・ウォレン
• ヴァル・プラムウッド
• エレン・スワロー・リチャーズ
• レイチェル・カーソン
• スターホーク
• en:Greta Gaard
• Patrick Murphy
• 青木あおきやよひ
• 綿貫わたぬき礼子あやこ
• 萩原はぎはらなつ子こ

参考さんこう文献ぶんけん

• 青木あおきやよひ（1994）『フェミニズムとエコロジー（増補ぞうほ新版しんぱん）』新しん評論ひょうろん
• ダイアモンド，I．・オレンスタイン，G．F．（編著へんちょ）（1994）『世界せかいを織おりなおす：エコフェミニズムの開花かいか』（奥田おくだ暁子あきこ・近藤こんどう和子かずこ・訳わけ），學藝がくげい書林しょりん
• Gaard, G., & Murphy, P. D. (Eds.) (1998) Ecofeminist Literary Criticism: Theory, Interpretation, Pedagogy. Urbana: University of Illinois Press
• 萩原はぎはらなつ子こ（2005）「『環境かんきょうとジェンダー』の交錯こうさく―自然しぜんと人間にんげんの共生きょうせいをめざして」原はらひろ子こ（監修かんしゅう）『ジェンダー研究けんきゅうが拓ひらく地平ちへい』（317-334頁ぺーじ），文化ぶんか書房しょぼう博文ひろぶみ社しゃ
• メラー，M．（1993）『境界きょうかい線せんを破やぶる！　エコ・フェミ社会しゃかい主義しゅぎに向むかって』（壽ことぶき福ぶく眞美まみ・後藤ごとう浩子ひろこ・訳わけ），新しん評論ひょうろん
• マーチャント，C．（1980）『自然しぜんの死し』（団だんまりなほか訳やく、工作こうさく舎しゃ 1985）ISBN 4-87502-109-7
• マーチャント，C．（1994）『ラディカルエコロジー　住すみよい世界せかいを求もとめて』（川本かわもと隆史たかし・須藤すとう自由じゆう児じ・水谷みずたに広ひろ・訳わけ），産業さんぎょう図書としょ
• ミース，M．・トムゼン，V．B．・ヴェールホフ，C．V．（1995）『世界せかいシステムと女性じょせい』（古田ふるた睦美むつみ・善本ぜんぽん裕子ゆうこ・訳わけ），藤原ふじわら書店しょてん
• シヴァ，V．（1994）『生いきる歓よろこび　イデオロギーとしての近代きんだい科学かがく批判ひはん』（熊崎くまざき実みのる・訳わけ），築地つきじ書しょ館かん
• 上野うえの千鶴子ちづこ・綿貫わたぬき礼子あやこ（編著へんちょ）（1996）『リプロダクティブ・ヘルスと環境かんきょう　共ともに生いきる世界せかいへ』工作こうさく舎しゃ ISBN 978-4-87502-273-2
• スターホーク (1979, 1989)『聖せい魔女まじょ術じゅつ』(秋あき端はし勉つとむ・鏡かがみリュウジ訳やく, 1994)、国書刊行会こくしょかんこうかい , ISBN 4-336-03661-6

外部がいぶリンク

• エコロジーと女性じょせい-エコフェミニズム 森岡もりおか正博まさひろ
• 「エコフェミ」新しん曜社からの返信へんしん+ぼくのコメント
• ASLE-Japan/文学ぶんがく・環境かんきょう学会がっかい
• The Association for the study of Literature and Environment (英語えいご)