エド・ウッド (映画えいが)

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エド・ウッド
Ed Wood
監督かんとく ティム・バートン
脚本きゃくほん スコット・アレクサンダー
ラリー・カラゼウスキー
製作せいさく ティム・バートン
デニーズ・ディ・ノヴィ
出演しゅつえんしゃ ジョニー・デップ
マーティン・ランドー
サラ・ジェシカ・パーカー
パトリシア・アークエット
音楽おんがく ハワード・ショア
撮影さつえい ステファン・チャプスキー
編集へんしゅう クリス・レベンゾン
製作せいさく会社かいしゃ タッチストーン・ピクチャーズ
配給はいきゅう アメリカ合衆国の旗 ブエナ・ビスタ・ピクチャーズ
日本の旗 ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)
公開こうかい アメリカ合衆国の旗 1994ねん9月28にち
日本の旗 1995ねん9月2にち
上映じょうえい時間じかん 127ふん
製作せいさくこく アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
言語げんご 英語えいご
製作せいさく $18,000,000[1]
興行こうぎょう収入しゅうにゅう $5,887,457[1]アメリカ合衆国の旗
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エド・ウッド』(Ed Wood)は、「史上しじょう最低さいてい映画えいが監督かんとく」とわれた映画えいが監督かんとくエド・ウッド題材だいざいにした1994ねん白黒しろくろ映画えいが監督かんとくはエド・ウッドのファンであるというティム・バートン

戦前せんぜんのホラー映画えいがかいにおけるだいスター、ベラ・ルゴシやくえんじたマーティン・ランドーかく映画えいがしょうそうなめし、だい67かいアカデミーしょうアカデミー助演じょえん男優だんゆうしょう受賞じゅしょう、またアカデミーメイクアップしょう受賞じゅしょうした。

あらすじ[編集へんしゅう]

冒頭ぼうとう、カメラは不気味ぶきみ洋館ようかんなかにあるかんうつす。そのぶたひらくと、ある一人ひとりおとこ口上こうじょうはじまる……

「ようこそ諸君しょくんきみたちはまだなぞめいたなにかをもとめている。だからここへたのだ……それではこと次第しだい一部始終いちぶしじゅうをおせしよう。まやかしは一切いっさいなし、すべてはこの恐怖きょうふ体験たいけんびた人々ひとびと秘密ひみつ証言しょうげんによって裏付うらづけられている。諸君しょくん心臓しんぞうはこの真実しんじつえうるか?エドワード・D・ウッドJr.の真実しんじつに…。」

―1950年代ねんだいのハリウッド。映画えいが監督かんとく目指めざ青年せいねんエドワード・D・ウッド・Jrことエド・ウッドは、撮影さつえいしょ使つかいっはしりの仕事しごとをしながら、いつのだい2のオーソン・ウェルズになることを夢見ゆめみていた。恋人こいびと女優じょゆうドロレス・フラー、仲間なかまのカールやコンラッド、ゲイのバーニーらと芝居しばい上演じょうえんするも成功せいこうには程遠ほどとおく、それ以前いぜんにエドには映画えいが監督かんとくとしての才能さいのう徹底的てっていてきかったが、とう本人ほんにんみょう楽天的らくてんてき性格せいかくぬしだった。

そんなエドにチャンスがおとずれる。せい転換てんかん手術しゅじゅつ女性じょせいになり、一大いちだいセンセーションをこしたもと兵士へいしクリスチーネ・ヨルセンゲンの半生はんせい映画えいがする企画きかくがったのだ。エドには服装ふくそう倒錯とうさく趣味しゅみがあり、自分じぶんならかれ葛藤かっとうえがけると自負じふするがプロデューサーは難色なんしょくしめす。だがある、エドはかつてドラキュラ俳優はいゆうとして一世いっせい風靡ふうびしたベラ・ルゴシ出会であう。あこがれの存在そんざい親交しんこうふかめるエドだが、すでにルゴシはちぶれ薬物やくぶつおぼれる老人ろうじんでしかなかった。ならば、とエドは「かつてのだいスターをやすいギャラでせる」とかれ起用きよう提案ていあんし、ついにプロデューサーの同意どういる。

かくしてエドは自身じしん脚本きゃくほん監督かんとく処女しょじょさくグレンとグレンダ』にルゴシとドロレスを出演しゅつえんさせ、そしてみずからを主演しゅえんえて製作せいさく開始かいし。だがはなしせい転換てんかんではなく服装ふくそう倒錯とうさくせいへの理解りかいもとめるという、本来ほんらい企画きかくとかけはなれたうえにエド独特どくとくのセンスがくわわる作品さくひんしていた。さらに倒錯とうさくせいをカミングアウトされたドロレスはエドへの嫌悪けんおかん困惑こんわくかくせない。あんじょうプロデューサーは激怒げきどし、映画えいが地方ちほう上映じょうえいのみで惨憺さんたんたる結果けっかわった。だがエドはめげなかった。みずからがプロデューサーとなり資金しきんあつめれば自分じぶんおもうようにつくれる、と。

つぎの『怪物かいぶつ花嫁はなよめ』には、ルゴシ、ドロレスとともにプロレスラーのトー・ジョンソン、バーでスカウトした女優じょゆう志願しがんのロレッタらの出演しゅつえん撮影さつえい開始かいしされるが、製作せいさく肩代かたがわりを目的もくてきにロレッタを主演しゅえん女優じょゆうとした。結果けっかドロレスとの関係かんけい破綻はたんしたうえ、エドはロレッタのはなし勘違かんちがいしていたため予算よさんのアテがくなり製作せいさく中断ちゅうだんする。金策きんさくはしったエドは、った肉屋にくや交渉こうしょうし「息子むすこ主演しゅえんにする」のを条件じょうけん資金しきん調達ちょうたつ。そしてクライマックスに必要ひつよう怪物かいぶつ巨大きょだいタコの実物じつぶつだいモデルを撮影さつえいしょ倉庫そうこから勝手かって拝借はいしゃくしてどうにか撮影さつえい再会さいかい完成かんせいにこぎつける。だがまたもや映画えいが出来でき観客かんきゃくけも散々さんざんであり、とうとうエドはドロレスから絶縁ぜつえんされる。そして以前いぜんから体調たいちょうくずしていたルゴシが薬物やくぶつ中毒ちゅうどくのリハビリ施設しせつ入院にゅういんすることになってしまう。

ルゴシが入院にゅういんしている病院びょういんで、エドはキャシーと出会であう。ゆう園地えんちでのデートで、エドはキャシーにみずからの女装じょそうへきについて告白こくはくするが、彼女かのじょは「男性だんせいとして女性じょせいあいしてくれるなら」とれエドの伴侶はんりょとなる。一方いっぽう、ルゴシは治療ちりょうつづかず施設しせつ退院たいいんすることになったが、医師いしからルゴシのいのちはもうさきながくないことをらされる。せめて本人ほんにん元気げんきづけようと、新作しんさく映画えいがしょうしてエドはかれ自宅じたくまえでささやかな撮影さつえいおこなう。そのすう週間しゅうかん、ルゴシは心臓しんぞう発作ほっさ他界たかいした。かれはドラキュラの衣装いしょう埋葬まいそうされた。

ルゴシの葬式そうしきのあと無気力むきりょくおちいっていたエドだったが、偶然ぐうぜん出会であった教会きょうかい牧師ぼくしが「宗教しゅうきょう映画えいがつくりたい」とうのをいて、自分じぶんあらたな作品さくひんにつなげようとおもいつく。タイトルは『プラン9・フロム・アウタースペース』だったが完全かんぜんにSF映画えいが体裁ていさいだったため、教会きょうかいがわ難色なんしょくしめす。さら撮影さつえいはじまると、教会きょうかい人気にんき牧師ぼくし主演しゅえんえようとしたり、撮影さつえい手法しゅほう難癖なんくせをつけはじめたため、エドはおこって撮影さつえい現場げんばからしてしまう。

場末ばすえのバーにヤケしゅをあおりにったエドは、そこでなんとオーソン・ウェルズとくわす。エドはおそるおそるせきちかづき、かれだいファンであることや、映画えいが撮影さつえい難航なんこうしていることをげると、ウェルズもみずからの新作しんさく資金繰しきんぐりやプロデューサーとのいに苦労くろうしていることをはなす。そして、エドに助言じょげんする。「わたしは『市民しみんケーン』では信念しんねんつらぬとおし、プロデューサー連中れんちゅうにはいちコマたりともれさせなかった。ゆめのためならたたかえ。他人たにんゆめってどうなる?おおいにはげまされたエドは撮影さつえい現場げんばもどり、教会きょうかいがわよこやりをねじせて、あらんかぎりの情熱じょうねつをこめて作品さくひん完成かんせいさせた。

ロードショーかんでのプレミア上映じょうえいよる、「この映画えいがをベラ・ルゴシにささげる」と挨拶あいさつしたエドは、これこそみずからの最高さいこう傑作けっさくだと感慨かんがいひたる。そして上映じょうえいわったのち自分じぶんささえてくれたキャシーにプロポーズしたのだった。


…エド・ウッドはそのもハリウッドでたたかつづけたが、次第しだいさけにおぼれ、1978ねん死去しきょした。以後いごしん世代せだいのファンを獲得かくとく。「史上しじょう最低さいてい映画えいが監督かんとく」の称号しょうごうばれている―。

キャスト[編集へんしゅう]

役名やくめい 俳優はいゆう 日本語にほんご吹替
エド・ウッド ジョニー・デップ 平田ひらた広明ひろあき
ベラ・ルゴシ マーティン・ランドー 内田うちだみのる
ドロレス・フーラー サラ・ジェシカ・パーカー 高乃たかのうらら
キャシー・オハラ パトリシア・アークエット ならはしみき
アメージング・クリズウェル ジェフリー・ジョーンズ 稲葉いなばみのる
バニー・ブレッキンリッジ ビル・マーレイ 江原えばらただし
ヴァンパイラ リサ・マリー 幸田こうだ直子なおこ
トー・ジョンソン ジョージ・スティール 郷里ごうり大輔だいすけ
ロレッタ・キング ジュリエット・ランドー
ポール・マルコ マックス・カセラ
コンラッド・ブルックス ブレント・ヒンクリー
トム・メイソン ネッド・ベラミー
ジョージ・ワイス マイク・スター 金尾かなお哲夫てつお
レモン牧師ぼくし G・D・スプラドリン 小山こやま武宏たけひろ
オーソン・ウェルズ ヴィンセント・ドノフリオ
金尾かなお哲夫てつお
こえモーリス・ラマーシュ
(ノンクレジット)
秘書ひしょ#2 メローラ・ウォルターズ
後援こうえんしゃ グレゴリー・ウォルコット
(カメオ出演しゅつえん)
その 坂口さかぐち賢一けんいち
古澤ふるさわとおる
棚田たなだ恵美子えみこ
たからひさしかつ寿ことぶき
津野田つのだなるみ
伊藤いとう栄次えいじ
伊藤いとう和晃かずあき
みねめぐみけん
星野ほしのたかしあきら
演出えんしゅつ 松岡まつおか裕紀ゆうき
翻訳ほんやく 石田いしだ泰子やすこ 高山たかやま美香みか
録音ろくおん調整ちょうせい 金谷かなや和美かずみ
監修かんしゅう 岡本おかもとくわだて美子よしこ
製作せいさく ACクリエイト
DISNEY CHARACTER VOICES
INTERNATIONAL, INC.

スタッフ[編集へんしゅう]

  • 監督かんとくティム・バートン
  • 製作せいさく:ティム・バートン、デニーズ・ディ・ノヴィ
  • 脚本きゃくほん:スコット・アレクサンダー、ラリー・カラゼウスキー
  • 製作せいさくそう指揮しきマイケル・レーマン
  • 共同きょうどう製作せいさく:マイケル・フリン
  • 撮影さつえい:ステファン・チャプスキー
  • 音楽おんがくハワード・ショア
  • 編集へんしゅうクリス・レベンゾン
  • 美術びじゅつ:トム・ダッフィールド
  • メイクアップ:リック・ベイカー、ヴィ・ニール、Yolanda Toussieng

解説かいせつ[編集へんしゅう]

グレンとグレンダ製作せいさくから『プラン9・フロム・アウタースペース完成かんせいにいたるまでのエド・ウッドの「黄金おうごん」をえがいた作品さくひんで、ウッドの知名度ちめいど飛躍ひやくてきたかめる契機けいきとなった。

この映画えいがには、ウッドが監督かんとくした映画えいが場面ばめん忠実ちゅうじつ再現さいげんしているシーンがいくつかあり、あまりにもそっくりな描写びょうしゃにバートンのウッドにたいする敬愛けいあいぶりがうかがえる。またエド・ウッドは実際じっさい女装じょそうする趣味しゅみっていたため、作中さくちゅうにもジョニー・デップが女装じょそうするシーンがある。

作品さくひんちゅうであこがれのオーソン・ウェルズ偶然ぐうぜん出会であうシーンは脚色きゃくしょくで、実際じっさいには本人ほんにん生涯しょうがいウェルズにうことはなかった。ウェルズもまた生涯しょうがい映画えいが資金繰しきんぐりに苦労くろうした人物じんぶつで、かたや「映画えいが史上しじょう最高さいこう」、かたや「映画えいが史上しじょう最低さいてい」の才能さいのうがどことなく似通にかよった人生じんせいおくったことは興味深きょうみぶかい。

受賞じゅしょうとノミネート[編集へんしゅう]

しょう 部門ぶもん 対象たいしょう 結果けっか
アカデミーしょう 助演じょえん男優だんゆうしょう マーティン・ランドー 受賞じゅしょう
メイクアップしょう リック・ベイカー、ヴィ・ニール、Yolanda Toussieng 受賞じゅしょう
サターンしょう ファンタジー映画えいがしょう 『エド・ウッド』 ノミネート
主演しゅえん男優だんゆうしょう マーティン・ランドー 受賞じゅしょう
脚本きゃくほんしょう スコット・アレクサンダー、ラリー・カラゼウスキー ノミネート
音楽おんがくしょう ハワード・ショア 受賞じゅしょう
アメリカン・コメディ・アワード おかしな助演じょえん男優だんゆうしょう マーティン・ランドー 受賞じゅしょう
アルゼンチン映画えいが批評ひひょう協会きょうかいしょう 最優秀さいゆうしゅう外国がいこく映画えいがしょう ティム・バートン ノミネート
英国えいこくアカデミーしょう 助演じょえん男優だんゆうしょう マーティン·ランドー ノミネート
メイクアップしょう リック・ベイカー、ヴィ・ニール、Yolanda Toussieng ノミネート
ボストン映画えいが批評ひひょう協会きょうかい 助演じょえん男優だんゆうしょう マーティン・ランドー 受賞じゅしょう
撮影さつえいしょう ステファン・チャプスキー 受賞じゅしょう
カンヌ国際映画祭かんぬこくさいえいがさい パルム・ドール ティム・バートン ノミネート
シカゴ映画えいが批評ひひょう協会きょうかい 主演しゅえん男優だんゆうしょう ジョニー・デップ ノミネート
助演じょえん男優だんゆうしょう マーティン・ランドー 受賞じゅしょう
スペイン映画えいが作家さっか協会きょうかいしょう 最優秀さいゆうしゅう外国がいこく映画えいがしょう 『エド・ウッド』 受賞じゅしょう
ゴールデングローブしょう 作品さくひんしょう(ミュージカル・コメディ部門ぶもん 『エド・ウッド』 ノミネート
主演しゅえん男優だんゆうしょう(ミュージカル・コメディ部門ぶもん ジョニー・デップ ノミネート
助演じょえん男優だんゆうしょう マーティン・ランドー 受賞じゅしょう
グラミーしょう 映画えいが作曲さっきょくしょう ハワード・ショア ノミネート
カンザスシティ映画えいが批評ひひょう協会きょうかいしょう 助演じょえん男優だんゆうしょう マーティン・ランドー 受賞じゅしょう
ロンドン映画えいが批評ひひょう協会きょうかいしょう 男優だんゆうしょう ジョニー・デップ 受賞じゅしょう
ロサンゼルス映画えいが批評ひひょう協会きょうかいしょう 助演じょえん男優だんゆうしょう マーティン・ランドー 受賞じゅしょう
撮影さつえいしょう ステファン・チャプスキー 受賞じゅしょう
音楽おんがくしょう ハワード・ショア 受賞じゅしょう
ナショナル・ボード・オブ・レビューしょう トップ10作品さくひん 『エド・ウッド』 受賞じゅしょう
全米ぜんべい映画えいが批評ひひょう協会きょうかいしょう 助演じょえん男優だんゆうしょう マーティン・ランドー 受賞じゅしょう
撮影さつえいしょう ステファン・チャプスキー 受賞じゅしょう
ニューヨーク映画えいが批評ひひょう協会きょうかいしょう 助演じょえん男優だんゆうしょう マーティン・ランドー 受賞じゅしょう
撮影さつえいしょう ステファン・チャプスキー 受賞じゅしょう
全米ぜんべい映画えいが俳優はいゆう組合くみあいしょう 助演じょえん男優だんゆうしょう マーティン・ランドー 受賞じゅしょう
サウスイースタン映画えいが批評ひひょう協会きょうかいしょう 助演じょえん男優だんゆうしょう マーティン・ランドー 受賞じゅしょう
全米ぜんべい脚本きゃくほん組合くみあいしょう 脚本きゃくほんしょう スコット・アレクサンダー、ラリー・カラゼウスキー ノミネート
サテライトしょう Best DVD Extra 『エド・ウッド』 ノミネート

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b Ed Wood (1994)”. Box Office Mojo. 2018ねん12月27にち閲覧えつらん

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]