からし

納豆なっとうに添そえられたからし

からし（カラシ、芥子からし、辛子からし）は、アブラナ科かの植物しょくぶつであるカラシナおよびその近きん縁えん種しゅの種子しゅしから作つくられる香辛料こうしんりょう。黄色おうしょくもしくは黄土おうど色しょくで、独特どくとくの刺激しげき臭しゅうと辛味からみを持もつ。

カラシナ類るいの種子しゅしを原料げんりょうとした調味ちょうみ料りょうは世界せかい各地かくちに存在そんざいするが、日本にっぽんでは一般いっぱんに「和やわらがらし」と「洋ようがらし」に大別たいべつされる（詳細しょうさいは後こう節ふし参照さんしょう）。

和やわらがらし

カラシナの種子しゅしを粉末ふんまつにした「粉こなからし」を水みずまたはぬるま湯ゆで練ねって作つくられるもので、通常つうじょうはそれ以外いがいの成分せいぶんを含ふくまない。日本にっぽんで単たんにからしと言いう場合ばあいには、主おもに和やわらがらしを指さす。

洋ようがらし

洋ようがらしという言葉ことばは、からしに酢すや糖類とうるい、その他たの香辛料こうしんりょうを加くわえて調整ちょうせいされた複ふく合あい調味ちょうみ料りょう、いわゆるマスタードの意味いみで用もちいられる場合ばあいと、和やわらがらしに比くらべて辛からみを抑おさえた粉こなからしや練ねりからし製品せいひんを指さす場合ばあいがある。

マスタード

「マスタード」も参照さんしょう

マスタードは製法せいほうや用途ようとの異ことなるさまざまな種類しゅるいのものが販売はんばいされているが、酢すなどが加くわえられているために酸味さんみや甘あまみが強つよく、一般いっぱんに辛つらさは控ひかえめである。

マスタードと和やわらがらしは本来ほんらい用途ようとの異ことなる香辛料こうしんりょうであり、風味ふうみもまるで異ことなるが、マスタードが一般いっぱんに普及ふきゅうする以前いぜんの日本にっぽんでは、西洋せいよう料理りょうりにも代用だいようとして和やわらがらしが多おおく用もちいられた。古ふるくから営業えいぎょうしている店みせのサンドイッチに和やわらがらしが使つかわれていたり、洋食ようしょく屋やのテーブルに練ねりからしが置おかれていたりするのはその名残なごりである。

洋ようがらし

「洋ようがらし」の名称めいしょうで販売はんばいされている製品せいひんには、原料げんりょうとしてシロガラシが配合はいごうされている。

ねりからし

からしの辛からみは水みずで溶とくことによって発生はっせいするが、揮発きはつ性せいが強つよく長続ながつづきしない。いつでも簡単かんたんにからしの風味ふうみが利用りようできるように、粉末ふんまつや油あぶらに溶といた状態じょうたいで保存ほぞんする技術ぎじゅつが発達はったつした。ねりからしは、油脂ゆしや増ぞう粘ねば剤ざいなどによって辛からみ成分せいぶんを安定あんていさせ、人工じんこう的てきなカラシ香味こうみ成分せいぶんを配合はいごうしたものである。焼売しゅうまいなどに添そえられる業務ぎょうむ用ようのプラスチック包装ほうそう品ひんは1950年代ねんだいから存在そんざいし、1970年ねんにはエスビー食品しょくひんから家庭かてい用ようのチューブ入いりねりからしが発売はつばいされた。粉こなから練ねった和わがらしや伝統でんとう的てきな製法せいほうのマスタードとはかなり異ことなるものであるが、その手軽てがるさから広ひろく普及ふきゅうし、現在げんざいでは日本にっぽんで消費しょうひされるからし類るいの大半たいはんを占しめるに至いたっている。

なおチューブ入いりの「ねり和わからし」も発売はつばいされているが、これは単たんに風味ふうみによる命名めいめいであり、セイヨウカラシナを用もちいて和にこやからしの辛つらさを人工じんこう的てきに再現さいげんしたという意味いみである。

からしを用もちいた民間みんかん療法りょうほう

からしを湿布しっぷとして胸部きょうぶに貼はることは古ふるくから行おこなわれている民間みんかん療法りょうほうであり、用法ようほうを誤あやまらなければ効果こうかをあげる療法りょうほうの一ひとつとされている。期待きたいされる作用さようは、揮発きはつ成分せいぶんを吸引きゅういんすることによる気道きどうの刺激しげき、ならびに経けい皮がわ吸収きゅうしゅうによる肺はい血ち流りゅうの促進そくしんであり、毛け細ほそ気管支炎きかんしえん、気管支きかんし肺炎はいえん、麻疹ましんの経過けいか中ちゅうおよび肺はい性せい鬱血うっけつ等ひとしに対たいして効果こうかがあるとされる。