トリメチルグリシン

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グリシンベタインから転送てんそう
トリメチルグリシン
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識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 107-43-7, 590-46-5 (塩酸えんさんしお)
PubChem 247
ChemSpider 242 チェック
UNII 3SCV180C9W チェック
KEGG C00719
D03103 (塩酸えんさんしお)
MeSH Betaine
特性とくせい
化学かがくしき C5H11NO2
モル質量しつりょう 117.146
関連かんれんする物質ぶっしつ
関連かんれんするアミノ酸あみのさん グリシン
サルコシン
ジメチルグリシン
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。

トリメチルグリシンN,N,N-トリメチルグリシン、N,N,N-trimethylglycine)とは、グリシン窒素ちっそよんきゅうアンモニウムかたちまでメチルした構造こうぞう有機ゆうき化合かごうぶつ。アンモニウムとカルボキシラートアニオンとを分子ぶんしないふくみ、広義こうぎベタイン分子ぶんしない安定あんてい正負せいふりょう電荷でんか化合かごうぶつそうせいイオン)の一種いっしゅである。CAS登録とうろく番号ばんごうは [107-43-7]。TMGグリシンベタインまたはたんベタイン無水むすいベタインなどともばれる。

おおくの生物せいぶつ体内たいない存在そんざいし、野菜やさいキノコなどの食物しょくもつにもふくまれる。とくテンサイ (Beta) に多量たりょうふくまれ、ベタイン (Betaine) のはこれにもとづく。現在げんざいもテンサイ糖蜜とうみつから抽出ちゅうしゅつされている。みずによくける。

食品しょくひんちゅうの含量[編集へんしゅう]

食品しょくひんちゅうのトリメチルグリシン含量
食品しょくひんちゅうの含量[1][2]
食材しょくざい 含量 (mg/100g)
小麦こむぎふすま 1339
小麦こむぎ胚芽はいが 1241
ほうれんそう 600-645
ビート 114-297
エビ 219
小麦こむぎパン 201
食品しょくひんちゅうの含量(USDA)[3]
食材しょくざい 含量 (mg/100g)
キヌア 630.40
ケロッグ オールブラン 360.00
ライ麦らいむぎ 146.10
ビート(せい) 128.70
ほうれんそう(せい) 102.60
小麦こむぎパン 85.2
パスタ(調理ちょうりみ) 68.0
サツマイモ(いも) 34.6

利用りよう[編集へんしゅう]

食品しょくひん添加てんかぶつ既存きそん添加てんかぶつ)としてあつかわれる。すこ苦味にがみのある甘味あまみていし、うましたりあじをまろやかにする効果こうかがある。化粧けしょうひんなどの保湿ほしつざいとしてももちいられる。

生体せいたいないでメチルもと供与きょうよたいとしてはたらくことから、こうホモシステインしょう動脈どうみゃく硬化こうか危険きけん因子いんしとされる)の治療ちりょうもちいることが提唱ていしょうされている。

トリメチルグリシンは DNAシークエンシングなどで、PCR やそのDNAポリメラーゼ反応はんのうすけざいとしてもちいられる。DNA構造こうぞう形成けいせいふせぐ(GC含量のおお配列はいれつ融解ゆうかい温度おんどげるためとされる)ことにより、これらの反応はんのう正常せいじょう進行しんこうしない問題もんだい解決かいけつすることができる。

生化学せいかがく機能きのう[編集へんしゅう]

哺乳類ほにゅうるいにおいてトリメチルグリシンは以下いかみっつの機能きのうられている。

  • じん髄質ずいしつ細胞さいぼうなどに蓄積ちくせきして細胞さいぼうがいだか浸透しんとうあつ調整ちょうせいする(有機ゆうき浸透しんとうあつ調整ちょうせい物質ぶっしつ)
  • 変性へんせい条件下じょうけんかにおけるたんぱくしつ構造こうぞう安定あんてい
  • ホモシステインをメチオニンに変換へんかんする反応はんのうにおいてメチルもと供与きょうよする(メチルドナー)

トリメチルグリシンは、コリン葉酸ようさんビタミンB12、およびS-アデノシルメチオニンとも機能きのうする。 ホモシステインをメチオニンに変換へんかんする反応はんのうでは、ベタイン—ホモシステイン—S—メチルもと転移てんい酵素こうそ (BHMT, E.C. 2.1.1.5, 亜鉛あえん含有がんゆう金属きんぞく酵素こうそ)反応はんのうにて、メチルもと供与きょうよするメチルドナー[4]として機能きのうする。

trimethylammonioacetate + L-homocysteine dimethylglycine + L-methionine

※trimethylammonioacetateはトリメチルグリシンのIUPACめいである。

誘導体ゆうどうたい[編集へんしゅう]

トリメチルグリシンと塩酸えんさんとのしおが、ベタイン塩酸えんさんしお塩酸えんさんベタイン)である。CAS登録とうろく番号ばんごう [590-46-5]。ベタイン塩酸えんさんしお弱酸じゃくさんせいで、酸味さんみがある。消化しょうか促進そくしんざいとしてもちいられており、胃酸いさん分泌ぶんぴつ不足ふそくしているひと有用ゆうようとされる。

トリメチルグリシンのアルキル誘導体ゆうどうたい界面かいめん活性かっせいざい(ベタインけい界面かいめん活性かっせいざい)として、シャンプー化粧けしょうひんなどに配合はいごうされる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ “Betaine in human nutrition”. The American Journal of Clinical Nutrition 80 (3): Table.1. (2004). http://ajcn.nutrition.org/content/80/3/539.full. 
  2. ^ “Concentrations of Choline-Containing Compounds and Betaine in Common Foods”. Journal of Nutrition (The American Society for Nutrition) 133 (5): Table.1. (2003). PMID 12730414. http://jn.nutrition.org/content/133/5/1302.full. 
  3. ^ Nutrition Lists : Nutrients: Betaine(mg) Food Subset: All Foods Ordered by: Nutrient Content Measured by: 100 g”. USDA. 2017ねん11月12にち閲覧えつらん
  4. ^ メチルもと供与きょうよたいともぶことがある

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]