ゲド戦記せんき

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ゲド戦記せんき
Earthsea
著者ちょしゃ アーシュラ・K・ル=グウィン
訳者やくしゃ 清水しみず真砂子まさこ
イラスト ルース・ロビンスほか
発行はっこう アメリカ合衆国の旗 1968ねん-2001ねん
日本の旗 1976ねん-2004ねん
発行はっこうもと アメリカ合衆国の旗 パルナッソス出版しゅっぱん
アメリカ合衆国の旗 アテネウム・ブックス
アメリカ合衆国の旗 ハーコート出版しゅっぱん
日本の旗 岩波書店いわなみしょてん
ジャンル 児童じどう文学ぶんがく
ファンタジー
くに アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
言語げんご 英語えいご
ウィキポータル 文学ぶんがく
[ ウィキデータ項目こうもく編集へんしゅう ]
テンプレートを表示ひょうじ

ゲド戦記せんき』(ゲドせんき、Earthsea)は、アーシュラ・K・ル=グウィンによって英語えいごかれ、1968ねんから2001ねんにかけて出版しゅっぱんされたファンタジー小説しょうせつのシリーズめいである。原題げんだいは『アースシー』(Earthsea)あるいは『アースシー・サイクル』(Earthsea Cycle)であるが、日本にっぽんでは岩波書店いわなみしょてん所属しょぞくしていた装丁そうてい田村たむら義也よしやによって「ゲド戦記せんき」と名付なづけられた[1]。「戦記せんき」とあるが、戦争せんそう戦闘せんとう中心ちゅうしん物語ものがたりではない。また、ゲドが主人公しゅじんこうとして行動こうどうするのも最初さいしょの1さくのみである。全米ぜんべい図書としょしょう児童じどう文学ぶんがく部門ぶもんネビュラしょう長編ちょうへん小説しょうせつ部門ぶもんニューベリーしょう受賞じゅしょう

英語えいごけんにおけるファンタジー作品さくひん古典こてんとして、しばしば『指輪ゆびわ物語ものがたり』『オズの魔法使まほうつか』とならしょうされる[2][3]文学ぶんがくしゃマーガレット・アトウッドは『ハリーポッター』や『こおりほのおうた』など近年きんねん流行りゅうこうした幻想げんそう小説しょうせつ影響えいきょうあたえた作品さくひんとして、『ゲド戦記せんきだい1さくの『かげとのたたか』をげている[4]

作品さくひん一覧いちらん[編集へんしゅう]

日本語にほんごばんは、清水しみず真砂子まさこわけにより、岩波書店いわなみしょてんから出版しゅっぱんされている。岩波いわなみ少年しょうねん文庫ぶんこ、ハードカバー、内容ないようわらないが、大人おとなけにデザインをえた物語ものがたりコレクション、映画えいがさい発行はっこうしたソフトカバーの4ヴァージョンが発売はつばいされている。

かげとのたたか」のみ、どう時代じだいライブラリー(現在げんざいおわりかん)から発売はつばいされたことがある。
  • かげとのたたかい」A Wizard of Earthsea原語げんごばん1968ねん日本語にほんごばん1976ねん
  • こわれたうでたまきThe Tombs of Atuan原語げんごばん1971ねん日本語にほんごばん1976ねん
  • さいはてのしまThe Farthest Shore原語げんごばん1972ねん日本語にほんごばん1977ねん
  • 帰還きかん -ゲド戦記せんき最後さいごしょ-Tehanu, The Last Book of Earthsea原語げんごばん1990ねん日本語にほんごばん1993ねん
  • 「アースシーのふうThe Other Wind原語げんごばん2001ねん日本語にほんごばん2003ねん
  • 「ゲド戦記せんき外伝がいでん(ドラゴンフライ)」Tales from Earthsea原語げんごばん2001ねん日本語にほんごばん2004ねん

2007ねん現在げんざい日本語にほんごばん発行はっこう部数ぶすうは200まん[5]

あらすじ[編集へんしゅう]

この最初さいしょ言葉ことばはなしたセゴイによって海中かいちゅうからげられつくられたとつたえられる、太古たいこ言葉ことば魔力まりょく発揮はっきするおおとううみ(アーキペラゴ)、アースシーを舞台ぶたいとした魔法使まほうつかゲド物語ものがたり。アースシーのうち、おもにハードけんでは森羅万象しんらばんしょうに、神聖しんせい文字もじ表記ひょうきされる「しん(まこと)の名前なまえ」が存在そんざいし、それをものはそれをしたがわせることができる。ひとおのれしんをみだりにられぬように、とおのみを名乗なのる。主人公しゅじんこうれいればゲドしんで、ハイタカとおである。

かげとのたたか[編集へんしゅう]

原題げんだいA Wizard of Earthsea

ゲド(ハイタカ)の少年しょうねんから青年せいねん物語ものがたり。ゲドは才気さいきあふれる少年しょうねんだったが、ライバルよりも自分じぶんすぐれていることを証明しょうめいしようとして、ロークの学院がくいん禁止きんしされていたじゅつ使つかい、死者ししゃれいともに「かげ」をもしてしまう。ゲドはそのかげおびやかされつづけるが、アイハル(オジオン)の助言じょげんによりみずかかげ対峙たいじすることを選択せんたくする。クライマックスで、ゲドは「かげ」が自身じしん暗黒あんこくめんであったことにづく。

こわれたうでたまき[編集へんしゅう]

原題げんだいThe Tombs of Atuan

アチュアン神殿しんでんだい巫女ふじょテナー(アルハ)が中心ちゅうしん物語ものがたり。「なきしゃたち」につかえる巫女ふじょたちによっておやからはなされ、名前なまえ自己じこ)をうばわれ、地下ちか神殿しんでんやみなかだい巫女ふじょとしてそだてられるテナー。そこに、ふたつにられうばわれた「エレス・アクベの腕輪うでわ」(ぎんせい)を本来ほんらいあるべき場所ばしょもどし、世界せかい均衡きんこう回復かいふくしようとするだい魔法使まほうつかいゲドがあらわれる。腕輪うでわ奪還だっかんと「なきしゃたち」とのあらそいの過程かてい地下ちか神殿しんでん崩壊ほうかいする。少女しょうじょ自己じこ回復かいふくたましい解放かいほう物語ものがたりでもあり、ゲドとテナーの信頼しんらい、そして愛情あいじょう物語ものがたりとしてもめる。

さいはてのしま[編集へんしゅう]

原題げんだいThe Farthest Shore

だい賢人けんじんとなったゲドが登場とうじょうする。世界せかい均衡きんこうくずれて魔法使まほうつかいが次々つぎつぎちからうしななか、エンラッドからきゅうらせにわか王子おうじレバンネン(アレン)とともにその秩序ちつじょ回復かいふくのため、世界せかいてまでたびをする。ゲドの留守るすちゅうに“石垣いしがきこうがわ”から“この”へ侵入しんにゅうがあり、学院がくいんまもりもやぶられてしまう。

なお、終焉しゅうえん世界せかい変化へんか暗示あんじする結末けつまつから、[よう出典しゅってん]だい4かん発表はっぴょうされるまでのじゅうすう年間ねんかんゲド戦記せんきは「さんさく」とされていた。[だれ?][6]

帰還きかん[編集へんしゅう]

原題げんだいTehanu, The Last Book of Earthsea

ゲド壮年そうねん物語ものがたりである。ゲドはさきたびすべてのちからうしない、だい賢人けんじん地位ちいみずかりて故郷こきょうしまかえってきた。そこでは、子供こどもたちを未亡人みぼうじんとなったテナー(ゴハ)が、おやころされかけたところあやうくすくわれた少女しょうじょテハヌー(テルー)と生活せいかつしていた。ゲドはテナーと生活せいかつはじめる。ところがもと大賢たいけんじんもと巫女ふじょという存在そんざい故郷こきょう一般いっぱん魔法使まほうつかいにとっては目障めざわりでしかなく、3にんの「よわしゃ」たちを容赦ようしゃなく悪意あくいちた暴力ぼうりょくおそう。魔法まほうちからうしなったのちえてるアースシーの世界せかいおお価値かちかんとは、一体いったいなになのか。それを作者さくしゃみずからがいかけている作品さくひんともえる。

「さいはてのしまへ」からほんさく発表はっぴょうまでになが期間きかんがあり、フェミニズムいろつよほんさくだい戸惑とまど読者どくしゃも、またたか評価ひょうかする読者どくしゃも、どちらもすくなくないようである。また、「アースシーのふう以降いこうは「9.11」(アメリカ同時どうじ多発たはつテロ混沌こんとんとしたアメリカの世界せかいかん如実にょじつあらわれている。旧版きゅうばんでは“―ゲド戦記せんき最後さいごしょ―”という副題ふくだいされていた。

アースシーのふう[編集へんしゅう]

原題げんだいThe Other Wind

かつてゲドとともたびをし、アースシーのおうとなったレバンネン(アレン)や、ゲドのつまとなったテナー、その二人ふたり養女ようじょとなったテハヌー(テルー)が物語ものがたりかくとなっていく。りゅう異教徒いきょうとのカルガドじんによって、従来じゅうらい正義せいぎであった「しん」という魔法まほう原理げんりへの批判ひはんおこなわれ、それまでつくげられてきたアースシーの価値かちかん根本こんぽんからこわしていくような物語ものがたり構造こうぞうとなっている。おんなだい賢人けんじん可能かのうせい世界せかいてにある理想郷りそうきょう、また死生しせいかんへの再考さいこう長年ながねん敵対てきたいしていたカルガド帝国ていこくとの和解わかい暗示あんじされる。テハヌーとりゅうとのかかわりもあきらかにされ、確実かくじつ物語ものがたり中心ちゅうしんはゲドからレバンネン、テハヌーの世代せだいへとうつわっている。

原題げんだい The Other Windべつふうべつ思潮しちょう)にたいし、日本語にほんごばん題名だいめいは「あたらしいふう」となる予定よていだったが、「あたらしいではない」との翻訳ほんやくしゃおよび作者さくしゃ本人ほんにん意見いけんけ、現在げんざいのものとなった。

ドラゴンフライ アースシーのいつつの物語ものがたり[編集へんしゅう]

原題げんだいTales from Earthsea

日本語にほんごばん初刊しょかんは「ゲド戦記せんき外伝がいでん」というだいだったが、のちに「ドラゴンフライ アースシーのいつつの物語ものがたり」へ改題かいだいされている。

『アースシーのふう以前いぜん発表はっぴょうされたなか短編たんぺん5作品さくひんと、著者ちょしゃによるアースシー世界せかいについての解説かいせつ収録しゅうろくしている。とくに「ドラゴンフライ」は「アースシーのふう」とふかいかかわりがあり、さきかれたこちらをむと理解りかいはやい。

収録しゅうろく作品さくひん[編集へんしゅう]

「カワウソ」
原題げんだいThe Finder
ロークの学院がくいん開設かいせつ功労こうろうしゃにして、初代しょだいまもりのなが、メドラ(カワウソ/アジサシ)の一生いっしょうつうじて、学院がくいん黎明れいめいえがく。
「ダークローズとダイヤモンド」
原題げんだいDarkrose and Diamond
エシーリ(ダイヤモンド)とローズのこい物語ものがたり(ローズのほうしんかされない)。
ほね
原題げんだいThe Bones of the Earth
アイハル(ダンマリ、のちにオジオン)がヘレス(ダルス)に師事しじしたときと、二人ふたり協力きょうりょくしてゴントのだい地震じしんしずめたとき顛末てんまつ
湿原しつげんで」
原題げんだいOn The High Marsh
ロークからした魔法使まほうつかいイリオス(オタク)と、かれかくまった未亡人みぼうじんエマー(メグミ)、そしてイリオスをってきただい賢人けんじんゲドの物語ものがたり
「ドラゴンフライ」(きゅうだい:トンボ)
原題げんだいDragonfly
『アースシーのふう』の重要じゅうよう人物じんぶつオーム・アイリアン(ドラゴンフライ)の幼年ようねん青春せいしゅん時代じだい、ロークへのたびしのちょうたちとの対立たいりつりゅうへの覚醒かくせいまでをえがく。
アースシー解説かいせつ
アースシーの設定せっていについて、文化ぶんか歴史れきし伝説でんせつなどの、作者さくしゃによる解説かいせつ

その、アースシー世界せかい舞台ぶたいとした作品さくひん[編集へんしゅう]

ル=グウィンの初期しょきたん編集へんしゅうふうじゅう方位ほうい』(The Winds Twelve Quarters, 1975ねん)のなかに、

  • 解放かいほう呪文じゅもん」(The Word of Unbinding, 1964ねん
  • 名前なまえおきて」(The Rule of Names, 1964ねん) イェボーが名前なまえかされた顛末てんまつのちにゲドがこの経緯けいいをもとにイェボーと取引とりひきをした。

がある。また、邦訳ほうやく短編たんぺんが2へん存在そんざいする。

  • The Daughter of Odren, 2014ねん
  • Firelight, 2018ねん

世界せかい設定せってい[編集へんしゅう]

物語ものがたり展開てんかいするアースシーは、後述こうじゅつのようにいくつものしまあつまった海域かいいきであり、大陸たいりく存在そんざいしない。おおとううみ外部がいぶ世界せかいについての知識ちしき作中さくちゅうではられていない[7]

羅針盤らしんばん機能きのうし、きたくと気温きおんがり、みなみくと気温きおんがるなど、地球ちきゅう北半球きたはんきゅう世界せかいである。また、南北なんぼく方向ほうこう移動いどうするとえる星座せいざ変化へんかする[8]地動説ちどうせつ前提ぜんていにしているともとりうる台詞せりふもある[9]

人々ひとびと大半たいはんあかはだ浅黒あさぐろはだをしており、しろはだつのはひがし海域かいいきにあるカルガド帝国ていこく住民じゅうみんのみである。

地名ちめい[編集へんしゅう]

アースシー
物語ものがたり舞台ぶたいであるおおとううみ世界せかい魔法まほうれる文化ぶんかつハードけんと、魔法まほうきらうカルガド帝国ていこくおおまかにかれ、前者ぜんしゃはさらに中央ちゅうおうおおとううみ(アーキペラゴ)と東西とうざい南北なんぼくかく辺境へんきょう海域かいいき区分くぶんされる。
ハードけんにおいて魔法まほう身近みぢか存在そんざいであり、医者いしゃにして化学かがくしゃであり天気てんきさええるちからのある魔法使まほうつかつねつえ称号しょうごう保持ほじしゃ証明しょうめいとなっている」)はもちろん、まじないるいいであってもまち識者しきしゃとして敬意けいいあつめている。対照たいしょうてきにカルガド帝国ていこくではよろいふねなどの技術ぎじゅつけ、せん略奪りゃくだつこの野蛮やばんさでられている。
ハブナーとう
アースシーにおいて、人間にんげん居住きょじゅうしているものとしては最大さいだいしまおおとううみのさらに中央ちゅうおう所在しょざいする。
ハブナー・グレートポート
ハブナーとうの、そしてアースシー最大さいだい都市とし港町みなとちょう。かつてアースシーすべてを支配しはいしていた王朝おうちょう首都しゅとであった。「帰還きかん以降いこう、アースシーおうとなったレバンネンがここを首都しゅととしている。
ロークとう
おおとううみ中海なこみ所在しょざいする、魔法使まほうつかいを養成ようせいする学院がくいん存在そんざいするしま。アースシー世界せかい中心ちゅうしんで、空位くういつづいているアースシーのおうわって、秩序ちつじょ維持いじするものとしてアースシーにつよ影響えいきょうりょくあたえている。しきものがちかづこうとすると、周囲しゅうい厳密げんみつにはそのふね進路しんろ前方ぜんぽう)にあらし防護ぼうごかべ「ロークのふう」が自動じどうきずかれる。
ゴントとう
きた海域かいいき位置いちするちいさなしまで、ゲドの故郷こきょう。ひなびた田舎いなかだが、アイハルやのちに「武勲ぶくん(いさおし)」がつくられるゲドなど、高名こうみょう魔法使まほうつかいを何人なんにん輩出はいしゅつし「ゴントの名産めいさんひんはヤギと魔法使まほうつかい」とひょうされる。アースシー北東ほくとうのカルガド帝国ていこく隣接りんせつし、度々たびたび侵攻しんこうされている。
エンラッドとう
きた海域かいいき位置いちするしまで、レバンネンの故郷こきょう近隣きんりんにあるエアとうともに、アースシーでも歴史れきしふるしまとしてられる。
アチュアンとう
カルガド帝国ていこく構成こうせいするしまひとつ。ほぼ中部ちゅうぶにある。テナーの出身しゅっしん太古たいこちからを「なきもの」としてまつる神殿しんでんがある。
セリダーとう
西にし海域かいいきのさらにさい西端せいたん位置いちする、アースシーの「さいはてのしま」。

くに組織そしき団体だんたいなど[編集へんしゅう]

学院がくいん
魔法まほうただしい方向ほうこうみちびく(しろ魔術まじゅつする)ために設立せつりつされた学校がっこう男子校だんしこう正式せいしきこうめいはなく、「学院がくいん」、または所在地しょざいちめいで「ローク」とのみばれる。
魔法まほう教授きょうじゅする、ふう姿すがたかえ・わざ・名付なづけ・まもり・薬草やくそう様式ようしきし(五十音ごじゅうおんじゅん)の9にんの「ちょう(おさ)」と大賢たいけんじんけい10にん賢人けんじんによって管理かんりされる。アースシーにおける魔法使まほうつかとは、学院がくいん卒業そつぎょうしゃのことをす、いわば学位がくいである。「魔法使まほうつかい」の称号しょうごうけていなければ、いかにすぐれたわざぬしでも「まじない」でしかない(女性じょせい入学にゅうがく許可きょかされていないため、女性じょせいはどれほど魔法まほう才能さいのうがあっても「魔法使まほうつかい」にはなれない)。入学にゅうがくたってはべつ魔法使まほうつかいから大賢たいけんじんてた、本人ほんにん魔法使まほうつかいを目指めざすにふさわしいものとする推薦すいせんじょう親書しんしょ必要ひつようまもりのちょう自身じしんしん名乗なのらなければ敷地しきちないにははいることさえ出来できない、どんなとびらけ・ひらきじょうじゅつかえかたまもりがかためられている。ぎゃく卒業そつぎょうときにはまもりのちょうしんさぐばないとそとられない。
『ゲド戦記せんき』がもちいた概念がいねんなかもっとおおきな影響えいきょうがあったのは「ただしい魔法まほう学校がっこうまなぶ」というこの制度せいどであり、『ハリーポッター』を筆頭ひっとうおおくの現代げんだいファンタジー作品さくひん追随ついずいした[2]
カルガド帝国ていこく
アースシーの東部とうぶ位置いちする小国しょうこく。ハードけんとは言語げんご人種じんしゅことなる(ハードけん人々ひとびと有色ゆうしょく、カルガドじん白人はくじん)。魔法まほうきらい、アチュアンのまつられた太古たいこ兄弟きょうだいしん、ウルアーとアトワーをあがめている。近隣きんりんのハードけんしまにたびたび侵攻しんこうしている。
りゅう
アースシーにむ、人間にんげんとはことなる知的ちてき生物せいぶつ人間にんげんよりかしこく、はるかに長命ちょうめいで、おおくは人間にんげん見下みくだしている。いくつかの例外れいがいのぞき、人間にんげんのようなとおたず、しんだけをつ。また、かれらの使つか言葉ことば魔法まほう使つかわれる「しんのことば」であり、すなわちすべてのりゅう魔法まほう使つかう。しんのことばでうそうことさえあり、人間にんげんには見抜みぬ方法ほうほうがないのでだまされることになる。

その用語ようご[編集へんしゅう]

しん(まことのな)
アースシーにおいて、すべてのものを支配しはいできるもの。すないちつぶみずいちてきまで森羅万象しんらばんしょうしんっており、しんっていればそれをあやつることができる。人間にんげんについては「本名ほんみょう」ともばれる。学院がくいんではこのすべてをおぼえることも学業がくぎょう一環いっかんとしてされる(24あいだでページの一覧いちらん消去しょうきょされる魔法まほう仕立したての教科書きょうかしょがある)。魔法使まほうつかいにはしんさぐじゅつをもっているものもおり、ゲドはまれつきしんさぐじゅつけている。
人間にんげん場合ばあい成人せいじん儀式ぎしきさいに、儀式ぎしき魔法使まほうつかいやまじないくちりて洗礼せんれいかたちらされる。通常つうじょう一生いっしょうわることはないが、つよちから魔法使まほうつかいであれば、(無理むりやり)あたらしくつけかえて相手あいてまれわらせることもできる。また、自分じぶんしん相手あいてられると、たとえ魔法使まほうつかいであってもその相手あいてたいしては完全かんぜん防備ぼうびになる[10]。そのため一般いっぱんに、よほど信頼しんらいできる相手あいてでないかぎり、しん他人たにんかすことはない。
魔法まほう
魔法使まほうつかいのるいによってかけられる。魔法まほうをかけるにはまず相手あいて(またはもの)のしんらなければならない。そのうえ神聖しんせい文字もじとなえる。すると相手あいてあやつり、さらにはそのものの本質ほんしつえることさえできる。しかし本質ほんしつえることは宇宙うちゅう規律きりつ一時いちじてきにせよ操作そうさすることでもあり、濫用らんようきびしくいましめられている。神聖しんせい文字もじとは、太古たいこむかし、セゴイが海中かいちゅうから島々しまじまげアースシーの世界せかいつくったとき使つかわれかたられた「しんのことば」であり、ひいてはりゅうのことばでもある。
太古たいこちから
大地だいちちからであり、アースシー創世そうせいから存在そんざいするともわれる。カルガド帝国ていこくでは信仰しんこう対象たいしょうともなっており、その中心ちゅうしんがアチュアンの墓所はかしょである。
太古たいこちからかならずしも魔法まほう対立たいりつするものではなかったが、ロークの学院がくいん設立せつりつ以降いこう徐々じょじょさげすまれるようになった。しかし、ロークとう自体じたい本来ほんらい太古たいこちから中心ちゅうしんであり、物語ものがたりちゅうでも、りゅうのカレシンなどに度々どど言及げんきゅうされている。
黄泉よみくに(よみのくに)
死者ししゃのゆく世界せかい仮死かし状態じょうたいになると、生者しょうじゃ世界せかいとをける石垣いしがきまでくことができる。不毛ふもうかわききった土地とちで、そこにらす死者ししゃはいかなる感情かんじょうあらわさず、かつてしたしかったものっても、づくこともない。ハードけん人々ひとびとのみの姿すがたられ、輪廻りんね転生てんせい死生しせいかんとするカルガドでは「魔法使まほうつかいたちはぬと、まれわることもない、つばさがあるのにそらべない怪物かいぶつになってしまう」というかたちでいいつたえられている。物語ものがたり要所ようしょ度々たびたび登場とうじょうし、最終巻さいしゅうかんではアースシーの魔法まほう原理げんりである「しん」のメカニズムと、黄泉よみくにがなぜまれたのか、なぜ死者ししゃ感情かんじょうがないのかというなぞかされる。

登場とうじょう人物じんぶつ[編集へんしゅう]

ゲド / ハイタカ原書げんしょではSparrowhawk
アースシーの魔法使まほうつかいで大賢たいけんじんきた海域かいいきのゴントとうじゅうほんはんむら出身しゅっしん。“ロークの学院がくいんはじまって以来いらい秀才しゅうさい”とひょうされ、最後さいごだい賢人けんじん。ゲドが退しりぞいたのちだい賢人けんじん選出せんしゅつされていない。またりゅう交渉こうしょう出来できもの竜王りゅうおうでもある。学院がくいんせい時代じだいに「かげ」をがおきずう。レバンネンととも最果さいはてのおもむ世界せかい均衡きんこうもどすが、魔法まほうちからうしなう。
アイハル / オジオン
ゴントとう南西なんせいにある最大さいだいまち、ル・アルビに魔法使まほうつかい。別名べつめい沈黙ちんもくのオジオン”。山羊やぎいだったゲドに魔法使まほうつかいの才能さいのう見出みいだし、かれ魔法まほう学院がくいんがあるロークとうおくす。ゴントのだい地震じしんを、Sなみまえ師匠ししょうともしずめ、被害ひがいるのをふせいだことで島民とうみんから敬愛けいあいされている。訳者やくしゃ清水しみずいわく、「オギオン」(Ogion、まつかさ)を誤訳ごやくしてしまい、訂正ていせい出来できなかったとのこと[11]
エスタリオル / カラスノエンドウ
ゲドの同期生どうきせいひがし海域かいいきのイフィッシュとう出身しゅっしん。「かげ」におそわれ重傷じゅうしょうい、自分じぶんさえしんじられなくなっていたゲドを親友しんゆうみとめ、みずからのしんかした。ゲドよりさき卒業そつぎょうし、やはり魔法使まほうつかい(ゲドは事件じけん原因げんいん留年りゅうねんした)。のち、ゲドとともに「かげ」との対決たいけつのぞむ。いもうとのケスト(ノコギリソウ しん太古たいこ言葉ことばでメダカのこと)、おとうとウミガラスがいる。ウミガラスのほうしん不明ふめい
ヘレス / ダルス
アイハルの師匠ししょう。そのむかし、ゴントだい地震じしんきたさいに、当時とうじだい一線いっせん魔法使まほうつかいだったアイハルとともにゴントやまびかけて、被害ひがい寸前すんぜんれをしずめた。アイハルとゲド、テナー、テハヌーのいえぬし
テナー / アルハ、ゴハ
かつてカルガド帝国ていこくにおいてアチュアンの墓地ぼち巫女ふじょをしていたおんな。ゲドの活躍かつやくにより、巫女ふじょアルハ(カルガドで「らわれししゃ」)からテナーにもどる。 のちにアイハルの庇護ひごけ、テハヌーをる。世界せかい調和ちょうわたもつエレス・アクベのうでたまきをカルガド帝国ていこくからもどした「うでたまきのテナー」として、しんおおやけにしている数少かずすくない存在そんざい
テハヌー / テルー
おさなころ両親りょうしんからの虐待ぎゃくたいによりかおひだり半分はんぶんケロイドになってしまった少女しょうじょ人間にんげんおやからまれたりゅう化身けしんでカレシンのむすめわれる。
レバンネン / アレン
エンラッドの王子おうじはエンラッドで“けん”。しん太古たいこ言葉ことばナナカマドのこと。ゲドととも最果さいはてのおもむき、きて死後しご世界せかいからかえり、アースシーの王座おうざく。
カレシン
さい長老ちょうろうにしてりゅうぞくちょうつとめるりゅうくずれてしまった世界せかい均衡きんこうふたたただしてもらうわりに、ゲドたち援助えんじょする。
アイリアン / ドラゴンフライ(旧訳きゅうやく:トンボ)
オーム・アイリアンとも。テハヌーとおなじく、人間にんげんおやちながらりゅうである存在そんざい自分じぶん存在そんざい探求たんきゅうしていく過程かていで、女人にょにん禁制きんせい徹底てっていされているロークの学院がくいん例外れいがいてきまねかれ、おのれしん姿すがた見出みいだす。例外れいがいてきしんを2つつ。
イエボー
人間にんげん領地りょうち侵入しんにゅうしてき、子供こどもそだてていたりゅう普段ふだんはペンダーにいる。度々たびたび人間にんげんふね居住きょじゅうおそっていたが、ゲドにしん見破みやぶられ、調伏ちょうぶくされる。ひと姿すがたけることができるという。
ゲドのそと伯母おば
ゲドのははあねかれまれたむらおんなまじないはやくにははくしたゲドのははわりでもあり最初さいしょ魔法まほう師匠ししょうでもある。高度こうど教育きょういくけておらず、魔法まほう乱用らんようするような傾向けいこうはあったものの、だい賢人けんじんとなったゲドが「かなりのつよちから」とひょうする魔法まほうりょくち、とうおもわれるじゅつえらんでおい教授きょうじゅしていくなど教育きょういくしゃとしての分別ふんべつゆうしていた。

映像えいぞう作品さくひん[編集へんしゅう]

テレビシリーズ[編集へんしゅう]

  • べいSCI FI Channelが、「かげとのたたかい」「こわれたうでたまき」のストーリーを Earthsea のタイトルで実写じっしゃ映像えいぞう(ミニシリーズ)、2004ねんあき放送ほうそうされた。ゲドの、オジオンやくにベテラン黒人こくじん俳優はいゆうダニー・グローヴァーてられている[12]日本にっぽんでも『ゲド〜たたかいのはじまり〜』として、DVDが2006ねん8がつ4にち発売はつばいされた(日活にっかつ)。
  • A24はん。- 2018ねん、ル=グウィンが他界たかいするまえにプロデューサーのジェニファー・フォックス英語えいごばん映画えいがけん取得しゅとくしたことがほうじられる[13]。2019ねん時点じてん映画えいがシリーズの予定よていを、TVシリーズえて製作せいさく続行ぞっこう出資しゅっし制作せいさくするのはインディペンデントけいのA24[14]

アニメ映画えいが[編集へんしゅう]

スタジオジブリ制作せいさく宮崎みやざき吾朗ごろう監督かんとく脚本きゃくほん東宝とうほう配給はいきゅう2006ねん7がつ29にちより、長編ちょうへんアニメーション映画えいがとして劇場げきじょう公開こうかいされた。なお、この映画えいが副題ふくだいとしてもちいられている Tales from Earthsea は、原作げんさく「ゲド戦記せんき外伝がいでん(ドラゴンフライ)」の原題げんだいである。

「さいはてのしまへ」を中心ちゅうしんに、まき要素ようそ宮崎駿みやざきはやお短編たんぺんシュナのたび」の要素ようそくわえてストーリーを編集へんしゅうした、独自どくじ脚本きゃくほんである。ル=グウィンの公式こうしきコメント[15]で、はんする内容ないようあらためられていたことがあきらかになり、論議ろんぎんでいる。

関連かんれん事項じこう[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 清水しみず真砂子まさこ訳者やくしゃあとがき」『帰還きかん:ゲド戦記せんき最後さいごしょ岩波書店いわなみしょてん1999
  2. ^ a b Craig, Amanda. Classic of the month: A Wizard of Earthsea. The Guardian. September 24, 2003. Accessed November 10, 2014.
  3. ^ A Wizard of Earthsea reader's guide. The Big Read. National Endowment for the Arts.
  4. ^ Atwood, Margaret. Quoted in "Margaret Atwood Chooses ‘A Wizard of Earthsea’". The Wall Street Journal, October 16, 2014. Accessed November 10, 2014.
  5. ^ 110まんさつ無料むりょう配布はいふ。“ゲドをむ。”のねらいをむ-宮崎みやざき吾朗ごろう監督かんとく作品さくひん「ゲド戦記せんき」DVDのユニークなプロモーション(2ページ日経にっけいBP、2007ねん閲覧えつらんには会員かいいん登録とうろく無料むりょう)が必要ひつよう
  6. ^ https://www.iwanami.co.jp/book/b269795.html 著者ちょしゃ略歴りゃくれきこう参照さんしょう
  7. ^ 『さいはてのしまへ』だい5しょうにおけるゲドの台詞せりふ世界せかいじつひろい。外界がいかいてしなくつづき、とても人間にんげん知識ちしきのおよぶところではないわ」
  8. ^ 『さいはてのしまへ』だい5しょうより「ゴバルドンにちがいない。みなみ海域かいいきでしかえないほしだ。(りゃく)さらに南下なんかすると、ゴバルドンにつづいて、もうあとやっつのほし順々じゅんじゅん水平すいへいせんのかなたからあらわれて(後略こうりゃく)」
  9. ^ 『さいはてのしまへ』だい12しょうより「わしの肉体にくたい太陽たいようのもの、おおきくめぐ地球ちきゅうの、あのセリダーのはまにあるのだから」
  10. ^ かげ」がゲドのしんっていたのは自分じぶん自身じしんでもあったため
  11. ^ 岩波いわなみ少年しょうねん文庫ぶんこばんあとがきより
  12. ^ 外部がいぶリンク:SCIFI.COM Earthsea、およびこのドラマへの原作げんさくしゃル・グウィンのコメント
  13. ^ 編集へんしゅう市川いちかわはるか (2018ねん5がつ28にち). “ファンタジー小説しょうせつ「ゲド戦記せんきふたた映画えいが”. シネマトゥデイ. 株式会社かぶしきがいしゃシネマトゥデイ. 2020ねん5がつ3にち閲覧えつらん
  14. ^ 「ゲド戦記せんき」をA24がテレビドラマ”. 映画えいが.com. 株式会社かぶしきがいしゃエイガ・ドット・コム (2019ねん9がつ8にち). 2020ねん5がつ3にち閲覧えつらん
  15. ^ 原作げんさくしゃル=グウィンの公式こうしきコメント:Gedo Senki, a First Response 日本語にほんごやくジブリ映画えいが「ゲド戦記せんき」にたいする原作げんさくしゃのコメント全文ぜんぶん

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]