コドリ渓谷けいこく

コドリ渓谷けいこく
グルジア語ご: კოდორის ხეობა アブハズ語ご: Кәыдырҭа
コドリ渓谷けいこく コドリ渓谷けいこく コドリ渓谷けいこく
地理ちり
国くに	ジョージア
州しゅう/地域ちいき	アブハジア自治じち共和きょうわ国こく
座標ざひょう	北緯ほくい43度ど05分ふん 東経とうけい41度ど45分ふん
河川かせん	コドリ川がわ

コドリ渓谷けいこく（コドリけいこく、グルジア語ご: კოდორის ხეობა、グルジア語ごラテン翻こぼし字じ: Kodoris Kheoba、アブハズ語ご: Кәыдырҭа、アブハズ語ごラテン翻こぼし字じ: Kwydyrta、ロシア語ご: Кодорское ущелье）は、ジョージアのアブハジア自治じち共和きょうわ国こく北東ほくとう部ぶにある渓谷けいこく。 この渓谷けいこくの上流じょうりゅう部ぶにはスヴァン人じんが住すんでおり、1993年ねん以降いこうのアブハジア地域ちいきの中なかで唯一ゆいいつ、ジョージア中央ちゅうおう政府せいふが直接ちょくせつ統治とうちした地域ちいきである。2006年ねんからはこの地域ちいきを公式こうしきで「上うえアブハジア」と呼よんでいる。2008年ねん8月がつにロシア軍ぐんとアブハジア共和きょうわ国軍こくぐんが侵攻しんこうし、コドリ渓谷けいこく上流じょうりゅうを占領せんりょうした（コドリ渓谷けいこくの戦たたかい）。

概要がいよう

上うえアブハジアとコドリ渓谷けいこくの地図ちず

コドリ渓谷けいこくは、アブハジア北東ほくとう部ぶにあるコドリ川がわの上流じょうりゅうにあり、ジョージア本国ほんごくとの行政ぎょうせい境界きょうかい線せんから約やく30キロメートル離はなれている。海岸かいがん沿ぞいに位置いちするアブハジア自治じち共和きょうわ国こくの首都しゅとスフミとは約やく65キロメートルの距離きょりがある。標高ひょうこうは1,300メートルから3,984メートルの範囲はんいにあり、針葉樹しんようじゅの山林さんりんから雪景色ゆきげしきまで、多様たような景観けいかんが見みられる。

気候きこうは高山こうざん性せいで、冬季とうきは積雪せきせつする。年間ねんかん降水こうすい量りょうは1,600ミリメートルから2,000ミリメートル超ちょう。（1月がつ：120ミリメートル、4月がつ：160ミリメートル、7月がつ：180ミリメートル、10月：160ミリメートル）。1年ねんのうち30日にち以上いじょうは大雨おおあめを観測かんそくする。積雪せきせつ日数にっすうは約やく180日にち。月つき平均へいきん気温きおんは1月がつが摂氏せっし氷点下ひょうてんか3度ど、4月がつが摂氏せっし3度ど、7月がつが摂氏せっし14度ど、10月が摂氏せっし5度どで、月つき平均へいきん最高さいこう気温きおんは7月がつが摂氏せっし28度どである。

コドリ渓谷けいこくの高地こうちにはラタ、オマリシャラ、ゼモ・アジャラなどの村むらがある。行政ぎょうせい的てきには2008年ねん8月がつまで、事実じじつ上じょうの上うえアブハジアの一部いちぶであったが、アブハジア共和きょうわ国こくはこれらの村むら々についてグルリプシ地区ちくの一部いちぶであると主張しゅちょうしている。2002年ねんのジョージアの国勢調査こくせいちょうさによると、上うえアブハジアの当時とうじのジョージアの支配しはい地域ちいきの人口じんこうは1,956人にんで、うちジョージア人じん（スヴァン人じん）は1,912人にんであった。

2011年ねんのコドリ渓谷けいこく上流じょうりゅうの人口じんこうは196人にんであり、大だい部分ぶぶんがジョージア人じん（スヴァン人じん）であった。ロシアの通信つうしん社しゃスプートニクによると、2020年ねんのアジャラには約やく100人にんが住すんでおり、主おもに養蜂ようほうと畜産ちくさんに従事じゅうじしていた。またアジャラの住民じゅうみんはアブハジア共和きょうわ国こくのパスポートを保持ほじしていなかったと報ほうじた。

歴史れきし

アブハジアにおけるコドリ渓谷けいこく上流じょうりゅうの位置いちを示しめした地図ちず

アブハジアは1810年ねんから1864年ねんまで段階だんかい的てきにロシア帝国ていこくに併合へいごうされていったが、それ以前いぜんはアブハジアの歴史れきし的てきな地域ちいきであるダリとツェベルダがコドリ渓谷けいこくの大だい部分ぶぶんを占しめていた。これらコドリ渓谷けいこく上流じょうりゅう部ぶのコミュニティは、当時とうじアブハジア公国こうこくを統治とうちしていたシェルヴァシゼ家かの中央ちゅうおう権力けんりょくから独立どくりつ状態じょうたいにあった。1866年ねんのリフニ蜂起ほうきの結果けっか、ロシア帝国ていこくは虐殺ぎゃくさつを強つよめ、この土地とちに暮くらしていたアブハズ人じんの多おおくがオスマン帝国ていこくに逃のがれた。過疎かそ化かしたツェベルダは特別とくべつな「入植にゅうしょく地ち管理かんり者しゃ」の下したに置おかれた。コドリ渓谷けいこく下流かりゅう部ぶにはアルメニア人じん、ジョージア人じん（メグレル人じん）、ロシア人じんが居住きょじゅうし、上うえ流域りゅういき（ラタよりも上流じょうりゅう）にはスヴァン人じんが居住きょじゅうした。

現代げんだい史し

アブハジア紛争ふんそう中なかの1994年ねん3月がつ24日にちから25日にちにかけて、ラタの村むらがアブハジア共和きょうわ国こくの軍ぐんによって占領せんりょうされた。1994年ねん5月がつに締結ていけつされたモスクワ合意ごういによると、コドリ渓谷けいこく上流じょうりゅうはアブハジア共和きょうわ国こく当局とうきょくの支配しはい下かから除外じょがいされ、停戦ていせんラインはラタ村むらの北東ほくとうに引ひかれた。アブハジア紛争ふんそう停戦ていせん後ごのアブハジアにおいて、ジョージア人じんが居住きょじゅうする地域ちいきは、ガリ地区ちくと、このコドリ渓谷けいこく上流じょうりゅうの2地域ちいきとなった。

国際こくさい連合れんごうは監視かんし団だんを派遣はけんしていたが、1994年ねん7月がつに安保理あんぽり決議けつぎ937を採択さいたくし、コドリ渓谷けいこくでの活動かつどうに次つぎの2任務にんむを与あたえた。

1. アブハジアとの境界きょうかい線せんにおける、コドリ渓谷けいこくから撤退てったいするジョージアの軍隊ぐんたいの監視かんし。
2. コドリ渓谷けいこくの定期ていき的てきな巡回じゅんかい

その後ご、コドリ渓谷けいこくでの実際じっさいの軍事ぐんじ活動かつどうはなかったものの、いくつかの危険きけんな事象じしょうが発生はっせいした。

• 人質ひとじち: コドリ渓谷けいこくにて、国連こくれん監視かんし団だんを巻まき込こんだ人質ひとじち事件じけん3件けんが発生はっせい（1999年ねん10月がつ、2000年ねん6月がつ、2000年ねん12月がつ）。いずれも人質ひとじちは釈放しゃくほうされた。
• ヘリコプターへの攻撃こうげき: 2001年ねん10月がつ8日にち、コドリ渓谷けいこく上空じょうくうにて国連こくれん監視かんし団だんのヘリコプターが何者なにものかに撃墜げきついされ、乗員じょういん9人にん全員ぜんいんが死亡しぼうした。
• 2001年ねんコドリ渓谷けいこく危機きき: 2001年ねん秋あき、ルスラン・ゲラエフ指揮しき官かん率ひきいるチェチェン共和国ちぇちぇんきょうわこくの戦闘せんとう機き集団しゅうだんがジョージア側がわからコドリ渓谷けいこくに侵入しんにゅうし、ジョージアとアブハジアの関係かんけいが再ふたたび大おおきく燃もえ上あがる事態じたいとなった。ロシア空軍くうぐんは戦闘せんとう員いんに対たいして空爆くうばくを実施じっしし、地元じもと当局とうきょくによると住民じゅうみんの約やく15パーセントが家いえを追おわれ、トビリシで難民なんみん認定にんていを求もとめた。この地域ちいきはアブハジアと国連こくれんから注視ちゅうしされていたが、ジョージアは軍ぐんを派遣はけんして対応たいおうした。チェチェン軍ぐんは最終さいしゅう的てきに、ロシア軍ぐんとアブハジア共和きょうわ国軍こくぐんに敗北はいぼくした。
• ロシア軍ぐんの立たち入いり: 2002年ねん4月がつ2日にち、ジョージアとアブハジア共和きょうわ国こくはコドリ渓谷けいこくの非ひ軍事ぐんじ化か協定きょうていに署名しょめいした。UNOMIGが監かん視しするジョージア軍ぐん350人にんの撤退てったいは4月がつ10日とおかに完了かんりょうした。4月12日にち朝あさ、ロシア陸軍りくぐん100人にんが平和へいわ維持いじ活動かつどうの委任いにんを受うけずにコドリ渓谷けいこくに入はいった。ロシア陸軍りくぐんは間まもなくジョージア国防省こくぼうしょうの軍ぐんに包囲ほういされた。ジョージアのエドゥアルド・シェワルナゼ大統領だいとうりょうが事態じたい収拾しゅうしゅうのためコドリに向むかったことで、武力ぶりょく衝突しょうとつの可能かのう性せいは防ふせがれた。アブハジア紛争ふんそうに関かかわる国連こくれん代表だいひょうもロシアの行動こうどうを非難ひなんした。4月14日にち、ロシア軍ぐんはコドリ渓谷けいこくを離はなれた。
• 2006年ねんコドリ渓谷けいこく危機きき: 2006年ねん7月がつ、地元じもとの民兵みんぺい指導しどう者しゃエムザル・クヴィツィアニがジョージアに反旗はんきを翻ひるがえした。ジョージア政府せいふは内務省ないむしょう特殊とくしゅ部隊ぶたいをコドリ渓谷けいこくに派遣はけんし、事態じたいを収束しゅうそくさせた。この地域ちいきの治安ちあんとジョージアの支配しはい権けんが回復かいふくしたことで、ジョージアの大統領だいとうりょうはトビリシに拠点きょてんを置おいていたアブハジア亡命ぼうめい政府せいふに対たいし、政府せいふの臨時りんじ行政ぎょうせいセンターをコドリ渓谷けいこくに移転いてんするよう要望ようぼうした。そしてジョージア政府せいふは新あらたな政治せいじ機構きこうがスムーズに進すすめられるよう、コドリ渓谷けいこくのインフラを整備せいびするプロジェクトを開始かいしした。またジョージアは国連こくれん監視かんし団だんに対たいし、アブハジア分離ぶんり主義しゅぎ勢力せいりょくが支配しはいするコドリ渓谷けいこく下流かりゅうについても上流じょうりゅうと同様どうようの監視かんしをするよう求もとめたが、ロシアの平和へいわ維持いじ軍ぐんが監視かんし活動かつどうに加くわわることは拒否きょひした。その後ご、ジョージアはロシアの平和へいわ維持いじ軍ぐんが監視かんしに参加さんかすることを許可きょかした。
• 国連こくれん監視かんし団だんとロシア平和へいわ維持いじ軍ぐんが2006年ねん10月がつ12日にちに実施じっしした合同ごうどうパトロールにて、コドリ渓谷けいこく上流じょうりゅうにジョージア内務省ないむしょう職員しょくいん550人にんが駐在ちゅうざいしていることを発見はっけんした。パトロールチームは、同どう地域ちいきに対たいしては陸軍りくぐん部隊ぶたいの派遣はけんを禁きんじた1994年ねんのモスクワ合意ごういがあるが、内務省ないむしょう職員しょくいんの駐在ちゅうざいはこれに違反いはんするものではないとの見解けんかいを示しめした。国連こくれん監視かんし団だんは10月13日にち、コドリ渓谷けいこくに迫撃はくげき砲ほうと対空たいくう砲ほうが存在そんざいすることも判明はんめいしたと発表はっぴょうした。ジョージア側がわは、これらの火砲かほうは7月がつ末まつに行おこなわれた作戦さくせんで地元民じもとみん兵へいグループから押収おうしゅうしたものであると説明せつめいした。
• コドリ渓谷けいこくヘリコプター爆ばく撃げき事件じけん: 2007年ねん3月がつ11日にち夜よる、3機きの戦闘せんとうヘリコプターMi-24がアブハジア自治じち共和きょうわ国こく政府せいふの臨時りんじ本部ほんぶとして機能きのうしていたチハルタ村むらを空爆くうばくした。政府せいふ本部ほんぶは被害ひがいを受うけたが、負傷ふしょう者しゃはいなかった。ジョージアは、この攻撃こうげきをロシアが行おこなったとして非難ひなんした。ロシアは攻撃こうげきの実行じっこうについて公式こうしきに否定ひていしたが、ロシア当局とうきょく者しゃはこれがジョージアにとって「非常ひじょうに明確めいかくなシグナル」になったと発言はつげんした。
• ボフンジャラ事件じけん: ジョージア内務省ないむしょうは2007年ねん9月がつ20日はつか、新あたらしい道路どうろの建設けんせつが進行しんこう中ちゅうのジョージア支配しはい地域ちいきに侵入しんにゅうしようとしたアブハジア共和きょうわ国こくの武装ぶそう集団しゅうだんと武力ぶりょく衝突しょうとつが発生はっせいしたと報告ほうこくした。この結果けっか、アブハジア共和きょうわ国こくの民兵みんぺい2名めいが死亡しぼう、1名めいが負傷ふしょうし、6名めいがジョージアの警察けいさつ部隊ぶたいに拘束こうそくされた。この事件じけんの以前いぜん、アブハジア共和きょうわ国こくのセルゲイ・バガプシュ大統領だいとうりょうは「事実じじつ上じょうの当局とうきょくは、コドリ渓谷けいこく上流じょうりゅうの支配しはい権けんを獲得かくとくするための措置そちを講こうじる権利けんりを、常つねに保持ほじしている」と警告けいこくしていた。また同日どうじつ、ロシア平和へいわ維持いじ軍ぐんとアブハジア共和きょうわ国こくの国境警備隊こっきょうけいびたいが武力ぶりょく衝突しょうとつし、2名めいが死亡しぼうした。
• 2008年ねん南みなみオセチア紛争ふんそう: 紛争ふんそう開始かいし直後ちょくご、アブハジア共和きょうわ国軍こくぐんはジョージア軍ぐんをコドリ渓谷けいこく上流じょうりゅうから追おい出だすことを宣言せんげんし、コドリ渓谷けいこく上流じょうりゅうへの砲撃ほうげきを開始かいしした。ジョージアの情報じょうほう筋すじによると、ロシア軍機ぐんきがコドリ渓谷けいこくのジョージア支配しはい地域ちいきを攻撃こうげきした。アブハジア共和きょうわ国こく当局とうきょくは国連こくれん監視かんし団だんに対たいして「安全あんぜん上じょうの理由りゆう」で撤退てったいを要請ようせいし、国連こくれん監視かんし団だんはコドリ渓谷けいこくから撤退てったいした。2008年ねん8月がつ12日にち、アブハジア共和きょうわ国軍こくぐんは、ジョージアが支配しはいしていたコドリ渓谷けいこくの大だい部分ぶぶんを制圧せいあつし、支配しはい権けんを獲得かくとくした。