サン＝ジェルマン条約じょうやく

同盟どうめい及󠄁聯合れんごう國こくト墺おう地ち利國としくにトノ平たいら󠄁和かず條約じょうやく󠄁
	条約じょうやく発効はっこうを告示こくじするオーストリアの官報かんぽう
通称つうしょう・略称りゃくしょう	サン＝ジェルマン条約じょうやく、サン＝ジェルマン＝アン＝レー条約じょうやく
署名しょめい	1919年ねん9月がつ10日とおか
署名しょめい場所ばしょ	フランス共和きょうわ国こくパリサン＝ジェルマン＝アン＝レー城じょう
発効はっこう	1920年ねん7月がつ16日にち
寄託きたく者しゃ	フランス共和きょうわ国こく政府せいふ
文献ぶんけん情報じょうほう	大正たいしょう9年ねん10月がつ14日にち官報かんぽう号外ごうがい条約じょうやく第だい3号ごう
言語げんご	フランス語ふらんすご、英語えいご、イタリア語ご
主おもな内容ないよう	連合れんごう国こくとオーストリアの講和こうわ、国際こくさい連盟れんめい・国際こくさい労働ろうどう機関きかんの発足ほっそくなど
条文じょうぶんリンク	国立こくりつ公文書こうぶんしょ館かんデジタルアーカイブ; 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション
	ウィキソース原文げんぶん
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サン＝ジェルマン条約じょうやくまたはサン＝ジェルマン＝アン＝レー条約じょうやく（サン＝ジェルマンじょうやく、サン＝ジェルマン＝アン＝レーじょうやくフランス語ふらんすご: Traité de Saint-Germain-en-Laye、Traité de Saint-Germain、英語えいご: Treaty of Saint-Germain-en-Laye 、Treaty of Saint-Germain、イタリア語ご: Trattato di Saint-Germain-en-Laye、Trattato di Saint-Germaine、ドイツ語ご: Vertrag von Saint-Germain）は、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんの後のちの1919年ねん 9月がつ10日とおかに連合れんごう国こく側がわとオーストリア（第だい一いち共和きょうわ国こく）の間あいだで結むすばれた条約じょうやくの通称つうしょう。

フランス語ふらんすご、英語えいご、イタリア語ごで作成さくせいされ、フランス語ふらんすご版ばんを基本きほんの正文せいぶんとする。

正式せいしき名称めいしょう

正文せいぶんであるフランス語ふらんすごの正式せいしき名称めいしょうは « Traité de paix entre les Puissances alliées et associées et l’Autriche »^[1]
英文えいぶんでの正式せいしき名称めいしょうは “Treaty of Peace between the Allied and Associated Powers and Austria”^[2]
イタリア語ごでの正式せいしき名称めいしょうは «Trattato di pace tra le potenze alleate e associate e l’Austria»
ドイツ語ごの官報かんぽう公示こうじ名称めいしょうは „Staatsvertrag von Saint-Germain-en-Laye“^[3]
日本語にほんごでの名称めいしょうは「同盟どうめい及聯合れんごう国こくト墺おう地ち利国としくにトノ平和へいわ条約じょうやく」

通称つうしょう

この通称つうしょうは締結ていけつが行おこなわれたサン＝ジェルマン＝アン＝レーのサン＝ジェルマン＝アン＝レー城じょうにちなむ名称めいしょうであるので、正確せいかくにはサン＝ジェルマン＝アン＝レー条約じょうやくと呼よぶべきかもしれないが、一般いっぱんにはやや省略しょうりゃくして（日本語にほんごはもとより英語えいご、フランス語ふらんすごなどでも）サン＝ジェルマン条約じょうやくと呼よばれる。この地ちで締結ていけつされた条約じょうやくは他ほかにもいくつか存在そんざいしている（サン＝ジェルマン＝アン＝レー条約じょうやく (曖昧あいまいさ回避かいひ) 参照さんしょう）。

概要がいよう

オーストリア＝ハンガリー帝国ていこくは第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん末期まっきにはイタリア王国おうこくの攻勢こうせいと諸しょ民族みんぞくの反乱はんらんの中なかで内乱ないらん状態じょうたいに陥おちいり、1918年ねん 11月3日にち、イタリア王国おうこくとの間あいだでヴィラ・ジュスティ休戦きゅうせん協定きょうていを結むすび敗北はいぼくした。オーストリア＝ハンガリー帝国ていこくはその後ご解体かいたいしたため、新あらたに成立せいりつしたドイツ＝オーストリア共和きょうわ国こくとオーストリアから分わかれたハンガリー王国おうこくは別々べつべつに講和こうわすることとなった。サン＝ジェルマン＝アン＝レーでの講和こうわ会議かいぎは1919年ねん5月がつに始はじまったが、オーストリア代表だいひょう団だんの出席しゅっせきは認みとめられず、文書ぶんしょでの提案ていあんしか認みとめられていなかった。

この条約じょうやくは、1920年ねん7月がつ16日にちに発効はっこうした。ドイツ＝オーストリア共和きょうわ国こくはこの調印ちょういんにおいて「オーストリア共和きょうわ国こく」の国名こくめいで調印ちょういんし、国名こくめいから「ドイツ」は排除はいじょされることとなった。条約じょうやくの文言もんごんでも、国際こくさい連盟れんめい理事りじ会かいの承認しょうにんがない限かぎりオーストリアは独立どくりつを動うごかされることはないとされ、事実じじつ上じょうドイツとオーストリアの合邦がっぽう（アンシュルス）が禁止きんしされた。

ヴェルサイユ条約じょうやくと同様どうように第だい一いち編へんは国際こくさい連盟れんめい規約きやく、第だい十じゅう三さん編へんは国際こくさい労働ろうどう機関きかん規約きやくである。サン＝ジェルマン条約じょうやく発効はっこう後ご、国際こくさい連盟れんめいはオーストリアの復興ふっこう事業じぎょうにかかわり、戦勝せんしょう国こくは東欧とうおうにさらなる投資とうしを行おこない開発かいはつを競きそった。そして1924年ねんごろ、これらの地域ちいきに農業のうぎょう恐慌きょうこうが起おこった。オーストリア経済けいざいは縮小しゅくしょうしてゆき、世界せかい恐慌きょうこうで危機ききが顕在けんざい化かした。

条約じょうやくはオーストリア＝ハンガリー帝国ていこく政府せいふが存在そんざいしないことを確認かくにんし、新あたらしいオーストリアは領有りょうゆう権けんを失うしなった地域ちいきと、ブルガリアおよびトルコ国内こくない、その他たすべての海外かいがいにおける一切いっさいの権益けんえきを放棄ほうきするものと約やくした。この点てん、オーストリアはドナウ川がわの国際こくさい河川かせん化かを承認しょうにんするとも規定きていした。第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんの賠償ばいしょうについて、オーストリアが負担ふたんする賠償ばいしょう額がくは賠償ばいしょう委員いいん会かいの裁定さいていに委ゆだねられた。これは後のちにヤング案あんで免除めんじょされる。戦時せんじ中ちゅう、オーストリア国立こくりつ銀行ぎんこうがオスマン債務さいむ管理かんり局きょく名義めいぎで政府せいふ紙幣しへい第だい一いち回分かいぶんの保証ほしょうとして寄託きたくされた正金しょうきんは、条約じょうやく施行しこう後ご一いち月がつ以内いないに指定してい官憲かんけんに引ひき渡わたすものとされた（第だい210条じょう第だい1項こう）。

主おもな条約じょうやく内容ないよう

領土りょうどに関かんする規定きてい

ボヘミア、モラヴィアのドイツ語ご圏けん地域ちいき、ならびに下しもオーストリアのいくつかの都市としは、新あらたに成立せいりつしたチェコスロバキアに属ぞくする。これらは後のちにズデーテン地方ちほうの名なで呼よばれる。
南みなみチロルのドイツ語どいつご圏けん（現在げんざいのボルツァーノ自治じち県けん）、トレンティーノ地方ちほうはイタリア王国おうこくに属ぞくする（未み回収かいしゅうのイタリア）。
下しもシュタイアーマルクのいくつかの地区ちく（現げんスロベニア領りょうシュタイエルスカ地方ちほう）とケルンテンのミース渓谷けいこく（現げんスロベニア領りょうコロシュカ地方ちほう）は、セルボ・クロアート・スロヴェーヌ王国おうこくに属ぞくする。
フィウメ（現在げんざいのクロアチア領りょうリエカ）は、セルボ・クロアート・スロヴェーヌ王国おうこくに属ぞくする（これを不服ふふくとするイタリアとの間あいだで係争けいそうとなり、最終さいしゅう的てきにイタリアに属ぞくすることになる）。
ハンガリー西部せいぶのいくつかの地区ちくはブルゲンラント州しゅうの名なでオーストリアに属ぞくする。
クラーゲンフルトの帰属きぞくは住民じゅうみん投票とうひょうによって決定けっていする。
ガリツィア・ロドメリア王国おうこく（ハールィチ・ヴォルィーニ大公たいこう国こくの故こ地ちで、1772年ねんの第だい一いち次じポーランド分割ぶんかつによりオーストリア帝国ていこくが手てに入いれた地域ちいき）は、再建さいけんされたポーランド（ポーランド第だい二に共和きょうわ国こく）に併合へいごうされる。
オーストリア領りょうシュレージエンはポーランド（チェシン・シレジア）とチェコスロバキア（チェコ領りょうスレスコ）に分割ぶんかつされる。
チェコスロバキア、セルブ・クロアート・スロヴェーヌ王国おうこく（ユーゴスラビア王国おうこく）、旧きゅうロシア帝国ていこく地域ちいきの独立どくりつを承認しょうにんする。
シュレースヴィヒの帰属きぞくについて、ドイツとデンマークが行おこなった決定けっていを承認しょうにんする。

領土りょうど以外いがいの海外かいがい権益けんえきに関かんする規定きてい

オーストリア＝ハンガリー帝国ていこくの所有しょゆう(駐ちゅうイタリア大使館たいしかんとして使用しよう)であり、戦時せんじ中ちゅうにイタリアに占拠せんきょされたローマのヴェネツィア宮殿きゅうでんを正式せいしきに無償むしょうで譲渡じょうとする。
エジプト王国おうこくに対たいするイギリスの保護ほご権けんを承認しょうにんし、エジプトにおける治外法権ちがいほうけんを放棄ほうきする。
中国ちゅうごく内ないに設置せっちされていた天津てんしんの自じ国民こくみん居留きょりゅう地ちの契約けいやくは解除かいじょされる。

戦争せんそう賠償ばいしょうに関かんする規定きてい

イタリアおよびルーマニアに対たいしては現物げんぶつ賠償ばいしょうとして家畜かちくを提供ていきょうする。またイタリアの君主くんしゅが過去かこに保有ほゆうしていた宝飾ほうしょく品ひん・美術びじゅつ品ひんをイタリアに返還へんかんする。

軍備ぐんび制限せいげんに関かんする規定きてい

チェコスロバキアはブラチスラヴァ南方なんぽうのドナウ川がわ右岸うがん地域ちいきに防御ぼうぎょ施設しせつを建設けんせつしない。
ベルギー、ルクセンブルクの中立ちゅうりつ義務ぎむの解除かいじょを承認しょうにんする。
オーストリアの陸軍りくぐん兵力へいりょくは3万まん人にんに限定げんていされる。徴兵ちょうへい制度せいどは認みとめられない。空軍くうぐんおよび航空こうくう隊たいの保有ほゆうも禁止きんしされる。
兵器へいきおよび軍事ぐんじ物資ぶっしの輸入ゆにゅうは禁止きんしされる。火炎かえん放射ほうしゃ器き、毒どくガスの製造せいぞう・開発かいはつ・研究けんきゅうは禁止きんしされる。戦車せんしゃ・装甲車そうこうしゃ・軍事ぐんじ用よう機械きかいの製造せいぞうも禁止きんしされる。
オーストリア＝ハンガリー帝国ていこく海軍かいぐんの保有ほゆう艦艇かんていはすべて連合れんごう国こくに引ひき渡わたされる。建造けんぞう中ちゅうのものはすべて解体かいたいされる。