出典 しゅってん : フリー百科 ひゃっか 事典 じてん 『ウィキペディア(Wikipedia)』
シラタマカズラ Psychotria serpens L. は木 き や岩 いわ に這 は い上 のぼ るアカネ科 か の植物 しょくぶつ 。丸 まる くて白 しろ い果実 かじつ を沢山 たくさん つける。
付着 ふちゃく 根 ね で基 もと 物 ぶつ に張 は り付 つ いて這 は い上 のぼ る藤本 ふじもと [ 1] 。全 ぜん 株 かぶ 無 む 毛 け 。茎 くき には節 ふし があって葉 は を対生 たいせい する。托 たく 葉 は は長 なが さ3mm、卵 たまご 形 がた から卵 たまご 円形 えんけい で先端 せんたん が小 ちい さく2裂 きれ している。葉 は は革質 かくしつ で倒 たおせ 披針形 ひしんけい から倒 たおせ 卵 たまご 状 じょう 楕円 だえん 形 がた 、長 なが さ1.5-4cm、幅 はば は約 やく 3mm、先端 せんたん はやや尖 とが り、基部 きぶ は次第 しだい に狭 せば まって長 なが さ2-4mmの葉柄 ようへい に続 つづ く。
花期 かき は5-7月 がつ 、枝 えだ の先 さき に散 ち 房 ぼう 状 じょう の集散 しゅうさん 花序 かじょ を出 だ し、まばらに多数 たすう の花 はな を付 つ ける。苞 つと 葉 は はごく小 ちい さくて広 こう 三角形 さんかっけい 。萼 がく は倒 たおせ 三角形 さんかっけい で長 なが さ0.8mm、幅 はば 1.5mmで先端 せんたん は浅 あさ く5裂 きれ する。花冠 かかん は白色 はくしょく で短 みじか い漏斗 ろうと 形 がた になっており、筒 つつ の部分 ぶぶん の内側 うちがわ には白 しろ い軟毛が一 いち 面 めん にあり、先端 せんたん は5裂 きれ し、それぞれ平 たい らに開 ひら く。個々 ここ の裂 きれ 片 へん は狭 せま 卵 たまご 形 がた で長 なが さ2mm、先端 せんたん はやや尖 とが り、両面 りょうめん 共 ども に無 む 毛 け 。
液 えき 果 はて は球状 きゅうじょう 楕円 だえん 形 がた で長 なが さ4-5mm、先端 せんたん には萼 がく の歯 は が残 のこ り、熟 じゅく すと白 しろ くなる。種子 しゅし は楕円 だえん 形 がた で、長 なが さ4mm、背面 はいめん には縦 たて に3本 ほん の稜 りょう が走 はし る。
和名 わみょう は果実 かじつ の色 いろ と形 かたち による。別名 べつめい にイワズタイがあり、これは「岩 いわ 伝 づた い」の意 い で、茎 くき が這 は っていくことによる。ほかに果実 かじつ に味 あじ がないことから、「ワラベナカセ(童 わらわ 泣 な かせ)」ということがあるとのこと[ 2] 。
本州 ほんしゅう では和歌山 わかやま 県 けん 、四国 しこく と九州 きゅうしゅう の南部 なんぶ 、それに琉球 りゅうきゅう 列島 れっとう に産 さん する。国外 こくがい では台湾 たいわん と中国 ちゅうごく 大陸 たいりく 南部 なんぶ 、それにインドシナ に分布 ぶんぷ がある[ 3] 。北限 ほくげん である和歌山 わかやま 県 けん での分布 ぶんぷ は串本 くしもと 町 まち と那智勝浦 なちかつうら 町 まち の一部 いちぶ からしか知 し られていない。串本 くしもと の紀伊大島 きいおおしま では、スダジイ 林 はやし の林 はやし 床 ゆか から樹幹 じゅかん 、岩上 いわかみ などに見 み られ、一部 いちぶ 林 はやし 床 ゆか では本 ほん 種 しゅ が優 ゆう 占 うらない している場所 ばしょ がある[ 4] 。沖縄 おきなわ ではリュウキュウマツ の林 はやし から山地 さんち の森林 しんりん の林 はやし 縁 ゆかり 、あるいは路傍 ろぼう まで見 み られ、樹幹 じゅかん や岩 いわ に這 は い上 のぼ って高 たか さ2-4mほどにまで達 たっ する[ 5] 。
この主 あるじ が所属 しょぞく するボチョウジ属 ぞく は世界 せかい の熱帯 ねったい から亜熱帯 あねったい に700種 しゅ を擁 よう し、高木 たかぎ から低木 ていぼく 、本 ほん 種 しゅ のような藤本 とうほん までを含 ふく む。日本 にっぽん には5種 しゅ があり、そのうち3種 しゅ は低木 ていぼく である。属 ぞく 名 めい のボチョウジは沖縄 おきなわ に産 さん する低木 ていぼく である。同 おな じく藤本 とうほん であるオオシラタマカズラ P. boninensis は小笠原諸島 おがさわらしょとう に産 さん する。本 ほん 種 しゅ とは葉 は が大 おお きく、大 おお きいものは10cmにもなることや托 たく 葉 ば の先 さき が丸 まる いことなどで区別 くべつ 出来 でき る。
他 た の3種 しゅ はいずれも低木 ていぼく で、ボチョウジ P. rubra とナガミボチョウジ P. manillensis はいずれも琉球 りゅうきゅう 列島 れっとう では森林 しんりん 下 か に普通 ふつう に見 み られる。
観賞 かんしょう 用 よう に栽培 さいばい されることがある[ 6] 。
他 た に薬用 やくよう として用 もち いられている例 れい もある。生薬 きぐすり として中国 ちゅうごく の市場 いちば に流通 りゅうつう している絡 からま 石 いし 藤 ふじ (Luoshiteng) は、抗 こう 炎症 えんしょう 、鎮痛 ちんつう 、解熱 げねつ 、血液 けつえき 循環 じゅんかん 促進 そくしん 、免疫 めんえき 調整 ちょうせい などの作用 さよう を有 ゆう するものとされている。中国 ちゅうごく 薬 やく 典 てん ではこれはタイワンテイカカズラ Trachelospermum jasminoides の茎葉 けいよう と規定 きてい されている。ところが、実際 じっさい にはオオイタビ Ficus pumila と本 ほん 種 たね もこの薬 くすり の名 な で流通 りゅうつう している。このうち本来 ほんらい のものは葉 は の特徴 とくちょう から判別 はんべつ が容易 ようい だが、後 こう 2者 しゃ は肉眼 にくがん では区別 くべつ が難 むずか しい。その素材 そざい から成分 せいぶん 検討 けんとう したところ、本 ほん 種 しゅ に由来 ゆらい するものも他 た 種 たね からも分離 ぶんり されているrutin が分離 ぶんり された。しかし生理 せいり 活性 かっせい の検討 けんとう では効果 こうか が見 み られなかったとのこと[ 7] 。
環境省 かんきょうしょう のレッドリストでは取 と り上 あ げられていない。各 かく 県 けん のレベルでは和歌山 わかやま 県 けん 、徳島 とくしま 県 けん 、高知 こうち 県 けん で絶滅 ぜつめつ 危惧 きぐ II類 るい に指定 してい されている[1] 。南 みなみ の地域 ちいき では普通 ふつう 種 しゅ なので、それを反映 はんえい しているのであろう。
^ 以下 いか 、記載 きさい は主 しゅ として佐竹 さたけ 他 た (1989),p.204
^ 牧野 まきの (1961),p.584
^ 佐竹 さたけ 他 た (1989),p.204
^ 和歌山 わかやま 県 けん (2001),p.327
^ 池原 いけはら (1979),p.205
^ 朝日 あさひ 百科 ひゃっか (1997),p.1
^ 西部 せいぶ (2002),p.363-365
佐竹 さたけ 義 よし 輔・他 た (編著 へんちょ ) 『日本 にっぽん の野生 やせい 植物 しょくぶつ 木本 もくほん II』新装 しんそう 版 ばん 、(1999)、平凡社 へいぼんしゃ
初島 はつしま 住 じゅう 彦 『琉球 りゅうきゅう 植物 しょくぶつ 誌 し 』追加 ついか ・訂正 ていせい 版 ばん 、(1975)、 沖縄 おきなわ 生物 せいぶつ 教育 きょういく 研究 けんきゅう 会 かい
牧野 まきの 富太郎 とみたろう 、『牧野 まきの 新 しん 日本 にっぽん 植物 しょくぶつ 圖鑑 ずかん 』、(1961)、図鑑 ずかん の北 きた 隆 たかし 館 かん
和歌山 わかやま 県 けん 環境 かんきょう 生活 せいかつ 部 ぶ 環境 かんきょう 生活 せいかつ 総務 そうむ 課 か 、『保全 ほぜん 状 じょう 重要 じゅうよう な わかやまの自然 しぜん ―和歌山 わかやま 県 けん レッドデータブック―』、(2001)
『朝日 あさひ 百科 ひゃっか 植物 しょくぶつ の世界 せかい 2』、(1997)、朝日新聞社 あさひしんぶんしゃ :p.1
池原 いけはら 直樹 なおき 。『沖縄 おきなわ 植物 しょくぶつ 野外 やがい 活用 かつよう 図鑑 ずかん 第 だい 6巻 かん 山地 さんち の植物 しょくぶつ 』、(1979)、新星 しんせい 図書 としょ
西部 せいぶ 三 さん 省 しょう 、「生薬 きぐすり の基 もと 原 ばら と品質 ひんしつ 評価 ひょうか 」、薬学 やくがく 雑誌 ざっし 、122(6) :p.363-379.