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ジゼル

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジゼル
Giselle, ou Les Wilis
『ジゼル』だい2まくより、ジゼル(ひだり)とアルブレヒト(みぎ)。
構成こうせい 2まく
振付ふりつけ J・コラーリ
J・ペロー
作曲さっきょく A・アダン
台本だいほん T・ゴーティエ
J・サン=ジョルジュ
美術びじゅつ P・シセリ[1]
衣装いしょう P・ロルミエ[1]
設定せってい ドイツ
初演しょえん 1841ねん6月28にち
パリ・オペラ
おも初演しょえんしゃ
【ジゼル】
【アルブレヒト】
【ミルタ】
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ジゼル』(ふつ: Giselle)は、1841ねんフランス初演しょえんされたバレエ作品さくひんである。初演しょえん題名だいめいは 『ジゼル、またはウィリたち』(ふつ: Giselle, ou Les Wilis[2][3]音楽おんがくアドルフ・アダン振付ふりつけジャン・コラーリジュール・ペロー手掛てがけた。

ほんさくは、中世ちゅうせいドイツむら舞台ぶたいに、恋人こいびと裏切うらぎられていのちとしたむらむすめジゼルが、死後しご精霊せいれいウィリとなってもあいつらぬようえがいた物語ものがたりである[4]ロマンティック・バレエ代表だいひょうてき作品さくひんであり、世界中せかいじゅうのバレエだん上演じょうえんされている[1]

上演じょうえん

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創作そうさく経緯けいい

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『ジゼル』の構想こうそう発案はつあんしたのは、詩人しじん作家さっかテオフィル・ゴーティエである[5]舞踊ぶよう評論ひょうろんでもあったゴーティエは、ハインリヒ・ハイネ著作ちょさく『ドイツろん』に登場とうじょうする民間みんかん伝承でんしょう着想ちゃくそうて、バレエの台本だいほんこうとかんがえた[5][6]。その民間みんかん伝承でんしょうオーストリアいち地方ちほうつたわるスラヴ起源きげん伝説でんせつで、結婚けっこんまえんだわかおんなたちが「ヴィリス(ウィリ)」という幽霊ゆうれいになり、生前せいぜんしゅはいらなかったダンスのよろこびをあじわうため、わかおとこつかまえてぬまでおどらせる、というものであった[注釈ちゅうしゃく 1][7]

ゴーティエはバレエをぜん2まくとし、だい1まくでヒロインがいのちとし、2まくでウィリとなって登場とうじょうするという構成こうせいかんがえた[8]当初とうしょゴーティエがいた台本だいほんでは、だい1まく舞台ぶたい貴族きぞく舞踏ぶとうしつであり、いちばんちゅうおどかしたむすめが、夜明よあけの冷気れいきにあてられてぬという設定せっていになっていた[5][9]。この筋書すじがきは、ヴィクトル・ユーゴーの『東方とうほう詩集ししゅう英語えいごばん』に収録しゅうろくされた幽霊ゆうれいたち」から着想ちゃくそうたものであった[9]。ゴーティエは台本だいほん草稿そうこういたのち、オペラ台本だいほん作家さっかであったジュール=アンリ・ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュ協力きょうりょくあおいだ[10][11]。サン=ジョルジュはだい1まく設定せってい変更へんこうし、舞台ぶたい農村のうそんとした[5]

ジゼルを初演しょえんしたC・グリジ(1842ねん

こうして完成かんせいした台本だいほんは、パリ・オペラ支配人しはいにんレオン・ピエ英語えいごばんもとまれ、上演じょうえん決定けっていした[10][12]主演しゅえんのジゼルやくは、ゴーティエのつよ推薦すいせんにより、カルロッタ・グリジ決定けっていした[12]。グリジは1841ねん2がつにオペラにデビューしたばかりであったが、ゴーティエはグリジにれあげ、ほんさく彼女かのじょおどらせたいとかんがえていた[13][14]。ゴーティエが、グリジの教師きょうし内縁ないえんおっとでもあったジュール・ペローに『ジゼル』の台本だいほんせたところ、ペローはこの台本だいほんり、作曲さっきょくアドルフ・アダン相談そうだんした[12]。アダンは、音楽おんがく短期間たんきかん完成かんせいさせた[11]

振付ふりつけは、グリジにかんする部分ぶぶんのみペローが手掛てがけ、のこりはオペラメートル・ド・バレエであったジャン・コラーリ担当たんとうした[12]。ただし、ポスターやプログラムに振付ふりつけしゃとして名前なまえったのはコラーリだけであり、ペローの名前なまえらなかった[12]

初演しょえんからオペラでの上演じょうえん中断ちゅうだんまで

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ジゼルをえんじるグリジ(1841ねん

1841ねん6がつ28にち、パリ・オペラにおいて『ジゼル』が初演しょえんされた[1]出演しゅつえんしゃは、ジゼルやくがカルロッタ・グリジ、恋人こいびとアルブレヒトやく初演しょえんはアルベールやく[注釈ちゅうしゃく 2])がリュシアン・プティパ、ウィリの女王じょおうミルタやくアデル・デュミラトル英語えいごばんであった[1]上演じょうえん成功せいこうおさめ、とく主演しゅえんのグリジはたか評価ひょうかけた[15]

ほんさくは、初演しょえんすぐに欧米おうべい各地かくちでも上演じょうえんされた[1][16]。1842ねんロンドンでグリジとジュール・ペローの主演しゅえんによる『ジゼル』が上演じょうえんされたが、これは作品さくひん全体ぜんたいにペローがれたものであった[16]。1843ねんミラノ・スカラ座すからざ初演しょえんされた『ジゼル』は、音楽おんがく振付ふりつけもパリ初演しょえんばんとはことなるものだった[17]。1846ねんにはニューヨーク初演しょえんおこなわれた[17]

オペラにおいて、『ジゼル』は1849ねんまで度々どど上演じょうえんされ、そのあいだ、ジゼル、アルブレヒト、ミルタのやく初演しょえん同様どうよう、グリジ、プティパ、デュミラートルがえんつづけた[18]。しかし、1849ねんにグリジがオペラ引退いんたいすると同時どうじに、ほんさくはオペラのレパートリーからはずれた[18]。そののオペラでは、1852ねんから1853ねんにかけてすうかい再演さいえんされたほか、1863ねん、ロシアのバレリーナであるマルファ・ムラヴィヨーワのオペラデビューにあたっても上演じょうえんされた[19]。その何人なんにんかのバレリーナがおどったが、1868ねん最後さいごほんさくはオペラ上演じょうえんされなくなった[20]

ロシアでの継承けいしょう

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オペラ上演じょうえん途絶とだえた『ジゼル』は、ロシアで継承けいしょうされることとなった[20]。ロシアのボリショイ劇場げきじょうのメートル・ド・バレエであったアントワーヌ・ティテュスフランス語ふらんすごばんは、パリで『ジゼル』初演しょえん鑑賞かんしょうし、よく1842ねんにボリショイ劇場げきじょうほんさく上演じょうえんした[21][22]作品さくひん全体ぜんたい構成こうせいはパリ初演しょえんばん踏襲とうしゅうしていたが、振付ふりつけはティテュス独自どくじのものであった[21]。1843ねんにはルシル・グラーン、1848ねんにはファニー・エルスラーがロシアでティテュスばんの『ジゼル』に主演しゅえんした[21]

1848ねん初演しょえんばん振付ふりつけしゃであるジュール・ペローが、ボリショイ劇場げきじょうのメートル・ド・バレエに着任ちゃくにんした[21]。1850ねん初演しょえんしゃのグリジがロシアで『ジゼル』をおど機会きかいわせ、ペローはロシアばん振付ふりつけ改訂かいていし、できるだけオリジナルにちかづけるとともに、コラーリの振付ふりつけ部分ぶぶん自分じぶんりゅうあらためた[23]

1884ねんから1887ねんと1889ねんには、マリインスキー劇場げきじょうにおいて、マリウス・プティパほんさくふくすうかいにわたって改訂かいていした[24]。このとき、だい1まくのジゼルとアルブレヒトのパ・ド・ドゥ削除さくじょされ、あらたにレオン・ミンクス作曲さっきょくによるジゼルのヴァリエーションが挿入そうにゅうされた[25]。また、だい2まくのウィリの群舞ぐんぶ結末けつまつちかくのパ・ド・ドゥもおおきくつくえられた[26]

20世紀せいき以降いこう

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T・カルサヴィナV・ニジンスキーによる『ジゼル』(1910ねん

20世紀せいきには、西にしヨーロッパにおいて、わすれられていた『ジゼル』がふたた上演じょうえんされるようになる[27]。1910ねんセルゲイ・ディアギレフひきいるバレエだんバレエ・リュス)が、パリ・オペラで『ジゼル』を上演じょうえんした[28]主演しゅえんタマラ・カルサヴィナワスラフ・ニジンスキーであった[28]。また、1913ねんにはアンナ・パヴロワが、自身じしん一座いちざのロンドン公演こうえんで『ジゼル』を上演じょうえんした[29]。1924ねんには、もとマリインスキー劇場げきじょうのダンサーで、同年どうねんからパリ・オペラエトワールとなったオリガ・スペシフツェワが、オペラで『ジゼル』をおどった[30][31]

1834ねん、イギリスのヴィック・ウェルズ・バレエ(現在げんざい英国えいこくロイヤル・バレエだん)において『ジゼル』が初演しょえんされた[32]振付ふりつけは、もとマリインスキー劇場げきじょう舞台ぶたい監督かんとくであったニコライ・セルゲエフ英語えいごばんが、ロシアから亡命ぼうめいするさいした舞踊ぶようもとおこなわれた[25]初演しょえんのジゼルやくアリシア・マルコワであった[25]

そのも『ジゼル』の改訂かいてい振付ふりつけ多数たすう発表はっぴょうされているが、そのおおくはプティパ改訂かいていばん依拠いきょしている[1]代表だいひょうてきはんとしては、ロシアのレオニード・ラヴロフスキー英語えいごばんはん(1944ねん初演しょえん)や、イギリスのピーター・ライトはん(1965ねん初演しょえん)などがある[33]

A・カーン英語えいごばんはん『ジゼル』(2016ねん

また、物語ものがたり設定せっていおおきく変更へんこうし、現代げんだいてきさい解釈かいしゃくした演出えんしゅつ発表はっぴょうされている。1982ねん初演しょえんマッツ・エックはんクルベリ・バレエ英語えいごばん初演しょえん)では、精神せいしんんだジゼルが病院びょういんれていかれる[34]。1984ねんには、アメリカのハーレム・ダンス・シアター英語えいごばんが、19世紀せいきルイジアナしゅうのアフリカけいクレオール社会しゃかい舞台ぶたいとした『クレオール・ジゼル英語えいごばん』を発表はっぴょうした[35]。2016ねん初演しょえんアクラム・カーン英語えいごばんはんイングリッシュ・ナショナル・バレエだん初演しょえん)は、ジゼルを衣料いりょう工場こうじょうはたら移民いみんという設定せっていにし、現代げんだい格差かくさ社会しゃかい移民いみん問題もんだいれている[36]

物語ものがたり

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あらすじ

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演出えんしゅつにより相違そういがあるが、現在げんざい上演じょうえんされているはんのあらすじはおおむつぎのような内容ないようである[4][33][37][38]

おも登場とうじょう人物じんぶつ

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  • ジゼル - 農民のうみんむすめ
  • アルブレヒト - シレジア公爵こうしゃく
  • ヒラリオン - もりばん
  • ベルタ(ベルト) - ジゼルの母親ははおや
  • バティルド - アルブレヒトの婚約こんやくしゃ
  • クールランド大公たいこう - 領主りょうしゅ。バティルドのちち
  • ミルタ - ウィリの女王じょおう

だい1まく

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中世ちゅうせいドイツむら[注釈ちゅうしゃく 3]病弱びょうじゃくだがおどりがきなむらむすめジゼルは、青年せいねんロイスと恋仲こいなかである。このロイスは、じつ身分みぶんいつわったシレジア公爵こうしゃくアルブレヒトである。ジゼルにおもいをせるもりばんのヒラリオンは、ロイスの正体しょうたい疑念ぎねんいだく。

むらではブドウ収穫しゅうかくさいおこなわれており、収穫しゅうかくさい女王じょおうえらばれたジゼルは村人むらびとたちとおどる。ジゼルのははベルタはむすめあんじ、「おどりに夢中むちゅうになっていると、死後しご精霊せいれいウィリとなっておどつづけることになる」という伝説でんせつかたる。

領主りょうしゅクールランド大公たいこうとそのむすめバチルドらが、のためにむらおとずれる。バチルドはアルブレヒトの婚約こんやくしゃである。そこへヒラリオンがあらわれ、ロイスが貴族きぞくであることを暴露ばくろする。恋人こいびと裏切うらぎりをったジゼルは、衝撃しょうげきのあまり正気しょうきうしない、いきえてしまう。

だい2まく

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ジゼルのはかがあるもり女王じょおうミルタにひきいられたウィリたちがあらわれ、ジゼルをはかからして仲間なかまむかれる。

ヒラリオンとアルブレヒトは、それぞれジゼルの墓参はかまいりにやってくる。ヒラリオンはウィリたちにつかまり、おどらされたうえいのちとしてしまう。アルブレヒトもミルタのいのちおどらされるが、ジゼルはアルブレヒトのいのちまもろうとする。やがて夜明よあけがおとずれ、ウィリたちはる。ジゼルも姿すがたし、はかまえにアルブレヒトが一人ひとりのこされる。

演出えんしゅつによる異同いどう

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だい2まくのウィリたちのおどりは、初演しょえんばんでは、世界中せかいじゅうからあつまったウィリたちがトルコインド、フランス、ドイツの各国かっこく民族みんぞく舞踊ぶようおどるというものであったが、この設定せっていのち消滅しょうめつし、群舞ぐんぶと、国籍こくせきしめさないソリストのおどりにわった[25][39]。また、初演しょえん結末けつまつは、バチルドが登場とうじょうし、ジゼルがアルブレヒトにたいしバチルドのもとへくようしめして姿すがたす、というものであったが、現在げんざい演出えんしゅつではバチルドは登場とうじょうせず、アルブレヒトが一人ひとり舞台ぶたいのこされる[40]

構成こうせい

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だい1まく

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  • プロローグ
  • 葡萄ぶどう収穫しゅうかくじん登場とうじょう
  • ロイスの登場とうじょう
  • ジゼルの登場とうじょう
  • 葡萄ぶどう収穫しゅうかくじん再来さいらいとワルツ
  • 狩猟しゅりょう
  • ヒラリオンの情景じょうけい
  • 葡萄ぶどう耕作こうさくしゃ行進こうしん
  • パ・スル
  • むらむすめのパ・ド・ドゥ a)アレグロ・アラ・ポラッカ
  • むらむすめのパ・ド・ドゥ b)アンダンテ
  • むらむすめのパ・ド・ドゥ c)ペザンテ
  • むらむすめのパ・ド・ドゥ d)アレグレット
  • むらむすめのパ・ド・ドゥ e)アレグレット・ペザンテ
  • むらむすめのパ・ド・ドゥ f)ワルツ
  • 葡萄ぶどう収穫しゅうかくおどり a)アンダンテ
  • 葡萄ぶどう収穫しゅうかくおどり b)モデラート
  • 葡萄ぶどう収穫しゅうかくおどり c)アレグロ・モデラート
  • 葡萄ぶどう収穫しゅうかくおどり d)アレグロ・アン・プー・ルーレ
  • ギャロップ・ジェネレル
  • フィナーレと狂乱きょうらん

だい2まく

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  • 導入どうにゅうきょく猟師りょうし休息きゅうそく鬼火おにび出現しゅつげん
  • ミルタの登場とうじょう魔法まほうこし
  • ヴィリのおど
  • ジゼルの登場とうじょう
  • 村人むらびと登場とうじょう
  • 王子おうじ登場とうじょうとジゼルの出現しゅつげん
  • ヒラリオンの登場とうじょう情景じょうけいとヴィリのフーガ
  • グラン・パ・ド・ドゥ a)アンダンテ
  • グラン・パ・ド・ドゥ b)アンダンティーノ
  • グラン・パ・ド・ドゥ c)アンダンテ
  • グラン・パ・ド・ドゥ d)ワルツ
  • フィナーレ

作品さくひん特徴とくちょう

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『ジゼル』は『ラ・シルフィード』(1832ねん初演しょえん)とならび、ロマンティック・バレエ代表だいひょうてき作品さくひんとされる[41]。ロマンティック・バレエは、1830年代ねんだいから1840年代ねんだい流行りゅうこうしたバレエの様式ようしきであり、特徴とくちょうとして、異国いこく舞台ぶたいとするエキゾチシズム妖精ようせいなどのちょう自然しぜんてき存在そんざい登場とうじょう現実げんじつ現実げんじつ対比たいひ、といったロマン主義しゅぎてき要素ようそげられる[42][43]。『ジゼル』においても、物語ものがたり舞台ぶたいはドイツという異国いこく設定せっていされ、だい1まく人間にんげんかいだい2まく精霊せいれい世界せかい対比たいひされている[44][45]

ジゼルやくは、こいする少女しょうじょから狂気きょうき女性じょせい、そして精霊せいれいウィリをえんける幅広はばひろ演技えんぎりょく必要ひつよう大役たいやくであることから、しばしば演劇えんげきにおけるハムレットやくたとえられることがある[46][47]。また、恋人こいびとアルブレヒトやくも、ジゼルに匹敵ひってきする男性だんせいダンサーの大役たいやくとされる[48]とくに、だい1まくのアルブレヒトは、ジゼルを真剣しんけんあいしているのか、ただのあそびにすぎないのか、というてん両極端りょうきょくたんやくづくりが可能かのうであり、えんじるダンサーによって解釈かいしゃくかれる[49]

音楽おんがく

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『ジゼル』の楽曲がっきょくライトモチーフ効果こうかてき使つかわれていることが特徴とくちょうであり、人物じんぶつ出来事できごとあらわすために特定とくてい主題しゅだいやフレーズが登場とうじょうする[50]たとえば、作品さくひん冒頭ぼうとうでジゼルとロイスがおどさい主題しゅだいは、ジゼルの狂気きょうき場面ばめん反復はんぷくされる[50]。また、ウィリの主題しゅだいは、ジゼルのははがウィリの伝説でんせつかた場面ばめん、ジゼルの狂気きょうき場面ばめん、ウィリの登場とうじょう場面ばめん、などでかえもちいられる[50]

楽曲がっきょくのほとんどはアドルフ・アダンが独自どくじ作曲さっきょくしたが、楽曲がっきょくからの引用いんようとして、ピュジェじょうという人物じんぶついた8小節しょうせつのメロディと、カール・マリア・フォン・ウェーバーのオペラ『オイリアンテ』から引用いんようした3小節しょうせつふくまれる[51]。また、ヨハン・ブルグミュラー作品さくひんれた楽曲がっきょくが2つ使つかわれている[52]。ブルグミュラーの楽曲がっきょくは、『ラティスボンヌおも』というワルツと、ジゼルの友人ゆうじんたちがおどるダンスの組曲くみきょくであり、これらはだい1まくの 「ペザント・パ・ド・ドゥ(むらむすめのパ・ド・ドゥ)」とばれる部分ぶぶん構成こうせいしている[52][53]。これは初演しょえんのオペラのダンサーであったナタリー・フィス=ジャム(フィルツ=ジェームズ)がパ・ド・ドゥをれるように支配人しはいにん改作かいさく要求ようきゅうしたからであるが、そのときアダンは多忙たぼう対応たいおう不可能ふかのうだったため、急遽きゅうきょブルグミュラーの組曲くみきょく使つかわれ、これが上演じょうえん伝統でんとうとなった[よう出典しゅってん]

だい1まくのジゼルのヴァリエーションはレオン・ミンクス作曲さっきょくによるもので、1887ねんにマリウス・プティパがほんさく改訂かいていおこなったさい追加ついかされた[4]

翻案ほんあん作品さくひん

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 「ウィリー」は英語えいごみであり、ドイツでは「ヴィリ」(語尾ごびsをつけた場合ばあいは「ヴィリス」)と発音はつおんする(鈴木すずき 2002, pp. 112-113)。
  2. ^ アルブレヒトは、初演しょえんは「アルベール」というフランスふう名前なまえであったが、のちにゴーティエが変更へんこうした(鈴木すずき 2002, pp. 158-159)。
  3. ^ 『ジゼル』の舞台ぶたいとなる土地とちについて、台本だいほん作者さくしゃのゴーティエは「その場所ばしょラインかわえたところ、どこかドイツの神秘しんぴてきすみであればそれでよい」としており、初演しょえん台本だいほんおよびゴーティエの文章ぶんしょうでは、「ドイツのうつくしい渓谷けいこく」「チューリンゲン丘陵きゅうりょう」「シレジア」「ライン・ワインの原料げんりょうとなる琥珀こはくしょく葡萄ぶどうぼうがるうつくしい葡萄ぶどうえんとう複数ふくすう地名ちめいげられている(鈴木すずき 2002, pp. 120-123)。

出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • 鈴木すずきあきらほか『バレエとダンスの歴史れきし 欧米おうべい劇場げきじょう舞踊ぶよう平凡社へいぼんしゃ、2012ねんISBN 9784582125238 
  • ダンスマガジン編集へんしゅう『バレエ101物語ものがたり新書しんしょかん、1998ねんISBN 9784403250323 
  • ダンスマガジン『バレエ・パーフェクト・ガイド』新書しんしょかん、2008ねんISBN 9784403320286 
  • 長野ながの由紀ゆきへん『200キーワードでる バレエの魅惑みわくたてふう書房しょぼう、2001ねんISBN 4651820492 
  • 長野ながの由紀ゆき『バレエの見方みかた新書しんしょかん、2003ねんISBN 4403230997 
  • 平林ひらばやし正司せいじじゅうきゅう世紀せいきフランス・バレエの台本だいほん パリ・オペラ慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく出版しゅっぱんかい、2000ねんISBN 4766408276 
  • シリル・ボーモント ちょ佐藤さとう和哉かずや やく『ジゼルというのバレエ』新書しんしょかん、1992ねんISBN 4403230245 
  • 村山むらやま久美子くみこ『バレエ王国おうこくロシアへのみち東洋とうよう書店しょてんしんしゃ、2022ねんISBN 9784773420463 
  • 渡辺わたなべ真弓まゆみ名作めいさくバレエ70鑑賞かんしょう入門にゅうもん 「物語ものがたり」と「みどころ」がよくわかる』世界文化社せかいぶんかしゃ、2020ねんISBN 9784418202102 
  • 渡辺わたなべ真弓まゆみ「バレエ名作めいさくガイド ジゼル」『ダンスマガジン』だい30かんだい10ごう新書しんしょかん、2020ねん10がつ1にち 

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