狩猟しゅりょう

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イノシシりをえがいた絵画かいが
世界せかい遺産いさんイベリア半島はんとう地中海ちちゅうかい沿岸えんがんいわしん石器せっき時代じだいディアーハンティング英語えいごばん様子ようす
インドぞううえからのとらかり英語えいごばん ちょ:Thomas Williamson, 1808
鹿しか仕留しとめる源経基みなもとのつねもとえがいた『さだかん殿どのがつ』(月岡つきおか芳年よしとしつきひゃく姿すがた」)

狩猟しゅりょう(しゅりょう、えい: hunting)とは、野生やせい動物どうぶつ捕獲ほかくする行為こういのことである。

捕獲ほかく目的もくてき殺傷さっしょうして利用りよう保護ほご、タグけリリース)とは関係かんけいなく、捕獲ほかく行為こういう。

概要がいよう[編集へんしゅう]

漁労ぎょろう採集さいしゅう活動かつどうならんで、人間にんげん社会しゃかい最初さいしょから存在そんざいする生業せいぎょうとされている。

狩猟しゅりょうもっと本来ほんらいてき目的もくてきは、食料しょくりょう物資ぶっしといった人間にんげん個別こべつ集団しゅうだん生活せいかつ不可欠ふかけつ必需ひつじゅひん野生やせい動物どうぶつから獲得かくとくすることにある。その目的もくてきとなる食料しょくりょう物資ぶっし典型てんけいれいは、にく皮革ひかく油脂ゆし羽毛うもうほねきばである。そのおこなわれる地域ちいき世界せかい各地かくちおこなわれてきた。

狩猟しゅりょう歴史れきしふるく、農耕のうこう牧畜ぼくちく普及ふきゅうしない時代じだいから今日きょういたるまでおこなわれている。時代じだいくだるにつれ牧畜ぼくちくぎょう発達はったつした地域ちいきにおいては、食糧しょくりょう目的もくてきでの狩猟しゅりょう減少げんしょうした。

生活せいかつ必需ひつじゅひん目的もくてきわって、とく近代きんだい産業さんぎょう資本しほん主義しゅぎ興隆こうりゅう貨幣かへい経済けいざい発達はったつしてからは、商品しょうひん価値かちたか資材しざい獲得かくとく目的もくてきだい規模きぼ狩猟しゅりょうおこなわれてきた。その狩猟しゅりょう目的もくてきとなった資材しざいには、象牙ぞうげアザラシヒョウ毛皮けがわといったものがふくまれている。このため、狩猟しゅりょうによって特定とくていたね絶滅ぜつめつしたり生息せいそくすう激減げきげんするなどの生態せいたいけいへの深刻しんこく影響えいきょう顕在けんざいしてきた。これにおうじて、狩猟しゅりょうおこなわれる地域ちいき法規ほうきや、絶滅ぜつめつのおそれのある野生やせい動植物どうしょくぶつたね国際こくさい取引とりひきかんする条約じょうやく(ワシントン条約じょうやく)が整備せいびされ、狩猟しゅりょうには一定いってい制限せいげんくわえられたり禁止きんしされている場合ばあいがある。ただし、密猟みつりょうたず実効じっこうせいがっていないとの指摘してきもある。

狩猟しゅりょう方法ほうほう[編集へんしゅう]

アフリカ熱帯ねったい雨林うりんらす人々ひとびとや、日本にっぽんにおけるじゅうもちいた大型おおがたじゅう狩猟しゅりょうなどは、集団しゅうだんによっておこなわれる。

日本にっぽんのシカやイノシシりょうれいにとると、グループのなか獲物えものてるやくと、獲物えものみち沿いにせをしてじゅうかまえているやくとにかれて狩猟しゅりょうする。くまるときも集団しゅうだんむのは基本きほんである。

このように集団しゅうだんった獲物えものは、狩猟しゅりょう参加さんかしゃあるいは村落そんらく全体ぜんたい配分はいぶんされるという事例じれい日本にっぽんほかに、サンじんムブティぞくなどアフリカにおいてもみられる。

方法ほうほう一覧いちらん

目的もくてき[編集へんしゅう]

食糧しょくりょう獲得かくとく
基本きほんちゅう基本きほん食糧しょくりょう食材しょくざい獲得かくとくである。現在げんざいでも、フランスでは狩猟しゅりょう野生やせい動物どうぶつにくジビエふつ: gibier)とび、独特どくとく風味ふうみのある高級こうきゅう料理りょうりとしてしょくしている。
様々さまざま物資ぶっし獲得かくとく
もうひとつの基本きほんとしては、皮革ひかく毛皮けがわ)・油脂ゆしほねかく(つの)・きば羽毛うもうなどをるために狩猟しゅりょうがおこなわれてきた歴史れきしがある。
野生やせい動物どうぶつ管理かんり
狩猟しゅりょう人間にんげん生活せいかつ環境かんきょうにとって不都合ふつごう影響えいきょうおよぼす動物どうぶつ排除はいじょする駆除くじょのためにもおこなわれてきた。また、野生やせい動物どうぶつ個体こたいすう調整ちょうせいするという自然しぜん保全ほぜんじょうおおきな役割やくわりになっている[1]

こうした狩猟しゅりょうにはおも以下いかのケースがある。

  • 直接的ちょくせつてき人間にんげん住居じゅうきょおそ動物どうぶつ撃退げきたい生命せいめい安全あんぜん確保かくほすること
  • 飼育しいくしている動物どうぶつ栽培さいばいしている植物しょくぶつ捕食ほしょくする動物どうぶつ駆除くじょし、生活せいかつ資源しげん保全ほぜんすること
  • 従来じゅうらい存在そんざいしなかった外来がいらいしゅ侵入しんにゅうするなど、生態せいたいけいみだされることを防止ぼうしするため、またはみだされてしまった生態せいたいけい原状げんじょう回復かいふくさせるため、その外来がいらいしゅ動物どうぶつとう選択せんたくてき駆除くじょすること
  • 人間にんげん特定とくてい動物どうぶつしゅ個体こたいすう意図いとてき増加ぞうか減少げんしょうさせてしまった結果けっか、その生態せいたいけいのバランスがくずれ、それを修正しゅうせいするために動物どうぶつしゅ狩猟しゅりょうすること

いずれの形態けいたいであっても、捕獲ほかくした鳥獣ちょうじゅう副次的ふくじてき資材しざいるためにもちいられる場合ばあいがある。

各国かっこく歴史れきし現状げんじょう[編集へんしゅう]

古代こだいエジプトでとうぼう狩猟しゅりょうしていた様子ようす。こんぼうげる狩猟しゅりょう原始時代げんしじだい以前いぜんからおこなわれていたとかんがえられる。

ヨーロッパ[編集へんしゅう]

ヨーロッパには先史せんし時代じだい狩猟しゅりょう痕跡こんせき遺跡いせきおおのこされている。スペインフランス洞窟どうくつにはすうおおくの壁画へきがのこされている。1000てん壁画へきがうち人間にんげんえがかれたのものは20てんたらずでのこりはすべて狩猟しゅりょう対象たいしょう動物どうぶつである。フランスのソーヌ=エ=ロワールけんには断崖だんがいした野生やせいうまほねが2メートルはん堆積たいせきした場所ばしょがあり、人間にんげんてられた推定すいてい10まんとうのウマががけちた痕跡こんせきられている。同様どうようりの様子ようすえがいた壁画へきがラップランドつかっている[2]

イギリスでは古来こらいよりスポーツハンティング貴族きぞく富裕ふゆうそうたしなみとしておこなわれたことから[3]彫金ちょうきんほどこされた銃器じゅうきシューティングブレークなどの高級こうきゅう狩猟しゅりょう用品ようひん市場いちば形成けいせいされている。現在げんざいのイギリスには48まんにん狩猟しゅりょうしゃがいるとされるが、狩猟しゅりょう免許めんきょ存在そんざいせず、狩猟しゅりょうしゃ登録とうろく必要ひつようない[3]狩猟しゅりょうをする権利けんりはその土地とち所有しょゆうしゃゆうしており、他者たしゃ貸与たいよすることもできるため、娯楽ごらくとして自由じゆう狩猟しゅりょうたのしむアマチュアハンターもいれば、仕事しごととして依頼いらいされるなどしてせんもん狩猟しゅりょうおこなうプロハンターもいる[3]。なおイギリスではシカ対象たいしょうとした狩猟しゅりょうはハンティング(hunting)ではなく「ストーキング英語えいごばん」(stalking)とばれる。狩猟しゅりょうさいにかぶる帽子ぼうしも「鹿しかぼう(deerstalker hat)」とばれる。

ドイツ狩猟しゅりょうおこなうには試験しけん合格ごうかくして狩猟しゅりょう免許めんきょ必要ひつようがある[4]。ドイツには2008ねん時点じてんやく35まんにん狩猟しゅりょうしゃ存在そんざいし、狩猟しゅりょうしゃすう微増びぞう傾向けいこうにある[4]。ドイツでは森林しんりん管理かんり狩猟しゅりょう密接みっせつ関係かんけいしており、ドイツの森林しんりんかんのほとんどは狩猟しゅりょう免許めんきょ取得しゅとくしている[4]。こうした狩猟しゅりょう森林しんりんかんとはべつに、職業しょくぎょう狩猟しゅりょうしゃが1000にんほど国内こくない存在そんざいする[4]

北欧ほくおうはヨーロッパのなかでも狩猟しゅりょうさかんにおこなわれている地域ちいきである[5]ノルウェー狩猟しゅりょうしゃすうやく19まんにんで、のヨーロッパ諸国しょこく同様どうよう土地とち所有しょゆうしゃ狩猟しゅりょうけんゆうする[5]ロングイェールビーンではホッキョクグマりが1950年代ねんだいまで観光かんこう資源しげんとなっていた。

アフリカ[編集へんしゅう]

アフリカではヨーロッパによる植民しょくみん支配しはいはじまった19世紀せいき以降いこうから現代げんだいまでサファリばれる狩猟しゅりょう旅行りょこうやスポーツハンティングがさかんにおこなわれている。サハラ砂漠さはらさばく以南いなんの42のアフリカ諸国しょこくのうち25かこくでスポーツハンティングがみとめられており、年間ねんかん1まん8500にんえる狩猟しゅりょうしゃがアフリカをおとずれる[6]。 また、正規せいき狩猟しゅりょうしゃ以外いがいによっておこなわれる密猟みつりょう国際こくさいてき問題もんだいとなっている[7]

アメリカ[編集へんしゅう]

アメリカ狩猟しゅりょう大国たいこくであり、2011ねん時点じてんそう人口じんこうやく6%に相当そうとうする1370まんにん狩猟しゅりょうおこなっており、20-30おくドルもの経済けいざい効果こうか推定すいていされている[8]。1980年代ねんだいからは狩猟しゅりょうしゃかず減少げんしょう傾向けいこうがみられたが、2010年代ねんだいはいってまた増加ぞうかしている。アメリカではじゅう弓矢ゆみやクロスボウ使つかわれ、年間ねんかん700まんとうオジロジカや2まんとうアメリカクロクマ狩猟しゅりょうされる[9][注釈ちゅうしゃく 1]

日本にっぽん[編集へんしゅう]

狩猟しゅりょうぶんきょう
つて群馬ぐんまけん高崎たかさき八幡原はちまんぱら出土しゅつど東京とうきょう国立こくりつ博物館はくぶつかん展示てんじ
平安へいあん時代じだい公家くげ狩猟しゅりょうかうさい衣装いしょう京都きょうと時代じだいさい
アイヌの狩人かりゅうどえがいたアイヌ
イオマンテ準備じゅんびをするアイヌのむら村人むらびとくまおりかこんでおどり、かみとのわかれをしんでいる。
鷹匠たかじょうとりえんとき さかえふか
スタジオで撮影さつえいされた、りょうそう慶喜よしのぶ(1870年代ねんだい

日本にっぽん列島れっとうにおいては旧石器時代きゅうせっきじだい縄文じょうもん時代じだいには狩猟しゅりょう植物しょくぶつ採集さいしゅう漁労ぎょろう活動かつどうとともに主要しゅよう生業せいぎょうであったとかんがえられている。縄文じょうもん時代じだいにはシカイノシシ主要しゅよう狩猟しゅりょうじゅうとした生業せいぎょういとなまれていた[10]弥生やよい時代じだい、そしてつづ古墳こふん時代じだいになると本格ほんかくてき稲作いなさく農耕のうこう開始かいしされ、安定あんていてき食料しょくりょう供給きょうきゅう可能かのうになったため狩猟しゅりょう重要じゅうようせいひくくなっていったとわれる。一方いっぽう農耕のうこうともなえなうがいじゅう駆除くじょなどを目的もくてきとした狩猟しゅりょう継続けいぞくしていたとかんがえられており、弓矢ゆみやなどの狩猟しゅりょう道具どうぐさったシカがえがかれた土器どき埴輪はにわ存在そんざいから狩猟しゅりょうがなおもおこなわれていたことがうかがえる[10]鷹狩たかがり古代こだいからおこなわれており日本書紀にほんしょきには仁徳天皇にんとくてんのう時代じだい355ねん)に鷹狩たかがりおこなわれ、タカを調教ちょうきょうする専門せんもんしょくかれたという記録きろくがある。

東北とうほく地方ちほうんでた蝦夷えぞ騎乗きじょうしての狩猟しゅりょうほか鷹狩たかがりおこなっており、毛皮けがわ交易こうえきひんとしてヤマト王権おうけんっていた。また狩猟しゅりょうつちかわれた騎射きしゃ技術ぎじゅつ俘囚ふしゅうにより武士ぶしへとつたわった。

農耕のうこうてきさない北方ほっぽうんでいたアイヌ狩猟しゅりょう採集さいしゅう生活せいかつつづけており、トリカブト毒矢どくやわなりょう大小だいしょう様々さまざま動物どうぶつり、毛皮けがわ和人わじんっていた。

奈良なら時代じだいには仏教ぶっきょう受容じゅようにより殺生せっしょう肉食にくしょく忌避きひされるにいたったとされる[注釈ちゅうしゃく 2]。しかし、『延喜えんぎしき』では地方ちほうたいして鹿しかがわいのししあぶらなど狩猟しゅりょうじゅう動物どうぶつ資源しげん賦課ふかされていたり、『万葉集まんようしゅう』ではシカの毛皮けがわから内臓ないぞうまでを無駄むだなく利用りようしている内容ないよううたまれているなど、とくに庶民しょみんあいだでは狩猟しゅりょう活動かつどう継続けいぞくされていたとかんがえられている[11]日本にっぽんでは肉食にくしょく禁忌きんきれいなん発令はつれいされたが、おもうしうまなど家畜かちく対象たいしょうとしたものであった[12]江戸えど時代じだいにはももんじばれる獣肉じゅうにく販売はんばいするみせ存在そんざいした[13]

貴族きぞくあいだではスポーツハンティングとしての狩猟しゅりょうおこなわれた。りにかけるさいにはうごきやすい狩衣かりぎぬ着替きがえたが、平安へいあん時代じだいになると公家くげ普段着ふだんぎとなっていった。

中世ちゅうせいには武家ぶけあいだでスポーツハンティングとして鷹狩たかがりひろまり、江戸えど時代じだいにはしょ大名だいみょう鷹狩たかがりのため、鳥見とりみなどの専門せんもんしょくさだめられた。

狩猟しゅりょう木材もくざい生産せいさん製材せいざい鉱山こうざん経営けいえい炭焼すみやなどやましょ生業せいぎょうのひとつとしておこなわれていた一方いっぽうで、動物どうぶつ資源しげん利用りようだけでなく畑作はたさくぶつへのししがい対策たいさくとしてもおこなわれた[14]東日本ひがしにっぽんでは鉄砲てっぽう火縄銃ひなわじゅう)をもちいたがいじゅう駆除くじょ目的もくてきとした狩猟しゅりょう実施じっしされていた[15]。また、東北とうほく地方ちほうでは職業しょくぎょうとして狩猟しゅりょうおこな人々ひとびとマタギばれ、独特どくとく習俗しゅうぞくがあった。たいして、西日本にしにほんではわなを一部いちぶわせたししかき利用りようされた[13]中世ちゅうせい近世きんせい日本にっぽんにおける農民のうみんにとって鉄砲てっぽう農具のうぐであり、農耕のうこう狩猟しゅりょう密接みっせつ関係かんけいがあったとされる[16]

明治めいじ時代じだいになると狩猟しゅりょう法制ほうせいすすんだ。1872ねんに「鉄砲てっぽう取締とりしまり規則きそく」、1873ねんに「鳥獣ちょうじゅうりょう規則きそく」、1892ねんに「狩猟しゅりょう規則きそく」、1895ねん3がつ27にちに「狩猟しゅりょうほう」が次々つぎつぎ公布こうふされ、狩猟しゅりょう期間きかん狩猟しゅりょう方法ほうほう狩猟しゅりょう鳥獣ちょうじゅうなどが具体ぐたいてきさだめられた[17]。また、「北海道ほっかいどう鹿しかりょう規則きそく」、「樺太からふと狩猟しゅりょう取締とりしまり規則きそく」、「朝鮮ちょうせん狩猟しゅりょう規則きそく」、「台湾たいわん銃猟じゅうりょう取締とりしまり規則きそく」、「関東かんとうしゅう銃猟じゅうりょう取締とりしまり規則きそく」、「南洋なんよう群島ぐんとう狩猟しゅりょう取締とりしまり規則きそく」といったようにかく風土ふうどおうじて特別とくべつ法令ほうれいによって取締とりしまり実施じっしされた。これらの背景はいけいには、軍用ぐんよう毛皮けがわ需要じゅよう拡大かくだいにともなう欧米おうべいけの外貨がいか獲得かくとくという目的もくてきがあり、狩猟しゅりょうによって産業さんぎょうきずかれた[18]。1908ねん9がつ24にち狩猟しゅりょうほう施行しこう規則きそく改正かいせい公布こうふ省令しょうれい)、10月1にち施行しこうされ、コマドリ・メジロなど59鳥類ちょうるい捕獲ほかく禁止きんしされた。

大正たいしょう時代じだいの1918ねんには「狩猟しゅりょうほう」が改正かいせいされ、狩猟しゅりょう鳥獣ちょうじゅう狩猟しゅりょう免許めんきょ制度せいどされたことで、現代げんだい狩猟しゅりょうほうちかいものとなった[19]昭和しょうわ時代じだいの1929ねん全国ぜんこく狩猟しゅりょうしゃによって設立せつりつされた「だい日本にっぽん聯合れんごうりょうともかい」(のちの「だい日本にっぽんりょうともかい」)は、狩猟しゅりょう道徳どうとく向上こうじょう野生やせい鳥獣ちょうじゅう保護ほご有害ゆうがい鳥獣ちょうじゅう駆除くじょ狩猟しゅりょう適正てきせいなど日本にっぽん狩猟しゅりょうにおいておおきな役割やくわりになっている。

1970ねん前後ぜんこうは、狩猟しゅりょう事故じこ相次あいついだ。とくに、1970ねんは11月1にちから同月どうげつ8にちあいだだけでも死者ししゃ3にん負傷ふしょうしゃ75にん(うち40にん地域ちいき住民じゅうみん)をしたことから社会しゃかい問題もんだいした。警察庁けいさつちょう原則げんそく講習こうしゅうければ銃砲じゅうほう所持しょじ許可きょかられる制度せいど[20]見直みなおし、規制きせい強化きょうかおこなわれた。

現状げんじょうとして、日本にっぽん狩猟しゅりょう人口じんこう年々ねんねん高齢こうれいし、かつ減少げんしょうしつつある。1979ねんに45まんにんだった狩猟しゅりょう人口じんこう1995ねんには25まんにん2007ねん時点じてんで16まんにん程度ていどである。日本にっぽん許可きょかされているじゅうやく30まんちょうである。これは国際こくさいてきにはひく登録とうろくりつであり、日本にっぽん同様どうようきびしいじゅう規制きせい狩猟しゅりょうこくイギリスでは日本にっぽん半分はんぶん人口じんこうにもかかわらず、500まんちょうじゅう許可きょかされている。日本にっぽん狩猟しゅりょうしゃのほとんどは男性だんせいであり、女性じょせい割合わりあいは1%にもたない[21]

一方いっぽう北海道ほっかいどうなどはエゾシカヒグマ本州ほんしゅうではイノシシニホンジカ代表だいひょうされる野生やせい動物どうぶつによる農林のうりんぎょう被害ひがい深刻しんこく事実じじつであり[1]ライフルじゅう所持しょじ条件じょうけん緩和かんわどくくすり使用しよう狩猟しゅりょう期間きかん延長えんちょうといった鳥獣ちょうじゅう保護ほごおよ狩猟しゅりょう適正てきせいかんする法律ほうりつ規制きせい緩和かんわつよもとめられている。またハンター養成ようせいのため、北海道ほっかいどう西興部にしおこっぺむらなどは、指導しどうしゃきで若者わかものなどに狩猟しゅりょう体験たいけんツアーをおこなっている(ただし、このツアーは銃器じゅうき使用しようできるものではない)。伊豆半島いずはんとうにおいてはニホンジカによる食害しょくがい深刻しんこく問題もんだいであり、半島はんとう全体ぜんたい推定すいてい2まんとう生息せいそくする個体こたいを5000とう以下いかまで減少げんしょうさせることのぞましいとされている現状げんじょう存在そんざいする。また、経済けいざい自然しぜんおおきな影響えいきょうあたえる外来がいらいしゅアライグママングースなど)も駆除くじょつよもとめられている。以上いじょうのような状況じょうきょうにあって、くに統一とういつてき見解けんかいはまだ存在そんざいせず、猟銃りょうじゅう所持しょじ許可きょかおよび狩猟しゅりょうは、有害ゆうがい鳥獣ちょうじゅう被害ひがい深刻しんこく自治体じちたいではゆるく、都市としではほとんみとめない傾向けいこうにある。しかし、近年きんねん環境省かんきょうしょう鳥獣ちょうじゅう保護ほご管理かんりにな確保かくほ目的もくてきとした狩猟しゅりょう魅力みりょくつたえるフォーラム[外部がいぶリンク 1]都市としふく各地かくち都道府県とどうふけん開催かいさいするなど、ハンターをやそうとするみが行政ぎょうせい主体しゅたいおこなわれはじめている。

日本にっぽん国内こくない許可きょかされている法定ほうてい猟具りょうぐ[編集へんしゅう]

日本にっぽん法律ほうりつ禁止きんしされている狩猟しゅりょう道具どうぐ[編集へんしゅう]

  • 直径ちょっけいが12cmをえるくくりわな
  • イノシシなどの大型おおがたじゅうげられるほど強力きょうりょくしきくくりわな
  • とらばさみほう改正かいせいともない、2007ねん4がつ16にちから使用しよう不可ふか
  • つりばり
  • とりもちもちなわはごなど。現状げんじょうではわなをもちいてのとりりょう自体じたい禁止きんしされているため)
  • かすみあみ所持しょじ販売はんばいについても禁止きんしされている[22]
  • 戸板といたとし(さんそなえない圧殺あっさつ目的もくてきの「はこおとし」もふくまれる)
  • 絞殺こうさつ目的もくてきとした構造こうぞうつつがたイタチ捕獲ほかく絞殺こうさつふせぐストッパーの装着そうちゃく義務付ぎむづけられている)
  • 12ゲージをえるだい口径こうけい散弾さんだんじゅう北海道ほっかいどうでのトドりょう限定げんていして10ゲージが許可きょかされている)
  • 口径こうけい10.5mmをえるライフルじゅう威力いりょくおおきすぎるため、所持しょじ自体じたい原則げんそく禁止きんし
  • 口径こうけい5.9mm以下いかのライフルじゅうたとえば.223口径こうけいなど。威力いりょくひくはんになる可能かのうせいたかいため射撃しゃげき競技きょうぎようとしてのみ許可きょかされる)
  • 空気くうき散弾さんだんじゅう
  • じゅん空気くうきじゅう
  • 使つかうもの(かずゆみアトラトルクロスボウなど)
  • 爆薬ばくやく
  • 毒薬どくやく
  • キジふえ
  • 音響おんきょう機器きき
  • 危険きけんわな危険きけんとしあな
  • いぬかせてること
    • 禁止きんしされているのは「いぬみつかせることのみにより捕獲ほかくとうする方法ほうほうまたいぬみつかせて狩猟しゅりょう鳥獣ちょうじゅううごきをしくはなまらせ、法定ほうてい猟具りょうぐ以外いがい方法ほうほうにより捕獲ほかく とうすること」であり、いぬ以外いがい動物どうぶつらせること禁止きんしされていない。たとえば、鷹狩たかがりかんして、それを違法いほうとする法的ほうてき根拠こんきょ存在そんざいしない。

狩猟しゅりょう問題もんだいてん[編集へんしゅう]

銃弾じゅうだんによる水鳥みずとり・ワシるいなまり汚染おせん
北海道ほっかいどうエゾシカりょう代表だいひょうされる鹿しかりょうでは、散弾さんだんじゅうにスラッグだんめたもの、あるいはライフルじゅうもちいられる。このなまりでできた実包じっぽう鹿しかち、被弾ひだん部位ぶいふく残滓ざんし放置ほうちすると、ワシるいカラスなどがそれをべるとなまり中毒ちゅうどくこされる。また、鳥類ちょうるい捕獲ほかくする場合ばあいは、おも散弾さんだんじゅうもちいておこなわれるが、この実包じっぽうなかにはなまりでできた散弾さんだん多数たすう封入ふうにゅうされている。鳥類ちょうるいには、習性しゅうせいとしてすなのうちいさな土石どせきつぶたくわえるたねがあり、そのようなとり直接ちょくせつ狩猟しゅりょう対象たいしょうとされない場合ばあいであっても、狩猟しゅりょうによる間接かんせつてき影響えいきょうこうむっている。つまり、そのような種類しゅるいとり小石こいしとう一緒いっしょに、水辺みずべ放出ほうしゅつされたなまり散弾さんだん摂取せっしゅすることによって、とり体内たいないなまりがたまってしまい、なまり中毒ちゅうどくとなっていたることがある。
なまり中毒ちゅうどく対策たいさくとして、散弾さんだん素材そざいとしてなまり以外いがい金属きんぞくスチール・ビスマス軟鉄なんてつ)・すずタングステンポリマーひとし)をもちいたスラッグだんあるいはライフルだん実包じっぽう製造せいぞうされている。日本にっぽん国内こくないでも一部いちぶ地域ちいきにおいては、使用しようゆるされる散弾さんだんなまり以外いがい材質ざいしつもちいたものに制限せいげんされている。北海道ほっかいどうではなまりだん利用りよう全面ぜんめんてき禁止きんしされており[23]宮城みやぎけんなどの地域ちいきでも使用しよう禁止きんしひろがってきている。北海道ほっかいどうでは、平成へいせい10年度ねんど回収かいしゅうされたワシの死体したいのうちやく80%がなまり中毒ちゅうどくだったが、平成へいせい17年度ねんどにはその比率ひりつが10%未満みまん減少げんしょうしている。完全かんぜんに0にならない理由りゆうとして、違法いほう狩猟しゅりょうしゃ存在そんざいや、すではん体内たいないなまりだんゆうしている個体こたい存在そんざいげられている。また、すで水辺みずべ放出ほうしゅつされたなまり散弾さんだんふか沈下ちんかするまでにはすうじゅうねんかかるため、水鳥みずとりなまり中毒ちゅうどく発生はっせい今後こんご継続けいぞくし、そのかず徐々じょじょにしか減少げんしょうしないとかんがえられている。
個体こたいすうのバランス崩壊ほうかい
生態せいたいけいは、よくられる食物しょくもつ連鎖れんさのほか、解明かいめいのものもふくめてきわめて複雑ふくざつなメカニズムによって各種かくしゅ生物せいぶつ個体こたいすう生息せいそく地域ちいきのバランスがたもたれている。しかしこのメカニズムに人為じんいてき介入かいにゅうくわえられると、バランスがおおきく崩壊ほうかいする場合ばあいがある。狩猟しゅりょう鳥獣ちょうじゅう生態せいたいすうは、狩猟しゅりょうしゃ狩猟しゅりょう期間きかん終了しゅうりょう提出ていしゅつする種別しゅべつごと捕獲ほかくすう捕獲ほかく場所ばしょ情報じょうほうふくめて調査ちょうさされており、いちじるしく減少げんしょうした場合ばあいは、一時いちじてき捕獲ほかく禁止きんし規制きせい実施じっしされ、生態せいたいすう回復かいふくはかられる。しかし実際じっさいには狩猟しゅりょうあつよりも生息せいそく環境かんきょう悪化あっか捕獲ほかくすう減少げんしょうこしているという意見いけんもある。キジやヤマドリなどはメスの捕獲ほかく禁止きんしされており、基本きほんてき生殖せいしょくじょう余剰よじょうオスを狩猟しゅりょうするかたちになっている。これを調査ちょうさするために猟期りょうき初期しょきのオス・メスべつ出会であすう調査ちょうさおこなわれている。その比率ひりつはおおむね 1:1 となっており、これは現在げんざい捕獲ほかくすう余剰よじょうオスの範囲はんいであることを意味いみし、捕獲ほかく禁止きんし意味いみがないとの意見いけんもある。
動物どうぶつ権利けんり侵害しんがい
動物どうぶつ解放かいほう』を著述ちょじゅつしたピーター・シンガー動物どうぶつ殺害さつがい残虐ざんぎゃく行為こういめ、野生やせい動物どうぶつはなっておくべきであると指摘してきしている。義務ぎむろんしゃのトム・レーガンは、人間にんげん狩猟しゅりょうしてはならず、はなっておくべきだと指摘してきしている。スー・ドナルドソンらは、先住民せんじゅうみんぞく土地とちをヨーロッパじん植民しょくみん支配しはいしたのは不正ふせいであるというれいいにし、野生やせい動物どうぶつ領内りょうない社会しゃかいつく利益りえきち、侵略しんりゃくしゃからかれらを保護ほごするために主権しゅけんみとめるのは有効ゆうこうであると指摘してきしている[24]法学ほうがくしゃ動物どうぶつ権利けんり主張しゅちょうするフランシオンは、一般いっぱん必要ひつよう動物どうぶつへの危害きがいけるべきだとされているが、狩猟しゅりょう必要ひつよう危害きがい禁止きんしはんし、やめるべきだと指摘してきする[25]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 米国べいこくでは、弓矢ゆみやとしては、「コンパウンド・ボー」とばれる、滑車かっしゃつきのアーチェリーがさかんに使つかわれている。
  2. ^ 一休いっきゅうとんちばなし殺生せっしょうきんずる寺院じいんにおいて仏具ぶつぐ獣皮じゅうひ使つかわれていることを皮肉ひにく挿話そうわがある。
  3. ^ ハーフライフル銃身じゅうしんのサボットだん専用せんよう散弾さんだんじゅう

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 鳥獣ちょうじゅう保護ほご管理かんり狩猟しゅりょう”. 野生やせい鳥獣ちょうじゅう保護ほご管理かんり. 環境省かんきょうしょう. 2012ねん9がつ4にち閲覧えつらん
  2. ^ トゥーサン=サマ 1998, pp. 70–72.
  3. ^ a b c 野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく』pp.34-42
  4. ^ a b c d 野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく』pp.42-52
  5. ^ a b 野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく』pp.61-69
  6. ^ 野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく』pp.69-76
  7. ^ えゆくゾウたち - アフリカゾウの危機きき(Elephants in the Dust-The African Elephant Crisis)』トラフィックイーストアジアジャパン 2015ねん6がつ15にち閲覧えつらん
  8. ^ U.S. Fish and Wildlife Service (2011ねん). “2011 National Survey of Fishing, Hunting, and Wildlife-Associated Recreation” (PDF). 2012ねん9がつ4にち閲覧えつらん
  9. ^ 野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく』pp.52-61
  10. ^ a b 野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく』p.6
  11. ^ 野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく』p.7
  12. ^ 野生やせい動物どうぶつ管理かんり -理論りろん技術ぎじゅつ-』p.11
  13. ^ a b 野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく』p.8
  14. ^ らしと生業せいぎょう ひと・もの・こと 2』p.162
  15. ^ 野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく』p.9
  16. ^ 野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく』p.10
  17. ^ 野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく』pp.11-13
  18. ^ 田口たぐち洋美ひろみ「マタギ―日本にっぽん列島れっとうにおける農業のうぎょう拡大かくだい狩猟しゅりょうあゆみ―」『地学ちがく雑誌ざっしだい113かんだい2ごう、2004ねん、191-202ぺーじ 
  19. ^ 野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく』p.14
  20. ^ 暴発ぼうはつ狩猟しゅりょう さん仕事しごといのちがけ 負傷ふしょう大半たいはん住民じゅうみん しいられる自衛じえいさく 資格しかくきびしくしたい 警察庁けいさつちょう朝日新聞あさひしんぶん』1970ねん昭和しょうわ45ねん)11がつ10日とおか 12はん 23めん
  21. ^ TWINとは?”. The Women In Nature. 2013ねん3がつ27にち閲覧えつらん
  22. ^ だい日本にっぽんりょうともかい 2012.
  23. ^ ワシるいなまり中毒ちゅうどく対策たいさくについて”. 環境かんきょう生活せいかつ 自然しぜん環境かんきょう. 北海道庁ほっかいどうちょう. 2012ねん12月19にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2013ねん3がつ27にち閲覧えつらん
  24. ^ スー・ドナルドソン、ウィル・キムリッカ『ひと動物どうぶつ政治せいじ共同きょうどうたいなおがくしゃ、2017ねん 
  25. ^ 動物どうぶつ権利けんり入門にゅうもん』 88ぺーじ

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

書籍しょせき[編集へんしゅう]

  • 上原うえはら真人まさと白石しらいし太一郎たいちろう吉川よしかわ真司しんじ吉村よしむら武彦たけひこ へんらしと生業せいぎょう ひと・もの・こと 2』岩波書店いわなみしょてん、2005ねん10がつ6にちISBN 4-00-028062-7ISBN 978-4-00-028062-4 
  • 羽山はやま伸一しんいち三浦みうら慎悟しんごかじ 光一こういち鈴木すずき正嗣まさつぐ へん野生やせい動物どうぶつ管理かんり理論りろん技術ぎじゅつ―』ぶんえいどう、2012ねん5がつ5にちISBN 978-4-8300-3241-7 
  • かじ 光一こういちわれでんひろしただし鈴木すずき正嗣まさつぐ へん野生やせい動物どうぶつ管理かんりのための狩猟しゅりょうがく朝倉書店あさくらしょてん、2013ねん1がつ20日はつかISBN 978-4-254-45028-6 
  • マグロンヌ・トゥーサン=サマ ちょ玉村たまむらゆたかおとこ やく世界せかい食物しょくもつ百科ひゃっかはら書房しょぼう、1998ねんISBN 4562030534 
  • だい日本にっぽんりょうともかい狩猟しゅりょう読本とくほん』2012ねん 
  • ゲイリー・L・フランシオン『動物どうぶつ権利けんり入門にゅうもん緑風りょくふう出版しゅっぱん、2018ねん 

論文ろんぶん[編集へんしゅう]

  • 田口たぐち洋美ひろみ「マタギ―日本にっぽん列島れっとうにおける農業のうぎょう拡大かくだい狩猟しゅりょうあゆみ―」『地学ちがく雑誌ざっしだい113かんだい2ごう、2004ねん、191-202ぺーじ 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]