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ハイビジョン

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デジタルハイビジョンから転送てんそう

ハイビジョン(Hi-Vision)は、日本にっぽんにおけるこう精細せいさいテレビジョン放送ほうそう(High Definition television / HDTV)の愛称あいしょうである。電気でんき機械きかい器具きぐとう対象たいしょうとして、一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじんNHKエンジニアリングシステム[1]商標しょうひょう登録とうろくしている。登録とうろく番号ばんごう1363407[2]

概要がいよう[編集へんしゅう]

NTSC標準ひょうじゅんテレビ放送ほうそうたい走査そうさせんが2ばい以上いじょうあるため、こう精細せいさい画像がぞうである。画面がめん縦横じゅうおうアスペクト)は人間にんげん視野しやわせて標準ひょうじゅん(4:3) よりも横長よこなが(16:9)となる。

日本にっぽんでは2016ねん平成へいせい28ねん現在げんざい、2種類しゅるい放送ほうそう規格きかくがある。衛星えいせい放送ほうそう(BS/110CS)のデジタルハイビジョン(ISDB-S)と地上ちじょうデジタルハイビジョン(ISDB-T)である。なおBSアナログハイビジョン(MUSE)は2007ねん平成へいせい19ねん9月30にち終了しゅうりょうした。

アナログハイビジョン[編集へんしゅう]

本格ほんかくてき研究けんきゅう1964ねん東京とうきょうオリンピックのちNHK放送ほうそう技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょはじめられ、1972ねん昭和しょうわ47ねん)にはITU-R当時とうじはCCIR)に規格きかく提案ていあんおこなわれた。

1976ねん昭和しょうわ51ねん)に世界せかいはつのハイビジョン30インチモニターが完成かんせい1980年代ねんだいはいって業務ぎょうむようテレビカメラこう精細せいさいブラウン管ぶらうんかんビデオテープレコーダ編集へんしゅう制作せいさく機器ききなどのハイビジョン映像えいぞう信号しんごう対応たいおう機器きき開発かいはつされ実用じつよう準備じゅんびととのはじめた。ハイビジョンの愛称あいしょうもこのころから使用しようされはじめている。

1982ねん昭和しょうわ57ねん)5がつに、世界せかいはつのハイビジョン制作せいさく番組ばんぐみとなる『日本にっぽん』と『HDTVのためのいろいろなイメージ』の2番組ばんぐみ制作せいさく。このとし大晦日おおみそかには『NHK紅白こうはく歌合戦うたがっせん』をはじめてハイビジョン収録しゅうろく。このとき実験じっけん名目めいもく収録しゅうろくし、1989ねんだい40かいからは本格ほんかくてきにハイビジョン収録しゅうろく移行いこう現在げんざいいたる。

1984ねん昭和しょうわ59ねん)には、デジタル技術でじたるぎじゅつもちいて帯域たいいき圧縮あっしゅくおこない、放送ほうそう衛星えいせいトランスポンダ1伝送でんそう帯域たいいきでアナログ放送ほうそうおこなMUSE方式ほうしき(Multiple Sub-Nyquist-Sampling Encoding system)が開発かいはつされ、これをもちいたBS放送ほうそう1989ねん平成へいせい元年がんねん)から実験じっけん放送ほうそうとして開始かいし音楽おんがく番組ばんぐみとう少数しょうすうながらも機材きざい投入とうにゅうされていった。さら1991ねん平成へいせい3ねん)からは試験しけん放送ほうそう開始かいしされた。

また、MUSE方式ほうしきあつかいハイビジョン画質がしつ対応たいおうした家庭かていけのビデオ機器きき民生みんせいひん)として、ハイビジョンLD市販しはんされた(ハイビジョンビデオカセットレコーダW-VHSはベースバンド方式ほうしきのためMUSE方式ほうしきではない)。なお実現じつげんはしなかったもののMUSEによる有料ゆうりょう放送ほうそう計画けいかくされていた[ちゅう 1]。その1996ねん平成へいせい8ねん)のアトランタオリンピック開催かいさい時期じきまたがり、普及ふきゅうはかられたが、2000ねん平成へいせい12ねん)までに受像じゅぞう累計るいけい出荷しゅっか195まんだいとどまった[3]

NHKはみずか開発かいはつしたハイビジョン(1125/60 HDTV)とMUSEをHDTVの世界せかい統一とういつ規格きかくにすることを目指めざし、「こう品位ひんいテレビ」の英訳えいやくとして"High Definition Television"という言葉ことば使つかい、欧米おうべい精力せいりょくてき標準ひょうじゅん活動かつどうつづけた。

当初とうしょNHKはハイビジョンのスクリーン・アスペクトを5:3(1.67:1)のヨーロピアン・ビスタにちかとしていたが、規格きかく統一とういつ過程かていでアメリカン・ビスタ(1.85:1)とのなかあいだちかい16:9(1.78:1)となった[4]

アナログハイビジョンの概要がいよう[編集へんしゅう]

1125/60 だか精細せいさいテレビジョン(HDTV)方式ほうしき[編集へんしゅう]

  • アスペクト:16:9
  • そう走査そうさせん:1,125ほん / 有効ゆうこう 1,035ほん
    • 1ラインたりの有効ゆうこう画素がそすう:1,920(総画そうかく素数そすう:2,200)にたいして正方まさかた画素がそではない。ゆえコンピュータ・グラフィック(CG)との相性あいしょう問題もんだいがあり、ハリウッドのポストプロダクション・スタジオの影響えいきょうおおきいアメリカの放送ほうそう業界ぎょうかいに1035システム(MUSE方式ほうしき)がれられなかった原因げんいんひとつとされている。のデジタル・ハイビジョンは、そう走査そうさせん 1,125ほん / 有効ゆうこう 1,080ほん正方せいほう画素がそ採用さいようしている。
    • 走査そうさせんすう決定けっていにあたってはPALSECAMNTSCとの変換へんかん考慮こうりょ、かつCGとの親和しんわせい考慮こうりょして、有効ゆうこう走査そうさせんすうが1,024ほん上回うわまわるようにしたという。
  • インターレース:2:1
  • フィールド周波数しゅうはすう:60.00Hzへるつ
    • System-M/NTSC互換ごかんの59.94Hzへるつ(60×1000/1001)ではなく60.00Hzへるつである。これはフィールド周波数しゅうはすう50.00HzへるつであるPALけんとの方式ほうしき変換へんかん容易よういなように考慮こうりょされたものであるが、NTSCとのサイマル放送ほうそうなんがあり、ぎゃくにNTSCけんへのMUSE方式ほうしき(1035システム)の普及ふきゅうさまたげる要因よういんとなった。のデジタル・ハイビジョンでは59.94Hzへるつ採用さいようしている。

MUSE方式ほうしき概要がいよう[編集へんしゅう]

  • 映像えいぞう方式ほうしき
    • 圧縮あっしゅく対象たいしょう走査そうさせん:1,032ほん
    • 原始げんしサンプリング周波数しゅうはすう:44.55MHz
    • 伝送でんそうサンプリング周波数しゅうはすう:16.2MHz
    • 時間じかんじく輝度きど圧縮あっしゅくりつ:12:11
    • 時間じかんじくしょく圧縮あっしゅくりつ:4:1
    • いろ多重たじゅう方式ほうしき時間じかんじく圧縮あっしゅく多重たじゅうTCI
    • 圧縮あっしゅく方式ほうしき:フィールドあいだ、フレームあいだ、ラインあいだオフセットサンプリング方式ほうしき
    • うごきベクトル補正ほせい水平すいへい±16サンプル(32.4MHzクロック)/フレーム、垂直すいちょく±3ライン/フィールド
    • 同期どうき信号しんごう:デジタルフレームパルスがたせいきょく同期どうき
    • ベースバンド帯域たいいきはば:8.1MHz(-6dBでしべる
  • 音声おんせい方式ほうしき
    • 多重たじゅう方式ほうしき垂直すいちょくせん期間きかんに3ベースバンド多重たじゅう
    • モード:48kHzきろへるつ 16bit(2ch) /32kHzきろへるつ 12bit(4ch:3-1ステレオ)
    • 音声おんせい圧縮あっしゅく方式ほうしきじゅん瞬時しゅんじあつしん DPCM
    • 音声おんせいあやま制御せいぎょBCH SEC DED
  • BSにおける伝送でんそう変調へんちょう方式ほうしき
    • エンファシス:ノンリニアエンファシス、ゲイン9.5dBでしべる
    • 変調へんちょう極性きょくせいせい極性きょくせい
    • 周波数しゅうはすうへんうつり:10.2MHz p-p
    • 占有せんゆう周波数しゅうはすう帯域たいいき:27MHz

日本にっぽん使つかえる最大さいだい帯域たいいきはばは、衛星えいせい放送ほうそうの27MHzである。この変調へんちょう方式ほうしきはFM方式ほうしきであることから、伝送でんそう可能かのうなベースバンド信号しんごう帯域たいいきはばはその1/3の9MHzとなる。一方いっぽうHDTVのベースバンド映像えいぞう信号しんごう帯域たいいきはばは30MHzである。このため映像えいぞう圧縮あっしゅく必要ひつようとなった。MUSE方式ほうしき場合ばあい、1フィールドのサンプリングを画素がそすう半分はんぶんとしぜん画素がそすうの1/4とすることでこれを実現じつげんした。4フィールドでぜん画素がそ位置いちサンプリングされるが、パターンはかくフィールドあいだ千鳥ちどり格子こうしじょうをしており、てんがたサンプリング(quincunx sampling)ともばれる。

静止せいし場合ばあいぜんサンプリングの内容ないようもちいることで補間ほかんする。動画どうが場合ばあい定常ていじょうてきうごきのさいにはおくられてうごきベクトルデータをもとうご補償ほしょうおこなうことでこう解像度かいぞうど維持いじしている。うごきベクトルりょう検出けんしゅつができない不定ふてい動作どうさ場合ばあい解像度かいぞうど低下ていかするが、とくおおきな問題もんだいとはならない。これはひと視力しりょくうごいているものを対象たいしょうにしているとき視力しりょく低下ていかすることにる。いろ信号しんごうについては同様どうようのサンプリング処理しょりおこなわれたのち時間じかんじく圧縮あっしゅくおこなう。こうしてつくられたサンプルはアナログ伝送でんそうされる。なお、MUSEはスタジオ規格きかくであるBTA S001とはカラーマトリクスことなる。そのちがいは下記かきとおり。

  • スタジオ規格きかく(BTA S001):Y=0.701G+0.087B+0.212R
  • MUSE方式ほうしき:Y=0.588G+0.118B+0.294R

音声おんせい信号しんごうはAモードサンプリングレート(標本ひょうほん周波数しゅうはすう)32kHzきろへるつ 量子りょうしちょう12bit(4ch:3-1ステレオ方式ほうしき)/Bモードサンプリングレート48kHzきろへるつ 量子りょうしちょう16bit(2ch)をじゅん瞬時しゅんじあつしんDPCM(Differential PCM)により伝送でんそうレートを軽減けいげんすることによりAモードでは15bitを8bit、Bモードでは16bitを11bitに軽減けいげんしている。ビットりょう軽減けいげんはDPCMエンコードにローカルデコーダもちいて差分さぶん測定そくていし、変化へんか差分さぶんわせてレンジビットとばれるスケールをあらわすビットにより、データがあらわ音声おんせいレベルをめることによって伝送でんそうりょうらす。これらの処理しょりにより、音声おんせい伝送でんそうレートを1350kbpsとしている。 DPCMは標本ひょうほんされたデータの差分さぶん伝送でんそうする。このために伝送でんそうでの障害しょうがいによりエラーが発生はっせいした場合ばあい誤差ごさ蓄積ちくせき復号ふくごうされた信号しんごうただしく再現さいげんされなくなることがある。これを軽減けいげんするためにリークばれるまえ差分さぶん信号しんごうとの積分せきぶんおこなうための係数けいすう存在そんざいする。リークにより後続こうぞくする音声おんせいデータに蓄積ちくせきする誤差ごさをリセットすることができる。これらのデジタルデータにはあやま訂正ていせい符号ふごう付加ふかされており、伝送でんそう発生はっせいしたエラーによる聴覚ちょうかくじょう耳障みみざわりとなる雑音ざつおん排除はいじょする役割やくわりになっている。この音声おんせい伝送でんそう符号ふごう方式ほうしきはDANCE(DPCM Audio Near-instantaneous Compressing and Expanding)と名付なづけられている。

視聴しちょう必要ひつよう機材きざい[編集へんしゅう]

MUSE方式ほうしき放映ほうえいされたハイビジョン放送ほうそう視聴しちょうないしは録画ろくがするには、受信じゅしんがわでMUSE信号しんごうMUSEデコーダによってデコードするか、もしくはM-Nコンバーターで疑似ぎじNTSC信号しんごう変換へんかんしなければただしいかくおよびいろ表示ひょうじできない。

ハイビジョン画質がしつこう精細せいさい映像えいぞうをそのまま視聴しちょうするには、BSアナログチューナーとMUSEデコーダ両方りょうほう内蔵ないぞうされた「ハイビジョンテレビ(おもブラウン管ぶらうんかん)」であればBSアンテナを接続せつぞくするのみで視聴しちょうできる。しかしこのハイビジョンテレビはかく家電かでんメーカーとも最上級さいじょうきゅうモデルに該当がいとうするため、初期しょき薄型うすがたテレビおなじく非常ひじょう高価こうか市販しはん直後ちょくごの1989ねん - 1990年代ねんだい前半ぜんはんは100まんえんだい[5]末期まっきの1999ねんごろで20 - 40まんえんだい[6])であった[ちゅう 2]三洋電機さんようでんきが1992ねんごろ販売はんばいした「帝王ていおう」は、MUSE-NTSC変換へんかんデコーダーを内蔵ないぞうしたことにより、アナログハイビジョンを4:3画面がめん(NTSC仕様しよう よってレターボックス16:9おなじ)に変換へんかんして視聴しちょうできるシステムをれ、推定すいてい8まんだいげたとされている[7]

また、MUSEデコーダは内蔵ないぞうしていないもののハイビジョン対応たいおうコンポーネント端子たんしあるいはD3(1080i)以上いじょうD端子たんし搭載とうさいしたこう精細せいさい放送ほうそう対応たいおうのテレビでは、内蔵ないぞうもしくは単体たんたいのBSアナログチューナーと単体たんたいのMUSEデコーダとを「AFC端子たんし」と「検波けんぱ端子たんし」に接続せつぞくしたうえ、コンポーネント端子たんしでテレビに接続せつぞくすることで同様どうよう視聴しちょうすることができた。

2000ねん以降いこう発売はつばいされたD3以上いじょうのD端子たんし搭載とうさいしたテレビでも、BSアナログチューナのかく端子たんしからMUSEデコーダーをかいしてD端子たんし接続せつぞくすることでえてBSアナログハイビジョン(BS9ch)を視聴しちょうすることも理論りろんじょうできたが、ほとんどがアナログハイビジョンの1035iに対応たいおうせず1080iで表示ひょうじするためかく変動へんどうしょうじ、放送ほうそう内容ないようNHKデジタル衛星えいせいハイビジョン同一どういつ(サイマル放送ほうそう)となっていたため、W-VHSやハイビジョンLDを現役げんえき併用へいようするもの以外いがいでは実用じつようせいけたものであった。

従来じゅうらい標準ひょうじゅん画質がしつ480i)のみ対応たいおうのテレビやビデオで視聴しちょうする場合ばあい、BSアナログチューナーに「M-Nコンバータ」あるいはM-Nデコーダ内蔵ないぞうのMUSEデコーダを「AFC端子たんし」と「検波けんぱ端子たんし」の両方りょうほう接続せつぞくすることで疑似ぎじNTSCで変換へんかん出力しゅつりょくされ、視聴しちょう録画ろくがすることができた。ハイビジョンテレビによってはM-Nコンバーターを内蔵ないぞうせず、録画ろくがさいには別途べっとM-Nコンバーターが必要ひつよう機種きしゅもあった。

なお、「検波けんぱ端子たんし」はアナログWOWOW視聴しちょうスクランブル解除かいじょようのWOWOW(JSB)デコーダなどと接続せつぞくするさいにも必要ひつようとなるため、ほとんどのBSアナログチューナー内蔵ないぞうテレビには搭載とうさいされているが、チューナー内蔵ないぞうがたビデオデッキ一部いちぶPSXには搭載とうさいされていないため接続せつぞくには注意ちゅうい必要ひつようであった。

「MUSEデコーダー」・「M-Nコンバーター」は「BSデジタルチューナー」の市販しはんともない1999ねんから2000ねんにかけてかくメーカーで生産せいさんられた。その、アナログハイビジョン放送ほうそう終了しゅうりょうともな必然ひつぜんせいおおきくうすれているが、数少かずすくないハイビジョンLD再生さいせいにあたってはMUSEデコーダが必要ひつようとなる。

当初とうしょはMUSE方式ほうしきでの有料ゆうりょう放送ほうそう計画けいかくもあり、有料ゆうりょう放送ほうそうるために必要ひつような「MUSEデスクランブラー」の発売はつばい予定よていされていたが、デジタル放送ほうそう開始かいしなどもあり、アナログハイビジョンでの有料ゆうりょう放送ほうそう実現じつげんせず、MUSEデスクランブラーも発売はつばいされなかった。

アナログハイビジョン放送ほうそう(BSアナログ9ch)について[編集へんしゅう]

デジタルハイビジョン[編集へんしゅう]

概説がいせつ[編集へんしゅう]

NHKはハイビジョンを世界せかい統一とういつ規格きかくにすることを目指めざし、欧米おうべい精力せいりょくてき標準ひょうじゅん活動かつどうつづけたが、政治せいじてきその様々さまざま理由りゆうから、日米にちべいおうはそれぞれことなる方式ほうしきでHDTV放送ほうそうおこなうことになった。

またアメリカではHDTVの開発かいはつをデジタル放送ほうそう方式ほうしきおこなうことになり、ヨーロッパもこれに追従ついしょうしたため、日本にっぽんでも放送ほうそうのデジタル推進すいしんされることとなる(→デジタルテレビ放送ほうそう)。

このため、HDTVアナログ放送ほうそうであったBSハイビジョン放送ほうそうは、使用しようちゅう放送ほうそう衛星えいせいであるBSAT-1の設計せっけい寿命じゅみょうきる2007ねん平成へいせい19ねん9月30にちをもって終了しゅうりょうした。

なお、デジタルHDTVであっても、ベースバンドの映像えいぞう制作せいさく蓄積ちくせきいてはアナログハイビジョンのために開発かいはつされた技術ぎじゅつ使つかわれているため、アナログ時代じだい制作せいさくされたハイビジョンHDTV素材そざい簡単かんたん処理しょりてデジタルハイビジョンで放送ほうそう可能かのうである。

  • アナログハイビジョンであるMUSE方式ほうしきとのあいだには、ベースバンド信号しんごうとして、以下いかおおきな差異さいがある。
    • フィールド周波数しゅうはすう
      • MUSE:60.00Hzへるつ
      • Digital HDTV:59.94Hzへるつ
    • 有効ゆうこう走査そうさせん
      • MUSE:1,035ほん
      • Digital HDTV:1,080ほん
    • タイムコード
      • MUSE:NDF(non-drop frame)
      • Digital HDTV:DF(drop frame)

これらの差異さい過去かこ素材そざい活用かつようするさいに、互換ごかんせいてん問題もんだいになる場合ばあいがある。

デジタルハイビジョン放送ほうそう[編集へんしゅう]

日本にっぽんにおいて、デジタルハイビジョンの放送ほうそうよう伝送でんそう規格きかくとしてはISDB策定さくてい運用うんようされている。衛星えいせい放送ほうそうではISDB-S[ちゅう 3]地上波ちじょうは放送ほうそうではISDB-Tとばれる。ISDBはあくまでデジタルハイビジョンの放送ほうそうふくむテレビ放送ほうそう全般ぜんぱん規格きかくであって、「ISDB=ハイビジョン」という意味いみではない。したがってISDBには従来じゅうらい標準ひょうじゅん画質がしつ規格きかく放送ほうそう規格きかく[ちゅう 4]ふくまれている。画質がしつ解像度かいぞうどとはべつ)は伝送でんそうレートに依存いぞんし、伝送でんそうするがわ放送ほうそうきょくがわ)の事前じぜん設定せってい次第しだい変化へんかする[ちゅう 5]伝送でんそうレートの変更へんこうちがい)は実際じっさい放送ほうそうじょうではおおむねチャンネルごと(放送ほうそうきょくごと)程度ていどにまとめられた設定せってい運用うんようされていて、たとえば番組ばんぐみごととかCMごとにレートが変化へんかするような運用うんよう特別とくべつ事情じじょうがないかぎおこなわれていない[ちゅう 6]

  • BS・CSデジタル放送ほうそうおもにハイビジョン(通称つうしょう:2K)での放送ほうそうであるが、スカパー!一部いちぶ放送ほうそうきょく標準ひょうじゅん画質がしつでの放送ほうそうとなっている。2018ねん12月より4K・8Kテレビ放送ほうそうはじまった。
  • スカパー!プレミアムサービス東経とうけい124・128)においても2008ねん平成へいせい20ねん)10がつ1にちよりハイビジョン放送ほうそう開始かいしされた。
  • 地上ちじょうデジタルテレビ放送ほうそうでも一部いちぶチャンネルをのぞきハイビジョンで放送ほうそうされている。
    • 標準ひょうじゅん画質がしつのカメラで収録しゅうろくした番組ばんぐみアップコンバート解像度かいぞうど変換へんかんおこな標準ひょうじゅん画質がしつ映像えいぞうをハイビジョン信号しんごうとして放送ほうそうすること)をおこなった映像えいぞう放送ほうそうされる。これはBSデジタルでも同様どうよう。この番組ばんぐみを16:9画面がめんサイズのテレビで場合ばあい、4:3サイズの映像えいぞう部分ぶぶん中心ちゅうしん表示ひょうじされりょうはしにサイドパネルが表示ひょうじされる。ただしこの形式けいしき放送ほうそう信号しんごうを4:3画面がめんサイズで場合ばあい付加ふか情報じょうほうで4:3かく情報じょうほうかない場合ばあい額縁がくぶちのようにうつ現象げんしょうこる。4:3かくかく情報じょうほういた放送ほうそう信号しんごう場合ばあいりょうはしのサイドパネルがえない状態じょうたいまでズームされたかたちで4:3画面がめん全体ぜんたい表示ひょうじされる。
    • 上記じょうき形式けいしき以外いがいの16:9画面がめんサイズの映像えいぞう番組ばんぐみを4:3サイズの標準ひょうじゅんテレビで場合ばあいはエッジクロップ(4:3画面がめんサイズになるようにりょうはしをカットした状態じょうたい形式けいしきとなるか、上下じょうげくろたい表示ひょうじするレターボックス形式けいしきでの表示ひょうじとなる。表示ひょうじされる映像えいぞう部分ぶぶん比率ひりつはレターボックス形式けいしきが16:9、エッジクロップ形式けいしき場合ばあいは14:9か13:9のいずれか。なお、どちらになるかはテレビ受信じゅしんがわ機能きのうる。
  • ひかり放送ほうそう
  • IP放送ほうそう

ハイビジョンテレビの種類しゅるい仕様しよう放送ほうそう規格きかく[編集へんしゅう]

ハイビジョンテレビはテレビ受像じゅぞう映像えいぞう機器きき)の映像えいぞう表示ひょうじする方式ほうしきブラウン管ぶらうんかん液晶えきしょうディスプレイプラズマディスプレイリアプロジェクションなど)と、放送ほうそう規格きかく(アナログ、デジタル)により仕様しようことなるので注意ちゅういようする。

デジタルハイビジョンテレビにかんするJEITAの定義ていぎ[8][編集へんしゅう]

ブラウン管ぶらうんかん方式ほうしき場合ばあい、1125i(有効ゆうこう走査そうさせん1080i)および750p(有効ゆうこう走査そうさせん720p)をフルデコードして、1125iまたは750pで表示ひょうじできることが条件じょうけんとなる。しかしながら民生みんせいひんブラウン管ぶらうんかんテレビにおいては電子でんしせんこう精度せいど走査そうさすることを長期間ちょうきかんにわたって維持いじすることは困難こんなんであるため、一般いっぱんにオーバースキャンがおこなわれている。このためおくられてくる映像えいぞうのうち上下じょうげ左右さゆうはし画面がめん表示ひょうじ領域りょういきがいされており、画面がめん表示ひょうじされているものはおくられてきた映像えいぞうのうち9わりほどである。なお、ブラウン管ぶらうんかんのスリットすうかならずしもよこ方向ほうこう解像度かいぞうどあらわすものではない。

液晶えきしょうディスプレイプラズマディスプレイなど固定こてい画素がそ方式ほうしき場合ばあい、1125iおよび750pをフルデコードして垂直すいちょく画素がそすう650以上いじょう表示ひょうじできることが条件じょうけんとなる。このため、ハイビジョン信号しんごう表示ひょうじ可能かのうXGAパネル(1024×768 正方せいほう画素がそ)を搭載とうさいしたテレビはハイビジョン映像えいぞう入力にゅうりょくにはレターボックス表示ひょうじにより、映像えいぞう部分ぶぶん実質じっしつ解像度かいぞうどは1024×576相当そうとうになるため「垂直すいちょく画素がそすう650以上いじょう」をたしておらず、フルデコード対応たいおうデジタル放送ほうそうチューナを内蔵ないぞうしていてもデジタルハイビジョンテレビの定義ていぎからははずれることになる。

デジタルハイビジョン放送ほうそうでは画素がそすう 1920×1080(よこ×たて正方形せいほうけい画素がそ)または1440×1080(横長よこなが長方形ちょうほうけい画素がそ[ちゅう 7]主流しゅりゅうである。画素がそすうが1366×768あるいは1280×720のパネルもハイビジョンパネルとしょうしてはいるが、1080iを表示ひょうじするさいには画素がそすうやく半分はんぶんらすスケーリング処理しょりおこなわれる(このさいにオーバースキャン処理しょりおこなわれることがある)。画素がそすうが1920×1080以上いじょうのハイビジョンパネルは、1080iをスケーリングすることなくドットバイドット(Dot by Dot)での表示ひょうじ可能かのうである(おおくの場合ばあいデフォルトはオーバースキャンになっているため、ユーザーがドットバイドットにえる必要ひつようがある)。これらのパネルもしくはこれを採用さいようした機種きしゅはフルをけてフルHD、フルハイビジョン、フルスペックハイビジョンとう呼称こしょうされることがおおいが「解像度かいぞうどだけをもってフルスペックとんでいいのか」とうについて議論ぎろんがあることから統一とういつされた呼称こしょう定義ていぎされていない[9]

表示ひょうじ領域りょういきはメーカーあいだことなるだけでなく、どういちメーカーないでも統一とういつされていない。また、おなじテレビであっても表示ひょうじしている映像えいぞうあかるさによって表示ひょうじ領域りょういきおおきく変動へんどうしてしまうこともある[ちゅう 8]

なお、デジタルチューナーは搭載とうさいしているが、表示ひょうじにおいてハイビジョンの条件じょうけんたしていない場合ばあいたんなる「デジタルテレビ」となる。パネルの解像度かいぞうどが640×480または854×480であるにもかかわらずデジタルチューナー内蔵ないぞうを以ってハイビジョンテレビとんでいる場合ばあいもあるが、これはあやまりである(店頭てんとうPOPにこのようなあやまりがおおい)。そして、デジタルチューナーは搭載とうさいであるが表示ひょうじにおいてハイビジョンの条件じょうけんたしている場合ばあい一般いっぱんてきには「デジタルハイビジョン対応たいおうテレビ」という、ややまぎらわしい表現ひょうげん使つかわれる。

アナログ・デジタル放送ほうそう規格きかく[編集へんしゅう]

そう走査そうさせんすうが1,125ほんおなじであっても放送ほうそうきょくからの映像えいぞうのある有効ゆうこう走査そうさせんすうアナログハイビジョンでは1,035ほん(1035i)、2000ねん平成へいせい12ねん)12月1にち開始かいしのBSデジタル放送ほうそうからのデジタルハイビジョンでは1,080ほん(1080i)とことなる。有効ゆうこう走査そうさせんすう以外いがい放送ほうそう規格きかくもアナログハイビジョンと衛星えいせい放送ほうそう(BS/CS)のデジタルハイビジョン・地上ちじょうデジタルハイビジョンとはことなる。

この放送ほうそう規格きかくちがいから、テレビ製造せいぞうメーカーは1999ねん平成へいせい11ねん)までに発売はつばいされたアナログハイビジョンテレビはデジタルハイビジョン放送ほうそう規格きかく設定せっていされるまえのためデジタルハイビジョンチューナーからの入力にゅうりょく対応たいおうしないと説明せつめいする。現実げんじつには、デジタルハイビジョンチューナーがわで「1125i固定こてい」(標準ひょうじゅん画質がしつもすべて1125iに変換へんかん)に設定せっていすることでアナログハイビジョンテレビでもコンポーネント端子たんし接続せつぞくで1125i固定こてい受像じゅぞうされ使用しよう可能かのうである。ただしアナログハイビジョンテレビでは前述ぜんじゅつのように表示ひょうじ走査そうさせんすうすくないので、フル画像がぞう表示ひょうじさせるために表示ひょうじ走査そうさせんすう調整ちょうせいのぞましい。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 一部いちぶのハイビジョンテレビの取扱とりあつかい説明せつめいしょでは、アナログハイビジョンでの有料ゆうりょう放送ほうそう開始かいしされた場合ばあい想定そうていして、MUSEデスクランブラー(発売はつばい)の接続せつぞく設定せってい方法ほうほう記載きさいされていた。
  2. ^ ただし、初期しょき白黒しろくろテレビカラーテレビよりは安価あんかであった(いずれも登場とうじょう当初とうしょは、当時とうじ会社かいしゃいん年収ねんしゅうすうねんぶん相当そうとうしていた)。
  3. ^ 2007ねん現在げんざい日本にっぽんにおける衛星えいせい放送ほうそう関連かんれんについての運用うんようすべてがISDB-Sに集約しゅうやくされているわけではない。通信つうしん衛星えいせい使つかった放送ほうそう一部いちぶはISDB-S以外いがいのものでおこなわれている。詳細しょうさいについては衛星えいせい放送ほうそう記事きじなども参照さんしょうのこと。
  4. ^ デジタル放送ほうそう伝送でんそう規格きかくにハイビジョンのほか旧来きゅうらいのアナログ放送ほうそうおこなっていたものも放送ほうそう可能かのうにすることで、放送ほうそうきょくがわ運用うんようめん視聴しちょうしゃがわ環境かんきょうめんなどで従来じゅうらい資産しさん活用かつよう多少たしょうなりとも可能かのうにしアナログ放送ほうそうからデジタル放送ほうそう移行いこうすることをよりスムーズにおこなえる余地よち拡大かくだいすることを意図いとしたもの。
  5. ^ 各種かくしゅテレビ放送ほうそうちがいによる伝送でんそうレートの設定せっていちがいはデジタルテレビ記述きじゅつ参照さんしょうのこと。
  6. ^ 映像えいぞう解像度かいぞうど変化へんかする(ことなる)場合ばあい一定いってい映像えいぞう品質ひんしつ維持いじするじょうではその映像えいぞう記録きろく伝送でんそう必要ひつようなレートもわるので解像度かいぞうどことなる場合ばあいふくまない(つまり、ハイビジョンと標準ひょうじゅん解像度かいぞうど従来じゅうらい解像度かいぞうど映像えいぞうでは必要ひつよう映像えいぞう記録きろくレート・伝送でんそうレートはことなる)。解像度かいぞうど映像えいぞう伝送でんそうレートの関係かんけいについての詳細しょうさい当該とうがい関連かんれん記事きじ参照さんしょうのこと
  7. ^ アナログ放送ほうそうとはちがい、表示ひょうじさいに4:3から16:9になるよう左右さゆうばすわけではない。元々もともと横長よこなが長方形ちょうほうけい画素がそである。
  8. ^ このため、番組ばんぐみ制作せいさくサイドでは安全あんぜん領域りょういきさだめて字幕じまくやテロップはこの範囲はんいないおさまるように映像えいぞうつくる。この安全あんぜん領域りょういき一定いっていしていない。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじん NHKエンジニアリングシステム
  2. ^ [1]特許とっきょ情報じょうほうプラットフォーム
  3. ^ [2] 2023ねん9がつ2にち閲覧えつらん
  4. ^ 藤尾ふじおたかし(1988) 「HDTV(ハイビジョン)開発かいはつ経緯けいい:システムの最適さいてきとその性能せいのう(HDTV(ハイビジョン)(だい1かい))」、『テレビジョン学会がっかい』 42(6)、570-578、1988-06-20
  5. ^ 大西おおにしひろし(1993) 「3-1 信号しんごう変換へんかん(3.ワイドテレビ)(<しょう特集とくしゅう>ハイビジョン・ワイドテレビ受像じゅぞう)」、『テレビジョン学会がっかい』 47(7)、949-952、1993-07-20
  6. ^ 二宮にのみやたすくいち(1995)、「ハイビジョンの現状げんじょう先端せんたん技術ぎじゅつ」、『電気でんき学会がっかい』1995ねん 115かん 3ごう p.170-173
  7. ^ 45まんえんのテレビが8まんだいれたワケ─「帝王ていおう」ヒットの裏側うらがわ三洋電機さんようでんきのテレビ 2][リンク]日経にっけいトレンディー
  8. ^ 『15JEITA-デだい409ごう デジタル放送ほうそうおよどう受信じゅしん呼称こしょう定義ていぎについて』、一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん 電子でんし情報じょうほう技術ぎじゅつ産業さんぎょう協会きょうかい、2003
  9. ^ 『18JEITA-デだい153ごう フラットディスプレイテレビ受信じゅしんにおける1920×1080画素がそゆうするパネルについて』、一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん 電子でんし情報じょうほう技術ぎじゅつ産業さんぎょう協会きょうかい、2006

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]