出典 しゅってん : フリー百科 ひゃっか 事典 じてん 『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハイイログマとホッキョクグマの雑種 ざっしゅ は、自然 しぜん 界 かい に生息 せいそく するクマ科 か の雑種 ざっしゅ 動物 どうぶつ である。2006年 ねん 、カナダ の北極圏 ほっきょくけん で発見 はっけん された奇妙 きみょう な外見 がいけん のクマのDNA鑑定 かんてい によって、この雑種 ざっしゅ が自然 しぜん 界 かい に見 み られることが裏付 うらづ けられた[1] 。それより以前 いぜん にもこの雑種 ざっしゅ は動物 どうぶつ 園 えん で生 う まれていたが、自然 しぜん 界 かい においては存在 そんざい しない生物 せいぶつ ではないかと考 かんが えられていた。
自然 しぜん 界 かい における出現 しゅつげん [ 編集 へんしゅう ]
上記 じょうき のDNA鑑定 かんてい により確定 かくてい した一 いち 件 けん の例 れい とその他 た のそれらしき目撃 もくげき 例 れい から[2] 、動物 どうぶつ 学者 がくしゃ たちは野生 やせい の交雑 こうざつ 種 しゅ がいかにして誕生 たんじょう したのかについて仮説 かせつ を立 た てた。2つの種 たね は遺伝 いでん 的 てき に近 ちか く縄張 なわば りも共有 きょうゆう しているが、お互 たが いを避 さ ける傾向 けいこう がある。またお互 たが いに占 し める生態 せいたい 的 てき 地位 ちい も異 こと なる。
グリズリー (また他 た のアラスカに生息 せいそく するアラスカアカヒグマなどは全 すべ てヒグマ Ursus arctos の一種 いっしゅ )は陸上 りくじょう で生活 せいかつ 、繁殖 はんしょく する傾向 けいこう がある。一方 いっぽう 、ホッキョクグマ は水中 すいちゅう や氷上 ひかみ で生活 せいかつ し、繁殖 はんしょく も氷上 ひかみ で行 おこな う。一説 いっせつ によれば地球 ちきゅう 温暖 おんだん 化 か により氷 こおり が薄 うす くなり、ホッキョクグマが彼 かれ らのもとの生息 せいそく 域 いき で狩 か りをすることができなくなったのではないかと言 い われている[3] 。彼 かれ らが内陸 ないりく に入 はい り込 こ んできたために、雑種 ざっしゅ の生 う まれる頻度 ひんど が高 たか くなったのである。1864年 ねん に発見 はっけん されたクリーム色 しょく の巨大 きょだい グマ、マクファーレンズ・ベア (英語 えいご 版 ばん ) の標本 ひょうほん が示 しめ すように、ハイイログマとホッキョクグマの雑種 ざっしゅ は今 いま までにも時折 ときおり 出現 しゅつげん していたようである。
2006年 ねん の発見 はっけん [ 編集 へんしゅう ]
2006年 ねん 4月 がつ 16日 にち 、アイダホ州 しゅう からやってきたハンターのジム・マーテル (Jim Martell) は北米 ほくべい カナダ のバンクス諸島 しょとう のサックスハーバー (Sachs Harbour) でハイイログマとホッキョクグマの雑種 ざっしゅ を狙撃 そげき した[1] 。マーテルは5万 まん ドルを支払 しはら い正式 せいしき な許可 きょか 証 しょう を持 も ってホッキョクグマの狩 か りをしているところであり、その動物 どうぶつ についてもホッキョクグマのつもりで射殺 しゃさつ したのだった。この生物 せいぶつ はホッキョクグマに特徴 とくちょう 的 てき な白 しろ っぽいクリーム色 しょく の薄 うす い毛皮 けがわ と長 なが い爪 つめ 、丸 まる く盛 も り上 あ がった背中 せなか と彫 ほ りの浅 あさ い顔 かお をもちながら、眼 め の周 まわ り、背中 せなか と足 あし にはハイイログマの毛色 けいろ である茶色 ちゃいろ い斑紋 はんもん が見 み られ、当局 とうきょく は関心 かんしん をもった。もしこのクマがグリズリーであると判断 はんだん されれば、マーテルは1000カナダドルの罰金 ばっきん と1年 ねん の懲役 ちょうえき を科 か せられるところであった[4] 。
DNA鑑定 かんてい はブリティッシュコロンビア州 しゅう の Wildlife Genetic International で行 おこな われ、鑑定 かんてい の結果 けっか これはホッキョクグマの母 はは とハイイログマの父 ちち の雑種 ざっしゅ であると認 みと められた[1] 。この交雑 こうざつ は生物 せいぶつ 学 がく 的 てき に可能 かのう であり動物 どうぶつ 園 えん では過去 かこ にも生 う まれていたが、野生 やせい で確認 かくにん されたのはこれが初 はじ めてであった[5] 。
議論 ぎろん のさ中 ちゅう 、このクマはマーテルに返還 へんかん された[6] [7] 。
この雑種 ざっしゅ の名前 なまえ [ 編集 へんしゅう ]
クマ科 か の異 こと なる種 たね 間 あいだ での交雑 こうざつ の可否 かひ 。上 うえ もしくは左 ひだり から順 じゅん に A. melanoleuca ジャイアントパンダ 、H. malayanus マレーグマ 、M. ursinus ナマケグマ 、T. ornatus メガネグマ 、U. arctos ヒグマ 、U. thibetanus ツキノワグマ 、U. americanus アメリカグマ 、U. maritimus ホッキョクグマ 。
ホッキョクグマの雑種 ざっしゅ のうちのいくつかは、クマ科 か の2種 しゅ の雑種 ざっしゅ の総称 そうしょう として単 たん にクマ科 か の雑種 ざっしゅ と呼 よ ばれる。ホッキョクグマ とハイイログマ (グリズリー)との雑種 ざっしゅ は今 いま までもいくつか撮影 さつえい 報告 ほうこく されていたが、その血統 けっとう がDNA鑑定 かんてい により裏付 うらづ けられたことは無 な かった。
2006年 ねん の発見 はっけん によって雑種 ざっしゅ が注目 ちゅうもく されたことで、メディアはピズリー (pizzly )、グローラー (grolar bear )[8] 、ポリズリー (polizzly) などの混 こん 成語 せいご を提案 ていあん したが、そのどれを使用 しよう するかの合意 ごうい には至 いた っていない。
カナダ政府 せいふ の野生 やせい 生物 せいぶつ 保護 ほご 局 きょく はこれをイヌイット語 ご のホッキョクグマ(ナヌーク Nanuk )とハイイログマ(アクラーク Aklak )を合 あ わせてナヌラーク Nanulak と呼 よ ぶことを提案 ていあん している[9] 。雑種 ざっしゅ の名前 なまえ に父方 ちちかた の種 たね の名前 なまえ を最初 さいしょ に持 も ってくるのはひとつの慣習 かんしゅう であり[10] 、雄 ゆう のホッキョクグマと雌 めす のハイイログマの子 こ を"ピズリー"と呼 よ ぶとすれば、雄 ゆう のハイイログマと雌 めす のホッキョクグマの子 こ は"グローラー"と呼 よ ばれる。1864年 ねん のマクファーレンの標本 ひょうほん は収蔵 しゅうぞう 庫 こ に長 なが い間 あいだ 保管 ほかん された後 のち 、1918年 ねん になってクリントン・ハート・メリアム によって新種 しんしゅ であるという評価 ひょうか とともに、Vetularctos inopinatus という学名 がくめい が正式 せいしき に与 あた えられていた。しかし、古代 こだい DNA の解析 かいせき によりこれがハイイログマとホッキョクグマの雑種 ざっしゅ の遺骸 いがい であることが確 たし かめられたならば、国際 こくさい 動物 どうぶつ 命名 めいめい 規約 きやく においては雑種 ざっしゅ に与 あた えられた学名 がくめい は無効 むこう となるので、この標本 ひょうほん を模 も 式 しき 標本 ひょうほん とする Vetularctos 属 ぞく 、Vetularctos inopinatus またはUrsus inopinatus は全 すべ て無効 むこう 名 めい となる。
注釈 ちゅうしゃく ・出典 しゅってん [ 編集 へんしゅう ]
^ a b c “Wild find: Half grizzly, half polar bear: Hunter bags what expert 'never thought would happen' in wild” . MSNBC.MSN.com. (2006年 ねん 5月 がつ 11日 にち ). http://msnbc.msn.com/id/12738644/?GT1=8199 2006年 ねん 5月 がつ 14日 にち 閲覧 えつらん 。
^ "Alien Ice Bear" UK Channel 5 TV Documentary
^ Pennisi, E.: "U.S. Weighs Protection for Polar Bears", Science , 315(5805):25
^ “Hunter Shoots Hybrid Bear” . Associated Press. (2006年 ねん 5月 がつ 12日 にち ). http://www.foxnews.com/story/0,2933,195087,00.html 2006年 ねん 6月 がつ 18日 にち 閲覧 えつらん 。
^ “Polar bear or Grizzly - how about Pizzly?” . IOL. (2006年 ねん 5月 がつ 10日 とおか ). http://www.iol.co.za/index.php?set_id=1&click_id=29&art_id=qw1147284722476C535 2006年 ねん 5月 がつ 14日 にち 閲覧 えつらん 。
^ “Rare hybrid bear comes to Idaho...as a trophy” . Associated Press. (2007年 ねん 1月 がつ 21日 にち ). http://www.freenewmexican.com/news/55603.html 2007年 ねん 1月 がつ 21日 にち 閲覧 えつらん 。
^ Alicia P.Q. Wittmeyer Rare hybrid bear coming to Reno hunting show Tahoe Daily Tribune, January 19, 2007
^ "Hunter may have shot grolar bear - or was it pizzly?" , CBC North, 26 April 2006.
^ "Hybrid bear shot dead in Canada," BBC Science, 13 May 2006
^ Naming Conventions A semi-scientific reference for hybrid naming conventions, with specific examples of big-cat hybrids.
ウシ科 か ラクダ科 か イヌ属 ぞく マイルカ科 か ゾウ科 か ウマ属 ぞく ネコ科 か ヒト科 か カンガルー亜 あ 科 か イノシシ属 ぞく イタチ クマ属 ぞく 関連 かんれん 項目 こうもく