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ハ42 (エンジン)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハ104から転送てんそう
ハ42(ハ214)エンジン。岐阜ぎふかかみがはら航空こうくう宇宙うちゅう博物館はくぶつかん展示てんじ

ハ42とは、だい世界せかい大戦たいせん三菱みつびし航空機こうくうき開発かいはつ製造せいぞうした航空機こうくうきよう空冷くうれいほしがたエンジンである。

ハ42は陸海りくかいぐん統合とうごう名称めいしょうであり、陸軍りくぐん呼称こしょうハ104およハ214[1]社内しゃない呼称こしょうA18[2]海軍かいぐんりゃく符号ふごうMK6およMK10制式せいしき採用さいようはされなかったため制式せいしき呼称こしょう存在そんざいしない。

同社どうしゃ空冷くうれいほしがた14気筒きとうエンジン「火星かせい」を18気筒きとうしたものであり、日本にっぽん最初さいしょ空冷くうれい18気筒きとうエンジンとなった。たか信頼しんらいせいもとめて技術ぎじゅつてき冒険ぼうけんけたこともあり、性能せいのう不足ふそく気味ぎみであった。性能せいのう向上こうじょうさくこうじられた仕様しよう実用じつよういたらずに終戦しゅうせんむかえた[3]

開発かいはつ

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日本にっぽんはつ空冷くうれいじゅうほしがた18気筒きとうエンジンであり、おな三菱みつびしせい空冷くうれいじゅうほしがた14気筒きとうエンジン火星かせいをベースに設計せっけいしたものである。気筒きとうみち行程こうてい火星かせいひとしく[2]カムレイアウトもおな前方ぜんぽう集中しゅうちゅうとした[4][5]気筒きとうすうえたことにより冷却れいきゃく能力のうりょく不足ふそく心配しんぱいされたためぞうそく3.5の強制きょうせい冷却れいきゃくファンがそなえられている[6]みず・メタノール噴射ふんしゃ装置そうちについては技術ぎじゅつてき難点なんてんえるとして見送みおくられている[3]。そのため圧縮あっしゅくきゅうあつとも火星かせいいちがたどう水準すいじゅんであり、開発かいはつ時期じきちかほまれハ43ひとし国産こくさん空冷くうれい18気筒きとうエンジンとしてひくおさえられたためにその信頼しんらいせい比較的ひかくてきたかいものとなった[5]。しかしベースとなった火星かせい同様どうよう積極せっきょくてき振動しんどう対策たいさくほどこされておらず、搭載とうさいする新型しんがた爆撃ばくげきよんしきじゅう爆撃ばくげき開発かいはつさいボルトゆるみが多発たはつするなどの問題もんだいがあった[1]

昭和しょうわ14(1939)年度ねんど試作しさく発動はつどうとして計画けいかくされたA18A昭和しょうわ14ねん(1939ねん)8がつ初号しょごう完成かんせい昭和しょうわ15ねん(1940ねん96がつ審査しんさ運転うんてん終了しゅうりょうし、ハ104(ハ42-11)として陸軍りくぐん制式せいしき採用さいようされた[2]。しかしながらこれを搭載とうさいする新型しんがたじゅう爆撃ばくげきたるよんしきじゅう爆撃ばくげき制式せいしき採用さいよう昭和しょうわ19ねん(1944ねん)にずれみ、このころには出力しゅつりょくこう高度こうど性能せいのうともに不足ふそく気味ぎみとなっていた。

これに先立さきだって、A18Aの性能せいのう向上こうじょうばんであるA18E開発かいはつ開始かいしされている[3]。A18Eは陸軍りくぐんではハ214呼称こしょうされたが、これには従来じゅうらいの2そくきゅうくわえて排気はいきタービンきゅうそなえるハ214ル(ハ42-21)、フルカンもちいただい1だん、1そく機械きかい駆動くどうだい2だんからる2だんきゅうそなえるハ214フ(ハ42-31)、2そくきゅうのみをそなえるハ214(ハ42-20)をふくんでいる[7]あらため設計せっけいにあたっては抜本ばっぽんてきくわえられ、まず金星かなぼしからいできたカムの前方ぜんぽう集中しゅうちゅう前後ぜんごけにあらためられた[1][8]。また燃料ねんりょう分配ぶんぱい均一きんいつ低質ていしつ燃料ねんりょうへの適応てきおうせい向上こうじょうねらって燃料ねんりょう噴射ふんしゃ方式ほうしき採用さいようされ、さらにみず・メタノール噴射ふんしゃ装置そうち装備そうびされた[7]圧縮あっしゅくはA18Aの6.5から6.7にげられ、これらの改良かいりょうによりはなれのぼり馬力ばりきは1,900馬力ばりきから2,200 - 2,500馬力ばりきへとげられた[7][9]

しかし、ハ214ルは昭和しょうわ18ねん(1943ねん)、ハ214フは昭和しょうわ19ねん(1944ねん)によんしきじゅう爆撃ばくげき搭載とうさいされて試験しけん飛行ひこうおこなわれたものの開発かいはつ中止ちゅうし代替だいたいとしてハ214の搭載とうさい指示しじされたが実用じつようたずに終戦しゅうせんむかえた[3]

このエンジンを搭載とうさいする機体きたいとしては、キ67とその派生はせいほか立川たちかわ飛行機ひこうきキ74偵察ていさつ予定よていされたが、エンジン開発かいはつ不調ふちょうからハ43-21ル変更へんこうとなっている。

主要しゅようしょもと

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ハ42-11(ハ104)

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  • タイプ:空冷くうれいほしがた18気筒きとう
  • ボア×ストローク:150 mm×170 mm
  • 排気はいきりょう:54.1 L
  • 全長ぜんちょう:1,842 mm
  • 全幅ぜんぷく:1,370 mm
  • 乾燥かんそう重量じゅうりょう:944 kg
  • 燃料ねんりょう供給きょうきゅう方式ほうしきキャブレターしき
  • 圧縮あっしゅく:6.5
  • きゅう遠心えんしんしき2そくスーパーチャージャー
  • はなれのぼり馬力ばりき 
    • 1,900 hp/2,450 rpm / ブースト+270 mmhg
  • 公称こうしょう馬力ばりき 
    • いちそく全開ぜんかい 1,810 hp/2,300 rpm / ブースト+180 mmhg(高度こうど2,200 m)
    • そく全開ぜんかい 1,610 hp/2,300 rpm / ブースト+180 mmhg(高度こうど6,100 m)

ハ42-21(ハ214)

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  • 乾燥かんそう重量じゅうりょう:1,260 kg
  • 燃料ねんりょう供給きょうきゅう方式ほうしき燃料ねんりょう噴射ふんしゃしき
  • 圧縮あっしゅく:6.7
  • きゅう遠心えんしんしき2そくスーパーチャージャー
  • そのみずメタノール噴射ふんしゃ装置そうち
  • はなれのぼり馬力ばりき 
    • 2,400 hp/2,600 rpm
  • 公称こうしょう馬力ばりき 
    • いちそく全開ぜんかい 2,300 hp/2,500 rpm / ブースト+300 mmhg(高度こうど2,000 m)
    • そく全開ぜんかい 2,000 hp/2,500 rpm / ブースト+300 mmhg(高度こうど6,400 m)

ハ42-21ル(ハ214ル)

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  • きゅうターボチャージャー+遠心えんしんしき2そくスーパーチャージャー
  • そのみずメタノール噴射ふんしゃ装置そうち
  • はなれのぼり馬力ばりき 
    • 2,500 hp/2,800 rpm
  • 公称こうしょう馬力ばりき 
    • いちそく全開ぜんかい 2,300hp/2,500 rpm / ブースト+300 mmhg (高度こうど2,000m)
    • そく全開ぜんかい 2.000hp/2,500 rpm / ブースト+300 mmhg (高度こうど6,400 m)

ハ42-31(ハ214フ)

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  • きゅう遠心えんしんしきだん変速へんそくスーパーチャージャー+遠心えんしんしき2そくスーパーチャージャー
  • そのみずメタノール噴射ふんしゃ装置そうち
  • はなれのぼり馬力ばりき 
    • 2,300 hp/2,600 rpm
  • 公称こうしょう馬力ばりき 
    • いちそく全開ぜんかい 2,130 hp/2,500 rpm  (高度こうど1,600 m)
    • そく全開ぜんかい 1,750 hp/2,500 rpm  (高度こうど8,300 m)

出典しゅってん

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  1. ^ a b c 坂上さかがみ茂樹しげき 2013b, p. 434.
  2. ^ a b c 松岡まつおか久光ひさみつ 2017, p. 111.
  3. ^ a b c d 坂上さかがみ茂樹しげき 2013a, p. 190.
  4. ^ 松岡まつおか久光ひさみつ 2017, p. 112.
  5. ^ a b 坂上さかがみ茂樹しげき 2013b, p. 433.
  6. ^ 松岡まつおか久光ひさみつ 2017, p. 113.
  7. ^ a b c 坂上さかがみ茂樹しげき 2013b, p. 435.
  8. ^ 松岡まつおか久光ひさみつ 2017, p. 114.
  9. ^ 松岡まつおか久光ひさみつ 2017, p. 115.

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 日本航空にほんこうくう学術がくじゅつ編集へんしゅう委員いいんかいへん日本航空にほんこうくう学術がくじゅつ
  • 松岡まつおか久光ひさみつ三菱みつびし 航空こうくうエンジン - 大正たいしょうろくねんより昭和しょうわまで』グランプリ出版しゅっぱん、2017ねん8がつISBN 978-4-87687-351-7 
  • 坂上さかがみ茂樹しげきだいII ガソリン噴射ふんしゃみずメタノール噴射ふんしゃ技術ぎじゅつ進化しんか三菱重工業みつびしじゅうこうぎょう」『三菱みつびし発動はつどう技術ぎじゅつ - ルノーから三連星さんれんせいまで』〈大阪市立大学おおさかいちりつだいがく大学院だいがくいん経済けいざいがく研究けんきゅう Discussion Paper No.78〉2013ねん6がつ 
  • 坂上さかがみ茂樹しげきだいIII 固定こてい気筒きとう空冷くうれい発動はつどう進化しんか三菱みつびし航空機こうくうき三菱重工業みつびしじゅうこうぎょう - モングースから金星かなぼしファミリーまで」『三菱みつびし発動はつどう技術ぎじゅつ - ルノーから三連星さんれんせいまで』〈大阪市立大学おおさかいちりつだいがく大学院だいがくいん経済けいざいがく研究けんきゅう Discussion Paper No.79〉2013ねん6がつ