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バインシレ層そう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
バインシレ層そう
層そう序じょ範囲はんい: 上部じょうぶ白亜はくあ系けい
種別しゅべつ 累るい層そう
上層じょうそう バルンゴヨット層そう[1]
下層かそう Ulaanoosh Formation
岩いわ質しつ
主おもな岩石がんせき 粘土ねんど岩がん・砂岩さがん
その他たの岩石がんせき 礫つぶて岩がん・泥どろ岩がん
所在地しょざいち
地域ちいき ゴビ砂漠ごびさばく
国くに モンゴルの旗 モンゴル
長ながさ Erlian Basin

バインシレ層そう[2]（バインシレそう）またはバヤンシレ層そう（バヤンシレそう）[1]は、モンゴル国こくに分布ぶんぷする上部じょうぶ白亜はくあ系けいの地層ちそう。Vasiliev et al., 1959 で初はじめて記載きさい・設立せつりつされた[3]。

説明せつめい

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バインシレ層そうは主おもに石灰せっかい質しつのコンクリーションを伴ともなう多彩たさいな粘土ねんど岩がんと砂岩さがんからなり、灰色はいいろの泥どろ岩がんと黄き褐色かっしょくの中なか粒つぶ砂岩さがんにより特徴とくちょうづけられる[3][4]。層そう厚あつが300メートルに達たっする最もっとも完全かんぜんなセクションはゴビ砂漠ごびさばくの東部とうぶに見みられ、細ほそ粒つぶかつしばしば交差こうさ層状そうじょうの灰色はいいろ砂岩さがんに粘土ねんど岩がんと凝固ぎょうこした地層ちそう内ない礫つぶて岩がんが挟はさまり、上部じょうぶには赤色あかいろから茶色ちゃいろを呈ていする泥どろ岩がんの比較的ひかくてき厚あついユニットがある[5][6]。Baynshire locality と Burkhant locality は主おもに泥どろ岩がん・シルト岩がん・砂岩さがん・礫つぶて岩がんからなり、これら堆積たいせき物ぶつの大だい部分ぶぶんは河川かせん起源きげんのものである[7][8][9]。バインシレ層そうに存在そんざいした環境かんきょうは主おもに河川かせんあるいは湖みずうみといった大型おおがたの水域すいいきを伴ともなうステップ気候きこうで構成こうせいされた[10][9]。部分ぶぶん的てきには湖みずうみがあったと考かんがえられているが[11]、Baynshire locality の砂岩さがん層そうの多おおくでは大だい規模きぼな斜はす交層理りが見みられ、蛇行だこうする大だい規模きぼな河川かせん系けいの存在そんざいが示唆しさされているようである。バインシレの時代じだいの後期こうきの間あいだには大河たいがが海うみと直接ちょくせつ接続せつぞくし、東部とうぶゴビ地域ちいきの大だい部分ぶぶんを流ながれていたことが示唆しさされる[5][8][10]。

層そう序じょ

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Jerzykiewicz and Russell によると、バインシレ層そうは下部かぶと上部じょうぶの2つの非公式ひこうしきのユニットに区分くぶんされる[7]。Danilov らは下部かぶの単たん層そうがセノマニアン期きから前期ぜんきチューロニアン期きのもの、上部じょうぶの単たん層そうが後期こうきチューロニアンからサントニアン期きに相当そうとうすることを示唆しさした[12]。下部かぶの単たん層そうはかつて非常ひじょうに活発かっぱつな河川かせんが存在そんざいしたことを示唆しさする広範囲こうはんいの礫つぶて岩がんで構成こうせいされる一方いっぽう、上部じょうぶの単たん層そうは砂岩さがんが挟はさみ在ざいする泥どろ岩がんと粘土ねんど岩がんで主おもに構成こうせいされており、これは河川かせんだけでなく湖みずうみや他たの水域すいいきも存在そんざいしていたことを示唆しさする[13]。

他たの累るい層そうとの比較ひかくに基もとづき、Jerzykiewicz and Russell はバインシレ層そうの古こ動物どうぶつ相しょうが約やく9300万まん年ねん前まえから約やく8000万まん年ねん前まえにあたる後期こうき白はく亜紀あきのチューロニアン期きから前期ぜんきカンパニアン期きのものと最もっとも良よく対応たいおうすることを示唆しさした[7]。しかし、バインシレ層そうの磁気じき層そう序じょ学がく調査ちょうさからは、バインシレ層そうが白はく亜紀あきの長期ちょうきの正せい磁極じきょく期きのうちに堆積たいせきしたことが示唆しさされた。この正せい磁極じきょく期きはサントニアン期末きまつまでしか継続けいぞくしておらず、セノマニアン期きから後期こうきサントニアン期きまでの約やく9800万まん年ねん前まえから約やく8300万まん年ねん前まえまでが可能かのう性せいのある年代ねんだいとして導みちびかれている[8]。2012年ねんには、Averianov and Sues がゴビ砂漠ごびさばくに由来ゆらいする数すう多おおくの累るい層そうを再さい調査ちょうさし、また生なま層そう序じょ学がく的てき産出さんしゅつと過去かこの年代ねんだい測定そくていを用もちい、バインシレ層そうがセノマニアン期きからサントニアン期きのものであると考かんがえた。下部かぶの単たん層そうは9800万まん年ねん前まえから9000万まん年ねん前まえ（前期ぜんきセノマニアン - 後期こうきチューロニアン）にあたり、上部じょうぶの部ぶ層そうは9000万まん年ねん前まえから8300万まん年ねん前まえ（後期こうきチューロニアン - 後期こうきサントニアン）とされた[10]。Kurumada らが2020年ねんに発表はっぴょうしたカルサイトのウラン・鉛なまり年代ねんだい測定そくてい法ほうでは、得えられた 95.9 ± 6.0 Ma および 89.6 ± 4.0 Ma という年代ねんだいから、バインシレ層そうの正確せいかくな年代ねんだいは1億おく200万まん年ねん前まえから8600万まん年ねん前まえとして推定すいていされた[14]。

対比たいひ

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大だい多数たすうの論文ろんぶん著者ちょしゃにより、長ながらくバインシレ層そうはイレンダバス層そうと対比たいひされる可能かのう性せいがあるとされてきた。これは脊椎動物せきついどうぶつ群集ぐんしゅうの高たかい類似るいじ性せいに基もとづいている[7][15][16][17]。しかし、Van Itterbeeck et al., 2005 はこの対比たいひに反論はんろんし、車軸しゃじく藻もと貝かい虫ちゅうの群集ぐんしゅうに基もとづいてイレンダバス層そうはより新あたらしいネメグト層そうとほぼ等ひとしい年代ねんだいであると結論けつろんした。このため、これらの層そうは後期こうきカンパニアン期きから前期ぜんきマーストリヒチアン期きのものとされる[18]。これと異ことなり、Averianov and Sues はバインシレ層そう・イレンダバス層そう・ビセクティ層そうの対比たいひを提唱ていしょうした[10]。2015年ねん、Tsuihiji と彼かれのチームは Van Itterbeeck の用もちいた微ほろ化石かせき群集ぐんしゅうがマーストリヒチアン期きに限定げんていされないこと、および類似るいじする堆積たいせき条件じょうけん・気候きこう条件じょうけんゆえにこれらの群集ぐんしゅうが類似るいじした可能かのう性せいが最もっとも高たかいとし、イレンダバス層そうとネメグト層そうの対比たいひを相容あいいれないものであるとした[19]。

バインシレ層そうの古こ生物せいぶつ相しょう

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生物せいぶつ多様たよう性せいの面めんでは、バインシレ層そうで最もっとも豊富ほうふな脊椎動物せきついどうぶつはテリジノサウルス類るい（英語えいご版ばん）とカメであり、夥おびただしい化石かせきがその証拠しょうこである[12][20]。それにも拘かかわらず、ハドロサウルス上うえ科かも多おおく、特とくに Baynshire locality では無数むすうの化石かせきが産出さんしゅつしている。ゴビハドロスの標本ひょうほんもこの産地さんちから産出さんしゅつしたものである[9][21][13]。加くわえて、テリジノサウルス科かのエルリコサウルスとセグノサウルス[22]、曲きょく竜りゅう類るいのタラルルスとツァガンテギアの間あいだでは生態せいたい的てき地位ちいが分割ぶんかつされていたことが報告ほうこくされている[23]。しかし、バインシレ層そうの哺乳類ほにゅうるいは乏とぼしく、ツァガンデルタ（英語えいご版ばん）は2015年ねん時点じてんで記載きさいされている唯一ゆいいつの哺乳類ほにゅうるいである[24]。

脊椎動物せきついどうぶつ化石かせきの他ほかには、豊富ほうふな果実かじつの化石かせきが Bor Guvé locality および Khara Khutul locality から回収かいしゅうされており、特とくに前者ぜんしゃで顕著けんちょである。オクラと類似るいじするものの、分類ぶんるい学がく的てき位置いちは不明ふめいであり、さらなる調査ちょうさが求もとめられている[25]。

出典しゅってん

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  1. ^ a b 小林こばやし快かい次つぎ、久保田くぼた克博かつひろ『モンゴル大だい恐竜きょうりゅう ゴビ砂漠ごびさばくの大型おおがた恐竜きょうりゅうと鳥類ちょうるいの進化しんか』北海道大学ほっかいどうだいがく出版しゅっぱん会かい、2006年ねん7月がつ25日にち、7頁ぺーじ。ISBN 4-8329-0352-7。 
  2. ^ 實吉さねよし玄げん貴き. “バインシレ層そう”. 岡山理科大学おかやまりかだいがく. 2022年ねん10月がつ4日にち閲覧えつらん。
  3. ^ a b Vasiliev, V. G.; Volkhonin, V. C.; Grishin, G. L.; Ivanov, A. Kh.; Marinov, I. A.; Mokshancev, K. B. (1959). Geological structure of the People's Republic of Mongolia (stratigraphy and tectonics). p. 492 
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外部がいぶリンク

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