バラシハ

座標ざひょう: 北緯ほくい55度ど49分ふん東経とうけい37度ど58分ふん / 北緯ほくい55.817度ど東経とうけい37.967度ど / 55.817; 37.967

バラシハ（バラシーハ、ロシア語ご: Балаши́ха、ラテン文字もじ表記ひょうきの例れい: Balashikha）は、ロシアのモスクワ州しゅうにある都市とし。人口じんこうは52万まん962人にん（2021年ねん）^[1] 。モスクワの中心ちゅうしん部ぶから東ひがしに25キロメートルで、モスクワ市しの市し境さかいからは東ひがしへ4キロメートル。人口じんこう増加ぞうかが著いちじるしい。

モスクワ川がわの左ひだり支流しりゅう・ペホルカ川がわに沿そう。ペホルカ川がわとその支流しりゅうは南北なんぼく40キロ、東西とうざい20キロの範囲はんいを覆おおい、19世紀せいきには綿めん製品せいひん工場こうじょうへ工業こうぎょう用水ようすいを送おくるために無数むすうの小ちいさなダム湖みずうみやダム池ちが作つくられた。周囲しゅういは森もりに囲かこまれ、都市とし公園こうえんや貴族きぞくの邸宅ていたく跡あとの庭園ていえんなどが散在さんざいする。

地名ちめい[編集へんしゅう]

バラシハはロシア語ごでは珍めずらしい地名ちめいであり、その語源ごげんをめぐって様々さまざまな説せつがある。テュルク諸語しょごで宿やどを意味いみする「バラシュ」（balash）から来きたという説せつや、バラシュと言いう名なの裕福ゆうふくでチンギス・ハンの家系かけいにも連つらなるタタール人じんがこの地ちに邸宅ていたくを構かまえたという説せつがある。最もっとも一般いっぱん的てきな説せつは、リュウキンカを意味いみする「バラフ」（balakh）から来きたというものである。

歴史れきし[編集へんしゅう]

この地ちには古ふるい村むらが幾いくつかあったが、バラシハは比較的ひかくてき若わかい街まちであり、1820年代ねんだいに成立せいりつした。都市とし型がた集落しゅうらくになったのは1928年ねんのことであり、1939年ねんに市しとなった。

バラシハの町まちは、モスクワから東ひがしのウラジーミルやニジニ・ノヴゴロドへ伸のびるウラジーミル街道かいどうが通とおる。この道みちはモスクワ公こうがウラジーミル・スーズダリ大公たいこう国こくに向むかうときに通とおる道みちで、モスクワの商人しょうにんがニジニ・ノヴゴロドで開ひらかれるマカリエフの定期ていき市しに通かよう道みちでもあり、政治せいじ犯はんがシベリアに流刑りゅうけいになるときに通とおる道みちでもあった。ソ連それん時代じだいにはニジニ・ノヴゴロドがゴーリキーと改名かいめいされていたためゴーリキー街道かいどうと呼よばれた。

1830年ねんには化学かがく工場こうじょうが操業そうぎょうし、その周囲しゅういに集落しゅうらくができた。1830年代ねんだいから1860年代ねんだいまで、大おおきな綿めん製品せいひん工場こうじょうがこの地域ちいきで操業そうぎょうしていた。19世紀せいき末まつにはこの地ちに鉄道てつどうが通とおり、バラシハ駅えきが開業かいぎょうした。バラシハは周囲しゅういの村落そんらくを併合へいごうして拡大かくだいした。アンドレイ・ラズモフスキー公こうの地所じしょだったゴレンキ、ゴリツィン家かの地所じしょだったペフラ＝ヤコヴレフスコエなどもバラシハへ併合へいごうされた。

バラシハの一部いちぶであるサルティコフカは長年ながねん芸術げいじゅつ家か地区ちくとして知しられていた。画家がかイサーク・レヴィタンは1879年ねん、ユダヤ人じん迫害はくがいの高たかまりを避さけるためにこの地ちに住すんだ。彼かれはモスクワ近郊きんこうの穏おだやかな景色けしきを主題しゅだいに多おおくの風景ふうけい画がを描えがいている。小説しょうせつ家かレフ・トルストイもこの地ちをしばしば訪おとずれた。

ソビエト期き[編集へんしゅう]

十じゅう月がつ革命かくめいを経へてソビエト連邦れんぽうが成立せいりつすると、バラシハには多おおくの工場こうじょうができた。1930年代ねんだい以降いこうは重工業じゅうこうぎょう化かに伴ともないバラシハは工業こうぎょうの一大いちだい中心ちゅうしん地ちとなり、冶金やきん工業こうぎょう、航空機こうくうき工業こうぎょう、機械きかい工業こうぎょうなどの産業さんぎょうが立地りっちした。

独どくソ戦せん（大だい祖国そこく戦争せんそう）では戦場せんじょうとはならなかったが、多おおくの工場こうじょうが地方ちほうに疎開そかいし、市民しみん多数たすうが戦場せんじょうに向むかった。その中なかでもカチューシャ・ロケット砲ほう部隊ぶたいを率ひきいて戦たたかい戦死せんししたイヴァン・フレオロフは、この地ちの記念きねん碑ひや博物館はくぶつかんなどにその名なを残のこしている。

ソ連それん時代じだいには、国内こくないの多おおくの場所ばしょ同様どうよう、バラシハでも聖堂せいどうが取とり壊こわされた。アレクサンドル・ネフスキー聖堂せいどうは1960年代ねんだいになって取とり壊こわされたが、2002年ねんに元もとの場所ばしょに再建さいけんされている。

バラシハにはモスクワを防衛ぼうえいする大おおきな陸軍りくぐん基地きちがあったため、ソ連それん時代じだいには閉鎖へいさ都市としとして外国がいこく人じんの立たち入いりは制限せいげんされていた。また、ソ連それん防空ぼうくう軍ぐんの第だい1軍団ぐんだんの司令しれい部ぶの所在地しょざいちがあったほか、現在げんざいでも戦略せんりゃくミサイルの基地きちやロシア民間みんかん防衛ぼうえい問題もんだい・非常ひじょう事態じたい・自然しぜん災害さいがい復旧ふっきゅう省しょうなどの施設しせつがある。

産業さんぎょう・交通こうつう[編集へんしゅう]

バラシハはモスクワ都市とし圏けんでも最大さいだい級きゅうの郊外こうがい都市としで、今日きょうではモスクワに通勤つうきんする人々ひとびとの住居じゅうきょが広ひろがる。

同時どうじに重工業じゅうこうぎょうの中心ちゅうしん地ちでもあり、機械きかい工業こうぎょうを中心ちゅうしんに、化学かがく、製材せいざい、繊維せんい工業こうぎょうなどが立地りっちしている。その他た、科学かがく研究けんきゅう機関きかんもいくつか集あつまっている。

バラシハは現在げんざいでも東ひがしのウラジーミルやニジニ・ノヴゴロドへ向むかう交通こうつうの要地ようちであり、ニジニ・ノヴゴロドへの鉄道てつどう本線ほんせんが通とおり駅えきがいくつかある。これらの駅えきからはモスクワのクルスク駅えきへ向むかう通勤つうきん列車れっしゃが出でている。M7幹線かんせん道路どうろが通とおるほか、モスクワ市しの市し境さかいをモスクワ環状かんじょう道路どうろ（MKAD）が通とおる。モスクワへの通勤つうきんは多おおくのバス路線ろせんやマルシュルートカが担になう。