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カチューシャ (兵器へいき)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ベオグラード軍事ぐんじ博物館はくぶつかん展示てんじされるBM-13カチューシャ(ZiS-151車台しゃだい

カチューシャロシアКатюша, ラテン文字もじ表記ひょうき:Katyusha)は、だい世界せかい大戦たいせんにおいてソビエト連邦れんぽう開発かいはつ使用しようした世界せかい最初さいしょはししき多連装たれんそうロケットほう制式せいしきめいは82mm BM-8БМ-8ベーエーム・ヴォースィェミ)および132mm BM-13БМ-13ベーエーム・トリナーッツァチ)である。

なお、はししき多連装たれんそうロケットランチャー俗称ぞくしょうとしてこのもちいられることがある(#広義こうぎのカチューシャ参照さんしょう)。

愛称あいしょう

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カチューシャは公式こうしき名称めいしょうではないが、前線ぜんせん配備はいびされるともなく赤軍せきぐん兵士へいしたちのあいだひろまった。元々もともとロシアじん女性じょせい愛称あいしょうである「カチューシャ」がこの兵器へいき愛称あいしょうとして命名めいめいされた由来ゆらい諸説しょせつありさだかではないが、一説いっせつによると製造元せいぞうもと工場こうじょう頭文字かしらもじである「К」が刻印こくいんされていたため、前線ぜんせん兵士へいしたち当時とうじ流行りゅうこうしていたうたカチューシャ」にひっかけてはじめたものと推測すいそくされる。

これにたいし、かれらとたたかっていたドイツ陸軍りくぐん兵士へいしは、この兵器へいき外観がいかんおよび発射はっしゃひびおとオルガンていたことから、「スターリンのオルガン」(ドイツ: Stalinorgel)とんだ。

構造こうぞう

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構造こうぞう非常ひじょうにシンプルで、ロケットだんせるためのてつレール平行へいこうならしがらみじょうにした発射はっしゃと、それをささえ、方向ほうこうかく調整ちょうせいするための支持しじ構成こうせいされる。ロケットだん誘導ゆうどう一般いっぱん照準しょうじゅんはついていないため、使用しようするロケットだん重量じゅうりょう射距離しゃきょりからかく算出さんしゅつしおおよその方角ほうがくけて発射はっしゃされる。命中めいちゅう精度せいど期待きたいできないため、大量たいりょうのロケットだん集中しゅうちゅうてきむことでその欠点けってんおぎなう。たとえばBM-13の場合ばあい、1あたり8ほんのレールの上下じょうげにロケットだん装着そうちゃくし、けい16はつ連続れんぞくしてつことができる。

カチューシャは、一般いっぱんトラックソ連それんせいZIS-6アメリカせいスチュードベーカーUS6などの運転うんてんせきけい装甲そうこうほどこしたもの)にそうされたので、しばしば土台どだいのトラックの部分ぶぶんもひとまとめにしてはししきロケットランチャー名称めいしょうとして使用しようされることもある。ただし、この兵器へいきほかにも戦車せんしゃT-40水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃ)やトラクター装甲そうこう列車れっしゃ河川かせん砲艦ほうかんなどにも搭載とうさいされる。

使用しようされるロケットだんはいずれも固体こたい燃料ねんりょうロケットで、燃料ねんりょうには黒色こくしょく火薬かやくまたはダブルベース火薬かやくニトログリセリンニトロセルロース混合こんごうやく)が使用しようされる。ロケットだん自体じたい尾翼びよくしき誘導ゆうどうのシンプルな構造こうぞうのため、安価あんか大量たいりょう生産せいさんできる。BM-8ではM-8 ロケットだん口径こうけい82mm)が、BM-13ではM-8またはM-13 ロケットだん口径こうけい132mm)が使用しよう可能かのう

使用しようロケット砲弾ほうだんしょもと「M-8」

  • 全長ぜんちょう:596mm(23・5インチ)
  • どう直径ちょっけい:82mm(3.23インチ)
  • 重量じゅうりょう:8kg(17.6ポンド)
  • 初速しょそく:315m/sec(1,033ft/sec)
  • 弾頭だんとう重量じゅうりょう:3.05kg(6.725ポンド)
  • 推進すいしんやく重量じゅうりょう:1kg(2.2ポンド)
  • 最大さいだい射程しゃてい:5,500m(6,017ヤード)

使用しようロケット砲弾ほうだんしょもと「M-13」

  • 全長ぜんちょう:1,420mm(55.9インチ)
  • どう直径ちょっけい:132mm(5.2インチ)
  • 重量じゅうりょう:42.5kg(93.7ポンド)
  • 初速しょそく:355m/sec(1,165ft/sec)
  • 弾頭だんとう重量じゅうりょう:18.5kg(40.8ポンド)
  • 推進すいしんやく重量じゅうりょう:7.08kg(15.6ポンド)
  • 最大さいだい射程しゃてい:8,500m(9,300ヤード)


開発かいはつ

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ポーランドぐんのBM-13とBM-21(ひだり
キエフだい祖国そこく戦争せんそう博物館はくぶつかん展示てんじされた、ZIS-6使用しようしたカチューシャ

ソ連それんがカチューシャを開発かいはつするきっかけとなったのは、1936ねんナチス・ドイツによる6とうロケットランチャーネーベルヴェルファー」の登場とうじょうであった。1938ねん設計せっけい開始かいしされ、1941ねん6月21にちにBM-8の実戦じっせん配備はいび承認しょうにんされた。戦場せんじょう最初さいしょ使用しようされたのは、同年どうねん7がつ14にちロシア都市としルドニヤにおけるドイツ国防こくぼうぐん親衛隊しんえいたいとの戦闘せんとうにおいてであった(http://ru.wikipedia.org/ - Гвардейский реактивный миномет)。フリョーロフ大尉たいい指揮しきする実験じっけん砲兵ほうへいたいが、7のカチューシャを使用しようした。同年どうねん8がつ8にちには8つの砲兵ほうへい連隊れんたい創設そうせつされ、1連隊れんたいにつき36ずつが配備はいびされた。BM-8を改良かいりょうしたBM-13N(Nは「標準ひょうじゅんがた」の頭文字かしらもじ)は1943ねん設計せっけい完成かんせいし、だい世界せかい大戦たいせん終結しゅうけつまでに1,800以上いじょう製造せいぞうされた。

標準ひょうじゅんてき運用うんようは、てきぐん対戦たいせんしゃ陣地じんちたいし、主力しゅりょく部隊ぶたい突入とつにゅうするのに先立さきだち、待機たいきする主力しゅりょく部隊ぶたい後方こうほうからあたましに野砲やほう部隊ぶたい攻撃こうげきとともに大量たいりょうロケットだん一斉いっせい発射はっしゃするというものであった。カチューシャは命中めいちゅう精度せいど不足ふそくしているため、防衛ぼうえい施設しせつねらうのは野砲やほうなどにまかせて、ロケットだんてき兵士へいし頭上ずじょうあめのようにらすことで心理しんりてきダメージをあたえることに重点じゅうてんかれた。

広義こうぎのカチューシャ

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カチューシャは、ロケットだん発射はっしゃ代表だいひょうてきなものとして一般いっぱんによくわたった。そのため、しばしばカチューシャのゲリラへいがよく使用しようする小型こがたのロケットほう全般ぜんぱん呼称こしょうとして使用しようされることもある。また、西側にしがわではソ連それんロシアせいはししき多連装たれんそうロケットランチャーすべてにたいする俗称ぞくしょうとしてもちいられることもある。

なお、現在げんざいロシア連邦れんぽうぐんなどで使用しようされているカチューシャに後継こうけい兵器へいきBM-21 グラートБМ-21 Град ベーエム・ドヴァーッツァチ・アヂーン, град)122mm 40連装れんそうロケットほうで、ロシアではカチューシャとはばれないが、任務にんむおなじで外見がいけんもよくていることから、よく混同こんどうされる。

2006ねん発生はっせいしたイスラエル国防こくぼうぐんによるレバノン侵攻しんこうにおいて、たいするヒズボラがロケットほう応戦おうせんしているとされ、いくつかの報道ほうどう機関きかんは「ヒズボラはカチューシャ・ロケットで攻撃こうげきおこなっている」とほうじている。ただし、イスラエルやレバノンなどでは「カチューシャ」は多連装たれんそうロケットほう一般いっぱん呼称こしょうとしてもちいられているため、報道ほうどうかんしても本来ほんらいの「カチューシャ(BM-13などの愛称あいしょう)」という意味いみ使つかわれている可能かのうせいひくい。なお、現在げんざいヒズボラが使用しようしているロケットほう上記じょうきソ連それんせいのBM-21 グラートや中国ちゅうごくせい63しき107mm 12連装れんそうロケットほうおよびその派生はせいがたがほとんどである。

2020ねんにイラクの国籍こくせきぐん基地きちタージ基地きち)が多連装たれんそうロケットだん襲撃しゅうげきされた事件じけんでも、「カチューシャによる攻撃こうげき」と報道ほうどうされている[1]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ べいぐん駐留ちゅうりゅう基地きちにロケットだん イラク首都しゅと近郊きんこう死傷ししょうしゃなし”. AFP (2020ねん1がつ15にち). 2020ねん3がつ15にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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