(Translated by https://www.hiragana.jp/)
水陸両用戦車 - Wikipedia コンテンツにスキップ

水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
シャーマンDD

水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃ(すいりくりょうようせんしゃ)は、陸上りくじょうのみならず、河川かせんなどの障害しょうがいぶつを浮航あるいは潜水せんすい渡渉としょうすることのできる戦車せんしゃす。水域すいいき移動いどう方式ほうしきにより潜水せんすい戦車せんしゃ、あるいは浮航戦車せんしゃともばれる。

概要がいよう

[編集へんしゅう]

水域すいいき移動いどう方式ほうしきおおきく分類ぶんるいすると、ふねのように水上すいじょうかぶ浮航方式ほうしきと、水底みなそこ走行そうこうする潜水せんすい渡渉としょう方式ほうしきけることができる。

浮航方式ほうしき

[編集へんしゅう]
浮航ちゅうのシャーマンDD

車体しゃたい自体じたい軽量けいりょう設計せっけいし、あるいは必要ひつようおうじて浮力ふりょくざい装着そうちゃくできるようにして、ふねのように水上すいじょう航行こうこうする方式ほうしきである。りたたみしきのスクリーンを展開てんかいして浮力ふりょくかせれいもある。推進すいしんりょく方法ほうほうとしては、陸上りくじょう走行そうこうようくつたいうごかしてみずをかく方式ほうしきと、専用せんようスクリュー装備そうびする方式ほうしきふたつが一般いっぱんてきなほか、起動きどうみずかきを装着そうちゃくした外輪船がいりんせん方式ほうしき実験じっけんれいもある。くつたい方式ほうしき場合ばあいくつたい水上すいじょうでの推進すいしんりょくしやすい形状けいじょうをしている。

浮航方式ほうしき欠点けってんは、軽量けいりょうさが要求ようきゅうされるため、十分じゅうぶん武装ぶそう装甲そうこう実現じつげんすることが困難こんなんてんである。そのため、実際じっさい開発かいはつされたれいおおくは、けい戦車せんしゃ以下いか戦闘せんとうりょくしかゆうしていない。既存きそん通常つうじょう戦車せんしゃ浮力ふりょくざい追加ついか装備そうびしたれいには、必要ひつよう浮力ふりょくざい巨大きょだいなものとなってしまい、実用じつよう困難こんなんとなったものもおおい。また、水上すいじょう航行こうこう速度そくどげるためにはスクリューが必要ひつようであるが、陸上りくじょうでの行動こうどうには無駄むだ重量じゅうりょうぶつとなってしまう欠点けってんもある。

なお、「水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃ」とべるような武装ぶそういものの、現代げんだい装甲車そうこうしゃのうちには、渡河とか使用しようできる程度ていどの浮航能力のうりょくゆうするものがひろられる。もっとも、防御ぼうぎょりょく重視じゅうしして浮航能力のうりょくをあきらめたものもおおく、当初とうしょは浮航可能かのうだったなかにも、装甲そうこう強化きょうかによる重量じゅうりょう増加ぞうかで浮航能力のうりょく喪失そうしつしたれいもある。

潜水せんすい渡渉としょう方式ほうしき

[編集へんしゅう]

シュノーケルもちいて、水底みなそこ走行そうこう可能かのうとする方式ほうしきである。浮航方式ほうしきくらべると重量じゅうりょう制限せいげんゆるやかなため、十分じゅうぶん武装ぶそう装甲そうこうほどこしやすい利点りてんがある。一方いっぽうで、水圧すいあつえて完全かんぜん水密すいみつせいたも必要ひつようや、複雑ふくざつなシュノーケル機構きこう開発かいはつする必要ひつようがあるほか、水底みなそこ地形ちけい影響えいきょう行動こうどう不能ふのうとなる危険きけんもある。だい世界せかい大戦たいせんのドイツ戦車せんしゃおおくが採用さいようしている。

現代げんだい各国かっこく主力しゅりょく戦車せんしゃは、シュノーケルを追加ついか装備そうびして水深すいしん3-5m程度ていど河川かせん潜水せんすい渡渉としょうすることができる。ぎゃくえば、現代げんだいにおいては多少たしょう潜水せんすい能力のうりょくゆうするのは一般いっぱんしたため、この程度ていど能力のうりょくでは、わざわざ水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃばれることはあまりい。

歴史れきし

[編集へんしゅう]

だい世界せかい大戦たいせんまえ

[編集へんしゅう]

だいいち世界せかい大戦たいせんなか近代きんだいてき戦車せんしゃ出現しゅつげんしたのち1920年代ねんだいには各国かっこく水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃ研究けんきゅうはじまっている。たとえば、日本にっぽん陸軍りくぐん1926ねん水陸すいりく両用りょうよう小型こがた装甲車そうこうしゃタイヤくつたいわせたはんそう軌式の車両しゃりょう)を試作しさくし、その1933ねんにはすうしゅ三菱重工業みつびしじゅうこうぎょうでSRイごうしゃ、SRロごうしゃ石川いしかわとう自動車じどうしゃげん いすゞ自動車ずじどうしゃ)ではSR-II、SR-III)を試作しさくし、一部いちぶにちちゅう戦争せんそうでの実戦じっせん試験しけん投入とうにゅうしているが、正式せいしき配備はいびとはならなかった。

量産りょうさんおこなわれた最初さいしょ水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃは、1931ねんころ開発かいはつされたヴィッカース・カーデンロイドA4E11/12水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃである。浮航方式ほうしきでスクリュー推進すいしんすることができたが、武装ぶそう装甲そうこうまめ戦車せんしゃきゅうてい性能せいのうであった。イギリス陸軍りくぐんには採用さいようとなったものの、中国ちゅうごくオランダソ連それんなどに輸出ゆしゅつされた。ソ連それんではデッドコピーとしてT-33つくられたが、のち独自どくじ改良かいりょう発展はってんがたであるT-37T-38生産せいさんされている。これらカーデンロイドけい水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃは、ノモンハン事件じけんふゆ戦争せんそうにおいて実戦じっせん投入とうにゅうされた。

潜水せんすい方式ほうしきでは、ソ連それんBT-5戦車せんしゃ改装かいそうしてシュノーケルなどを装備そうびしたBT-5PKhが開発かいはつされ、1936ねんころ少数しょうすう部隊ぶたい配備はいびされた。

だい世界せかい大戦たいせん

[編集へんしゅう]

だい世界せかい大戦たいせんにおいては、上陸じょうりく作戦さくせん増加ぞうかから、多数たすう水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃ開発かいはつ実戦じっせん使用しようされた。

ドイツ国防こくぼうぐんは、イギリス本土ほんど上陸じょうりく作戦さくせんのために、既存きそん戦車せんしゃ改造かいぞうした水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃ開発かいはつした。浮航方式ほうしきIIごう水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃは、IIごう戦車せんしゃ車体しゃたい後部こうぶエンジン周辺しゅうへん防水ぼうすいカバーでおおい、車体しゃたい側面そくめんに2、または前後ぜんご舟形ふながたのフロートを装着そうちゃくしたものである。推進すいしんくつたい回転かいてんによりおこない、水上すいじょうでの移動いどう速度そくどは10km/h程度ていどだった。潜水せんすい方式ほうしきIIIごう潜水せんすい戦車せんしゃおよIVごう潜水せんすい戦車せんしゃ開発かいはつされた。これはIIIごう戦車せんしゃおよびIVごう戦車せんしゃ車体しゃたい隙間すきま防水ぼうすいカバーでおおい(上陸じょうりく内部ないぶから爆破ばくはして防水ぼうすいカバーをはら戦闘せんとうおこなう)、エンジンの吸気きゅうき排気はいき逆流ぎゃくりゅう防止ぼうしべんのついたチューブを水面すいめんのフロートまでばしておこない、水深すいしん15m程度ていど海底かいていくつたいによって5km/hですすんだ。以上いじょうのいずれも、フェリーボート上陸じょうりく目標もくひょう地点ちてん沿岸えんがんまではこばれ、そこから発進はっしんする運用うんよう予定よていされていた。 イギリス本土ほんど上陸じょうりく作戦さくせん延期えんきされて使用しようされなかったが、IIごう水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃとIIIごう潜水せんすい戦車せんしゃ一部いちぶ改造かいぞううえだい18戦車せんしゃ大隊だいたいへと配属はいぞくされた。そして1941ねん6月のバルバロッサ作戦さくせん投入とうにゅうされ、ブクがわ渡河とか作戦さくせん使用しようされた。なお、ティーガーIじゅう戦車せんしゃ初期しょきがたも、渡河とかよう潜水せんすい装備そうびゆうしていた。これは、重量じゅうりょう制限せいげんのため橋梁きょうりょう使用しよう困難こんなん事態じたい想定そうていしての設計せっけいである。

また、太平洋たいへいよう戦域せんいきにおいてしまづたいのいし作戦さくせん日本にっぽんせまアメリカ海兵かいへいたいは、種々しゅじゅ水陸すいりく両用りょうよう車輌しゃりょう開発かいはつしており、水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃ使用しようした。ひとつは、水陸すいりく両用りょうよう装甲そうこう兵員へいいん輸送ゆそうしゃであるLVT原型げんけいに、戦車せんしゃはしほうよう砲塔ほうとう搭載とうさいしたLVT(A)系列けいれつのものである。他方たほう既存きそんM4ちゅう戦車せんしゃ改造かいぞうすることもおこなっており、浅瀬あさせでの行動こうどう可能かのうなように、エンジンのある車体しゃたい後部こうぶから巨大きょだい吸気きゅうき排気はいきよう装置そうち上方かみがたばした車両しゃりょう使用しようしている。

イギリスぐんでも、パーシー・ホーバート少将しょうしょう指揮しきした、M4ちゅう戦車せんしゃ改造かいぞうしたシャーマンDDとばれる浮航しき水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃ開発かいはつした。ノルマンディー上陸じょうりく作戦さくせん多数たすう投入とうにゅうされたが、波浪はろうによりおおくが水没すいぼつする結果けっかとなった。そのため、軽量けいりょうまめ戦車せんしゃ改造かいぞうでも十分じゅうぶんだったとの意見いけんもある。

日本にっぽんでは、海軍かいぐん陸戦りくせんたいよう開発かいはつしたとくしき内火艇ないかてい実戦じっせん投入とうにゅうされた。

だい世界せかい大戦たいせん

[編集へんしゅう]

一定いってい水陸すいりく両用りょうよう性能せいのうゆうする装甲そうこう戦闘せんとう車両しゃりょうえる一方いっぽう専用せんよう水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃはあまりおおい。ソ連それんPT-76や、中国ちゅうごくせい発展はってんがたげられる程度ていどである。PT-76系列けいれつベトナム戦争せんそうなどで実戦じっせん使用しようされた。

なお、冷戦れいせんには海底かいてい作業さぎょう潜入せんにゅう工作こうさくようくつたい潜水せんすいてい研究けんきゅうされ、これらが「潜水せんすい戦車せんしゃ」と俗称ぞくしょうされることがあった。

おも水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃ

[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]